貿易戦争後の世界
―― システム崩壊からルール再構築へ
2025年9月号

今後の世界経済は、第二次世界大戦前のシステムに近づいていくのかもしれない。関税水準がどこに落ち着こうと、現在の貿易戦争は、貿易障壁を大幅に引き上げることになるはずだ。貿易障壁の拡大は成長を鈍化させ、生産性を低下させる。ルールが骨抜きになると、不確実性や摩擦が生じ、不安定化や紛争につながっていくおそれもある。前進するための最良の選択肢は、同じ考えを共有する国家集団による、開かれた、多国間よりも小規模な「複数国間(plurilateral)のネットワーク」を形作ることかもしれない。これらが織りなす重層的な構造があれば、グローバルなルールに基づくシステムがなくても、ルールによって形作られるグローバル経済を実現できるようになる。