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2023年2月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2023年2月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年2月号 目次

ロシアの敗戦と世界

  • プーチンの最後の抵抗に備えよ
    ロシアの敗戦は何を引き起こすか

    リアナ・フィックス、マイケル・キメージ

    雑誌掲載論文

    ロシアの敗北は多くの恩恵をもたらすが、一方で、それが引き起こす地域的、世界的な混乱に備える必要がある。交渉による敗北を受け入れず、ロシアが過激なエスカレーション策をとり、カオスが作り出されれば、その影響はアジア、ヨーロッパ、中東にも及ぶ。世界最大の国土をもつロシアとその周辺で、分離主義や新たな紛争などの混乱が引き起こされる危険もある。一方、ロシアが内戦によって破綻国家と化せば、1991年に欧米の政策立案者が取り組むべきだった問題、例えば、ロシアの核兵器を誰が管理するのかといった問題も再燃する。ロシアの無秩序な敗北は、国際システムに危険な空白を作り出す。

  • ロシアの衰退という危険
    脅威がなくならない理由

    アンドレア・ケンドール・テイラー、マイケル・カフマン

    Subscribers Only 公開論文

    ロシアのパワーと影響力が衰退しているとしても、その脅威が今後大きく後退していくわけではない。プーチンが敗れても、ロシアの問題は解決されないし、むしろますます大きくなっていく。欧米は、この現実を認識し、ロシアがおとなしくなることへの期待を捨て、モスクワの標的にされているウクライナへの支援を続けなければならない。ロシアは往々にして再生、停滞、衰退のサイクルを繰り返す。ウクライナ戦争でそのパワーと世界的地位が低下しても、ロシアの行動は、今後も反発、国境沿いの勢力圏の模索、そして世界的地位への渇望によって規定されていくだろう。ヨーロッパが単独でこの問題を処理できると考えてはならない。ロシアの脅威は変化するとしても、今後もなくならない。

  • 蘇るロシアの歴史的行動パターン
    プライドと大きな野望、そして脆弱なパワーという現実

    スティーブン・コトキン

    Subscribers Only 公開論文

    自らの弱さを理解しつつも、特別の任務を課された国家であるという特異な意識が、ロシアの指導者と民衆に誇りを持たせ、一方でその特異性と重要性を理解しない欧米にモスクワは反発している。欧米との緊密なつながりを求める一方で、「自国が軽く見られている」と反発し、協調路線から遠ざかろうとする。ロシアはこの二つの局面の間を揺れ動いている。さらにロシアの安全保障概念は、外から攻撃される不安から、対外的に拡大することを前提としている。この意味でモスクワは「ロシアが旧ソビエト地域で勢力圏を確立するのを欧米が認めること」を望んでいる。だが現実には、ロシアは、(経済、文化など)他の領域でのパワーをもっていなければ、ハードパワー(軍事力)だけでは大国の地位を手に入れられないことを具現する存在だ。現在のロシアは「新封じ込め」には値しない。新封じ込め政策をとれば、ロシアをライバルの超大国として認めることになり、欧米は相手の術中にはまることになる。・・・

  • 戦争をいかに終結させるか
    成功の定義、キーウが求める条件とは 

    リチャード・ハース

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナでの戦争を可能な限り早く、キーウの民主的政府が受け入れる条件で終わらせること、これが欧米にとっての成功の定義だろう。しかし、その条件とは何だろうか。この2カ月で失った領土のすべてを回復することだろうか。ドンバスとクリミアからのロシア軍の完全撤退を求めるのか。それとも、ヨーロッパ連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟することなのか。これらのすべてをロシアが署名する文書に記載するよう主張するのか。プーチンが選択し、始めた戦争だとしても、もはやプーチンだけでは戦争を終結させることはできない。プーチンとゼレンスキーはともに、敵対行動を停止させるために必要な領土と条件が何であるかを検討し、戦闘の終結を命令するだけでなく、和平協定を締結し、それを尊重できるかどうかも考える必要がある。

