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2019年2月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2019年2月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2019年2月号 目次

アメリカは再生できるか

  • リベラルな秩序・第4幕へ向けて
    ―― アメリカと国際主義の伝統

    ギデオン・ローズ

    雑誌掲載論文

    冷戦後、しばらくすると、欧米社会の多くの人が、秩序は自分にプラスに作用していないと反発し、「私腹を肥やすことに熱心なだけで、機能不全に陥っているエスタブリッシュメント」に舵取りを委ねる理由はないと考えるようになった。そこに協調よりも競争を、自由貿易よりも保護主義を、民主主義よりも権威主義を好ましいと考えるトランプが登場する。それでも、ウィルソンからFDR・トルーマン、そしてブッシュ・クリントンに受け継がれてきたリベラルな秩序は動いている。「自発的で、ルールに支配される国際協調が相互利益をもたらす可能性」についての認識は依然として存在する。秩序の第4局面を切り開くのは容易ではないが、そうできるし、問われているものが非常に大きいだけに、そうしなければならない。重要なのは、支配的影響力をもつ世界の大国が、勝利を目指すのではなく、世界を主導することに向けて誠実にコミットすることだ。

  • 民主主義を救うには
    ―― 歪んだ米経済システムの是正と外交の再生を

    エリザベス・ウォーレン

    雑誌掲載論文

    ワシントンはこの数十年で一握りのエリートにだけ恩恵をもたらす政策をとるようになった。これを批判し「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプの政策も、実際には「トランプファミリーファースト」で、中間層には最低限の配慮しかしていない。一方、中国では、習近平国家主席が権力基盤を固めて「偉大なる復興」を語り、国有企業が共産党幹部に巨万の富を与えている。ロシアのプーチン大統領のパワーも、彼に友好的なオリガークが運営する国営企業との複雑な関係によって支えられている。しかも、これがモデル化されて、トルコやハンガリーを含む各国へと拡散している。このままでは、アメリカを含む、民主社会も、政治腐敗と泥棒政治への道を歩み、民主主義とは名ばかりの国に転落していく恐れがある。流れを覆すには、一握りのエリートだけでなく、すべてのアメリカ人に恩恵をもたらす政策と外交が必要になる。

  • 秩序を脅かす最大の脅威は米国内にある
    ―― 国際公共財を誰が支えるのか

    ジョセフ・ナイ

    Subscribers Only 公開論文

    「アメリカ、ヨーロッパその他におけるポピュリストの台頭は、最近におけるグローバル化の時代の終わりを意味し、1世紀前にグローバル化の時代が終わった後と同様に、今後、われわれは不穏な時代を迎えることになる」。こう考えるのがいまや一般的になっている。しかし、1世紀前とは大きく違って、いまや不穏な事態に陥るのを防ぐさまざまな国内的、国際的なバッファーがある。1930年代のような経済的、地政学的カオスへと陥っていくことはあり得ない。問題は、今後も他のいかなる国にも増して大きな軍事、経済、ソフトパワー上の資源を維持していくとしても、アメリカがその資源を、国際システムを支える公共財の維持のために用いなくなる恐れがあることだ。多くの人はそれを失うまで、リベラルな秩序が安全と繁栄を支えていることに気づかないかもしれない。しかし、それに気づいたときには、すでに手遅れだろう。

  • 民主的安定という かつてない時代の終わり
    ―― 非自由主義的代替モデルとトランプの台頭

    ヤシャ・モンク

    Subscribers Only 公開論文

    われわれは新しい時代へのシフト、つまり、この半世紀にわたってわれわれが当然視するようになった民主的安定という、かつてない時代の終わりの始まりを目の当たりにしているのかもしれない。これまでと違うのは民主主義に対する代替モデルが生まれていることだ。プーチンは、すでに他国が模倣できるような「非自由主義的な民主主義モデル」を確立している。つまり、リベラルな民主主義は、1930年代のファシズム、1950年代の共産主義のような、イデオロギー上のライバルに再び直面している。しかも、トランプ大統領の誕生で、この半世紀で初めて、世界でもっともパワフルな国が、リベラルな民主的価値の促進や世界のリベラルな民主国家を脅威から守ることにコミットしなくなる恐れがある。・・・

