1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 中国経済の成長とリスクに関する論文

インターネット企業と中国経済の未来
―― 製造業からインタンジブル・エコノミーへ

2017年12月号

サルバトーレ・バポネス シドニー大学 社会学准教授

アップルは環太平洋地域の至る所に新しい経済システムをつくりあげている。iPhoneとそれが支える技術的エコシステムに多くを依存しているこのシステムをiエコノミーと呼ぶこともできる。そこには数多くのハブがある。マイクロソフトとアマゾンはシアトルを、ソニーと任天堂は日本を、サムスンは韓国を拠点としている。しかし現在の「インタンジブル・エコノミー」(無形経済)の主要センターはやはり中国だ。アリババ、バイドゥ、テンセントといった中国のインターネット企業は、規模や収益性という側面でも、カリフォルニア州のライバル企業に次ぐ存在となり、もはや他国の企業を寄せ付けない存在となっている。いまや中国を含む太平洋諸国にとって、もっとも価値ある経済要素は、生産・組立工程から、ソフトウェアデザインとアプリケーションなどのインタンジブル・エコノミーへとシフトしつつある。

中国経済をめぐる欧米の誤解
――債務、貿易、政治腐敗

2017年11月号

ユーコン・ファン カーネギー国際平和基金 シニアフェロー

欧米における経済概念が、開放的で自由な市場における企業間競争を前提としているのに対して、中国経済では、地方政府が経済プレイヤーとして、競争的な経済環境の一翼を担っている。しかも、北京が設定する広範な基準や政策は、伝統的な経済思考に合致するものではない。これらの要因を分析にとり入れなければ、中国で起きていることを誤解することになる。例えば、中国の債務問題が銀行による融資問題であるとともに、地方政府の財政の問題であることを理解できなければ、誤解に基づいた対応を呼び込むことになる。この意味で、貿易と政治腐敗についても、欧米の対中認識には問題がある。

中国債務危機のグローバルな衝撃
―― 「政治的」サプライサイド改革の限界

2017年8月号

エドアルド・カンパネッラ ウニクレディト  ユーロゾーン・エコノミスト

中国企業の債務レベルは、対国内総生産(GDP)比170%と、歴史的そして世界的にみても、危険水域に突入しつつある。危機を回避しようと北京は中国流サプライサイド改革、つまり、生産制限と(極端に安い融資を通じた)需要管理策を組み合わせたポリシーミックスをとっている。たしかに、このやり方で債務に苦しむ企業も一時的な収益増を期待できるが、工場渡し価格の上昇によっていずれ消費者はインフレに直面する。同時に、衰退する国有企業を対象とする救済策は、必要とされる産業システムの再編を先送りし、しかも最終的にはより深刻度を増した債務問題に直面することになり、その余波は世界に及ぶだろう。北京が危機の先送り策をとっているのは、国有企業が倒産すれば、金融も政治も社会も不安定化することを恐れているからだが、債務の肥大化を放置すれば、共産党の支配体制だけでなく、世界経済を大きな危険にさらすことになる。

中国のグローバル・リーダーシップという神話
―― 中国はグローバル化モデルにはなり得ない

2017年3月号

エリザベス・C・エコノミー 外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)

世界のリーダーとしての役割を続けることへのワシントンの意思が不透明化するなか、世界は、たとえ一時的であっても、アメリカに代わってリーダー役を担える国を求めている。習近平がそれに興味を示しているという理由だけで、中国が世界のリーダーとしての条件を満たしていると考える専門家さえいる。すでに中国がグローバルなリーダーシップに必要な資質を身に付けているのは事実だろう。世界第2位の貿易大国で、世界最大の常備軍を擁し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路のような新しい組織や構想を提案するなど、中国はすでに世界のリーダーのように振る舞っている。しかし、その開発モデルがもたらした環境、医療・衛生、その他の社会問題に関して中国モデルは模倣に値するものだろうか。世界における人権侵害について何も語らず、国内の人権問題を長年にわたって認めてこなかった国をグローバルリーダーと呼べるだろうか。・・・

インフラプロジェクトと政治腐敗
―― 新開発銀行は大きな混乱に直面する

2016年10月号

クリストファー・サバティーニ
コロンビア大学国際公共政策大学院 講師(国際関係論)

BRICS諸国の台頭を象徴するかのように、この10年間にわたって中国、ブラジル、インド、南アフリカでは数多くのインフラプロジェクトが進められ、工業団地、高速道路、橋梁、パイプライン、ダム、スポーツ競技場の建設ラッシュが続いた。しかし、彼らはインフラプロジェクトに時間をかけず、これ見よがしの結果ばかりを追い求めた。要するに、クオリティ(品質)に配慮せず、必要なコストを過小評価してきた。しかも、政府契約の受注をめぐる不透明なプロセスが政治腐敗の温床を作り出した。いまや、経済成長ではなく、政治腐敗スキャンダルという別の共通現象がBRICS諸国を集団として束ねている。国内のインフラプロジェクトがこのような状況にある以上、新開発銀行の融資によるプロジェクトも同様の運命を辿ることになるかもしれない。BRICS諸国政府がインフラプロジェクトに関わる説明責任を果たしていないことからみても、新開発銀行は今後大きなコストを伴う失敗を繰り返すことになるだろう。

