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2024年3月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2024年3月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2024年3月号 目次

世界戦争の足音

  • 世界戦争の足音
    歴史は繰り返すのか

    ハル・ブランズ

    雑誌掲載論文

    世界は、1940年代のように、複数の紛争が一つの戦争へ統合されていく局面にあるのかもしれない。東ヨーロッパと中東ではすでに戦争が勃発し、現状を否定するリビジョニズム国家の結びつきがますます強くなっている。この環境で、アジアの係争海域で軍事衝突が起きれば、別の恐ろしいシナリオが浮上する。東アジアでの戦争が他の地域ですでに進行している紛争と重なり合い、ユーラシアの三つの主要地域が一度に大規模な紛争で燃え上がれば、1940年代以来の状況が出現する危険がある。しかも、アメリカはこの課題への準備ができていない。すでにプーチンは、ウクライナと中東における紛争は「ロシアと全世界の運命を決める」一つの大きな闘争の一部だと宣言している。

  • 米中戦争と台湾・第一列島線
    戦争の長期化・広域化と多領域化に備えよ

    アンドリュー・F・クレピネビッチ

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカとその同盟国は、核兵器によるエスカレーションの可能性は小さいとしても、何カ月も何年も続き、経済、インフラ、市民生活に莫大なコストを強いる中国との大国間戦争が何を意味するかを考え始めるべき段階にある。中国と米主導の連合軍との通常戦争は長期化し、地理的に広域化するだけでなく、その対立は、世界経済、宇宙、サイバースペース等の多くの領域に飛び火する危険がある。しかも、中国が第一列島線に沿った主要な島嶼を占領した場合、アメリカとその同盟国が許容範囲に近いコストでそれらの島々を奪還するのは非常に難しい。どちらの側にとっても決定的な軍事的勝利の見込みがない以上、この戦争は数年以上にわたって続く危険がある。・・・

  • 領土征服時代への回帰?
    世界秩序の未来を左右するウクライナ

    タニシャ・M・ファザル

    Subscribers Only 公開論文

    いまやロシアの侵攻によって、領土の侵略と征服を禁止する規範が、第二次世界大戦以降、もっとも深刻に脅かされている。国際社会がロシアによるウクライナ領土の編入を許せば、各国はより頻繁に国境線を武力で変更しようと試みるようになり、戦争が起き、帝国が復活し、消滅の危機に瀕する国が増えるかもしれない。侵略と征服を禁止する規範が薄れてゆけば、世界は領土紛争のパンドラの箱を開け、数百万の市民が無差別攻撃の標的にされる恐れもある。だが、国際社会は経済制裁と国際法廷を利用して、ロシアの粗野で違法な侵略行為にペナルティを科すことができる。国際社会が領土の征服を禁止する規範を擁護できなければ、大国と国境を接する諸国はかなりの消滅リスクに直面することになる。

  • 現在と1930年代は似ているか
    反グローバル化、経済保護主義、ポピュリズム

    マーク・マゾワー

    Subscribers Only 公開論文

    第一次世界大戦後、自由貿易と国際主義的政治が批判され、関税障壁と移民規制が強化されるなか、ヨーロッパは独裁政治へ転落していった。当時の状況と現状の間には重なり合う部分も多い。実際、ポピュリストやナショナリストのさまざまな不満を背景とするトランプの台頭は、民主主義の危機を分析するために、グローバル化に反対する人々に注意を払う必要があることを初めて明らかにした。グローバル化支持派は、自由貿易と経済の自由化が民主主義拡散の基盤を提供すると主張している。だが歴史が示す因果関係はもっと曖昧だ。戦間期の混乱から当時導き出された真の教訓は、レッセフェール型経済が命取りになりかねないこと、そして政治家が、戦略的な国家リーダーシップの必要性を理解しなければならないということだ。

  • リベラルな民主主義の奇妙な勝利そして停滞

    シュロモ・アヴィネリ

    Subscribers Only 公開論文

    なぜ20世紀に民主主義が生き残り、ファシズムも共産主義も淘汰されてしまったのか。1930年代から21世紀初頭にいたるまで、ヨーロッパ全域が民主化すると考えるのは現実離れしていたし、リベラルな民主主義が勝利を収める必然性はどこにもなかった。なぜ、社会に提示できるものをもち、圧倒的な力をもっていたマルクス主義がリベラルな民主主義に敗れ去ったのか。そしていまや、多くの人が(民主主義を支える経済制度である)資本主義が経済利益を広く社会に行き渡らせる永続的な流れをもっているかどうか、疑問に感じ始めている。ヨーロッパとアメリカの昨今の現実をみると、民主的政府は危機に適切に対応できず、大衆の要望を満たす行動がとれなくなっている。現在、世界が直面する危機によって、市場原理主義、急激な民営化、新自由主義では、「近代的でグローバル化した経済秩序をどうすれば持続できるか」という問いの完全な答えにはなり得ないことがすでに明らかになりつつある。・・・

