
2018.10.10 Wed
<10月号本日発売>
デジタル企業の市場独占と消費者の利益、金融危機の忘れ去られた歴史、ほか
グーグル、フェイスブック、アマゾンなどの「デジタルスーパースター企業」は、企業であるとともに、膨大な顧客データを占有する市場でもある。消費者の好みや取引について、運営会社がすべての情報を管理し、そのデータを使って独自の意思決定アシスタントに機械学習をさせている。買い手は「おすすめ」と選択肢の示され方に大きな影響を受ける。こうした市場は、レジリエントで分散化された伝統的市場よりも、計画経済に近い。・・・(ションバーガー、ランゲ)
アメリカでは、2008年の金融危機を引き起こした政府の無謀さと民間の犯罪的行動ばかりが強調され、ヨーロッパの指導者たちは「すべてをアメリカのせい」にしている。実際には、世界的な銀行の取り付け騒ぎを防ぐために流動性を供給した米連邦準備制度の即断がなければ、金融危機はアメリカとヨーロッパの経済をいとも簡単に崩壊に追い込んでいたはずだ。だが、この事実は忘れ去られ、アメリカとヨーロッパの金融上の密接なつながりはいまや解体されつつある。(トゥーズ)
いずれ中国はサイバースペースを思いどおりに作り直し、インターネットの大部分は、中国製ハードウエアを利用して中国製アプリで動くようになるかもしれない。・・・途上国では、中国の「サイバー主権」統治モデルが大きな支持を集めているし、中国は、第5世代モバイル通信システム(5G)の技術標準を確立したいと考えている。もはやワシントンがいかに手を尽くそうと、今後、サイバースペースの主導権がアメリカから中国へシフトしていくのは避けられない。(シーガル)
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デジタル企業の市場独占と消費者の利益
―― 市場の多様性とレジリエンスをともに高めるには2018年10月号 ビクター・メイヤー=ションバーガー オックスフォード大学教授 (インターネット・ガバナンス・規制)、 トーマス・ランゲ 独ブランドアインズ誌テクノロジー担当記者
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金融危機の忘れ去られた歴史
―― そして、いかに米欧の絆は失われたか2018年10月号 アダム・トゥーズ コロンビア大学教授(歴史学)
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次なるサイバー超大国 中国
―― 主導権はアメリカから中国へ2018年10月号 アダム・シーガル 米外交問題評議会 新興技術・国家安全保障研究 プログラム ディレクター
2018年10月号プレビュー
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イラン制裁が同盟関係を揺るがす
―― 同盟関係の動揺と米中関係の行方イランに対するトランプの強硬なアプローチは、経済制裁を求めるアメリカの圧力から自国の企業をどのようにして守るかについて、欧州連合(EU)内、そして世界での長期的議論を喚起することになるかもしれない。・・・イラン制裁が実現しても、その後、ワシントンは同盟関係の修復に取り組まざるを得なくなるだろう。
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新アラブ秩序を規定する恐れと野望
―― 安全保障のジレンマに支配された中東いまやほぼすべてのアラブ国家は「恐れ」と「野望」をもっている。国内での民衆蜂起、イランパワーの拡大、アメリカの中東からのディスエンゲージメント(で引き起こされる事態)に対する「恐れ」をもつ一方で、弱体化した国と国際的な混乱につけ込みたいという各国の「野望」が、破壊的な紛争への関与へと走らせ、地域全体をカオスに巻き込みかねない状況にある。
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引き裂かれたヨーロッパ
―― 多数派のアイデンティティ危機ヨーロッパの政治的主流派が移民受け入れを支持し、嫌がる市民にこの不人気な政策を押し付けようとしたことが、右派ポピュリストに力を与えた。しかし、本当の問題は、欧米の民族的多数派である白人が、移民流入による大きな社会的変化を前に、国と自分たちの共同体のつながりが希薄化していると感じ、割り切れぬ思いを抱いていることにある。・・・