中国の壮大なインフラプロジェクトにどう関わるか
―― 一帯一路への選択的関与を

2016年10月号

ガル・ルフト  
グローバル安全保障分析研究所(IAGS) 共同所長

アジア諸国がその開発目標を達成するには、今後4年間で年約8000億ドルを交通網、電力網、通信網のインフラ整備に投資する必要がある。しかし既存の開発銀行からは、その10%の資金も調達できない。たとえAIIB(アジアインフラ投資銀行)など中国を中心とする融資機関が約束を果たしても、必要とされる資金規模には達しない。米中のライバル関係を懸念するあまり、ワシントンはこの資金不足が世界の経済的繁栄にいかなる悪影響を与えるかを見過ごしてはならない。世界の経済成長の半分は、アメリカと中国の2カ国が牽引している。世界経済が長期停滞の可能性に直面する今、米中はいがみ合うよりも、互いの開発アジェンダを調和させるほうが豊かになれる。アメリカがグローバルな地位を守ることと、アジアの経済成長を支援することが相反するわけではない。一帯一路を「選択的に支持すれば」双方を達成できる。・・・

スリランカがはまった中国の罠
―― 中国による融資トラップとは

2016年7月号

ジェフ・M・スミス 米外交政策評議会 アジア安全保障プログラム ディレクター

中国の対スリランカ投資プロジェクトは、アジア全域へ中国の貿易ルートを拡大・確保しようとする北京の一帯一路戦略の一環として進められている。北京にとって、スリランカの最大の魅力はやはりその港だ。スリランカの港は中国と中東・アフリカ地域のエネルギー供給国を結ぶ貿易シーレーンに位置している。だが一連の投資プロジェクトには中国の戦略的思惑が見え隠れしている。実際、スリランカの対中債務が増えていけば、中国は債務の一部を株式に転換して重要プロジェクトを部分的に所有することもでき、この場合、中国はインド洋における新たな戦略拠点を確保できる。中国から距離をとろうとする現在のスリランカ政府も、対中債務トラップにはまり、身動きができない状況に陥っている。

中国は超大国にはなれない
―― 米中逆転があり得ない理由

2016年7月号

スティーブン・G・ブルックス/ダートマス大学准教授
ウィリアム・C・ウォルフォース/ダートマス大学教授

いまや問題は「中国が超大国になるかどうかではなく、いつ超大国になるかだ」と考える人もいる。確かに中国は、真にアメリカに匹敵する大国になるポテンシャルをもつ唯一の国だが、技術的な遅れという致命的な欠陥を抱えている。一方、アメリカの経済的優位はかつてほど傑出してはいないが、その軍事的優位に変化はなく、現在の国際秩序の中核をなす世界的な同盟関係にも変化はない。近代史で特筆すべき成長を遂げた新興国のほとんどは、経済よりも軍事面で強力だったが、中国は軍事面よりも経済面でパワフルな存在として台頭している。経済規模が巨大なだけでは、世界の超大国にはなれないし、必要な技術力の獲得という、次の大きなハードルを越えることもできない。しかもその先には、こうした資源を活用して、グローバルな軍事力行使に必要なシステムを構築し、その使い方をマスターしていくというハードルが待ち受けている。要するに、多くの人は中国の台頭に過剰反応を示している。むしろ、アメリカの超大国としての地位を脅かす最大の脅威は国内にある。

中国国有企業改革の実態
―― 切り捨てられる企業と温存される
企業

2016年5月号

サルバトーレ・バボネス/シドニー大学社会学・社会政策准教授
I・ストーン(匿名)/中国国有企業を専門とする政治経済分析者

過剰生産能力を減らすために、北京は鉄鋼生産量を年間1億―1億5000万トン削減すると表明し、2月には鉄鋼部門において約50万人の雇用を削減する計画を発表している。石炭産業における生産量と雇用の削減はさらに熾烈なものになるだろう。そして北京が過剰生産能力を削減する主要なツールとして、中国の国有企業(SOE)改革を利用していくのは明らかだろう。損失を計上している部門については、民営化を通じて政府による監督を緩和するか、工場閉鎖と労働者の解雇が行われるだろう。中国のSOE改革とは、一般にイメージされるのとは違って、赤字国有企業を売却、清算するだけで、北京は利益をあげている国有企業についてはこれまでの関係を維持していくつもりだ。「政治的に正しい」立場をとる国有企業のエグゼクティブと最高経営責任者は法外な富を得て、「政治的に間違った」立場をとる者たちは政治腐敗の罪に問われ、失脚することになるだろう。

中国のコーポレートパワー
―― 中国企業が市場を制する日はやってくるのか

2016年5月号

パンカジュ・ゲマワット/ニューヨーク大学ビジネススクール教授
トマス・ホート/タフト大学シニアレクチャラー

最近の経済的失速と株式市場の混乱にも関わらず、「中国はいずれアメリカを抜いて世界最大の経済パワーになる」と考える人は多い。だが、このシナリオを検証するには、現実に成長と富を生み出している企業と産業の活動動向に目を向ける必要がある。世界でもっともパワフルな経済国家になるには、中国企業は資本財やハイテク部門でさらに競争力をつけ、半導体、医療用画像診断装置、ジェット航空機などの洗練された製品を製造し、市場シェアを拡大していく必要がある。繊維や家電製品など、そう複雑ではない第1世代部門同様に、中国企業はこうした第2世代部門でもうまくやれるだろうか。それを疑うべき理由は数多くある。途上国の企業とせめぎ合う製造業部門とは違って、資本財部門やハイテク部門では、中国企業は、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパの大規模で懐の深い多国籍企業を相手にしていかなければならない。・・・

Page Top