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2018.8.1 Wed

一帯一路戦略の挫折?
―― 拡大する政治的融資と影響力の不均衡

中国によるインフラ融資が国際的な影響力を確立することが目的だとしても、その効果はほとんどない。現在、中国から多額の融資を受けている債務国の多くと中国との二国間関係はむしろ冷え込んでいる。もっとも極端な例が、中国が巨額の資金を投入しているスリランカだろう。(国にだけでなく)地方政府も債務から抜け出せなくなり、かなりの反動が起きている。パキスタンは例外だが、一帯一路構想に基づく最大規模の融資の受け手である南アジア諸国は、戦略的にインド、日本、アメリカと再び手を組む路線へシフトしつつある。(バタイネ、ベノン、フクヤマ)

安全保障領域が不確実性にあふれている以上、ワシントンは、中国に対して越えてはならないレッドライン(つまり、そのラインを超えれば対抗措置をとる限界)を示すべきだ。レッドラインを定義するのは容易ではない。過度に強気のレッドラインを示せば、そのルールを相手に強制できないリスクが生まれるし、悪くすると、不必要に中国を刺激し、包囲されているという危機感のなかでナショナリズムがさらに高揚する恐れがある。一方で、ひどく控えめなレッドラインを示せば、中国の冒険主義を助長し、北京は今後も現状を自国に都合のよい方向へと変更しようと試みるだろう。(スミス)

中国の対スリランカ投資プロジェクトは、アジア全域へ中国の貿易ルートを拡大・確保しようとする北京の一帯一路戦略の一環として進められている。だが一連の投資プロジェクトには中国の戦略的思惑が見え隠れしている。実際、スリランカの対中債務が増えていけば、中国は債務の一部を株式に転換して重要プロジェクトを部分的に所有することもでき、この場合、中国はインド洋における新たな戦略拠点を確保できる。中国から距離をとろうとする現在のスリランカ政府も、対中債務トラップにはまり、身動きができない状況に陥っている。(スミス)

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