
「対話と交流を重ね、変化が起こるのを辛抱強く待つ」という、かつての対北朝鮮エンゲージメント政策はすでに放棄されている。脅威を醸成し、それをカードに利益を引き出すという平壌のやり方をブッシュ政権が今後容認することはあり得ない。強硬なエンゲージメント政策の本質は、関与策を通じて、平壌の敵意に満ちた意図を暴き、それが白日の下にさらされた場合には強硬策をとり、半島の統一を前提に、東アジアの戦略環境を整備していくことにある。
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「対話と交流を重ね、変化が起こるのを辛抱強く待つ」という、かつての対北朝鮮エンゲージメント政策はすでに放棄されている。脅威を醸成し、それをカードに利益を引き出すという平壌のやり方をブッシュ政権が今後容認することはあり得ない。強硬なエンゲージメント政策の本質は、関与策を通じて、平壌の敵意に満ちた意図を暴き、それが白日の下にさらされた場合には強硬策をとり、半島の統一を前提に、東アジアの戦略環境を整備していくことにある。
2002年5月号
数多くの暫定措置がつくりだした悪循環の中、イスラエルは、テロ攻撃を受けている間は交渉できないと信じ、パレスチナ側は、攻撃しなければイスラエルは交渉に応じないと恐れている。殺し合いを確実に食い止める手段はただ一つ、問題の本質を解決し、紛争そのものを具体的かつ公正に解決するような最終合意案を両陣営に示し、これを国際的監視の下で実現していくことだ。課題は、イスラエルとパレスチナの意向に沿うように和解努力を調整することではない。むしろ重要なのは、双方の指導者の能力の限界や意図によって左右されない和平の枠組みをつくることだ。
2002年5月号
パレスチナの子どもたちは、幼いころから民族主義と復讐の責務を聞かされて育ち、イスラエルに対する反発は世代を超えて社会に浸透している。貧困の中で困難な生活を余儀なくされている占領地の人々にとって、抵抗運動を繰り広げることこそ生活の中で最も没頭できることなのかもしれない。「かつてのインティファーダの英雄たちの時代は去り、今や幅を利かせているのは、ファタハの腐敗とは無縁な、髭を伸ばしたイスラムの戦士たちである」。
2002年5月号
中央アジア各国の政治的抑圧体制ゆえにイスラム主義運動が過激化し、民衆を過激派への支持へと向かわせている。これが秩序の不安定化を招き、さらに、穴だらけの国境線を越えて兵器や過激派が自由に移動していることが状況をさらに深刻にしている。過酷な抑圧体制を敷くウズベキスタンを、ブッシュ政権が、対テロ戦争との関連で中央アジアの覇権国に仕立て上げれば、地域秩序はますます不安定化する。イスラム原理主義の脅威をもっぱら軍事問題としてとらえれば、水資源をめぐる紛争、麻薬、難民、武器の流出入など、テロを招いた根本的問題への対応が放置され、不安定な状態が続くことになるからだ。
2002年5月号
アメリカの正義や価値観をいかに訴えかけても、イスラム世界の反米感情がなくなることはない。政治的失策への市民の不満の矛先を、自国政府ではなく、アメリカに向かわせてガス抜きさせるという、アラブ社会の安全弁としての国営メディアが存在するからだ。グローバル社会にイスラムの人々が参加できるようにするには、まずイスラム社会の市民が情報へのアクセスと表現の自由を享受できるようにし、女性やマイノリティーに発言権を認めなければならない。イスラム社会が表現の自由を獲得して初めて、テロが生まれた暗闇に日が差し込むようになる。
2002年4月号
カスピ海周辺のエネルギー資源を間違いなく地域市場、国際市場へ搬出するには、ロシアのパイプライン輸送に依存している現状を見直して、多層的なパイプライン建設を実現する必要がある。膨大な資源を有するカスピ海周辺諸国が、ロシアやイランの力を借りずにエネルギー資源とパイプラインを欧米と共同開発することこそ、アメリカと世界全体を潤すだけでなく、カスピ海周辺諸国にとっても自国の安全と繁栄を確保する最も確実な道であり、ブッシュ政権はこの方向での政策面の見直しを早急に行うべきだ。
2002年3月号
ロシアの石油企業によるロシア、中央アジア地域での開発が実現すれば、今後4年のうちに旧ソビエト諸国からの石油輸出の合計は、サウジアラビアの輸出にほぼ匹敵するものになる。九月十一日が、ロシア、アメリカ、石油輸出国機構(OPEC)にとって、全く新たな地政学状況を作りだしていることを、ロシアは、政治・経済的に立ち直る好機と捉えている。問題は、サウジアラビアが、ロシアの攻勢を阻止できるほどの、徹底した価格戦争を戦う余力があるかどうかだ。
2002年4月号
対テロ作戦をめぐっては、各国の国内法による取り締まりから情報活動の共有にいたるまで、われわれは同盟国、友好国の国際的協力を必要としており、孤立も単独行動主義もアメリカの選択肢とはなり得ない。単独行動主義を経て、やっと開かれた国際協調とアメリカのリーダーシップというドアをアメリカ政府が突然閉ざしたり、何度も開けたり閉めたりすれば、今後数十年にわたって秩序を規定するであろう力学をうまく形作れなくなってしまう。現在の機会を秩序の長期的安定へと向かわせるには、国際協調を基盤とする世界へのエンゲージメントを堅持しなくてならない。
以下は、二〇〇二年二月四日にワシントンで開かれた、米外交問題評議会主催のミーティング・プログラムでのジョセフ・バイデン米上院外交委員長の演説からの要約・抜粋。
2002年4月号
ワシントンはこれまで、社会変革によるカオスか、状況を放置したままでの腐敗の継続かという二者択一のなか、中東の腐敗した政権を支援することを選択してきた。だが、腐敗したサウジアラビア、エジプトの政権を支援した結果、アルカイダを誕生させるような社会土壌を育んでしまった。もはや同じ過ちを繰り返してはならない。ワシントンは新たな取り決めの一部として、中東諸国での政治・経済改革を強く求めていくべきである。
2002年3月号
ブッシュ政権は時にこれを逆さにして、「そうせざるを得ない時は他国とともに、可能であれば単独で」事を運んでいる。世界には「貧困と無知、疾病と環境破壊、腐敗と圧政」という「もう一つの悪の枢軸」が存在する。われわれが現在直面しているのは、膨大な規模の民衆が感じている幾重もの悲しみからほとばしる怒りの表れなのだ。重要なのは、アメリカがテロリストに対して毅然たる態度をとるだけでなく、経済的機会と民主的自由を支持しなければならない、ということだ。