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年度別傑作選に関する論文

中国を対外強硬路線へ駆り立てる恐れと不安
―― アジアシフト戦略の誤算とは

2012年11月号

ロバート・ロス ボストン・カレッジ 政治学教授

中国の強硬外交は新たに手に入れたパワーを基盤とする自信に派生するものではなく、むしろ、金融危機と社会騒乱に悩まされていることに派生する中国政府の不安に根ざしている。シンボリックな対外強硬路線をとることで、北京はナショナリスティックになっている大衆をなだめ、政府の政治的正統性をつなぎとめようとしている。その結果、2009―10年に中国は対外強硬路線をとるようになり、近隣国だけでなく、世界の多くの諸国が中国と距離を置くようになった。この環境で、東アジアの同盟諸国は「大恐慌以来、最悪の経済危機のなかにあるアメリカは、自信を深め、能力を高めている中国に対処していけるのか」と疑問をもつようになり、こうした懸念を払拭しようと、ワシントンはアジア地域のパワーバランスを維持できることを立証しようと試み、アジアシフト戦略へと舵を取った。だが、台頭する中国を牽制するはずのアジアシフト戦略は、逆に中国の好戦性を助長し、米中協調への双方の確信を損なってしまっている。

それでもユーロは存続する
―― 欧州版IMFとしての欧州中央銀行のポテンシャル

2012年10月号

C・フレッド・バーグステン  ピーターソン国際経済研究所所長

ユーロ危機が再燃するたびに、専門家の多くがユーロの崩壊を口にする。だが、そうした予測は、不備のある制度を再構築しようと試みているECB(欧州中央銀行)の駆け引きが成功していることを見過ごしている。すでに、ECB、ドイツ、フランスを含むすべての主要プレイヤーは、共通通貨の崩壊がもたらす壊滅的なコストを認識し、これを阻止しようと試みている。最大の問題は、ユーロが財政同盟、銀行同盟など通貨同盟を支える制度やメカニズムをもっていなかったことだが、この欠陥も危機対応プロセスのなかで次第に是正されつつある。ECBは、ユーロ危機を収束させること以上に、各国の指導者たちに、ユーロ圏の制度を抜本的に改革し、各国の経済を構造的に再構築するように促している。ギリシャがユーロから離脱するとしても、いずれヨーロッパは現在の混乱から抜け出し、より明るい見通しをもって、未完のプロジェクトの実現に向けて歩み出すことになるだろう。

資源開発技術の進化とアジアの海洋資源争奪戦

2012年10月号

マイケル・クレア ハンプシャー・カレッジ教授

中国の政治・経済的影響力の拡大を憂慮する日本人にとって、尖閣諸島をめぐる中国との対立は国の将来を左右する重要な試金石だし、同様に、竹島(韓国名・独島)の主権を主張する韓国政府の立場は、日本の朝鮮半島支配に対する愛国主義的な反発として国内で評価されている。だが、領土ナショナリズムよりも、東アジアの海域に膨大な石油と天然ガス資源が存在すると考えられていることが一連の問題の中枢にある。深海でも稼働できる掘削技術が開発されたこともあって、各国は海洋資源への自分たちの権利をこれまで以上に強く主張するようになった。事実、中国が強硬路線を取り始めたのは、中国海洋石油総公司(CNOOC)が深海資源掘削装置を手に入れた時期と一致している。今後、北京とハノイ、マニラ、ソウル、東京の関係が改善していくと考える理由はほとんどない。自国の近くの海洋に存在する安価なエネルギー資源を手に入れたいという願望はますます高まり、アジア経済がさらに成長していくにつれて、各国のナショナリスティックな衝動はますます大きくなっていく。

統合の危機とヨーロッパの衰退

2012年10月号

ティモシー・ガートン・アッシュ
オックスフォード大学歴史学教授

戦後のドイツにとって、ヨーロッパ諸国の信頼を取り戻すことが、ドイツ統一という長期的目的を実現する唯一の道筋だった。財政同盟という支えを持たない通貨同盟が構造的な問題と崩壊の火種をはらんでいることを理解した上で、西ドイツはドイツ統一のためにあえてユーロを受け入れた。そしていまやヨーロッパはユーロ危機に覆い尽くされ、漂流している。かつてこの大陸を統合へと向かわせた戦争の記憶もソビエトの脅威も希薄化するか、消失している。瓦礫のなかから統合を目指し繁栄を手にした戦後世代とは違って、現代の若者たちは繁栄から失業へ、希望から恐れへと、まったく逆の変化を経験している。統合の維持に向けた新しい源流、エリートと市民たちを統合の維持へと駆り立てる新たな流れが生じない限り、ヨーロッパは、かつての神聖ローマ帝国同様に、ゆっくりとその効率と価値を失い、衰退していくことになるだろう。

日本の電力危機とアジア・スーパーグリッド構想

2012年9月号

田中伸男 日本エネルギー経済研究所 特別顧問

石油が安価で供給が安定し、世界経済の繁栄を支えた時代はすでに終わっており、将来のエネルギー安全保障のためには多様なエネルギーミックスが必要である。石油以外にも、天然ガス、原子力、石炭、再生可能エネルギーで電力を生産できる。特に、天然ガスによる発電はゲームチェンジャーとみなされている。だが、原発が稼働停止に追い込まれている日本にとって、原子力発電所を再稼働できなければ、毎年400-500億ドルの資金を投入して石油や天然ガスを調達しなければならなくなる。これは、日本の経常黒字の半分が石油や天然ガスの輸入によって消し飛ぶことを意味する。事故の教訓を踏まえて安全対策を強化した原子力を日本のエネルギーミックスの一部として当面維持していくことを選択肢から排除すべきではないだろう。一方で、ロシアの天然ガス資源を基盤に、アジア地域の経済成長と安定にとって不可欠なエネルギーアクセスを確保するための多国間協調枠組を形作っていく必要がある。

