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論文データベース(最新論文順)

ホット・マネーを動かすのはだれか

2000年4月号

マーチン・N・ベイリー 米大統領経済諮問委員会委員長 、ダイアナ・ファレル マッキンゼー社プリンシパル、 スーザン・ランド マッキンゼー社コンサルタント

一般に外国の銀行による融資は、ポートフォリオ投資よりも変化が激しく、ボラタイルである国内での不良債権の山とお寒い限りの投資全般の収益という事態に直面した日本の銀行は、危機前にはタイや東南アジアにおける最大の貸手になっていた。実際には、ヘッジファンドは流動性を提供することで、市場のボラティリティーを緩和させる重要な役割を果たしてきた。

多国間協調と単独主義の間

2000年2月号

ロバート・W・タッカー/ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授

「グローバリゼーションは実在するが秩序を保証できないし、一方で多極世界は秩序を保証できるかもしれないが、実在しない」。したがって、アメリカがもつ支配的な力が世界秩序への特別な責任を作り出すのは避けられない。ここでの問題は、アメリカは単独で行動すべきか、あるいは他国とともに行動すべきか、という古くからのテーマにある。「国際コミュニティーによるコンセンサスなどいまなお幻想」なのだから、現実には原則や利益を共有する「より小さなコミュニティーによる支持」をアメリカは模索し、こうした諸国ととも多国間協調がともなう制約や妥協という重荷を担っていくべきだろう。アメリカが力の誘惑に抵抗できる唯一の国家だと信じこむのは問題がある。肝に銘ずべきは、「力に乱用は付き物だが、一方で力は責任を生む」という真理のバランスである。

情報化時代の新外交戦略

2000年2・3月号

ロバート・B・ゾーリック 元米国務次官(ブッシュ政権)

情報革命による社会・金融・軍事部門での革命的変化が、グローバルな政治・経済そして安全保障環境を規定していくのは間違いない。共和党外交は、そのような世界では民間企業同様に国にとっても「開放性を維持し変化に迅速に対応する能力」こそがパワーとなることを自覚しており、特定領域では政府を上回る影響力を持つであろう民間組織やNGOのネットワークの役割にも十分配慮していくだろう。海外に「規制緩和と市場開放を求める貿易政策」が、市民社会を育み、政治的な自由を求める世界の人々の向上心を満たすことにもつながる。一方、軍事政策の基本目的は、「過去にアメリカを脅かした歴史を持つユーラシアの東西の危険な国家が位置する地域」での安全保障を間違いのないものとすることだ。この点からも日本は今後、段階的に東アジアの安全保障をめぐってより多くの責任を引き受けるようになるべきで、また、この「歴史的な変化を近隣諸国が受け入れるように説得するアメリカの努力が、日本の国内世論を変えるカギとなる」。さらに、インドが世界における自らの居場所についての理解を深め、あらゆる面でより開放的になれば、「ユーラシアの不確実に対処する際のアメリカの大切なパートナー」になれるだろう。

デイトン後のボスニアの現実

2000年1月号

アイヴォ・ダールダー ブルッキングス研究所上席研究員

デイトン後のボス二アがなんとか生きながらえているのは、ひとえに国際援助のおかげである。現地勢力による自力再生の見込みはまったくたっていないし、援助もいずれ打ち切られる運命にある。しかも、世界の関心はすでにボスニアではなく、コソボの再建へと向かっている。国際社会は、敵対行為の抑止だけでなく、デイトン合意のもう一つの目的である、安定した経済基盤を備え、民主的で多民族から成るのボスニアの実現という野心的な課題を、もはや放棄すべきなのだろうか。それとも、その実現にむけて関与を再度強化させるべきなのだろうか。

インドネシア大統領の政治的ギャンブル  

2000年1月号

アダム・シュワルツ   前・外交問題評議会フェロー

メガワティの副大統領起用から異なる宗教・民族・地域的背景を持つ多彩な顔ぶれの組閣に至るまで、大統領選挙以後にワヒド大統領がつくりだした政治的潮流は、ギャンブル以外の何ものでもない。新大統領はこうした内閣をつうじて、分離主義が突きつけるこの国の統合に対する脅威を緩和させる賭けに打って出たのだ。実際、分離主義に端を発する散発的な軍事紛争が続き、現政府が軍事政権化するとすれば、それはアチェの独立以上に危険な事態となる。民族・文化・言語の多様性こそがインドネシアの強みであるという信条を持つワヒドは、政治・経済的分権化を進めて、連邦制の枠組みをもって分離主義に対処しようと試みている。また、イスラム教徒でありながらイスラエルとの関係強化を公言し、一方で欧米よりもアジア重視の外交路線をとる大統領の真意は、国内政治上のリスク、経済利益、そしてインドネシアの国際的地位の向上という意図に導かれている。妥協の人であり、優れたバランス感覚の持ち主である新大統領の戦略を検証し、政治的ギャンブルの行く末を探る(本文は一九九九年十一月十一日にワシントンで開かれた外交問題評議会のミーティング・プログラムでのスピーチ。「フォーリン・アフェアーズ」誌には掲載されていない)。

