1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

政治・文化・社会に関する論文

東アジアの少子高齢化と地政学
―― 世界政治はどう変化するか

2024年6月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 政治経済チェア

東アジアのポテンシャルは、今後、人口減少によって大きく抑え込まれていくだろう。経済成長を実現することも、社会的セーフティーネットを財政的に支え、軍隊を動員することも難しくなり、日本、韓国、台湾は内向きになっていくはずだ。中国も、野心と能力の間の克服しがたいギャップの拡大に直面すると考えられる。一方で、高齢化も進む。中国に悪影響を与える東アジアの人口減少が、ワシントンの地政学的利益になるのは間違いないが、東アジアの民主主義国家にも足かせを作り出し、問題も引き起こす。これらの国家にとって、アメリカとのパートナーシップの必要性が高まる一方で、ワシントンにとって彼らは魅力的なパートナーではなくなっていくだろう。

文化と民主主義の未来
―― 何が人々の世界観を左右するのか

2024年4月号

スザンヌ・ノッセル PENアメリカン・センター 会長

戦争、経済競争、政治対立に引き裂かれた世界では、文化の役割などサイドショーにすぎないと思えるかもしれない。だが、民主国家と独裁国家の戦いの結末は文化に大きく左右される。人々が世界をどうとらえるかは、どのような音楽を聴き、いかなる本を読むか、鑑賞する映画、テレビ、美術品、訪問する美術館、学習する教科書によって形作られるからだ。独裁国家は、自分たちの立場を外国に拡散するために、まず、国の物語やイデオロギーを自国の民衆に押しつけるために、テクノロジーを駆使したトップダウン型の努力を続けている。こうした独裁国家の試みにもっとも効果的に対抗できるのは、欧米政府の文化担当官ではない。むしろ、リスクのある環境で日々仕事をしている作家、芸術家、キュレーターたちだ。・・・

トランプ現象とアメリカの政治文化
―― ヘンリー・フォードとトランプ

2024年1月号

マイケル・カジン ジョージタウン大学教授(歴史学)

トランプ現象は、アメリカの歴史・文化における三つの潮流が合流したものとして理解するのが適切だろう。反移民の社会文化やポピュリストの伝統、そして財界の裕福なパフォーマーを待望する伝統だ。つまり、トランプの魅力も、彼の出馬が国内外で引き起こす恐怖も、アメリカの政治文化の奥底に流れる衝動から生じている。誰もが名前を知っている金持ちが、民衆の多くが恐れるか不信感をもつ人々をバッシングし、国のあらゆる問題を解決するという漠然とした約束をする。こうしたトランプの行動は、彼のファンや批判者の多くが考えるほど目新しいものではない。逆に言えば、トランプが表舞台を去った後も、大げさな演説の才があり、守るべき政治的実績のない、裕福なパフォーマーが同じような役目を担うことになるのかもしれない。

ハイリスク環境における安定とは
―― システミック・レジリエンスの確立を

2024年1月号

アンシア・ロバーツ オーストラリア国立大学 教授(グローバル・ガバナンス)

レジリエンスはショックやストレスに耐える能力として理解されている。だがそれは、リスクに効果的に対応するだけでなく、将来的な恩恵を獲得し、変化に対応できるように進化することも意味する。そうした、システミック・レジリエンスを実現するには、政府と企業は「リスクと恩恵の適切なバランス」をとらなければならない。リスクの最小化を目指すと、恩恵が減少するだけでなく、時間の経過とともに新たな脆弱性が生み出される。同様に、短期的な恩恵の最大化を目指せば、既存のリスクを見過ごし、新たなリスクを生み出し、後に大きな犠牲に直面する危険がある。もっとも困難なケースは、経済的相互依存のリスクと恩恵の双方が大きい場合だ。このような場合、システミック・レジリエンスに注目することが極めて有効になる。

欧州における右派の台頭
―― 移民と法の秩序

2024年1月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会シニアフェロー

右派が台頭しているフランス、ドイツ、ポーランドに続いて、オランダでもゲルト・ウィルダースが率いる(右派ポピュリストの)自由党が、オランダ議会下院の最大勢力となった。ベルギーでも、民族主義政党「フランダースの利益」が2024年の国政選挙で最大政党に躍り出ようとしている。フィンランド、ハンガリー、イタリア、スロバキアではすでに極右勢力が政権を握っており、スウェーデンでも極右政党が少数派政権を支えている。ヨーロッパにおける中道左派が支持を失い、中道右派政党が極右政党のレトリックや、時には政策さえも模倣するようになってきたために、中道の左派政党が右派政党との共有基盤を見いだすのが難しくなっている。