  • 戦争を終わらせるには
    ロシアのリアリストに和平の条件を示せ 

    タチアナ・スタノバヤ

    Subscribers Only 公開論文

    戦争を終わらせるには、ロシアにおけるリアリストの台頭が必要になる。現在ロシアが破滅の道にあること、このまま残虐行為や資源の浪費を続ければ、すでに追い込まれているロシアの立場がさらに悪化することをリアリストたちは理解している。欧米が、ロシアのリアリストが平和主義者へと立場を変えることを望むのなら、「和平がロシアの体制や国家の崩壊につながらないこと」を明確にモスクワに対して示さなければならない。そうしない限り、国内政治の流れは戦争継続へ向かう。ロシアのリアリストにウクライナとの和平がロシアの崩壊に直結しないと理解させることが、モスクワに壊滅的な侵略戦争を止めさせる唯一の方法だろう。

  • ロシア対外問題行動の源泉
    辞任した外交官が振り返るロシア外交の欠陥

    ボリス・ボンダレフ

    Subscribers Only 公開論文

    私がウクライナ侵攻で思い知ったことの一つは、それまでの20年間に目撃してきたことに大いに関係していた。ゆっくりとだが、政府が自らのプロパガンダにとらわれ、歪められてしまっていた。ロシアの外交官は長年、ワシントンに対決路線をとり、嘘とつじつまの合わない言葉を並べて、ロシアの対外的干渉を正当化するように強いられてきた。私たちは仰々しいレトリックを使って、モスクワに命じられたことをそのまま繰り返すように教育されていた。だが、最終的に、外国だけでなく、ロシアの指導部もこのプロパガンダに感化されるようになった。・・・この戦争は、エコーチェンバーで下された決定がいかに裏目に出るかを明確に示している。

  • クレムリンのクーデター?
    ソビエトの権力抗争史とプーチンの未来 

    セルゲイ・ラドチェンコ

    Subscribers Only 公開論文

    プーチンがウクライナ戦争の劣勢を覆せぬなか、潜在的な後継者たちが、ライバルの動向を窺い、後継シナリオをあれこれ考えているのは間違いないだろう。プーチンの打倒を目指す者は数多くいる。おべっか使いの側近や危機マネージャーなど、後継候補たちは多彩な顔ぶれだ。大統領への忠誠心で選ばれた人物たちだとしても、裏切りが横行する環境ではそれは相対的なものでしかない。プーチンを完全に信頼している者はいないし、側近たちが互いに相手を信頼しているわけでもない。事実、ソビエト時代のクーデターは、権力中枢における人間関係、ライバルたちの野心と裏切りによって引き起こされてきた。行動を突き動かしたのは、指針とするイデオロギーや政治的な原則ではなく、赤裸々な野心だった。成功はタイミングと流れに左右される。その鍵は、現職の指導者が弱気になったときに素早く、果敢に動けるかどうかだ。・・・

  • 次のアウトブレイク
    パンデミック化を阻止するには

    ラリー・ブリリアント他

    雑誌掲載論文

    都市化、近代化が進んだことで、動物の病気が人間にも広がり、蔓延する危険が大きくなっている。ヒトと動物の間でウイルスの交換がますます増えて、いくつかの変異が起きれば、人類は、H1N1のように感染力が高く、MERSのように致死性の高い、新たなコロナウイルスかインフルエンザウイルスの襲撃を受けるかもしれない。このようなパンデミックは、種としての私たちの存続を脅かすことなるだろう。但し、スピルオーバー(ウイルスの異種間伝播)とアウトブレイク(感染症の発生)は避けられないとしても、パンデミックはそうではない。したがって、人類の最大の任務は、前者と後者の関連を断ち切るために手を尽くすことだ。

2023年を見通す

  • 注目すべき5つの外交アジェンダ
    ウクライナ戦争、台湾、イラン

    ジェームズ・リンゼー

    雑誌掲載論文

    2023年、国際政治はどのような展開をみせるのか。米外交問題評議会のジェームズ・リンゼーは、その手がかりとしてウクライナ戦争、反欧米枢軸の連帯、台湾問題、イランの不安定化、アメリカの経済単独行動主義を挙げる。ウクライナ戦争については「春になり、ロシアがベラルーシの支援を得て新たな軍事攻撃を開始するか、ウクライナがクリミアの奪還を目指せば、状況は一変するかもしれない」と指摘し、反欧米連合については、「アメリカが支配する世界秩序への反発を共有しているだけでは、強固な協調基盤は形成されないかもしれない」とみる。イランについては「2023年12月31日まで、イラン・イスラム共和国は存在しているだろうか」と問いかけている。・・・

