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環境とエネルギーに関する論文

気候変動ショックと人道的危機
―― 最大のリスクにさらされる国は

2019年1月号

ジョシュア・バスビー テキサス大学オースチン校 准教授(公共政策)
ニナ・フォン・ユクスキュル ウプサラ大学 平和・紛争研究学部助教

気候変動に対して大きな脆弱性をもつ国は、特定のリスクファクターを抱えている。農業部門への依存が高いこと、最近、国内紛争を経験していること、そして政治制度が特定の人種・宗教・民族集団に対する差別を内包していることだ。干ばつや洪水は、農業依存が高い国の多くの人の収入を低下させ、深刻な食糧危機を引き起こす。最近国内紛争を経験していれば、兵器や動員できる戦闘員へのアクセスをもつ指導者や集団がいまも国内で活動している危険がある。政治制度が特定集団への差別を内包している国では、政府は人口の一部が直面している危機に対応しないために、不安定化や人道的緊急事態に直面するリスクが高くなる。特に農業が気候の変動に脆いことを認識する必要がある。農産品の収穫量の大幅な減少を阻止するために、農業のあり方をどう変化させればよいかも早急に考える必要がある。

気候変動で慢性化した異常気象
―― そのダメージとコストに対処するには

2018年11月号

ケイト・ゴードン リッジ・レーン パートナー
ジュリオ・フリードマン コロンビア大学 グローバルエネルギー政策センター シニアリサーチフェロー

気候変動に派生する異常気象が引き起こす災害への対応コストは膨れあがり、いまや短期的な緊急対応能力だけでなく、長期的な投資や経済成長も脅かされつつある。しかも、異常気象は1度きりの出来事ではなく、いまや慢性化しており、これを管理していくには、現在の政策決定者の気候変動に対する捉え方とはまったく異なるアプローチが必要になる。すでに気候変動のインパクトを前に、企業は工場を移動させ、ビジネスモデルを見直し、国防総省は、海面水位の上昇が慢性化していることのリスクを認め、今後10年間で海軍基地に対するリスク管理と適応のための計画をまとめている。異常気象が、一過性の風邪ではなく、慢性疾患化していることを認識した上で、それに即した計画で備える必要がある。

ナイル川の水争奪戦と中東地政学
―― 地域を超えた重層的課題にどう対処するか

2018年10月号

マイケル・ワヒッド・ハンナ センチュリー財団 シニアフェロー
ダニエル・ベナイム アメリカ進歩センター シニアフェロー

グランド・エチオピア・ルネサンス・ダムは多層的な課題を抱えている。ダムが完成すればエチオピアは近隣諸国に相当規模の電力を輸出できる電力生産ができるようになる。隣国スーダンも、ダムが自国の農業に恩恵をもたらすことを期待している。一方、水資源に乏しいエジプトは、上流でのダム稼働によって深刻な事態に直面する恐れがある。しかも、中東での影響力の確立を求めて競い合うトルコ、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)はアフリカ北東部に陸海軍の基地を確保し、耕作可能な土地を手に入れているだけでなく、ライバルに圧力をかけようと現地で傀儡勢力を育成しているようだ。このハイブリッド化した多層的な課題に取り組んでいくには、縦割りの官僚組織に囚われず、問題を横断的に捉える必要がある。地域問題、政治・軍事問題の専門家だけでなく、水文学や工学の専門家の知識も動員しなければならない。

カーボンプライシングという幻想
―― より直接的な二酸化炭素削減策との組み合わせを

2018年9月号

ジェフリー・ボール スタンフォード大学 レジデントスカラー

炭素税や二酸化炭素排出権取引の前提として二酸化炭素排出に価格をつけるカーボンプライシングを導入することで、政策決定者や市民が、自分たちは地球温暖化対策に有意義な貢献をしていると幻想を抱いている限り、このシステムは無力なだけでなく、非生産的だ。このソリューションだけでは問題解決には至らないという現実を認識する必要がある。地球が摂氏2度の気温上昇という臨界点を超えるのはもはや避けられないが、それでも温暖化を最小限に食い止める方法はある。石炭の段階的利用停止、二酸化炭素回収貯留(CCS)技術開発のスピードアップ、原子力発電の継続、再生可能エネルギーコストの削減、化石燃料価格の値上げは効果がある。「カーボンプライシングは地球温暖化防止のために社会が用いる主要ツールであるべきだ」という考えには、ほとんど根拠がないことをまず認識する必要がある。

気候変動対策の不都合な真実
―― 破綻したアプローチを繰り返すな

2018年9月号

テッド・ノードハウス ブレイクスルー研究所 エグゼクティブ・ディレクター

世界の気温上昇を摂氏2度以内に抑えるという目標にこだわるのは間違っている。ほとんどの国は2年前にパリで掲げた二酸化炭素排出量の削減目標を実現できる軌道にはないし、仮にこれらの目標が達成されても、21世紀末までに世界の気温は3度以上上昇しているはずだ。多くの環境保護派は完全に失敗した過去のやり方で現在の問題に対処しようとしている。うまくアプローチできていない目標にこだわるのではなく、再生可能エネルギー、原子力、そして有望な新しい二酸化炭素回収テクノロジーを導入し、二酸化炭素排出量の削減努力をさらに強化すれば、たとえ気温上昇を2度以下に抑えられなくても、気候変動リスクは大幅に緩和できる。特に、二酸化炭素除去テクノロジーや原子力発電をもっと重視し、ジオエンジニアリングの研究も推進する必要がある。