ハビエル・ミレイがアルゼンチンを変える?
―― 過激なリーダーシップの可能性とリスク

2024年1月号

ブルーノ・ビネッティ インターアメリカン・ダイアログ 非常勤フェロー

アルゼンチン大統領に就任したハビエル・ミレイは、中央銀行の閉鎖や米ドルを自国通貨として採用するといった極端な公約の多くからは、すでに後退をみせている。それでも、大統領としてのミレイに立ちはだかる課題は非常に大きい。この国が何十年にもわたって陥ってきた衰退と不安定の連鎖を断ち切るには、政権奪取の際にみせた大胆さだけでなく、妥協し、不必要な争いを避け、過去の改革の試みから学ぶ姿勢が必要になるし、経験と知識ある人々を迎え入れなければならない。現実的でありつつも、毅然とし、新しい概念に開放的で、掲げた目的に確信をもっている必要がある。これまでの多くの大統領と同じように、ミレイが失敗すれば、アルゼンチンはこのような改革のチャンスには長期的に巡り会えないかもしれない。

BBCとイギリスのソフトパワー
―― 政府と国際放送の関係を考える

2023年10月号

サイモン・J・ポッター ブリストル大学教授(現代史)

1927年に開始されたBBC(英国放送協会)ワールド・サービス(国際放送)は、現在も、短波ラジオをデジタルメディアやソーシャルメディア・チャンネルと組み合わせて提供している。だが、BBCが国内で政治的に敵視されているために、イギリスのソフトパワーを長く形作ってきたワールド・サービスは財政危機に直面し、すでに、アジアの言語やアラビア語での放送を打ち切っている。解決策は、ワールド・サービスを国家が直接出資する別組織としてBBCから切り離すことかもしれないが、国営の国際放送など、世界のリスナーにとって魅力的なはずはない。BBCを敵視する国内保守派は、イギリスの重要なソフトパワーツールを危険にさらしていることになる。

インドの台頭は必然なのか
―― 何がこの国を機能不全に追い込んでいるのか

2023年7月号

ミラン・バイシュナフ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(南アジア担当)

歴史的に、インドの分裂した政治がこの国の改革能力を抑え込んできたが、それも終わりつつあるのかもしれない。ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)はいまや議会の過半数を獲得し、長年の懸案であった経済改革を推進するために必要な政治基盤を手に入れている。だがそれでも、この国はあまりに多くの問題を抱えている。多数派が影響力を高め、権力分立が形骸化し、メディアは口を封じられている。インドの都市のイスラム教徒地区はますますゲットー化し、女性が労働力に占める割合はごくわずかだ。政治腐敗が横行し、民主主義が理屈上は存在しても、実際にはほとんど実践されていない。「独立後75年を経たインドの民主主義と経済は、根本的に破綻している」とみる専門家もいる。

プーチンの戦争からロシアの戦争へ
―― プーチンと一体化するエリートと民衆の心理

2023年7月号

ユージン・ルーマー カーネギー国際平和財団 ロシア・ユーラシアプログラム ディレクター

ウクライナに戦争を仕掛け、モスクワが敵視する個人を神経ガスで攻撃する。イランや北朝鮮などのならず者国家に先端技術を売り込み、サイバー兵器を無差別に利用する。しかも、核兵器と国連安保理常任理事国の地位に守られているため、国際的な非難や制裁を受けることもない。プーチンの後継者が抜本的な軌道修正を行い、罪を償い始めるとも考えにくい。結局、プーチンは、ロシアのエリートと社会を戦争の共犯に仕立て上げることで、この国が彼の体制から劇的に離れていく可能性を抑え込んでいる。こうして、アメリカとその同盟国にとって、中国といかに戦うかという問題に勝るとも劣らない、厄介な問題が作り出されている。

イギリスは統一を維持できるのか
―― 構成地域ナショナリズムと連合王国

2023年5月号

フィンタン・オトゥール プリンストン大学教授

ウェールズ、スコットランド、北アイルランドだけではない。イングランドの有権者も、これまで、イギリスのアイデンティティに埋もれていたイングランド・ナショナリズムを主張するようになった。一方で、イングランドの政治家と有権者が推進したブレグジットは、北アイルランドとスコットランドでのイギリスに対する不満を増幅した。こうして、スコットランドでは、住民の過半数(52%)が独立を支持し、北アイルランドでも、イギリスを離脱してアイルランドに加わりたいという人が劇的に増えている。重層的な課題が表面化するなか、イギリスは国際秩序における位置づけだけでなく、今後も一体性をもつ国とみなされ続けるかどうかもはっきりしなくなっている。かつて世界を形作った国家は、もはや自国の形態さえ保つことができないのかもしれない。

Page Top