  • 2023年のトレンドを考える

    マンジャリ・C・ミラー他

    雑誌掲載論文

    グローバルな食糧不安、今後の地政学的変数の一つであるインドとロシアの関係はどう推移するのか。中国の軍事的脅威にアジアの地域諸国は適切に対処しているか、アフリカの経済成長を妨げている頭脳流出の原因は何か。そしてアメリカにおける政治的分裂状況は、今後さらに激化していくのか。地域、イッシューの専門家が分析する2023年のトレンズ。

  • 気候変動には現実主義で対処せよ
    社会革命ではなく、リアリズムを 

    ハル・ハーベイ

    Subscribers Only 公開論文

    国際社会は気温上昇を一定の範囲内に収める上で排出可能な温室効果ガスの累積上限をほぼ使い切ってしまっている。しかし、打つ手はある。二酸化炭素相当物排出のほぼ75―80%は、世界20カ国の4大排出源(発電所、自動車、建物、工場)における化石燃料の燃焼が原因だからだ。逆に言えば、これら20カ国の四つの産業部門の意思決定者と規制当局者に対象を絞りこんだ対策をとる必要がある。電力、運輸、建設、製造のすべてにおいて、エネルギー関連の資金の流れが化石燃料からクリーンなエネルギーへシフトしていくように政策を見直すことだ。各部門の実際の意思決定者を正しく把握し、どのようにそれが機能しているかを理解し、圧力をかける方法をみつけなければならない。必要なのは、ターゲットを絞り込んだ現実主義的アプローチだ。

  • ウクライナ戦争とインドの選択
    ロシアと欧米、どちらを選ぶのか

    リサ・カーティス

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナ戦争をめぐってインドは中立の立場をとり、ロシアを非難するのを控えているが、米政府高官たちはインドの行動を看過できぬとまではみていない。インドがロシアの軍事ハードウエアに依存していること、それを一夜にして解消できないことを理解しているからだ。しかし、ロシアが残虐行為を繰り返すなか、インドがロシアの原油や天然ガスを大量に購入し続ければ、ワシントンはニューデリーがロシアの戦争継続を可能にしているとみなし始めるだろう。インドの中立路線が長期化すれば、ワシントンが「インドを信頼できないパートナーとみなす」ようになる可能性は高まっていく。本意ではなくとも、ニューデリーは、結局、ロシアと欧米のどちらかを選ばなければならなくなる。・・・

  • 民主主義の危機にどう対処するか
    ポピュリズムからファシズムへの道

    シェリ・バーマン

    Subscribers Only 公開論文

    ファシストが台頭した環境は現在のそれと酷似している。19世紀末から20世紀初頭のグローバル化の時代に、資本主義は西洋社会を劇的に変貌させた。伝統的なコミュニティ、職業、そして文化規範が破壊され、大規模な移住と移民の流れが生じた。現在同様に当時も、こうした変化を前に人々は不安と怒りを感じていた。だが、第一次世界大戦、大恐慌という大きなショックを経験したことを別にしても、根本的な問題は、当時の民主主義が、戦間期の社会が直面していた危機にうまく対処できなかったことだ。要するに、革命運動が脅威になるのは、民主主義が、直面する課題に対処できずに、革命運動がつけ込めるような危機を作り出した場合だ。ポピュリズムの台頭は、民主主義が問題に直面していることを示す現象にすぎない。だが、民主的危機への対応を怠れば、ポピュリズムはファシズムへの道を歩み始めることになるかもしれない。

  • 権威主義へ傾斜する国際システム
    追い込まれたリベラルな秩序 

    アレクサンダー・クーリー他

    Subscribers Only 公開論文

    「世界を権威主義にとって安全な場所」にしようと、リベラルな秩序を支える主要な要因を排除しようとする権威主義国もある。特に中国とロシアは外交・経済力そして軍事力を行使して、オルタナティブ(代替)ビジョンを推進している。現在のトレンドをみるかぎり、世界政治を特徴づける非自由主義的要素と自由主義的要素のバランスは大きく変化していくかもしれない。国際システムはより独裁的で非自由主義的になっていくだろう。反動的なポピュリズムが力を増し、権威主義国家が頑迷な路線をとるようになったために、人権、政治的権利、市民権を尊重する思想が切り崩されつつある。現状でもっとも可能性が高いのは、泥棒政治家と利益供与ネットワークのニーズに即した国際秩序へ向かっていくことだ。

