アメリカなき世界システム
―― 新しい国際統治の形
2025年6月号

トランプ政権は、アメリカがその形成に深く関わってきた条約や国際機関、経済システムに背を向けつつある。この状況がカオスや紛争につながっていくかは、これまで秩序を支えてきた、欧州や日本を含む、多くの国の行動次第だろう。世界が米主導の制度、条約、同盟から離れて他国が主導するシステムへ移行していく道筋はいくつか存在する。世界銀行などの既存の国際機関でアメリカの役割を代替することもできる。既存の国際機関と同じ機能の一部を果たせる代替システムをみつけることも、協力関係を維持してG9やG12のようなものを形作ることもできる。だが、何もしなければ、これまで以上に危険に満ちた世界で、手段も影響力もなく、狭義の短期的な利益を守るために奔走することになる。