  • 民主主義の危機にどう対処するか
    ポピュリズムからファシズムへの道

    シェリ・バーマン

    Subscribers Only 公開論文

    ファシストが台頭した環境は現在のそれと酷似している。19世紀末から20世紀初頭のグローバル化の時代に、資本主義は西洋社会を劇的に変貌させた。伝統的なコミュニティ、職業、そして文化規範が破壊され、大規模な移住と移民の流れが生じた。現在同様に当時も、こうした変化を前に人々は不安と怒りを感じていた。だが、第一次世界大戦、大恐慌という大きなショックを経験したことを別にしても、根本的な問題は、当時の民主主義が、戦間期の社会が直面していた危機にうまく対処できなかったことだ。要するに、革命運動が脅威になるのは、民主主義が、直面する課題に対処できずに、革命運動がつけ込めるような危機を作り出した場合だ。ポピュリズムの台頭は、民主主義が問題に直面していることを示す現象にすぎない。だが、民主的危機への対応を怠れば、ポピュリズムはファシズムへの道を歩み始めることになるかもしれない。

  • 問題を解決できる新国際システムを
    新システムの目的をどこに定めるか

    フィリップ・ゼリコー

    Subscribers Only 公開論文

    新しい国際システムが必要なのは明らかだが、重要なのは「現実に問題を解決すること」だ。求められているのは、地球上の多くの人が共有する少数の問題に対処できるプラクティカルな国際システムだろう。戦争、気候変動、経済および感染症のリスクから世界を守ることに焦点をあてた現実的国際秩序を考案していかなければならない。実際、指導者の多くは、第三次世界大戦の火種となりかねないウクライナでの戦争を止めさせ、新サプライチェーンが形作る「新経済秩序ビジョン」の構築を求めている。エネルギーショックをより低炭素の未来に向けた未来につないでいく機会にし、次の感染症パンデミックに適切に備えることを望んでいる。ここで問われているのは民主主義や独裁主義の価値観ではない。問題を解決するための連帯とプラグマティズムだ。・・・

米大統領選挙と世界

  • 共和党の国際主義と外交戦略
    軍事・貿易・経済戦略をどう立て直すか

    コリ・シェイク

    雑誌掲載論文

    共和党支持者がもっとも懸念する「経済的な不安」を引き起こしているのは、バイデン政権の政策だ。その保護主義的な理論とアプローチはインフレを煽り、市場を歪め、貿易を抑え込み、アメリカの同盟国をいらだたせている。共和党支持者は、中国に世界のルールを決めさせれば、米企業は不利な状況に追い込まれ、同盟国が脆弱な状況に置かれることを理解している。軍事予算の増大も、移民政策の見直しも必要だし、中国への依存を減らし、それでも繁栄を維持できる経済戦略が求められている。必要なのは、世界で何が起きているのか、そして共和党がどのように国を守り、繁栄を維持していくつもりなのかについての理論を有権者に明確に示すことだ。

  • 次期米大統領と欧州
    なぜ欧州の自立が必要なのか

    アランチャ・ゴンサレス・ラヤ他

    雑誌掲載論文

    ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

  • アメリカの新貿易コンセンサス
    ロバート・ライトハイザーの世界

    ゴードン・H・ハンソン

    雑誌掲載論文

    前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。トランプの「アメリカ第1主義」の威勢のよさを思わせる彼の立場は右派にアピールし、バイデンの産業政策と環境保護路線を受け入れることで左派への訴求力ももっている。だが、ライトハイザーの処方箋が貿易政策の標準とされても、国内の工場を復活させることはできない。むしろ、その過程で国際関係に大きなダメージを与えてしまう。彼にとっては受け入れがたいとしても、アメリカの繁栄の未来は溶鉱炉や組立ラインではなく、サービス業にある。

