1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 人工知能と社会に関する論文

デジタル秩序の確立へ
―― サイバー・アナーキーを終わらせるには

2022年2月号

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア ハーバード大学ケネディスクール 特別功労教授

ルールを作っても、サイバー空間では、それが順守されているかが検証できないために、「サイバー空間における国家の責任ある行動ルール」の確立など、夢物語でしかないと考える人もいる。だが、ルールがあれば、他国の責任を問う行動に向けた基準が生まれる。現実には、サイバー攻撃を抑止するのは市中犯罪を抑止することに似ている。警察が試みているように、犯罪の根絶は無理でも、それを一定限度以内に抑えることを目的にすべきだ。一方で、病院や医療システムなど、特定のターゲットに対するサイバー兵器の使用はすでにタブー視されつつあるし、ハッカーが電気自動車の死亡事故を増加させるようなら、その行為もタブー視されるようになるだろう。サイバー攻撃のターゲットが増え続けている以上、われわれは抑止力と外交を組み合わせた戦略を模索することで、この危険な新世界のガードレールを強化していく必要がある。

社会の信頼をいかに再構築するか
―― サイバー攻撃が切り崩す信頼

2022年2月号

ジャクリーン・シュナイダー  スタンフォード大学フーバー研究所 フーバー・フェロー

ソーシャルメディアの偽アカウントを使った偽情報で何千人もの有権者の政治的立場を変化させられるのなら、サイバー攻撃を独裁者が躊躇する理由はない。よりパワフルなレジリエンスを構築できなければ、サイバー攻撃の連鎖とそれが生む不信感が、民主主義社会の基盤を脅かし続けることになる。しかも、デジタルへの依存が高まり、テクノロジー、人間、組織のつながりが希薄になればなるほど、「人と人との信頼を揺るがすサイバー空間の脅威」はより大きく、深刻になる。経済、重要インフラ、軍事力の基盤となるネットワークとデータ構造のレジリエンス強化を優先し、人と人との直接的なつながりと信頼を取り戻す必要がある。より強力なレジリエンスを構築できなければ、サイバー攻撃の連鎖とそれが生む不信感が、民主社会の基盤を脅かし続けることになる。


地政学パワーとしてのビッグテック
―― 米中対立と世界秩序を左右するプレイヤー

2021年12月号

イアン・ブレマー ユーラシアグループ社長

ほぼ400年にわたって国家は国際政治の主要なアクターとして活動してきたが、それも変化し始めている。いまやビッグテックは政府に匹敵する地政学的影響力をもち始めている。ビッグテックの地政学的な姿勢や世界観を規定しているのはグローバリズム(アップル、グーグル、フェイスブック)、ナショナリズム(マイクロソフト、Amazon)、テクノユートピアニズム(テスラ)という三つの大きな思想・立場で、国家の立場ではない。国家的な優先事項を追求するために、大国の政治家が巨大テクノロジー企業をたんなる地政学的なチェスの駒として自由に動かせる時代は終わりつつある。テクノロジー企業は名実ともに独立した地政学アクターになり、米中対立だけでなく、今後の秩序を左右する大きな影響力をもち始めている。

半導体は何処へいった
―― グローバルサプライチェーンをいかに守るか

2021年8月号

チャド・P・ボウン ピーターソン国際経済研究所  シニアフェロー

なぜ半導体チップは不足しているのか。コロナ危機のなかで、リモートワークシステムの投資が進み、多くの人がホームオフィスディバイスを新たにアップグレードしたことで、チップ需要が急増したのは事実だ。しかし、最大の問題は、トランプ政権が国家安全保障上の懸念を理由に2018年に中国との貿易・技術戦争に入り、これによって、グローバルな半導体のサプライチェーンと市場が揺るがされたことだ。特にファーウェイへの制裁措置へのパートナー国の同調を求めたことで、市場の歪みは大きくなった。すでにバイデン新政権は、日本、韓国、欧州連合(EU)との首脳会談で新たな半導体戦略に向けた基本合意をまとめている。必要なのは多国間協調の詳細を詰めて、それを具体化し、履行していくことだ。

イノベーション戦争
―― 衰退するアメリカの技術的優位

2021年4月号

クリストファー・ダービー 米IQT CEO
サラ・セウォール IQT 上席副社長(「政策担当」)

北京は「戦争という最終手段をとらずに目標を達成するツールとしてテクノロジーのイノベーションに挑んでいる」。5Gの無線インフラを世界各地で販売し、合成生物学に取り組み、小型で高速なマイクロチップの開発を急いでいる。これらはすべて中国のパワーを強化するための試みだ。当然、ワシントンは視野を広げ、超音速飛行、量子コンピューティング、人工知能などの明らかな軍事用途をもつテクノロジーだけでなく、マイクロエレクトロニクスやバイオテクノロジーなど、これまでは本質的に民生用とみなされてきたテクノロジーも支援し、民間部門が投資しない分野に資金を提供する必要もある。

ビッグテックが民主主義を脅かす
―― 情報の独占と操作を阻止するには

2021年2月号

フランシス・フクヤマ スタンフォード大学 フリーマン・スポグリ国際研究所シニアフェロー
バラク・リッチマン デューク大学法科大学院教授 経営学教授
アシシュ・ゴエル スタンフォード大学教授(経営科学)

