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に関する論文

CFR Expert Brief
アウンサンスーチーと軍の現実主義が支える
ミャンマーの変化

2012年3月号

ジョシュア・クランジック /CFR東南アジア担当フェロー

ミャンマーの軍事政権はなぜ改革を認めたのか。その理由は今もはっきりしない。将軍たちは、自分たちが信用するテインセインに段階的な改革を進めさせれば、報復を伴う民衆蜂起を回避できると考えたのかもしれない。あるいは、中国との関係を強化したことが、逆に中国に依存することへの警戒感を高め、欧米へのアクセスを求めてミャンマーを変革路線へと向かわせた可能性もある。政府はいまも問題を抱えているが、アウンサンスーチーは、今回が国のために貢献できる最後のチャンスであることを理解しているためか、政府に積極的に協力している。いずれにしてもアウンサンスーチーを変革プロセスの中心の据えることが不可欠だ。困難な現状を乗り切るのに必要な道義的正統性をもっているのは彼女だけだ。一方、現状で、過去の犯罪を暴いて高齢の将軍たちを政治の道具にすれば、ミャンマーのチャンスは潰され、改革の流れは潰えることになるだろう。

Foreign Affairs Update
シリアを擁護するロシアの立場
――宗派間抗争と中東の地政学

2012年3月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー・モスクワセンター所長

ロシア政府の高官や政府に近い専門家の多くは、昨今における欧米の行動を非常にシニカルにみている。「ワシントンは、エジプトでの影響力を確保しようと古くからの同盟パートナーであるムバラクを見限り、石油契約を維持するためにリビアとの戦争に関与し、アメリカの第五艦隊の基地が存在するという理由でバーレーンへのサウジ介入に見て見ぬふりをした。そしていまや、イランからアラブ世界における唯一の同盟国をとりあげようと、シリアのアサド政権を倒そうとしている」。ロシアはこれらの戦争に直接的な利害は持っていない。だが少なくとも、危険で根拠を失いつつあるかにみえるアメリカの地域戦略の尻馬に乗りたいとは考えていない。・・・モスクワのシリアへの態度は、最近におけるリビアの運命、シリアの反体制派に対する不信、そして、アメリカの意図に対する懸念によって規定されている。

The Clash of Ideas
アジアのナショナリズムと革命思想(1950年)

2012年3月号

ジョン・K・フェアバンク ハーバード大学教授(中国史)

1930年代初頭、毛が引き継いだ共産党は衰退途上にあった。事実、1937年に日本が中国を侵略するまで、共産党は中国政治ではまったく目立たない存在だった。しかしその後共産党は、中国北方における愛国主義運動の指導的役割を担うようになった。外国の専門家が彼らを愛国主義者と呼んだのは間違いではなかった。外国の侵略者が家屋に火を放ち、虐殺行為を行っているさなかに、農民を組織するのは簡単ではなかったが、日本軍の行動が、結果的には中国北部の農民を中国共産党の懐へと送り込んだ。共産党側は準備万端調えて、農民が自分たちのところへ転がり込んでくるのを待っていればよかった。重要なポイントは、あえて地主階級への反対を前面に出すより、むしろ抗日戦への愛国主義を訴えるほうが、国内の青年知識層が呼びかけに応じる可能性が高いことを共産主義勢力が理解していたことだ。

日本はこれまで最先端の原子力技術の開発を試み、この領域のリーダーになることを目指してきたが、フクシマを経たいまや、原発施設の再稼働に向けて社会の支持を得られるかどうか、先の見えない状況に追い込まれている。・・・現在日本は、(原発停止による電力生産の低下を火力発電で埋め合わせようと)より多くの液化天然ガス(LNG)を輸入しているが、LNG価格はかつての3倍のレベルへと上昇している。しかも、(日本の現実を考えると)原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていけるとも思えない。原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていこうにも、日本は風力、ソーラー、地熱など再生可能エネルギーの促進を阻む構造的な障害を持っているからだ。電力会社も関係省庁も大規模な電力生産施設を好む文化的体質を持っており、風力やソーラーなどの基本的に「分散型」の技術導入には難色を示す傾向がある。この文化を政治的な意思とリーダーシップで変化させていくには、かなりの時間がかかるかだろう。

The Clash of Ideas
ヒトラーのドイツ(1933年)

2012年3月号

ハミルトン・F・アームストロング フォーリン・アフェアーズ誌初代編集長

人々は忽然と姿を消した。この14年間、ワイマール共和国の政府要人、あるいはビジネスの指導者として世界が見聞きしてきた人々は忽然と表舞台から姿を消した。例外はあるが、この波は大きなうねりとともに社会を飲み込み、連日のように、一人ずつ、昔日の指導者や仲間たちがナチスという暗黒の海にさらわれていく。