  • トランプと地政学
    変化し始めた同盟国と敵対国の立場

    グレアム・アリソン

    Subscribers Only 公開論文

    バイデンと彼の外交チームは厄介な状況に直面している。交渉相手国が、あらゆる問題をめぐって、1年後にはまったく異なる米政府を相手にしている可能性を考慮した上で、ワシントンの意向を判断し始めているからだ。ロシアを含む敵対国は、いずれ、ワシントンとよりよい条件で交渉できるようになるという期待から、現状での判断を先送りしている。一方、ヨーロッパ諸国などは、トランプが大統領に返り咲けば、より劣悪な選択肢に直面する可能性が高いと考え、それに応じた対応を進めている。実際、ウクライナに送る戦車や砲弾の数をめぐっても、「トランプが当選すれば、自国の防衛のためにそれらが必要になるのではないか」と考え込むヨーロッパの指導者もいる。・・・

  • トランプ現象とアメリカの政治文化
    ヘンリー・フォードとトランプ

    マイケル・カジン

    Subscribers Only 公開論文

    トランプ現象は、アメリカの歴史・文化における三つの潮流が合流したものとして理解するのが適切だろう。反移民の社会文化やポピュリストの伝統、そして財界の裕福なパフォーマーを待望する伝統だ。つまり、トランプの魅力も、彼の出馬が国内外で引き起こす恐怖も、アメリカの政治文化の奥底に流れる衝動から生じている。誰もが名前を知っている金持ちが、民衆の多くが恐れるか不信感をもつ人々をバッシングし、国のあらゆる問題を解決するという漠然とした約束をする。こうしたトランプの行動は、彼のファンや批判者の多くが考えるほど目新しいものではない。逆に言えば、トランプが表舞台を去った後も、大げさな演説の才があり、守るべき政治的実績のない、裕福なパフォーマーが同じような役目を担うことになるのかもしれない。

  • 共和党外交の再建はできるか
    アメリカファーストと国際主義の相克

    ジェラルド・F・セイブ

    Subscribers Only 公開論文

    共和党の政治家たちが外交政策をめぐって火花をちらすなかで、われわれが注目すべきは、「レーガン時代の国際主義」と「トランプ時代のアメリカファースト」の衝動が一貫した戦略と世界ビジョンへまとめられていくかどうかだ。共和党系外交専門家の多くは、二つの立場の間に共通基盤は存在するし、政治家たちの発言ほどには、共和党支持層は新孤立主義に傾倒していないとみている。そうした統合を実現するには、中国や台湾、貿易、同盟国の責任分担を含む一連の中核アジェンダについての党としてのコンセンサスが必要になる。もちろん、2024年に誰が指名候補になるかで流れは大きく左右される。例えば、共和党の予備選でトランプではなく、国際派のヘイリーが勝利すれば、党にとって大きく異なる道が開けてくる。・・・

  • トランプ2・0の時代
    同盟国に恐怖を、ライバルに希望を

    ダニエル・W・ドレズナー

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの同盟諸国は、ドナルド・トランプが2020年後半のレームダック状況のなかで、世界から米軍を撤退させることを計画していたことを忘れてはならない。彼が敗北することが明らかにならない限り、そして実際にそうなるまでは、トランプがもたらす脅威を軽くみるのは間違っている。ロシアや中国の政府高官は、トランプの再選を望んでいる。ロシアにとっては、トランプの再登板は、ウクライナへの欧米の支援が低下することを意味し、中国にとっては、北京を懸念する日本や韓国といった国々とアメリカの同盟関係に綻びが生じることを意味するからだ。・・・

  • 米中地政学とグローバル経済
    同盟国との経済連携の強化を

    ピーター・E・ハレル

    Subscribers Only 公開論文

    ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。分野別の小型の貿易合意、同盟国とのサプライチェーン協定を結ぶ一方で、グローバルサウスを引き寄せる必要もある。世界貿易機関が地政学の時代にそぐわないことも認識しなければならない。ワシントンが経済的リーダーシップを維持し、同盟関係を強化し、破滅的な結果を回避できるかを、成功を判断する基準に据えるべきだろう。