ビッグテックを抑え込むべきか。その経済的根拠は複雑だが、政治的にはそうすべき説得力に満ちた理由がある。強大な経済パワーを持っているだけでなく、政治的コミュニケーションの多くを管理する力をもっているからだ。つまり、ビッグテックが引き起こす真の危険は、市場を歪めることではなく、民主政治を脅かすことだ。すでにアメリカとヨーロッパの双方で、政府はビッグテックに対する独占禁止法違反の訴訟を開始しており、裁判は今後何年にもわたって続くだろう。だがこのアプローチは最善の方法とは必ずしも言えない。むしろ、この問題に対処できるのはミドルウェアだろう。現在、プラットフォームが提供するコンテンツは、人工知能プログラムによって生成された不透明なアルゴリズムによって決定されているが、ミドルウェアを使えば、ユーザーが管理を取り戻せるようになる。

民主国家テクノフォーラムの形成を
―― 民主国家のデジタル協調に向けて

2020年12月号

ジャレッド・コーヘン  前米国務省政策企画部スタッフ  リチャード・フォンテーヌ  ニューアメリカン・セキュリティセンター  最高経営責任者

民主国家のテクノロジー問題へのアプローチは、その場しのぎで調整が不十分だったし、これまで、その多くをテクノロジー専門家の判断に委ねてきた。実際、テクノロジーが世界を大きく変えつつあることを認識しつつも、民主国家の指導者たちは、その流れをいかに管理していくかについては奇妙にも協調を欠いてきた。だが、そのインパクトと重要性から考えて、テクノロジーへのアプローチを技術者に任せ続けるのは問題がある。明確な技術開発戦略をもつ中国は、顔認識、音声認識、5Gテクノロジー、デジタル決済、量子通信、商用ドローン市場など、さまざまな技術分野でアメリカを抜き去っている。いまや(民主的)価値を共有する国々が協調して対応策をとるための包括的なテクノロジーフォーラムを立ち上げる必要がある。

迫りくる米中ハイテク冷戦
―― 北京による対抗戦略の全貌

2020年10月号

アダム・シーガル  米外交問題評議会シニアフェロー

ワシントンは、中国ハイテク大手のサプライチェーンからの排除にはじまり、そうした企業との取引禁止、テレコミュニケーションが依存する海底ケーブルの規制にいたるまで、近未来における対中技術戦略のアウトラインをすでに定めている。中国も対抗策を準備し、半導体その他の中核技術の国内開発に取り組んでいる。ハイテク企業を動員し、一帯一路イニシアティブに参加する国々とのつながりを強化し、サイバー空間での産業スパイ活動も続けている。「ハイテク冷戦」の輪郭はすでに明らかだが、この競争から誰が恩恵を受けるのかは、はっきりしない。ドイツ銀行の報告書は、米中ハイテク戦争のコストは今後5年間で3・5兆ドルを上回る規模に達すると試算している。それでも、両国の指導者は、ハイテクを国家安全保障問題とみなすことで、国内の技術開発を最速で進めたいと考えている。

デジタル人民元とドル
―― 脅かされる米ドルの覇権

2020年7月号

アディティ・クマール ハーバード大学ケネディスクール ベルファー・センター エグゼクティブディレクター
エリック・ローゼンバッハ ハーバード大学ケネディスクール ベルファー・センター 共同ディレクター

一帯一路を通じて世界のインフラプロジェクトに資金を提供している北京が、途上国の金融インフラに投資すれば、この構想を補完する「デジタル一帯一路」を構築できるし、中国と大規模な輸出入関係にある企業に、アリペイを使って「デジタル人民元」で取引するように促すこともできる。実際、中国のデジタル通貨を利用できるようになれば、(経済制裁の対象にされても)テヘランはドル建ての取引と決済、そして米金融機関を迂回できるようになる。迫りくる「デジタル通貨の時代」における経済的優位を守るには、ワシントンは直ちに行動を起こす必要がある。競争力のあるデジタル通貨をワシントンが開発できなければ、情報化時代におけるアメリカのグローバルな影響力は大きく損なわれることになるかもしれない。

監視資本主義と暗黒の未来
―― ビッグテックとサーベイランスビジネス

2020年1月号

ポール・スター プリンストン大学 教授(社会学・公共政策)

「監視資本主義=サーベイランス・キャピタリズム」が台頭している。フェイスブックとグーグルが主導するこの産業は、バーチャル世界から現実世界へとサーベイランスの範囲を拡大し、個人の生活の内側に入り込んでいる。ユーザーデータの収集・分析から、ユーザーが「今かすぐ後、あるいはしばらく後にとる行動」を予測することへ流れは移行しつつある。しかも、予測を的中させるもっとも効率的な手法は、予測されている行動をとるように仕向けることだ。すでにフェイスブックは前例のない行動誘導の手法を確立している。中国の「社会信用システム」はインスツルメンタリアンパワー(技術的操作能力)と(政治的画一性を実現したい)国家の組み合わせだが、米企業はインスツルメンタルパワーと市場を抱き合わせるつもりかもしれない。

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