  • マフィア国家とアメリカの泥棒政治
    ――政治腐敗という世界的潮流

    サラ・チェイズ

    Subscribers Only 公開論文

    政治腐敗は、弱さや無秩序の結果ではなく、権力者を豊かにするために設計されたシステムがうまく機能している証拠にすぎない。例えば、グアテマラの政権与党は「政党というより暴力団に近い。その役割は国を略奪することにある」。この国では「エリートが犯罪集団であり、国庫に入るお金の流れを牛耳る泥棒政治が横行している」。アメリカも例外ではない。民主主義システムは、政府が公益に供する活動をすることを保証する手段として作られたが、システムが腐敗してしまった民主国家にそれを覆す力が残されているだろうか。ロビイストが爆発的に増えて、企業や産業に影響する法案を産業関係者がまとめるようになった。刑務所や戦争を含む公的サービスも民営化され、政治資金上の歯止めも外された。いまや「合法的」と「汚職ではない」の意味を混同しているアメリカの政府高官と、有権者の意識との間にはズレが生じている。・・・

  • ポストアメリカの世界経済
    ―― リーダーなき秩序の混乱は何を引き起こすか

    アダム・ポーゼン

    Subscribers Only 公開論文

    ドナルド・トランプは、アメリカが築き上げたグローバルな経済秩序に背を向け、経済と国家安全保障の垣根を取り払い、国際的ルールの順守と履行ではなく、二国間で相手を締め付ける路線への明確なコミットメントを示している。世界貿易機関(WTO)の権威を貶め、いまや、主要同盟諸国でさえ、アメリカ抜きの自由貿易合意や投資協定を模索している。すでに各国は貿易やサプライチェーンの流れ、ビジネス関係を変化させつつある。経済政策の政治化が進み、経済領域の対立が軍事対立にエスカレートする危険も高まっている。アメリカが経済秩序から今後も遠ざかったままであれば、世界経済の成長は鈍化し、その先行きは不透明化する。その結果生じる混乱によって、世界の人々の経済的繁栄は、これまでと比べ、政治略奪や紛争に翻弄されることになるだろう。

  • Classic Selection
    21世紀は権威主義的
    資本主義大国の時代になるのか
    ――世界をリードするのはアメリカか、それとも中ロか

    アザル・ガット

    Subscribers Only 公開論文

    現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

オーソドックスを問い直す

  • 形骸化した抑止力
    ―― 多様化する攻撃の領域と能力

    アンドリュー・クレピネビッチ

    雑誌掲載論文

    冷戦後にアメリカが圧倒的な軍事的優位をもっていた時代は終わり、すでにわれわれは、ロシアと中国という二つのリビジョニスト国家と競い合う時代に足を踏み入れている。軍事競争は、宇宙空間、サイバー空間、海底を含む新しい領域に拡大し、新しい軍事能力の登場によって、軍事的なパワーバランスを正確に評定するのは難しくなっている。一方で、認知科学の進化によって、ハイリスクの環境において人間がどのように行動するかに関するこれまでの理解が覆され、抑止を支えてきた理論的支柱が揺るがされている。これらが重なり合うことで、厄介で不可避の結論に行き着く。現在の最大の戦略的課題は大国間抗争の時代への回帰でもなければ、先端兵器の拡散でもない。それは、抑止の形骸化に他ならない。

  • 自由貿易のパラドックス
    ―― 政治学と経済学の衝突

    アラン・ブラインダー

    雑誌掲載論文

    なぜ自由貿易のロジックは受け入れられないのか。たしかに、貿易の勝者が敗者の損失を埋め合わせても、それでも勝者の取り分は残される。しかし、歴代の米政権は、他国の政府同様に、この理屈に近づくようなことは何一つ試みてこなかった。利益と損失を合計すると、経済的には自由貿易を前向きに評価できるが、政治的にはそうではないことも理由の一つだろう。利益と損失はほぼ同じだが、経済的計算と政治的計算では重視するところが違うからだ。さらにエコノミストは人々が経済の何に価値を見いだしているかを、基本的に誤解しているかもしれない。消費者が安価な商品よりも実入りの良い雇用を望んでいるのなら、貿易に関する一般的理論で市民を説得することはできない。

