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政治・文化・社会に関する論文

「ジョージ・ワシントンは適度なアルコールを与えてからでなければ、兵士たちを戦場に向かわせることはなかった」。イギリス軍の要塞に突入し、独立戦争の流れを変えたイーサン・アレンも、「いつもながら、リンゴ酒とラムのカクテルを燃料にしていた」。メイフラワー号の航海から独立戦争そして南北戦争にいたるまで、建国期のアメリカの歴史の節目には必ずアルコールが登場する。しかし、労働の節目で軽く一杯やることが農村コミュニティで受け入れられていた時代から、物理的な間違いが大きなコストを伴う工場労働の時代に移ると、飲酒に対する態度は一変する。1840年代までには禁酒運動が起きるようになり、1920年からの13年間にわたって現実に禁酒法が施行された。多くの意味で、飲酒容認派と禁酒派間の緊張、酒場の生活を支持する人々と家庭の生活を支持する人々の緊張は、アメリカ国家を形作る要因の一つだった。

中国は貿易戦争をどうみているか
―― 自らを追い込んだトランプの強硬策

2019年8月号

アンドリュー・J・ネーサン コロンビア大学教授(政治学)

ナバロとライトハイザーは、「世界経済におけるアメリカの主導的役割を維持するには、中国の経済モデルを抜本的に変化させるしかない」という立場をトランプに受け入れさせ、強硬策に出た。しかし、貿易戦争は、ワシントンが考えるほど大きな痛みを中国に強いていないようだ。2019年に入って最初の5カ月で、中国の対米輸出は4・8%減少したが、同時期に、中国にとって最大の貿易相手である欧州連合(EU)への輸出は14・2%上昇し、EUからの輸入も8・3%上昇している。一方、アメリカの対中輸出は2019年に入って以降の最初の5カ月で26%以上の落ち込みをみせた。農業を含む、数多くの米セクターのダメージはかなりのレベルに達している。有利な状況を手にしているのは中国であり、北京に妥協するつもりはない。貿易戦争、米中経済の切り離しのあるなしに関わらず、中国はアメリカからの経済独立コースを着実に歩み続けている。

人口動態と未来の地政学
―― 同盟国の衰退と新パートナーの模索

2019年7月号

ニコラス・エバースタット アメリカンエンタープライズ研究所 政治経済担当議長

大国への台頭を遂げたものの、深刻な人口動態問題を抱え込みつつある中国、人口動態上の優位をもちながらも、さまざまな問題に足をとられるアメリカ。そして、人口動態上の大きな衰退途上にある日本とヨーロッパ。ここからどのような地政学の未来が導き出されるだろうか。ヨーロッパと日本の出生率は人口置換水準を下回り、生産年齢人口はかなり前から減少し始めている。ヨーロッパと東アジアにおけるアメリカの同盟国は今後数十年で自国の防衛コストを負担する意思も能力も失っていくだろう。一方、その多くがアメリカの同盟国やパートナーになるポテンシャルとポジティブな人口トレンドをもつインドネシア、フィリピン、そしてインドが台頭しつつある。国際秩序の未来が、若く、成長する途上世界における民主国家の立場に左右されることを認識し、ワシントンはグローバル戦略を見直す必要がある。・・・

CFR Events
米中貿易戦争は続く
―― その政治的、経済的意味合い

2019年7月

エドワード・オールデン 米外交問題評議会シニアフェロー(経済・貿易担当)
エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)
マイルス・カーラー 米外交問題評議会シニアフェロー(グローバル統治担当)

最近の大統領のツイートは、米企業が中国を離れて、別の場所、つまり、他のアジア諸国、あるいは国内に工場を移して、アメリカに部品その他を供給させる計画を米政権がもっていることを思わせる。ファーウェイに対する攻撃も、多くの意味で米中経済の切り離しを意図している。少なくとも現状では、大統領は米中切り離し派の立場に耳を傾けている。(E・オールデン)

すべては目的が何であるか、双方が勝利をどのように定義しているか、時間枠をどうみているかに左右される。アメリカ側にも中国側にも何をもって勝利とみなすかについてのコンセンサスはない。実際、より多くの米製品の輸入、より大きな市場アクセス、IT技術の保護で由とする立場から、米中経済の切り離しを求める立場にいたるまで、アメリカ側にはさまざまな意見がある。(E・エコノミー)

トランプの撤退宣言とシリアの現実
―― 介入目的を下方修正するしかない

2019年6月号

ブレット・マクガーク 前米大統領特使(対イスラム国有志連合担当)

2018年12月、トルコのエルドアン大統領との電話会談後、トランプ米大統領はシリアからの米軍撤退を命じるという驚くべき決定を下し、アメリカのシリア戦略を根底から覆した。現在の課題は、次に何が起きるか、そして今後数カ月間で現地の米軍プレゼンスが削減されていくとしても、シリアにおける利益を守るために何ができるかを特定することだ。バッシャール・アサドが退陣することも、イランがシリアからいなくなることもあり得ないし、トルコは厄介なプレイヤーのままだろう。一方で現在のシリアにおける主要なパワーブローカーがロシアであることをワシントンは認識しなければならない。幸い、米ロの利益には重なり合う部分がある。ともにシリアの領土保全を望み、イスラム国勢力やアルカイダの聖域を誕生させてはならないと考え、イスラエルとの緊密な関係をもっている。・・・