あまりにワイマール共和国の面影がなくなってしまったために、ナチス党員には、ここにかつて共和国が存在したことさえ信じられないかもしれない。このうねりは、命令を下す叫び声や行進の足音で途切れた悪夢よりも、めまぐるしいペースで社会を飲み込んでいる。・・・

Foreign Affairs Update
フクシマ危機を前にホワイトハウスはどう動いたか
―米市民の保護か日米関係への配慮か

2012年3月号

ジェフリー・A・ベーダー 前米国家情報会議東アジア担当シニアディレクター

われわれはフクシマ第1原発で何が起きているかの情報収集に奔走した。「日本政府は分かっていることのすべてをわれわれに伝えるつもりはなく、状況を取り繕っているのではないか」と考える者もいた。だが、大統領の科学技術担当顧問を務めるジョン・ホルドレンは、「原子炉内の状態を把握するための装置がどれも機能していない以上、大枠の情報しか入手できないのは無理もない」と日本側の対応に一定の理解を示した。・・・だが、フクシマの事態が容易ならざるものであることは明らかだった。・・・われわれは、日本からの避難を求める米大使館や軍関係者のアメリカ人家族(配偶者や子供)の意向を尊重したかった。しかし、われわれは日本の社会をパニックに陥れることは望んでいなかったし・・・将来の日米関係にダメージが出ないようにする必要もあった。・・・

CFR Meeting
サウジはアラブの春とイラン問題をどうとらえているか

2012年3月号

グレゴリー・ゴース/ バーモント大学教授

国内の反体制派がイデオロギー、宗派、民族などの社会集団の垣根を越えて、体制を倒すという目的にむけて連帯を組織できたかどうか。これが、アラブの春によって中東で体制が倒された国とそうでない国を分けた重要なポイントだ。サウジはどの集団をどの皇太子が担当するかを決めることで、ビジネスコミュニティ、部族社会その他とのネットワークを巧みに築き、これらの集団を政治的に去勢してきた。これが、サウジが嵐を乗り切れた理由だろう。一方、中東での宗派対立が高まれば、アルカイダのような、スンニ派の過激勢力が勢いづくだけで、サウジのためにもならない。だが、すでに宗派対立の構図で中東政治が動きだし、アラブ対ペルシャの対立図式が描かれつつある。イランが明確に核兵器の開発に乗り出すのなら、サウジも核を獲得すべきだという立場がすでにリヤドでは主流になっている。・・・

石油も石炭も原子力も必要としない世界
―― 超素材と「インテグレーティブ・デザイン」の力

2012年3月号

アモリー・B・ロビンス ロッキーマウンテン研究所議長

2050年までには、石油も石炭も原子力も必要とせず、天然ガスの消費量も現在の3分の2程度で済む時代が実現する。・・・自動車、建物、そして電力生産の効率をいかに高めていくかがこの変化の鍵を握る。このエネルギーシフトに必要なテクノロジーはすでに存在する。第1に自動車を、炭素繊維を用いたボディに、そのエンジンを電気稼動型に切り替え、カーシェアリング、ライドシェアリングなど車をもっと生産的に利用するようにする。第2に、ビルや工場の設計と素材を変えるだけで、エネルギーの使用効率を現在よりも数倍高めることができる。第3に、電力供給システムをより多様で分散した再生可能エネルギーを中心としたものへと近代化していけば、電力供給をよりクリーンかつ安全で信頼できるものにできる。この概念は現実離れしているように思えるかもしれない。だが、困難な問題に対処するには、(既成概念を捨てて)境界を広げて問題をとらえ直す必要がある。つまり、エネルギー消費の多い交通・運輸、ビル、産業、電力生産部門を、個別にとらえるのではなく、一つとみなすのだ。・・・

「アラブの春」とその後

2012年3月号

フォアド・アジャミー
スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェロー

表面的な安定の下に垣間見えるアラブ世界の政治的現実は悲惨で不毛だった。忌まわしい支配者、ふさぎ込んだ大衆、そして、いかなる正統性もない秩序に対する不満から身を投げ打つテロリストたち。そこに同意という言葉は存在せず、支配者と支配される側をつなぐ唯一の感情は疑いと恐れだった。だが、モハメド・ブアジジが、その死をもって、新しい仲間を団結させた。中東のあらゆる地域で非常に多くの若者が彼の叫びに心を打たれ、行動を起こした。だが、ローマの歴史家タキトゥスは、「悪い皇帝を倒した後の最善の日は、彼を倒したその日だった」と書き残している。たしかにアラブ世界の第三の政治的覚醒は歴史的な流れをもっている。だが、そこには、危険も約束も潜んでいる。自由を手にできる可能性もあるが、監獄に舞い戻る可能性もある。

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