  • 「ディープフェイク」とポスト真実の時代
    ―― 偽情報に対処する方法はあるのか

    ロバート・チェズニー

    雑誌掲載論文

    民主社会は不快な真実を受け入れなくてはならない。ディープフェイクの脅威を克服するには、嘘と付き合う方法を学ぶ必要があるからだ。非常にリアルな出来栄えで、偽物を見破ることが難しいレベルにデジタル加工された音声や動画を意味する「ディープフェイク」の登場によって、自分が言ったことも、したこともないことを、そのようにみせかけることができる。改ざんされた音声や動画が、本物と見分けがつかずに、十分な説得力をもっていれば、そして、それが社会的・政治的にそして国際関係に悪用されればどうなるだろうか。十分な対策は存在しない。人々がプライベートなフィルターバブルに引きこもり、自分の考えに合うものだけを事実とみなす世界に転落しないようにしなければならない。民主社会はレジリエンス(打たれ強さと復元力)を身に付けるしかない状況へ向かっている。

  • 21世紀の核抑止力を考える
    ――抑止力への信頼性を再確立するには

    ケイル・A・リーバー、ダリル・G・プレス

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの核戦力の削減ばかりを求め、敵の軍事基盤を攻撃する核能力を重視しない人々は、核武装国との間で通常(戦力)戦争が一度始まれば抑止力を維持していくのが難しくなることを理解していないようだ。攻撃をすれば間違いなく反撃されると敵が確信しなければ、信頼できる抑止力は形成できない。しかし、核保有国との通常戦争において、現状の核の路線や戦略では信頼できる抑止力は形成できない。アメリカが、潜在的な敵による核攻撃を抑止するには、アメリカの指導者が実際に行使できる、報復攻撃のための選択肢を準備しておくべきだ。

  • 自由貿易は安全保障と平和を強化する
    ―― TPPを捉え直し、実現するには

    ヘザー・ハールバート

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカは歴史的に自由貿易と平和を結びつけ、貿易障壁と戦争を結びつけてきた。大恐慌(とその後の長期不況)そしてヨーロッパにおけるファシズムの成功は、1930年代の関税引き上げと保護主義が大きな要因だったと考えられてきたし、冷戦終結後も、貿易は相手国の社会を変貌させ(市場経済と民主主義を定着させるので)国際的平和の基盤を提供すると考えられてきた。しかし、いまや中国を中心とする貿易枠組みが、欧米の貿易枠組みに取って代わっていくとみなされているというのに、アメリカ人は、貿易のことを、国内の雇用保障、民主的な統治、そして世界の労働者の権利、公衆衛生や環境の保全を脅かす脅威と考えている。経済安全保障と国家安全保障が不可分の形で結びついているというコンセンサスを再構築する必要があるし、安全保障面からも貿易を促進する必要があるという議論を、現在の懸念に配慮したものへと刷新する必要がある。

  • ドイツにおける「ポスト真実」の政治
    ―― 民主主義と憲法の危機

    ゲオルク・ディーツ

    Subscribers Only 公開論文

    問題が起きたことが社会で広く認識されなければ、それを事件とみなし、解決策を考えることもできない。ケムニッツでドイツ人が難民に殺害された後、レイシストたちが移民や見た目の違う人々を口汚く罵り、追い回して「奴らを殺したい」と叫んでいたことについては目撃者がいるだけでなく、ビデオにも収められている。それでも、一部の右派政治家たちは、「そのようなことは起きなかった」と発言し、しかも、こうした政治家たちが責任を問われることもなかった。これまでなら、異なる見解は認められたが、明らかな嘘や間違いが許容されることはなかった。だが、アメリカ同様にドイツでも、そうして真実の時代と政治が終わりつつある。

