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政治・文化・社会に関する論文

ロウハニはイランのゴルバチョフになれるか

2014年1月号

スティーブン・コトキン プリンストン大学歴史学教授

当時のミハイル・ゴルバチョフは、ソビエトで過激な改革を実施しているとも、していないとも思わせる曖昧な発言をしていたために、専門家もソビエトで何が起きているかを理解できなかった。実際には、ゴルバチョフは「共産党独裁体制を終わらせる」という意図はもっていなかった。むしろ共産党体制の終焉への流れは、彼が、市民団体の組織化を認め、検閲を緩め、自由選挙を導入したことによって作り出された。つまり、イランの穏健派指導者ロウハニが抜本的な改革ではなく、政治や社会に関わってくる名ばかりの改革を表明したときこそ、われわれは注目する必要がある。そうした改革は、改革のアジェンダが想定する以上の社会・経済的流れ、政治的変化を呼び込み、ロウハニ自身管理できないような流れを作り出す可能性がある。

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

暴かれたアメリカの偽善
―― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

2013年12月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
マーサ・フィネモアー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学、国際関係論)

E・スノーデンがリークした情報によって情報源や情報収集の手法が明るみに出たとはいえ、予想外のものは何も出てきていない。専門家の多くは、かねて「アメリカは中国にサイバー攻撃をし、ヨーロッパの政府機関を盗聴し、世界のインターネット・コミュニケーションを監視している」と考えてきた。リークが引き起こしたより深刻な問題は、アメリカのダブルスタンダードが明らかになり、理念と原則の国としてのアメリカのイメージを失墜させたことだ。アメリカは、自分たちが唱道する価値を一貫して擁護し、順守してきたわけではなかった。この矛盾を前に、他の諸国は「アメリカが主導する秩序は正統性を欠いている」と判断するかもしれない。ワシントンは(米情報機関の行動に対する)厳格な監視体制を導入し、政策に関する論争をもっと民主的に進めるべきだろう。安易な偽善(とダブルスタンダード)の時代はすでに終わっている。

北朝鮮は経済改革を模索している
―― 崩壊か経済改革か

2013年8月号

ジョン・デルーリー 延世大学国際関係大学院准教授

北朝鮮は2030年までに崩壊すると予測する専門家もいるが、平壌はすでに中国流の経済改革導入への道を歩みつつあるとみなすこともできる。これを理解するには、中国はどのような手順で改革へと歩を進めたかを考える必要がある。1960年代に核兵器を獲得した北京は、1970年代に対米デタントによって体制の安定と安全を確保した上で、経済改革路線を優先させるようになった。つまり、今日の北朝鮮は1970年の中国同様に、経済改革に着手する前に、まずワシントンから体制の安全に関する保証を取り付けたいと考えている段階にある。金正恩は「経済建設」の次の局面に進みたいと考えていると示唆し、4月1日には実務派テクノクラートの朴奉珠を首相に登用して、経済成長の舵取りを委ねている。朴奉珠が北朝鮮の首相に抜擢されたこと自体、金正恩が経済を重視し、改革志向を持っていることの現れとみなせる。平壌の穏健派に力を与えるためにも、アメリカは強硬策ではなく、北朝鮮の安全を保証し、経済改革にむけた環境整備に手を貸すべきだ。体制を揺さぶり、崩壊を待つ路線を続ければ、偶発事件によって次なる朝鮮戦争が誘発される恐れがある。

日本を抑え込む「シルバー民主主義」
―― 日本が変われない本当の理由

2013年8月号

アレクサンドラ・ハーニー 前外交問題評議会インターナショナルフェロー

日本社会は急速に高齢化している。そして高齢者たちには、政治家が現行の社会保障システムに手をつけるのを認めるつもりはない。だが、高齢社会に派生する問題に向き合うのを先送りすればするほど、その経済コストは大きくなる。これが日本の現実だ。事実、政府の年金財源は2032―2038年の間に枯渇するという試算もある。だが、年齢層からみた多数派で、投票率も高い高齢者集団にアピールするようなキャンペーンを実施すれば、政治家はもっとも忠誠度の高い支持基盤を手に入れることができる。こうして、高齢社会が日本経済にどのようなコストを与えることになるとしても、「高齢者に優しい政策」が最優先とされている。高齢層の有権者の支持を失うことに対する恐怖が、政治家が長期的に国の未来を考えることを妨げ、これが若者に対する重荷をさらに大きくしている。1票の格差同様に、世代間の不均衡問題に目を向け、もっと若者の意見を政治に反映させる必要がある。そうしない限り、日本の経済未来は今後も暗いままだろう。