ガザと中東の未来

  • 紛争の一方で進む中東の和解と協調
    ポストアメリカの中東秩序へ

    ダリア・ダッサ・ケイ、サナム・ヴァキル

    雑誌掲載論文

    アラブ世界の主要国は、トルコのような地域大国とともに、ガザ戦争前に存在した和解の流れとその後誕生した協調の機運を固定化するために、この瞬間を生かし、この地域に安定をもたらせる力強い安全保障メカニズムの確立をめざすべきだ。中東は清算の時を迎えている。ガザ戦争からみても、いまや中東におけるアメリカパワーに限界が生じていることは明らかであり、今後の中東の和平と安全保障をめぐって主導権をとるのは、地域の指導者や外交官たちでなければならない。危機と紛争にさらに陥っていく危険もある。だが、別の未来を築き始めることもできる。中東の指導者たちが暴力のスパイラルを食い止め、この地域をより前向きな方向へと導ける可能性は存在する。

  • 戦後のガザ統治に備えよ
    自治政府をどう改革するか

    ダニエル・バイマン

    雑誌掲載論文

    アフガニスタンやイラクなどの紛争から得た教訓の一つは、敵対的な体制を排除することはそれほど難しくなくても、現地における民衆の暮らしを立て直し、長期的な平和を確保できる新政府を構築することは、はるかに難しいということだ。ハマスという選択肢もイスラエルという選択肢もない。アラブ諸国も戦後ガザへの関与は嫌がるだろう。国際的テクノクラートによる統治は、政治基盤をもたないという大きな欠陥がある。自治政府は、西岸においてさえ、イスラエルのかなりの支援がなければ、ハマスを抑え込み、暴力を阻止することもできずにいるが、それでも、ガザの統治という任務を担う上でもっともましな選択肢だ。しかし、現在の自治政府を改革していく必要がある。・・・

  • 抵抗の枢軸という新脅威
    ミサイルとSNSで戦う敵の目的は

    ナルゲス・バジョグリ、バリ・ナスル

    雑誌掲載論文

    イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニが設計し、シリア紛争で具体的なつながりをもち、ガザ戦争で一気に連帯を深めた「抵抗の枢軸」とは、いかなる軍事ネットワークなのか。欧米は、イランが(ハマス、ヒズボラ、フーシ派などを含む)「抵抗の枢軸」の黒幕だとみているが、実際には、それぞれが自立した、より緩やかなネットワークだ。それでも、メンバーたちは、イスラエル、そして間接的にはアメリカに対する同じ戦争を戦っていると信じている。それだけに、抵抗の枢軸を簡単に解体することも、それを生み出した思想を粉砕することもできない。ガザの銃声が静まり、住民への圧力が緩和され、パレスチナの主権と自決への確かな道筋が描かれない限り、アメリカは危険なエスカレーション・スパイラルから抜け出すことはできないだろう。

  • 中東を一変させたガザ戦争
    混乱をいかに安定と秩序に導くか

    マリア・ファンタッピー、バリ・ナスル

    Subscribers Only 公開論文

    ついに実現しつつあるかにみえた、イスラエルとアラブ世界の関係正常化を中心とするアメリカの中東構想も、イスラエル・ハマス戦争によって根底から覆されてしまった。もはやパレスチナ問題は無視できないし、パレスチナ国家への信頼できる道筋がみえるまでは、アラブ・イスラエル関係の今後を含めて、アメリカがこの地域の他の問題に取り組むのは不可能だろう。さらに、中東を動揺させているテヘランの台頭にも対処しなければならない。このためにも、ワシントンは、イラン、イスラエル、アラブ世界全体と実務的な関係を維持しているサウジとのパートナーシップを、新たな中東ビジョンの基盤に据える必要がある。

  • 紛争後のガザを誰が統治するのか
    紛争から外交への長い道のり

    ヨースト・ヒルターマン

    Subscribers Only 公開論文

    ハマスの軍事能力とガザの統治体制を破壊するという目標だけでなく、イスラエルは、ガザを再占領し、ガザ住民を直接統治することにも行き詰まるだろう。結局、国連その他の人道支援機関が基本的なアメニティーを提供し、ほとんどのガザ住民が避難生活を続けることになると考えられる。ハマスの粉砕を最優先課題としているために、イスラエルは、もっとも必要で価値あるもの、つまり、安全な環境、治安をいかに取り戻すかという目的を見失っている。しかも、イスラエルが2国家解決策を拒否しているために、イスラエルとパレスチナの双方が納得できる交渉による解決を達成するのを阻む、ほぼ克服できない課題が存在する。