中国的拡大主義の特質

  • 中国的世界ビジョンの盲点
    ―― グローバルな野心の正体

    オリアナ・スカイラー・マストロ

    雑誌掲載論文

    北京はワシントンに代わって国際システムの頂点に立ちたいとは考えていないし、国際機関をリードしたり、中国の統治システムを世界に広めたりすることにも関心をもっていない。だが、インド太平洋地域からアメリカを締め出そうとしており、その帰結は、中国がアメリカに取って代わろうと試みた場合同様に深刻だ。カネをばらまけばアジア諸国を取り込めるし、国有企業はスパイ活動から北京が得た機密情報も利用できる。しかし中国にはアキレス腱がある。それは、中国が支配的な国家になれば、他の諸国にも恩恵がもたらされるという互恵的なグローバルなビジョンを示していないことだ。それだけに、他国も恩恵を得られる形で世界をリードしてきたアメリカが、自国第一主義に固執し、この包含的アプローチを捨て去るのは間違っている。

  • 北京の宗教政策の意図
    ―― 宗教・政治・社会のハイブリッドイデオロギー

    イアン・ジョンソン

    雑誌掲載論文

    教会の十字架は取り外されて閉鎖され、モスクも解体され、イスラム教徒は収容施設に送られている。しかし、現在の中国は、毛沢東期のように、競合する集団や信仰システムをすべて周辺化するのではなく、むしろ、政府にとって都合のよい民間宗教、仏教、道教などの宗教集団やシステムを取り込もうとしている。要するに、帝国時代と同様に、信仰を許容しつつも、何が正統で何が異端であるかを政府が定義している。人々の信仰にまで立ち入るのは、中国社会が漂流し、シニカルになり、価値を喪失していることを政府も理解しているからだ。宗教と政治が重なり合って社会抗争と暴力を引きおこしているアジアの国と言えば、多くの人はインド、インドネシア、パキスタンを思い浮かべる。だが近い将来に、このリストに中国の国名を見出すことになるかもしれない。

  • 習近平革命の本質と衝撃
    ―― 外交と内政の垣根を取り払った権威主義国家

    エリザベス・エコノミー

    Subscribers Only 公開論文

    1940年代以降、毛沢東は共産革命を主導し、1970年代末以降は鄧小平が経済改革路線と低姿勢外交という第2の革命を通じて「中国経済の奇跡」の基盤を築いた。そしていまや、習近平は「第3の革命」に着手している。鄧小平が開始した「改革と開放プロセス」のペースを鈍化させるか覆し、新中国の原則をグローバルレベルで促進することに習は努めている。対外政策と国内政策の垣根を取り払い、その政治的モデルを輸出し、権威主義志向をもつ外国の指導者たちを支える一方で、国際法の基盤を損なう行動、他の諸国の主権を脅かす行動をとっている。いまや、中国は、非自由主義国家としては初めてリベラルな世界秩序におけるリーダーシップを模索している。

  • 中国のグローバル・リーダーシップという神話
    ―― 中国はグローバル化モデルにはなり得ない

    エリザベス・C・エコノミー

    Subscribers Only 公開論文

    世界のリーダーとしての役割を続けることへのワシントンの意思が不透明化するなか、世界は、たとえ一時的であっても、アメリカに代わってリーダー役を担える国を求めている。習近平がそれに興味を示しているという理由だけで、中国が世界のリーダーとしての条件を満たしていると考える専門家さえいる。すでに中国がグローバルなリーダーシップに必要な資質を身に付けているのは事実だろう。世界第2位の貿易大国で、世界最大の常備軍を擁し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路のような新しい組織や構想を提案するなど、中国はすでに世界のリーダーのように振る舞っている。しかし、その開発モデルがもたらした環境、医療・衛生、その他の社会問題に関して中国モデルは模倣に値するものだろうか。世界における人権侵害について何も語らず、国内の人権問題を長年にわたって認めてこなかった国をグローバルリーダーと呼べるだろうか。・・・