独裁者と欧米コンサルタント企業
―― その功罪をどう判断するか

2019年6月号

カルバート・W・ジョーンズ  メリーランド大学 カレッジパーク校行政学部助教

中国からサウジアラビアまで、権威主義体制の指導者たちは、欧米諸国のトップクラスのコンサルティング企業、大学、シンクタンクの専門家への依存を高めている。2018年、ニューヨーク・タイムズ紙が、マッキンゼーが抑圧的で政治腐敗にまみれた体制との顧問業務を交わしていることを批判的に報道したことで、これが社会問題化した。欧米の専門家が中国やサウジのような国の独裁者にアドバイスを与えるのは問題があると考える人もいるし、そのアドバイスが、権威主義体制による反体制派の抑圧や人権侵害を助長する場合はなおさらだろう。但し、コンサルタントたちは、一部の批判派が考えているほどは権威主義体制を支えてはいない。実際には、国際的な専門家の存在が独裁者の国内における支持を低下させ、体制を弱体化させて、正統性を低下させている可能性もある。・・・

中ロパートナーシップの高まる脅威
―― 手遅れになる前に行動を起こせ

2019年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター  シニアフェロー
デビッド・シュルマン  国際共和研究所 シニアフェロー

中ロのパートナーシップは不自然だし、その見込みはあまりないと考えるアメリカの専門家は多い。しかし、この立場はすでに現実によって淘汰されている。両国は政府のあらゆるレベルでの交流を深め、投資、交通機関、スペースナビゲーション、軍事転用可能なテクノロジー開発などの領域で緊密に連携している。ワシントンに対抗し、グローバル統治を変化させ、リベラルな秩序を支える価値を問題にしていくことでも両国は立場を共有している。問題は、中ロパートナーシップをどうみるかをめぐって、欧米の専門家のコンセンサスがないために、ワシントンの政策決定者が、中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで、中ロ関係の本質について議論し続けるリスクを冒していることだ。

ウクライナ大統領になったコメディアン
―― なぜ勝利し、何が待ち受けているか

2019年6月号

ピーター・ディッキンソン アトランティックカウンシル 非常勤フェロー

選挙を経て、ロシアとの戦争のただ中にある、広大で変化の激しい国の最高責任者となったコメディアンは、今後、世界におけるウクライナの地位を再定義していかなければならない。ウォロディミル・ゼレンスキーが政治腐敗に反対してきたことは誰もが知っている。だが、そのためには、政府機関の人材を全面的に刷新し、政治階級に認められている刑事免責を廃止しなければならない。彼のクレデンシャルを試す最大の試金石は、彼の政治的パトロンとみられるコロイモスキーとの関係をどうするかだろう。彼が大統領選挙に出馬した目的は、コロイモスキーのためにポロシェンコに報復することにあると批判する者もいる。いずれにせよ、この国の課題に直面し始めれば、彼は、台本通りにこなせばよかったTVスター時代を懐かしむことになるだろう。

ポストメルケルで流動化するドイツ政治
―― クランプカレンバウアーの課題

2019年6月号

ソーステン・ベナー グローバル公共政策研究所(GPPi) ディレクター

「2021年まで首相は続投するが、CDUの党首ポストは辞任する」。2018年にメルケルがこう表明して以降、ドイツ政治は漂流している。2015年、難民を受け入れるとメルケルが表明したことをきっかけに、反移民政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がCDU右派を脅かす主要な政治勢力として台頭し、移民を受け入れるか受け入れないかという新たな対立軸が、ドイツ政治を支配するようになった。後任の党首に選ばれたのはCDU幹事長でザールラント州首相を務めたアンネグレート・クランプカレンバウアー。彼女のリーダーシップで世論の関心を移民から「将来のドイツの経済的成功に向けた基礎作り」へと向かわせられるかどうかが今後の鍵を握る。・・・

米外交と同盟関係を支える価値
―― アメリカ・ファーストのコストは何を意味するか

2019年6月号

コーリー・シャーキー 英国際戦略研究所 副局長

トランプは無遠慮かつしばしば下品な表現で米外交の伝統を批判し、長年にわたって維持されてきた原則に対する疑問をうまく描き出した。だが、既にトランプ外交は米主導の秩序を支えてきた価値と原則を解体すれば、米戦略がどのような事態に陥るかを白日の下にさらし、逆にそうした価値や原則の重要性を立証している。「アメリカは絶望的なまでにつけ込まれ、過剰な任務を抱え込まされている」と考えるのを止め、多くの国が恩恵を手にできる結果を確保することで、目的を実現すべきであり、そうすれば、強制の必要性は低下し、考えを共有する諸国の責任分担も促すこともできる。重要なのは、一部で刷新が必要だとしても、伝統的な外交的価値と原則へ立ち返ることだ。

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