  • 戦争で溢れる世界
    なぜ紛争が多発しているのか

    エマ・ビールズ、ピーター・ソールズベリー

    Subscribers Only 公開論文

    世界は、「平和」のゴールポストを紛争解決から紛争管理へシフトさせてしまった。だが、中東やその他の地域で起きている出来事は、紛争を管理できる期間が限られていることをわれわれに教えている。世界で戦闘が激化し、紛争の根本的な原因が解決されないままであるため、従来の平和構築や開発のツールはますます効果がなくなってきている。停戦交渉を「和平プロセス」と表現し、和平が何年も何十年も先のことではなく、すぐそこにあるかのように説明されると、銃声が一時的に静まり返っただけで、和平は達成されたと錯覚することがあまりにも多い。紛争とその悪影響を解決し、管理するための新たなアプローチが早急に求められる。

  • 新しいアラブ・イスラエル関係
    アブラハム合意のポテンシャル

    マイケル・シン

    Subscribers Only 公開論文

    2020年、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン王国はアメリカの仲介で国交を正常化した。アブラハム合意として知られるこのアレンジメントは、これまで経済統合がなかなか実現しなかった中東地域での奥深い経済統合を促すだろうし、世界の投資家を魅了し、この地域全体の成長に貢献すると考えられる。すでにモロッコとスーダンが、UAEに続いてイスラエルと国交正常化合意を結んでいる。一連の和平合意は、かつては望みようもなかったイスラエルとアラブ諸国との政治・安全保障協力に道を開き、地域紛争を抑え、イランを抑止できる地域国家連合の形成へとつながっていくポテンシャルを秘めている。・・・

Current Issues

  • ミャンマーは崩壊するのか
    反体制派と連邦制の夢

    アビナッシュ・パリワル

    雑誌掲載論文

    軍事政権は国内のほとんどの地域で追い込まれている。「国家分裂の危険にある」ミャンマーが複数の民族小国家に分裂していく可能性は、すでに現実問題として捉えられている。実際、軍事政権が敗北し、追放される可能性も否定できず、ミャンマーは連邦制に即して社会契約を書き変えるべきタイミングにあるのかもしれない。ミャンマー軍に対する攻撃には数カ月に及ぶ計画や異質なグループ間の連携が必要なわけで、これが実現されていることからみれば、この国が連邦制に基づく民族間統合モデルを実践できるのではないかという希望も浮上してくる。

  • 南シナ海に迫る危機
    中国との危機を機会に変えるには

    マイケル・J・マザー

    雑誌掲載論文

    習近平国家主席は、停滞する中国経済の再生と国内での政治的管理体制の強化に躍起になっているし、アメリカとの緊張緩和への期待も示している。しかし、南シナ海での衝突や挑発行為がより頻繁に発生するようになれば、それが危機につながっていくのは避けられないし、そのような事態に直面すれば、アメリカの対中戦略は大きな転換点を迎える。北京の能力と影響力を抑える障壁を積み上げることであれ、抑止力の強化であれ、中国の力と野心に対抗するだけでは、今後10年にわたって存続できる戦略関係を形作ることはできない。むしろアメリカは中国に対抗しつつも、一方で、北京との安定した関係を築き、いつかは相互に尊重できる共存へと移行できるような基盤を築いていくべきだろう。

  • シリア化するミャンマー
    東アジアにおける破綻国家の誕生か

    デレク・J・ミッチェル

    Subscribers Only 公開論文

    軍隊と民衆間の分裂を修復するのはもはや不可能だと多くの人はみている。現在の残虐行為を前に、多数派であるビルマ族も、ミャンマー軍が何十年にもわたって国内の少数民族を対象に暴力と不正を繰り返してきたことの意味合いについて覚醒しつつある。こうしてもたらされる民族間の連帯が、永続的な平和と和解の基盤を提供できるかもしれず、これをベースにより力強い民族間対話の枠組みを立ち上げるべきだろう。中国、インド、タイ、その他の周辺諸国は、移民や難民の受け入れを求める圧力にさらされ、ミャンマーとの国境地帯が無法化し、暴力と絶望が社会に蔓延する事態に備えざるを得なくなるだろう。ミャンマーが経験しているのはいつもながらの民主主義からの後退ではない。いまやアジアの重要地域で破綻国家がゆっくりと誕生しつつある。