  • 中国における宗教の覚醒
    ―― アイデンティティではなく、コミュニティとしての宗教

    イアン・ジョンソン

    Subscribers Only 公開論文

    経済一辺倒だった社会に、どうすれば社会的一体感や価値を取り戻せるだろうか。この数十年にわたって、中国では宗教的伝統が激しく弾圧され、そこにあるのはむき出しの資本主義だけだった。精神的な支えを求めるのは人間の普遍的な願望だ。中国人も世界の人々と同じように、自分の希望は政府や法律を超えた何かによって支えられていると信じている。現在の中国では、多くの人が社会に疑問を抱き、宗教色の希薄なこの国の世俗的な社会では見つからない答えを求めて宗教や信仰に目を向けている。彼らは、良い生活とはどのようなもので、物質的な豊かさを超える大切なものがあるのかどうかを知りたがっている。問題は、中国では歴史的に、宗教とはアイデンティティではなく、コミュニティに関わるものとみなされてきたこと、しかも、「多様な宗教を背景とするコミュニティ」が近代化の途上で破壊されてしまっていることだ。

  • 物質主義と社会的価値の崩壊
    ―― なぜ中国で宗教が急速に台頭しているか

    ジョン・オズバーグ

    Subscribers Only 公開論文

    1976年に毛沢東が死亡し、文化大革命が終わると、共産党は階級闘争と集団主義のイデオロギーを放棄し、その結果、中国社会に巨大なイデオロギー的空白が出現した。政府が反体制派を弾圧し、宗教団体を抑圧したこともあって、その後の急速な経済成長という環境のなかで、人々は信仰やイデオロギーよりも、現実主義、そして物質主義に浸りきった。だが豊かにはなったが、人々はどこか薄っぺらな時代のなかで絶え間ない不安にさらされている。いまや中国人の多くは自らの人生に意義や価値を見いだそうとし、キリスト教やチベット仏教に帰依する人も多い。問題は、共産党が物質的に快適な生活だけでなく意義のある生活を求める声に対応する準備ができていないことだ。環境危機や経済危機によって安定と成長を維持できなくなれば、共産党は、民衆を管理するのはもちろん、民衆にアピールする手段がほとんどないことに気付くことになる。

  • 一帯一路戦略の挫折
    ―― 拡大する融資と影響力の不均衡

    ブッシュラ・バタイネ、マイケル・ベノン、フランシス・フクヤマ

    Subscribers Only 公開論文

    中国はグローバルな開発金融部門で支配的な地位をすでに確立している。だがこれは、欧米の開発融資機関が、融資を基に進められるプロジェクトが経済・社会・環境に与えるダメージについての厳格な安全基準の受け入れを相手国に求める一方で、中国が外交的影響力を拡大しようと、その間隙を縫って開発融資を増大させた結果に過ぎない。しかも、中国が融資したプロジェクトの多くは、まともな結果を残せてない。すでに一帯一路構想に基づく最大規模の融資の受け手であるアジア諸国の多くは、戦略的にインド、日本、アメリカと再び手を組む路線へシフトしつつある。・・・

  • 中東地政学とイスラムのソフトパワー
    ―― 「政治・外交」に取り込まれた宗教

    ピーター・マンダヴィ

    雑誌掲載論文

    社会主義と汎アラブ主義はすでに思想的に淘汰されているために、イスラム主義と競合できるのはナショナリズムだけだ。しかし、ナショナリズムには国外への訴求力がない。このために、中東各国政府は、国の威信を高め、地域的な国益を促進しようと、外交にイスラム的色彩をまとわせることで「イスラムのソフトパワー」を行使しようとしている。穏健派イスラム、反シーア、反ムスリム同胞団とそれが何であれ、各国は、これらの宗教的スローガンを、国内的な統制のためだけでなく、地域的な影響力拡大のためのツールとして利用している。イスラムを定義して擁護し、自国の目的のための動員手段とするという、イスラムのソフトパワーをめぐる中東での競争は今後ますます熾烈になっていくだろう。

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