CFR Interview
投資バブルの崩壊で中国経済は長期停滞へ

2012年9月号

パトリック・チョバネック
清華大学経済・マネジメント大学院准教授

この数年来の中国経済の成長は、グローバル経済危機対策として北京が実施した景気刺激策が作り出した投資ブームによって牽引されてきた。当然、これは持続可能な成長ではなかった。今や投資バブルははじけ、不良債権が増大し、中国経済の成長率は、2009年以降、最低のレベルへと抑え込まれている。・・・すでに、中国の地方政府が不動産開発業者を、そして中央政府が国有企業や地方政府をベイルアウトし始めている。・・・中国政府は成長戦略の見直し、つまり、輸出・投資主導型モデルから内需主導型モデルに向けた調整を迫られている。中国経済をリバランスするには、為替政策、金利政策、課税策を見直して、資金が家計(預金者と消費者)へと流れるようにしなければならない。・・・有意義な調整プロセスによって中国経済がよりバランスのとれたものへと進化していけば、中国により多くの輸出をしたい国や企業、中国との貿易バランスを均衡させたい国に大きな恩恵がもたらされる。問題は、この調整が痛みを伴うために、成長戦略の見直しに対する政治的抵抗が避けられないことだ。

CFR Meeting
北米エネルギー安全保障の衝撃
――中東石油への依存度が半減すれば

2012年8月号

スピーカー
レックス・W・ティラーソン /エクソンモービルCEO
プレサイダー
アラン・マレイ /ウォールストリート・ジャーナル

いずれも大きな資源をもつカナダ、アメリカ、メキシコからなる北アメリカという枠組みでエネルギー政策、エネルギー安全保障をとらえればどうなるだろうか。資源の規模、使用できるテクノロジー、そして共通点の多い政策という点からみて、地域的な「エネルギー安全保障」の確立も視野に入ってくる。・・・仮にアメリカがペルシャ湾岸から原油を輸入する必要がなくなれば、国家安全保障政策も変化する。・・・アメリカが中東での軍事資源をどこか別の場所に移すと言い出せば、おそらく、大規模な石油消費国(中国)がその空白を埋めようとするだろう。・・・だが、重要なポイントは、中東石油がグローバル経済の安定の鍵を握っていることだ。この点では、中東石油への依存度を減らしていくとしても、アメリカはこの地域に今後も大きな関心を向けざるを得ないはずだ。・・・(R・W・ティラーソン)

ギリシャの財政赤字隠蔽問題に端を発する危機は瞬く間に周辺国のソブリン債務危機と化していった。いまやユーロ危機はいくら救済策をとっても火を消せないヨーロッパ全体を覆う銀行危機へと姿を変えつつある。ここで銀行を救済すれば、公的部門の債務はますます肥大化し、今度はフランスを含む、ヨーロッパ主要国がソブリン危機に直面する危険さえある。かたや、緊縮財政への反発からヨーロッパの政治の流れは変わり、すでにマーストリヒトのルールは放棄されている。「ギリシャ後」もユーロは存続できるのか、そしてEUはユーロショックに政治的に持ち堪えることができるのか。世界経済を揺るがすユーロ危機の全貌。

ヨーロッパ経済の近未来
――債務危機と銀行危機の悪循環

2012年7月号

◎スピーカー
ウィレム・ブイター
シティグループ チーフエコノミスト
◎プレサイダー
ラナ・フォローオハール
タイム誌マネージングエディター

ギリシャは、ユーロからは離脱しても、おそらくEUには留まるだろう。条約には一部抵触するとはいえ、ギリシャがユーロを離脱する前段階で資本規制策、為替管理策、金融機関の閉鎖措置をとれば、無秩序な離脱リスクをある程度抑えることができる。いずれにしても、ギリシャの債務帳消しに応じる必要がある。だが現状でもっとも警戒すべきなのは、ユーロ圏の銀行危機だ。ヨーロッパの銀行はわれわれがまだ知らない損失を抱え込んでおり、これがシステマティックに隠蔽されている。銀行部門が巨大な債務を作り出し、結局は政府も共倒れになったアイルランドのケースがスペインで再現されるかもしれない。たしかに、ECBにはまだできることがある。だが、ECBが紙幣を刷り増すとすれば、国債市場の無秩序な崩壊、金融システムにとって重要な金融機関の無秩序な破綻、そして、ユーロ離脱の連鎖など、そうせざるを得ない状況に追い込まれた場合だけだろう。・・・一方、フランス国債の格下げによって、次の危機が誘発される可能性もあるし、あらゆるものが次の危機のトリガーになり得る状況にある。

BRICSのポテンシャルを 再検証する

2012年6月号

マーチン・ウォルフ フィナンシャルタイムズ紙 チーフ・エコノミック・コメンテーター

BRICS各国の価値観はそれぞれに大きく違っている。たしかに、「自分たちは世界経済にとって重要な国で、もっと世界から重視されるべきだ」と考えている点では共通点がある。自分たちと先進諸国との関係はどうあるべきなのかという点でも認識を共有している。彼らは「自分たちは台頭する国家だが、先進国は衰退しつつある」とみており、世界秩序をこの視点から変えていきたいと考えている。だが中国の覇権によって形作られる世界の出現は必ずしも望んではいない。各国の利害認識、価値観、政治システム、国家目的は大きく違っている。ロシアは衰退途上にある国家だし、南アフリカが経済大国になることはない。しかも中印の間には激しいライバル意識が存在する。・・・

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