CFR Events
激化する宗派対立と中東の混乱
2016年2月号
「この10年間でイランは、イラク、レバントなど、かつてはプレゼンスをもっていなかった地域へと影響力を拡大している」とサウジはみている。一方イランは、「包囲されたサウジは、最近のシーア派指導者の処刑を含めて、自滅的な行動をとっている」とみなし、「これはリヤドが国内的に追い込まれている証拠だ」と考えている。もっとも、サウジでシーア派指導者が処刑されたことにイランが反発し宗派対立が激化することは、サウジにとっては織り込み済みだった。宗派対立の緊張を高め、スンニ派の立場を擁護していくとアピールし、サウジにおける支配体制を正当化できるとすれば、それはリヤドの利益になるからだ。さらに、今回の事件を通じてサウジが送ろうとしたメッセージの一つはワシントンを意識していた。すでに「アメリカはサウジの立場に反対している」とリヤドが判断しており、メッセージの目的は「サウジかイランか、どちらかを選ぶように」とワシントンに再考を迫ることにあった。・・・シリアやイエメンでの地域紛争が続く限り、基層部分に宗派対立という構図をもつサウジとイランの地政学的なライバル抗争は今後も続くだろう。・・・・