  • 中国の台湾侵攻は近い
    現実味を帯びてきた武力行使リスク

    オリアナ・スカイラー・マストロ

    Subscribers Only 公開論文

    この数カ月、北京が平和的な台湾アプローチを見直し、武力による統一を考えていることを示唆する不穏な動きがある。「アメリカが台湾有事に介入してきても、状況を制することができる」と考えられている。かつては台湾への軍事作戦など現実的オプションではないと考えていた中国政府も、いまや、それを現実の可能性として捉えている。習近平は台湾問題を解決するという野心を明らかにし、武力統一というオプションへの中国市民と軍指導層の支持も強化されている。この30年で初めて、ほぼ1世紀にわたる内戦を決着させるために中国が軍事力を行使する可能性を真剣に憂慮すべき環境にある。

変動する東アジア地政学

  • 中国の衰退が招き入れる危険
    その意味あいと対策を考える

    ジョナサン・テッパーマン

    雑誌掲載論文

    中国は、アメリカのメディアや指導者たちが描写するような台頭する覇権国ではなく、いまや、よろめいて崖っぷちに立たされている。問題は、アメリカの政治家の多くが、依然として、米中間の争いを中国の台頭という視点で組み立てていること、しかも、中国が高まる危機に直面していることを認めつつも、それをアメリカにとって中立的か肯定的な展開とみていることだ。だが真実はその逆だ。よいニュースであるどころか、中国が弱体化して停滞し、崩壊へ向かえば、中国にとってだけでなく、世界にとっても、繁栄する中国以上に危険な存在になる。

  • 高まる社会不満と政治不信
    ゼロコロナ政策の深刻な帰結

    リネッテ・H・オング

    雑誌掲載論文

    薬局の棚は空で、病院での診療は受けられず、火葬場は長蛇の列だ。国からの信頼できる情報もない。突然解除された規制に対する民衆の不満は高まっている。今や、中国におけるコロナウイルスの新規感染者数は1日あたり約100万人で、ウイルスは制御不能な状態にある。習近平が固執してきたゼロコロナ政策からの大転換によって、不穏な雰囲気と政府に対する反発はむしろ高まっている。共産党に対する市民の信頼も失墜しつつある。社会的不満の高まりは、やがて党内エリートの結束も弱めるかもしれない。この間違いが引き起こす政治コストがどのようなものになるか、今のところわからない。しかし、共産党が自ら作り出したこの危機を無傷で乗り切れるとは考えにくい。

  • 防衛力強化に踏み込んだ日本
    高まる脅威と日本の新安全保障戦略

    ジェニファー・リンド

    雑誌掲載論文

    新国家安全保障戦略に即して、軍事予算を大幅に増額し、敵への報復攻撃を可能にする「反撃」能力を整備することで、日本は、これまでの路線から大きな転換を遂げようとしている。この路線を軍国主義とみなすのは、もちろん、間違っている。日本は世界をリードする責任ある地球市民国家だし、その安全保障政策は日米同盟をその基盤に据えている。軍国主義に乗り出すどころか、地域的脅威の高まりを前に、日本は大きなためらいの末に対応している。アメリカとそのパートナーからみれば、日本の新国家安全保障戦略は称賛に値する内容だ。巨大な経済・技術資源を有する平和国家が、地域安全保障への貢献を強化しようと動き出したことを意味する。・・・