温暖化と異常気象が人類を脅かす
―― ダメージ管理から環境浄化への道を

2018年9月号

ビーラバドラン・ラマナタン
マルチェロ・サンチェス・ソロンド
パーサ・ダスグプタ
ヨアヒム・フォン・ブラウン
デビッド・ビクター

二酸化炭素の排出量は増え続けており、今後1世紀で、世界の気温は最低でも4度上昇する軌道にある。2050年を過ぎると、世界の人口の半数以上が、経験したことのない暑い夏に苦しめられるようになり、それ以降、地球の陸地の44%は乾燥し始める。温暖化した地球ではより極端な現象が起きるようになる。熱波、大暴風雨、干ばつなど(の異常気象)が気候変動によって引き起こされていることはいまや立証されている。熱波と干ばつが世界の穀倉地帯の多くを脅かし、市場はボラタイルになり、農産品価格も上昇する。異常気象が引き起こす災害は人間のメンタルヘルスにも悪影響を与える。実際、摂氏54度を上回れば、社会全体が冷静さを失う。もはや排出量をゼロに抑え込むだけでは十分ではない。すでに大気中にある約1兆トンの二酸化炭素を取り除かなければならない。

ワーミング・ワールド
―― 気候変動というシステミック・リスク

2018年8月号

ジョシュア・バズビー テキサス大学オースティン校 准教授(公共政策)

気候変動とは、地球温暖化だけではない。世界は、気候科学者のキャサリン・ヘイホーが、「グローバル・ウィアーディング(地球環境の異様な変化)」と呼ぶ時代に突入しつつある。考えられない気象パターンがあらゆる場所で起きている。気温が上昇すると、気候変動が引き起こす現象が変化する。かつて100年に1度だった大洪水が、50年あるいは20年おきに起きるようになる。想定外のテールリスクもますます極端になる。気候変動がひどく忌まわしいのは、地政学への影響をもつことだ。新しい気象パターンは、社会的にも経済的にも大混乱を引き起こす。海面が上昇し、農地が枯れ、より猛烈な嵐や洪水が起きるようになり、居住できなくなる国も出てくる。こうした変化は、国際システムに前代未聞の試練を与えることになる。

グローバルな水資源危機の本質
―― 何が対策を阻んでいるのか

2018年5月号

スコット・ムーア ペンシルベニア大学エネルギー政策センター シニアフェロー

世界は水資源危機に直面しているが、それは多くの人が考えるようなものではない。たしかに、都市の水資源需要を満たしつつ、穀物を育てるための十分な水を確保するのは難しくなり、降水量の規模と降雨シーズンを変化させている気候変動が干ばつと水害の問題をさらに深刻にしている。汚染も広がりをみせている。とはいえ、多くの地域が真の水資源危機を回避できるように助ける技術的解決策は存在する。問題はそれに非常に大きなコストがかかることだ。現実には、人間の行動面での変化が求められており、そのインセンティブを高めるには水道料金を引き上げるのがもっとも効果的だ。しかし、水資源の価格を世界的に引き上げる経済的な根拠はあるが、そうすることを阻む政治的・道徳的な問題が存在する。・・・

中国のエネルギー地政学
―― クリーンエネルギーへの戦略的投資

2018年4月号

エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ 米外交問題評議会シニアフェロー (エネルギー&環境問題担当)

トランプ政権が石油・天然ガスを重視し、パリ協定に背を向けるなか、すでに中国は戦略的にクリーンエネルギー大国の道を歩みつつある。新エネルギー戦略が成功すれば、世界の気候変動との闘い、さらには地域的同盟関係や貿易関係の双方において、中国はアメリカに代わる最重要国に浮上する。クリーンエネルギーテクノロジーの輸出国として中国は、各国に石油・天然ガスの輸入量さらには二酸化炭素排出量を減らす機会を提供できるし、相手国政府との関係も強化できる。冷戦期のアメリカが、ソビエトとの宇宙開発競争に敗れた場合の経済的・軍事的余波を認識して、対抗策をとったように、ワシントンは中国の再生可能エネルギーへの移行にも、同様の対策をとるべきだろう。アメリカは、世界のエネルギー市場における優位を手放すリスクを冒している。

アメリカのLNG輸出が市場をより柔軟なものへ変化させている。これが、天然ガスの価格、(仕向地制限条項を含む)契約にいたるまでのさまざまな領域で大きな意味合いをもつことになる。今後天然ガスを石油のように取引できる方向に流れは向かっている。多くの国が浮体式の再ガス化設備を作っている。

ガソリンの消費は間違いなく低下していくだろう。電気自動車が普及するだけでなく、車の燃費もさらによくなっていく。しかし一方で、トラック産業、ジェット航空機産業、そして石油化学産業が石油需要を引き上げていく。これら三つの産業の燃料や原材料を石油以外の何かで代替していくのは非常に難しい。

中国は、重工業、石炭型経済から、ゆっくりとだが、それでも着実に、クリーンエネルギーの先進国へと姿を変えつつある。ソーラー、風力、水力、原子力発電、エネルギーの利用効率、電気自動車などの領域で中国はすでに世界の最先端を走っている。

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