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権威主義体制の台頭に関する論文

シリア化するミャンマー
―― 東アジアにおける破綻国家の誕生か

2021年6月号

デレク・J・ミッチェル  元駐ミャンマー米大使

軍隊と民衆間の分裂を修復するのはもはや不可能だと多くの人はみている。現在の残虐行為を前に、多数派であるビルマ族も、ミャンマー軍が何十年にもわたって国内の少数民族を対象に暴力と不正を繰り返してきたことの意味合いについて覚醒しつつある。こうしてもたらされる民族間の連帯が、永続的な平和と和解の基盤を提供できるかもしれず、これをベースにより力強い民族間対話の枠組みを立ち上げるべきだろう。中国、インド、タイ、その他の周辺諸国は、移民や難民の受け入れを求める圧力にさらされ、ミャンマーとの国境地帯が無法化し、暴力と絶望が社会に蔓延する事態に備えざるを得なくなるだろう。ミャンマーが経験しているのはいつもながらの民主主義からの後退ではない。いまやアジアの重要地域で破綻国家がゆっくりと誕生しつつある。

権威主義へ傾斜する国際システム
―― 追い込まれたリベラルな秩序

2021年5月号

アレクサンダー・クーリー  バーナードカレッジ教授(政治学) ダニエル・H・ネクソン  ジョージタウン大学外交大学院教授

「世界を権威主義にとって安全な場所」にしようと、リベラルな秩序を支える主要な要因を排除しようとする権威主義国もある。特に中国とロシアは外交・経済力そして軍事力を行使して、オルタナティブ(代替)ビジョンを推進している。現在のトレンドをみるかぎり、世界政治を特徴づける非自由主義的要素と自由主義的要素のバランスは大きく変化していくかもしれない。国際システムはより独裁的で非自由主義的になっていくだろう。反動的なポピュリズムが力を増し、権威主義国家が頑迷な路線をとるようになったために、人権、政治的権利、市民権を尊重する思想が切り崩されつつある。現状でもっとも可能性が高いのは、泥棒政治家と利益供与ネットワークのニーズに即した国際秩序へ向かっていくことだ。

偽情報戦略の本当の目的
―― 独裁者の真意は国内にある

2021年5月号

ダレン・リンヴィル クレムソン大学 准教授(コミュニケーション) パトリック・ウォーレン クレムソン大学 准教授(経済学)

国家機関が関与するソーシャルメディア空間での偽情報キャンペーンの多くが、現実には、外国ではなく国内の民衆をターゲットにしていることはほとんど認識されていない。「ソーシャルメディアでの偽情報キャンペーンというグローバルトレンドは、現実には(国家間の影響力を競い合う)地政学ではなく、むしろ国内政治に根ざしている。結局のところ、ロシアの対米攻撃キャンペーンが実際には国内向けであるとすれば、ワシントンはロシアの有権者を念頭に置いて冷静な対応をしなければならない。そうしない限り、モスクワの偽情報を抑え込むのではなく、むしろ、増幅してしまう恐れがある。

新疆における文化弾圧のルーツ
―― 帝国の過去とウイグル人

2021年5月号

シーン・R・ロバーツ ジョージ・ワシントン大学 エリオットスクール 准教授(国際関係論)

新疆における北京の残忍な行動は、習近平体制の権威主義化や中国共産党(CCP)のイデオロギーを映し出しているだけではない。むしろ、ウイグル人に対する抑圧は、「征服したものの、現代の中国に完全に組み込めず、一方で、実態のある自治も与えていない領土」と北京との「植民地的な関係」に起因している。北京はウイグル人の文化とアイデンティティを抹殺することを決意している。「彼らの血統・ルーツを壊し、つながりと起源を破壊すること」を目的にしている。欧米はこれを人権侵害として攻撃しているが、変化は起きそうにない。現実には、2020年に国連人権理事会で45カ国が新疆での中国の行動を擁護する書簡に署名している。「ウイグル人に対する扱いが中国の経済と名声にダメージを与える」と北京が納得しない限り、大きな変化は期待できない。

グローバルな大国間協調の組織化を
―― 多極世界を安定させるために

2021年5月号

リチャード・N・ハース 外交問題評議会会長 チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学 教授(国際関係学)

アメリカやヨーロッパにおけるポピュリズムや非自由主義への誘惑がそう簡単に下火になることはない。かりに欧米の民主主義が政治対立を克服し、非自由主義を打倒して、経済をリバウンドに向かわせても「多様なイデオロギーをもつ多極化した世界」の到来を阻止することはできない。歴史は、このような激動の変化を伴う時代が大きな危険に満ちていることをわれわれに教えている。だが、第二次世界大戦後に形作られた欧米主導のリベラルな秩序では、もはや世界の安定を支える役目は果たせないことを冷静に認めなければならない。21世紀の安定を実現するための最良の手段は「19世紀ヨーロッパにおける大国間協調」を世界に広げた、中国、欧州連合(EU)、インド、日本、ロシア、アメリカをメンバーとし、国連の上に位置する「グローバルな大国間協調体制」を立ち上げ、大国の運営委員会を組織することだ。