  • 追い込まれた中国経済
    もはや低成長を受け入れるしかない

    マイケル・ペティス

    Subscribers Only 公開論文

    中国にとって、投資率が高いことは悪いことではなかった。かつて必要とされていたのはまさしく投資主導型の経済開発モデルだった。問題は不動産とインフラ部門での非生産的投資の時代があまりに長く続いたことだ。15年ほど前から、債務が国内総生産(GDP)成長率を上回るペースで増加し始め、肥大化していった。しかもいまや不動産バブルははじけ、新しい経済モデルへ移行するしかない状況にある。中国が消費(内需)主導型の成長へシフトできるとは考えにくい。投資を急速に減らして成長率の大幅な低下を受け入れるか、問題を先送りし、債務の急増によって路線維持が困難になるまで、現在の投資主導型路線を続けるしかないだろう。だが最終的には、経済成長は急激に減速し、その減速の仕方は、中国、中国共産党、そして世界経済に深刻な影響を与えることになるはずだ。・・・

  • 覚醒した中国民衆
    激動の時代の幕開け

    イアン・ジョンソン

    Subscribers Only 公開論文

    ゼロコロナ政策が刺激した今回の抗議行動を通じて、中国民衆は北京の政策に明確に異を唱えた。普段は(政治に)無関心な人々の間で大きな変化が起きていることは間違いない。習近平は今後5―10年あるいはそれ以上の期間にわたって、市民の不安の高まりだけでなく、危機が促す抗議行動に直面することになるだろう。最高指導者になって以降の10年間、習近平が前向きの改革ではなく、統制策の強化に血道を上げてきたために、いまや普通の人々もこの国が抱える大きな問題に気づき始めている。これが反ゼロコロナデモの意味合いに他ならない。民衆デモは、人々が個人の自由を求めていることだけでなく、中国政治が激動の時代を迎えることを告げている。・・・

  • 強大化する中国の核戦力
    変化するパワーバランスと抑止

    アンドリュー・F・クレピネビッチ

    Subscribers Only 公開論文

    既存の2大核保有国と肩を並べることで、中国は核の三極体制という、きわめて不安定な核システムへのパラダイムシフトを起こしつつある。冷戦期とは違って、核軍拡競争のリスクが高まり、国家が危機に際して核兵器を利用するインセンティブも大きくなる。三つの核大国が競合すれば、二極体制の安定性を高めていた特質の多くが不安定化し、信頼性も低下する。中国がロシア同様に核大国の仲間入りすることをアメリカは阻止できないが、その帰結を緩和するためにできることはある。先ずアメリカは核抑止力を近代化しなければならない。同時に、核のパワーバランスに関する考え方を刷新し、はるかに複雑な戦略環境において抑止力を維持し、核の平和を維持する方法を新たに検証する必要がある。・・・

  • 強大化した北朝鮮の核の脅威
    平壌の核ドクトリンと韓国、東アジア

    スー・ミ・テリー

    Subscribers Only 公開論文

    金正恩は、2022年9月に、核の「先制使用」ドクトリンを公表した。核兵器で米本土を脅かす力をもっているだけではない。北朝鮮の核は、北東アジアで軍拡競争を引き起こす危険がある。金正恩が突きつける脅威ゆえに、これまであり得ないと考えられていた核保有を求める韓国民衆の声は大きくなっている。だが、この流れが形成されれば、韓国が核開発を試みる前に、北朝鮮が韓国を攻撃するリスクは高くなる。日本も核武装に向かうかもしれない。問題は、北朝鮮の脅威が増大するなか、トランプ政権以降のアメリカの安全保障コミットメントが、かつてほど手堅くはないようにみえることだ。実際、北朝鮮の核攻撃によるアメリカの脆弱性が高まるなか、東アジアの同盟国がアメリカの「核の傘」に依存し続けられるかどうか、はっきりしない状況にある。

  • 安倍ビジョンと日本の安全保障
    ナショナリズムと安全保障の間 

    ジェニファー・リンド

    Subscribers Only 公開論文

    リベラル派は、安倍首相(当時)に日本の過去の暗黒部を直視して償うことを求め、保守派は、彼の国の誇りを重視する姿勢、軍事力増強と国際的安全保障活動への参加を強化しようする試みを称賛した。多額の債務を抱え、人口減少によって長期的に不利な経済状況に直面するなかで、日本は今後防衛費を増額させていくことになるだろう。それでも、現状は安倍元首相が掲げたビジョンからはかけ離れているし、実際に彼のビジョンにたどり着けるかどうかも、わからない。現実には、市民も多くの政治家も、中国がますます支配力を強めるアジアで(具体的な対策をとるのではなく)漫然とよい方向に進むことを願っているにすぎない。安倍は、安全保障議論を進めて国を導くことのできる知的枠組みと政治的洞察力を備えた数少ない指導者だった。その死が日本にとって悲劇的な損失であることは誰もが認めている。・・・

