ダーティマネー
―― 政治腐敗が規定する世界
2020年3月号

「外国で企業が賄賂を支払ったとしても検挙されるリスクは平均5%以下。それでも賄賂を1ドル支払うと、平均5ドルの追加的利益を得られる」。そうだとすれば、賄賂を提供することの恩恵はリスクを大きく上回り、賄賂を支払うことは経済的に合理的な行為となる。しかも「他の犯罪とは違って、贈賄は時間をかけて進行していくことが多く、その結果もスローモーションのような災害であるため、経済的、政治的、社会的なダメージが作り出されるとしても、誰かが意識的にそれを探し出さなければ社会は気づかない」。結局、政治腐敗による利益があまりにも大きく、リスクがあまりにも小さいとなれば、これを撲滅するのはおそろしく困難になる。だが、政府機関の不正が大きくなれば、その国の経済成長は低下し、所得格差が拡大することはすでに明らかになっている。