トライバリズムを克服するには
―― 寸断されたアメリカのパワー

2021年4月号

ルーベン・E・ブリガティー サウス大学副総長

先の米大統領選は、アメリカ社会の深い亀裂を露わにし、警戒すべきレベルのトライバリズム(政治とアイデンティティをベースとする集団主義)政治が存在することを明らかにした。それは、まるで異なる集団間の抗争のようだった。有権者は政策への関心ではなく、アイデンティティに基づく党派主義の立場をとった。民族的・イデオロギー的アイデンティティが政党を蝕んでいる。アメリカの外交官や専門家たちが、現在のアメリカのような現象を外国に見出した場合、問題を解決するための外交的介入を訴えるかもしれない。重要なのは、違いを取り除くことではない。違いを管理する方法を学ぶことだ。

日中戦争をいかに記憶するか
―― なぜ共産党は国民党の役割を認めたか

2021年4月号

ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学 准教授

「国連の創設メンバー、国連憲章に署名した最初の国として中国は国際システムをしっかりと支えていく」と習近平は発言している。もちろん、そうした役割を担ったのは共産党ではなく、国民党だった。昨今の「強硬でとかく軋轢を引き起こす路線」が国際的リーダーシップを確立したい北京の目的からみれば逆効果であるために、戦後国際システムとのかかわりを強調することで、北京は緊張を緩和したいのかもしれない。台湾との関係を育んでいくことへの関心、未解決の戦争の過去を日本に思い出させるという思惑もあるのだろう。だがリスクもある。中国が戦後秩序の擁護者として自らを描けば描くほど、中国民衆は国際社会でより中心的な役割を果たす権利があるという感覚を強く持つようになるかもしれないからだ。・・・

プーチン主義というイデオロギー
―― 侮れない思想の力と米ロ関係の未来

2021年3月号

マイケル・マクフォール 元駐ロシア米大使

ロシアに関するアメリカの考えはミスパーセプションによって歪んでいる。専門家の多くは、例えば、ロシアは衰退途上国家だと誤解している。現実には、ほとんどの米市民が考えるよりもはるかに強大な軍事、サイバー、経済、イデオロギー領域のパワーをもつ、世界有数の強国の一つとしてロシアは再浮上している。事実、プーチン主義はヨーロッパだけでなく、アメリカでも新たな支持者を獲得しつつある。ワシントンは、あまりにも長い間、米ロ間競争のこのようなイデオロギー的側面を軽視してきた。ワシントンは、ロシア社会全体との結びつきを深めながらも、プーチンのイデオロギー・プロジェクトに対抗していく必要がある。

追い込まれた民主主義
―― 台頭する権威主義、後退する民主国家

2021年3月号

ヤシャ・モンク  ジョンズ・ホプキンス大学准教授

冷戦終結以降、世界が目の当たりにしてきたのは、民主主義の後退と言うよりも、むしろ、中ロなどの権威主義国家の復活だった。アメリカとその民主的同盟諸国は、この歴史的瞬間の重要性を理解し、民主体制から民主国家が後退していくのを食い止める一方で、中国やロシアのような権威主義体制に対する統一戦線を維持していかなければならない。今後数十年は、民主主義と独裁体制間の延々と続く長期的競争によって特徴付けられることになる。実際、内に権威主義諸国を抱えるようになったEUとNATOは機能不全に陥り、価値を失っていくかもしれない。民主国家が大胆な行動を起こさない限り、さらに憂鬱な未来に直面する。

ジェノサイド認定の意味合い
―― 中国のウイグル人弾圧問題の行方

2021年3月号

ジョン・B・ベリンジャーIII  元国務省法律顧問

トランプ政権末期、ポンペオ国務長官は、中国政府は新疆ウイグル自治区でウイグル人やその他の少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)に手を染めており、ウイグル人を含むマイノリティに対して「人道に対する罪」を犯していると表明した。ジェノサイド認定が表明されると、歴史的に、制裁や軍事介入を含む重要な行動をとるように政府に求める議会、市民団体、メディア、大衆の圧力は大きくなる。だが、ジェノサイド認定は、トランプ政権が末期にとった他の行動同様に、バイデン政権の対中関係改善能力を封じ込める作用をしており、実際に、それがポンペオの意図だったのかもしれない。そうでなくても、バイデン政権はウイグル人に対する中国の行動を力強く非難しただろうが、ジェノサイドの認定を支持すれば、政権が中国に対してより懲罰的な行動をとることを求める市民の圧力を高めるのは避けられない。

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