1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

政治・文化・社会に関する論文

グローバル統治の民主化を促進するには

2001年8月号

ジョセフ・S・ナイ  ハーバード大学教授

グローバル化に対する政治的反発が、一足飛びに保護主義的な政策として結実するならば、世界の経済的統合の流れは逆流し始め、その一方で、グローバル化とともに生じた(トランスナショナルな)問題が放置されることになる。われわれは、すでに存在するグローバル統治のための枠組みを拡大して状況に対応していくべきであり、それには、とかく閉鎖的と見なされがちな国際機構側の説明責任と透明性を強化していく必要がある。

レビュー・エッセイ
キッシンジャーの思想と保守主義の本懐

2001年7月号

マイケル・マンデルバーム ジョンズ・ホプキンス大学

キッシンジャーは人道的介入策を突き動かす動機には共感を示し、そうした行動を求めるアメリカの経験に深く根ざす価値も理解している。しかし彼は、これまでの人道介入政策の実施のされ方ゆえに、この政策の背後にある大義名分や価値がむしろ損なわれていると指摘する。また彼は、アジアと中東という、平和、繁栄、民主主義がまだ広く確実には根づいていない二つの重要な地域に対しては、アメリカの政策決定者は保守的な「パワー・バランス」(勢力均衡)路線を目指すべきで、(内側の改革を強硬に求めるべきではない)と指摘している。

グローバル化の中の国民国家の役割

2001年6月号

マーティン・ウォルフ ファイナンシャル・タイムズ主席経済論説委員

グローバリゼーションは、まさにその名が示すごとく、国民国家の天敵とならざるを得ないのだろうか。統合へと向かう流れが不可避の宿命ではなく意図的な選択であるとすれば、国家を無能と考えることはできないだろう。国家の潜在力はその選択にこそあるからだ。グローバリゼーションによって、国家は意図する活動や求められる活動を遂行する能力、特に課税、所得再分配のための公共支出、およびマクロ経済政策といった重要分野に関わる能力を失うとよく言われる。しかし、この認識は正しいと言えるのだろうか。

日米企業の再逆転の真相

2001年6月号

クレイトン・クリステンセン ハーバード大学ビジネススクール教授  トーマス・クレイグ モニター・グループ ディレクター  スチュアート・ハート ノースカロライナ大学ビジネススクール教授

日本企業の経営陣は経営の金科玉条に従って、消費者のニーズに敏感に対応し、最大の利益を上げる新製品やサービスに集中的な投資を行った。だが、もはやそれだけでは成長は望めない。企業が市場の最上位に達し、成長を持続させるのに必要な市場規模を見いだせなくなると、痛みを伴う合併がゲームの「上がり」として待ち受けている。アメリカ経済が近年好調なのは、日本式経営の信用が落ちてアメリカ式経営のパラダイムが急に優勢になったからではなく、アメリカでは日本と違って既存市場へのディスラプティブ(下からの挑戦)・サイクルが繰り返されているからだ。

天安門ペーパー再考

2001年6月号

ルシアン・W・パイ マサチューセッツ工科大学名誉教授

「重要な決定はみな私が承諾しなければならなかった。私はあまりに独りで重責を担いすぎた。これは、共産党にとっても、国にとってもよいことではない。私は、引退を考えるべきだ。しかし、いまこの瞬間に身を引くことはできない。目の前にある問題を放置したままで、どうして引退などできようか」(戒厳令直前の鄧小平の言葉)

いまや国際政治を突き動かしているのは経済競争であり、当然、重要な経済資産や資源へのアクセスをめぐる競争も激化している。さらにやっかいなのは、重要な資源の多くが、ライバルたちが競い合っている地域、あるいは恒常的に不安定な地域に存在することだ。世界の資源動向とそれに関連する政治・地政学的現象は、政策決定者が世界の大枠での安全保障問題の今後を検証する際の優れた枠組みとなるだろう。

米外交問題評議会ミーティング
オルブライトVS.キッシンジャー
――米中・北朝鮮、ミサイル防衛、人道的介入の将来

2001年6月号

ジョージ・シュルツ ウォーレン・クリストファー  マドレーン・オルブライト ヘンリー・A・キッシンジャー

私が懸念しているのは、偵察機接触事故が、権力移行期に突入した中国において強硬派の立場を有利にしはしないか、一方でわれわれが中国を新たな敵対勢力と決めつける動きにつながりはしないかということだ。(オルブライト)

われわれがなすべきこと、われわれにできること、われわれが望むこと、そしてわれわれにはできないこと、これらを区別して理解しなければならないし、国益概念にはこれらのすべてがかかわってくる。(キッシンジャー)

アメリカだけでなく、ヨーロッパも、京都議定書に盛り込まれた削減目標を全うできないだろう。各国が京都議定書を順守できるはずはなく、当然、議定書はすでに死滅しているも同然というのが揺るぎない事実だ。京都合意に代わる多国間対応枠組みを再構築する必要があるが、アメリカはその前に、排出規制に向けた本格的な政策を国内で導入すべきである。

バイオテロリズムの悪夢

2001年5月号

ローリー・ギャレット ニュースデイ紙科学・医学担当記者

テロリストが生物兵器を波状的に連続使用したり、最初から複数の致死的病原菌を組み合わせてテロ攻撃を行えば、いかにすぐれた予防接種プログラムでも状況に対応できない。軍事防衛、危険物質防衛チーム、ハイテクセンサーのどれもが深刻な欠点を抱えているため、バイオテロに対する最も重要な対応ができるのは、軍でも警察でもなく、医師、疫学専門家、救急搬送者、看護婦、そして公衆衛生局である。軍や警察主導型の現在のバイオテロ対策枠組みが、より公衆衛生部門を重視したものへと変化しない限り、バイオテロ対策はおそらく失敗する。

米外交問題評議会ミーティング
キッシンジャーが読み解く新世界
――元大統領補佐官が語る新政権の課題

2001年5月号

リチャード・V・アレン、ロバート・C・マクファーレン  

アジアは外交的にはグローバル・システムの一部を形成しているが、戦略的には各国が互いに相手国を潜在的な敵対勢力と見なしていた十九世紀のヨーロッパと同じメカニズムでいまも動いている。だが、最大の問題は特定の一国がアジアを支配しようと試みることで、かつてそのような試みをした日本とアメリカは戦争をした。しかし、そのような試みが具体化していない現状では、中国を含むいかなる国も敵対国と見なすべきではない。(キッシンジャー)

Page Top