  • クーデター後のミャンマー
    国家破綻から新生国家への道

    タンミンウー

    Subscribers Only 公開論文

    こう着状態が長期化するにつれて、ミャンマー経済は崩壊へ向かい、貧困化する人が急増している。医療システムはすでに破綻し、武力衝突が激化するなか、大規模な難民が中国、インド、タイなどの近隣諸国へ流出することになるだろう。破綻国家への道をたどるミャンマーの混乱につけ込もうとする勢力が台頭するかもしれない。課題は国家的破綻の期間を短くし、弱者を守り、新しい国家を作り、より自由・公平で豊かな社会の建設を始めることだ。今後、平和なミャンマーが出現するとすれば、民族ナショナリズムのストーリーに支配されない、新しい国家アイデンティティが共有され、改革を経た政治経済体制が根付いた場合だけだろう。2月のクーデターだけでは危機を説明できない。現状は数十年にわたって国家破綻プロセスが続き、国家建設に失敗し、あまりに長期にわたってあまりに多くの人にとって社会と経済が不公正だったことによって引き起こされている。

  • 本当の対中抑止力とは
    米台が中国を安心させるべき理由

    ボニー・S・グレーザー他

    Subscribers Only 公開論文

    「あと一歩踏み込んだら撃つぞ」という警告が抑止のための威嚇になるのは、「踏み込まなければ、撃つことはない」という暗黙の了解が一方に存在するからだ。潜在的な敵を思いとどまらせるには、「保証」を示して、相手を安心させる必要もある。ワシントンと台北は抑止力の強化に努めながらも、武力行使を控えれば、懲罰の対象にはされないと北京を安心させなければならない。一部の米政府高官たちが主張するように、台湾を主権国家として承認し、台湾防衛のための明確な同盟コミットメントを示せば、北京の安心感は損なわれ、抑止力も低下する。この場合、ワシントンが地域的な軍事力強化にいくら力を注いでも、戦争を防ぐことはできなくなるかもしれない。

  • 「中国経済の奇跡」の終わり
    アメリカが門戸開放策をとるべき理由

    アダム・S・ポーゼン

    Subscribers Only 公開論文

    中国では家計貯蓄が急増し、民間の耐久消費財消費が大きく減少している。この現象を「経済領域におけるコロナ後遺症」とみなすこともできる。特定の政策がある日突然拡大され、次の日には撤回される事態を経験した人々は、景気刺激策を含む政府の経済対策に反応しにくくなる。専門家の多くは、現状を説明する上で、不安定化する不動産市場や不良債権の問題などを重視するが、経済成長を持続的に抑え込む「経済領域で長期化するコロナの余波」の方がはるかに深刻な問題だ。すでに、不安定な状況に直面した富裕層は、外への退出を試みており、時とともに、こうした出口戦略はより多くの中国人にとって魅力的になるだろう。アメリカはこのタイミングで、現在の対中政策を全面的に見直し、中国の人と資本への門戸開放政策をとる必要がある。

  • 国際法と南シナ海の騒乱
    ワシントンが北京の穏健派を支えるには

    アリ・ウェイン

    Subscribers Only 公開論文

    「中国の(南シナ海における)歴史的主張には法的根拠がない」とした国際仲裁裁判所の判断に北京が配慮する気配はなく、それが伴う国際的立場の失墜さえ気にしていないようだ。これは、一つには「中国はルールを踏み外している」という批判の法的根拠である国連海洋法条約(UNCLOS)にアメリカが参加していないことを北京が理解しているからだ。しかも、「これまで国連海洋法をめぐる仲裁裁判所の判断に従った国連安保理の常任理事国が存在しない」のも事実だ。但し、北京の穏健派は、九段線を今後も「境界線」とみなし続ければ、「アメリカ、そして殆どの東南アジア諸国を敵に回すことになる」と事態を懸念している。

  • 石油シーレーンの安全確保と海軍力

    デニス・C・ブレア、ケネス・リーバーサル

    Subscribers Only 公開論文

    ますます多くの国が中東からの輸入石油への依存を高めるなか、グローバルな石油シーレーンの安全確保が注目されるようになり、中国やインドのように、石油タンカーを守るために外洋展開型海軍の整備を検討している国もある。だが一般に考えられているのとは逆に、テロ集団の行動や紛争によって、石油シーレーンの航行が脅かされるリスクはかなり小さくなってきている。タンカーが大型化し頑丈につくられるようになったために、機雷、潜水艦、そしてミサイル攻撃に対しても打たれ強くなっているし、仮にテロリストが石油タンカーをシンガポール海峡に沈めることに成功しても、海峡を封鎖できるわけではない。唯一、海洋の交通路を完全に遮断する力を持つ米海軍も、公海上の航行の安全を守ることを心がけており、国際輸送に干渉するような行動をとることはあり得ない。

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