E・スノーデン問題を法的に検証する
―― 彼の行動は内部告発とはみなせない

2013年8月号

スティーブン・I・ブラデック アメリカン大学教授

ロシアへの一時亡命が認められたエドワード・スノーデンが、アメリカに送還されるかどうか。現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、これは、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。仮に告発の意図があったとしても、スノーデンは政府が所有する情報を盗んだだけでなく、告発手続きの相手であるNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、その情報を漏らすべきではない外国メディアに提供することで、手続きを踏み外している。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンはアメリカの内部告発者保護法の適用対象にはならない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常に大きな変数が絡んでくる。陪審制度の大きな機能の一つは、政府と検察の権力をチェックすることにある。仮に送還が実現して、裁判になるとして、スノーデンの運命を左右する12人の陪審員の一部は彼に同情しているかもしれない。・・・外国情報監視法(FISA)によって、政府による情報活動は適切な監督下におかれ、説明責任も果たされているという米政府の認識には問題がある。どのような結果になるにせよ、法律がテクノロジーの進化についていけていないのは間違いない。デジタル時代のプライバシーが何であるかについて、われわれはもう一度考える必要がある。

世俗化する社会とキリスト教一致運動
―― ベネディクト16世の遺産と新教皇

2013年7月号

ビクター・ゲタン
ナショナル・カトリック・レジスター紙記者

キリスト教は11世紀に東方教会と西方カトリック教会に分裂し、16世紀の宗教改革(プロテスタント運動)でさらに分裂した。だが21世紀の現在、キリスト教はこうした過去の亀裂を修復しつつある。2013年に教皇を退任したベネディクト16世は「キリスト教の一致」を強く模索し、2012年の司教会議に招いたゲストの中にはロシア正教会のイラリオン渉外局長、トルコ正教会のバルトロメオ1世がいた。そして、ここで演説を行ったのは英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教だった。この流れは、先進国における世俗化と物質主義の波によってキリスト教の存続が脅かされているという危機感を各派が共有していることによって形作られている。「キリストは神であり救い主であり、隣人を愛することは信仰上の義務である」という信念に比べれば、これまでキリスト教の一致を妨げてきた教理上の違いなど取るに足らないという認識が高まりつつある。

北極圏の未来
――北極圏サークルの立ち上げを

2013年6月号

スピーカー オラフル・ラグナル・グリムソン  アイスランド大統領、 プレサイダー スコット・G・ボルガーソン  前外交問題評議会シニア・フェロー

アイスランドの氷河はヨーロッパ最大の規模をもっているが、この氷河の後退は地球温暖化がたんなる理論ではなく、現実に起きていること、それが大きな変化をもたらしていることを物語っている。海面の上昇によって、世界の都市と経済はいずれ大きなダメージを受けると思われる。中国の研究者たちは、・・・グリーンランドや南極の氷床の溶解による海面上昇によって、上海を始めとする多くの都市が水没するというシナリオを想定している。・・・われわれは北極評議会を越えたより大きなプレイヤーを内包するフォーラム、北極圏サークルも立ち上げようと試みている。これは、北極圏諸国だけでなく、アジアやヨーロッパ諸国の科学者、活動家、企業、政治指導者たちが参加するフォーラムだ。

イラン大統領選挙の政治地図
――ラフサンジャニ・ショックと次期大統領ポスト

2013年6月号

ファリデ・ファーヒ
ハワイ大学教授(非常勤)

保守派候補のなかでもっとも人気があるのはテヘラン市長のモハンマド・バゲル・ガリバフだと考えられている。保守系の候補者たちは、特定の段階になれば、もっとも人気のある候補を残して、他の二人は選挙戦から撤退することにすでに合意している。一方、かつて核問題の交渉を務めた中道派のハッサン・ロウハニも独立系候補として出馬している。ラフサンジャニが出馬を認められなかった以上、ロウハニは、自分を保守派候補に対する代替策として位置づけたいと考えている。だがロウハニはハタミ大統領の第1副大統領を務めたモハンマド・レザ・アレフとライバル関係にある。彼らは先ず候補者を、一人か二人に絞ってまとまることに合意できるかどうかを決める必要がある。・・・ハメネイが、保守派候補が好ましいと考えているのは明らかだが、最高指導者の意中の候補がはっきりしないために、誰が選挙で勝利するのか、ますます分からなくなっている。

ウラジーミル・プーチンはシリア紛争とチェチェン紛争を同列にとらえ、シリア紛争のことを「国家を標的にし(国家解体を狙う)スンニ派の過激主義勢力の、数十年におよぶ抗争の最近の戦場にすぎない」とみている。アフガン、チェチェン、数多くのアラブ国家を引き裂いてきたスンニ派の過激主義勢力と国家の戦いがシリアで起きているにすぎない、とプーチンは考えている。だからこそ、彼は「自分がチェチェンで成し遂げたことをアサドがシリアで再現し、反体制派の背骨を折ること」を期待し、シリアに対する国際介入に反対してきた。仮にプーチンがアサドを見限るとしても、その前に、「体制崩壊に伴う混乱の責任を誰がとるのか」という問いへの答を知りたいと考えるはずだ。誰がスンニ派の強大化を抑え込むのか、誰が北カフカスその他のロシア地域に過激派が入り込まないようにするのか。そして、誰が、シリアの化学兵器の安全を確保するのか。プーチンは、アメリカや国際コミュニティがアサド後のシリアに安定を提供できるとはみていない。だからこそ、シリアという破綻途上国を支援し続けている。

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