Current Issues

  • 現状維持を望む台湾市民
    統一も独立も望まぬ理由

    ネイサン・F・バトー

    雑誌掲載論文

    圧倒的多数の台湾人が、北京に統治されることにはほとんど関心をもっていない。正式な独立宣言を表明したいわけでもない。独立への支持は年々上昇してきたが、半分をゆうに超える人々が「現状の維持」を望んでいる。なぜ統一に人気がないかは明らかだ。中国と統一すれば、台湾は苦労して手に入れてきた政治的自由のほぼすべてを手放さなければならなくなる。台湾は独自の歴史、文化、アイデンティティ、そして民族的プライドをもっている。ほとんどの人にとって、台湾はすでに完全な主権国家であり、中途半端な状態で存在する自治の島ではない。既成事実をあえて正式に宣言して、波風を立てる必要はない。自らの理想と現状との違いは微々たるものであり、争う価値はないと判断している。

  • 重要鉱物とサプライチェーン
    クリーンエネルギーと大国間競争

    モーガン・D・バジリアン、グレゴリー・ブリュー

    雑誌掲載論文

    再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。

  • クリミアを取り戻すべき理由
    ウクライナの立場

    アンドリー・ザゴロドニュク

    雑誌掲載論文

    これまでの軍事的成功をみれば、ウクライナにクリミアを解放する力があるのは明らかだろう。クリミアにはロシアの一部にとどまることを希望する人もいるが、それ以上に、モスクワの支配から逃れたいと考える人が多い。ロシアは、国土を奪い、勢力圏を拡大し、帝国を復活させることに夢中だ。相手に弱さを感じとれば、飛びかかってくる。欧米の一部の専門家が言うように、和平と引き換えにクリミアを差し出してはならない。そんなことをすれば、プーチンの侵略行為に報い、さらなる侵略のインセンティブを与えるだけだ。クリミアがロシアの支配から解放されるまで、ウクライナの安全は期待できず、経済再建もできないだろう。当然、ウクライナは、クリミアを奪還するまで戦いをやめない。

  • 体制変革を求めるイラン民衆
    社会的連帯を助けるには

    エリック・エデルマン、レイ・タキー

    雑誌掲載論文

    これまでのイランの民衆蜂起には社会的まとまりがなかったが、今回は違う。民衆は広く連帯している。農民たちは水不足に、学生たちは自由の欠如に、教員たちは報酬の不足に、そして退職者たちは社会保障の乏しさに不満を抱いてきた。蓄積されてきた人々の怒りと苛立ちを発散する抗議運動に火をつけたのが、ヒジャブの着用方法が不適切だという理由で警察に連行されたマフサ・アムニの死だった。最高指導者ハメネイが創刊した日刊紙でさえ、「インフレ、失業、少雨、環境破壊などの問題が、退職者から教育者、学生に至るまでの人々を抗議に駆り立てている」と指摘している。バイデン政権は、変革を起こすために命を危険にさらしているイランの人々が国を取り戻せるように、できる限りの手を尽くすべきだ。・・・

  • ドローン外交の夜明け
    ドローンがパワーバランスを覆す

    エリック・リン=グリーンバーグ

    雑誌掲載論文

    いまや、イランやトルコなどの新たな軍事サプライヤーがドローン輸出を通じて対外的影響力を強化している。かつて軍事ドローンの生産をほぼ独占していたアメリカは、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)の輸出規制によって、緊密な同盟国への輸出さえ制限されている。この間隙をついて、MTCRに加盟していない中国やイスラエルが積極的にドローンビジネスに参入し、ほとんど規制を気にせずに取引をするようになり、イランやトルコがこれに続いた。ドローンの輸出相手国との関係を深め、ライバルに対抗し、応分の見返りと譲歩を引き出すことで、ドローン外交は、地域の安定を脅かし、アメリカのような伝統的兵器輸出国の影響力を脅かしている。・・・

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