バルカン経済にニューディール政策を

2000年1月号

ベン・ステイル 外交問題評議会シニア・フェロー スーザン・L・ウッドワード ロンドン大学国防研究センター上席研究員

南東ヨーロッパに長期的な安定と非民族主義的な政策が根づくかどうかは、この地域の「経済」がどうなるかによる。欧米が、バルカン危機の本質を修正可能な政策上の破綻としてではなく、この地域に特有な民族主義による紛争、民族間の敵意という構図でとらえ続ける限り、現地の改革が前進することはあり得ない。必要なのは、「南東ヨーロッパの欧州化」に向けた欧州連合(EU)の柔軟で明確なコミットメントだ。バルカンの欧州化とは、すでにEU内に根づいている、国境を超えた通貨・貿易・投資のアレンジメントをヨーロッパの南東部へと広げることで実現する。これによって育まれる南東ヨーロッパの内的統合とヨーロッパとの一体化への希望こそが、腐敗に彩られ、投資も呼び込めず、とかく民族主義に振り回されがちなバルカン地域での改革努力を喚起する唯一の処方箋である。

ミサイル防衛の可能性と限界

2000年1月号

マイケル・オハンロン/ブルッキングス研究所上席研究員

二十一世紀の安全保障戦略のカギは、ミサイル防衛システムである。ミサイル防衛システムとは、基本的に、相手のミサイル発射を探知・追跡する衛星の赤外線センサー、飛来するミサイルを捕捉し迎撃ミサイルを誘導するレーダー、そして迎撃ミサイル本体によって構成される。短距離・中距離ミサイルを迎撃する防衛システムを戦域ミサイル防衛(TMD)と呼び、大陸間弾道弾などによる攻撃からアメリカ本土を防衛するのが米本土ミサイル防衛(NMD)である。TMDシステムの信頼性はすでに確立されており、実際、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)という脅威を近くに抱えるアジアの同盟諸国がTMD導入をとりやめるとはもはや考えにくい。一方、NMDの場合、まだ技術的な課題を伴うために、明確な結論は出ていない。とくにNMD論争に顕著なのは、技術的に可能なことは現実にも可能であるととらえる短絡論に終始する賛成派と、冷戦期の戦略や思考から抜けだせない反対派との議論がかみ合わず、本来の安全保障概念が無視されていることだ。NMDの技術高度化を図っても、それによって米ロ関係などの重要な外交関係が緊張するようでは意味がない。進歩した技術も万能ではなく、高度の防衛システムの配備には外交的悪影響も伴うことを踏まえた冷静な安全保障論争が必要である。

NATOのコソボ作戦を総括する

1999年12月号

ハビエル・ソラナ   前NATO事務総長

北大西洋条約機構(NATO)は突然、コソボ空爆を開始したわけではない。空爆は、すべての外交的手段がうまく機能しないのを見届けたうえで実施された。一方、この作戦を実施すれば、民間人が犠牲になり、ロシアとの関係が悪化し、コソボへの長期的なコミットメントが必要になるかもしれないという「リスク」の存在も、NATOは当初から理解していた。だが、行動を起こさなければ、大西洋コミュニティーがセルビアによる民族浄化作戦を事実上容認することになるため、リスクを引き受けても行動を起こす価値があると判断した。そして、作戦は「成功」した。難民は故郷へと再入植し、国連の参加によってコソボの復興も進んでいる。「無関心を決め込むことの最終的コストのほうが、エンゲージメント(穏やかな関与)が必要とするコストよりも、はるかに高い」という教訓を、われわれは再び学んだのである。

外交問題評議会タスクフォース・レポート
国際金融構造の将来

1999年12月号

ピーター・ピーターソン、カーラ・ヒルズ、モーリス・ゴールドシュタイン他

一九九七年にタイで始まった金融混乱によって、国際コミュニティーは危機の予防と解決に関するこれまでの制度、構造、そして政策の見直しを余儀なくされている。一九九八年九月、クリントン米大統領は、卓越した民間組織が国際金融構造改革の必要性に関する分析をまとめるべきだと提言した。これを踏まえて、外交問題評議会は、ピーター・ピーターソンとカーラ・ヒルズを共同議長とする「国際金融構造の将来」を考えるタスクフォースを組織した(ピーター・ピーターソンは外交問題評議会理事長で、ブラックストーン・グループ会長を兼務。ニクソン政権で商務長官を務めた。カーラ・ヒルズは、ヒルズ・アンド・カンパニーの最高経営責任者で、ブッシュ政権の通商代表部代表を務めた)。プロジェクト・ディレクターを務め、このリポートを執筆したのは、国際通貨基金(IMF)の前・調査副ディレクターで、現在は国際経済研究所上席研究員のモーリス・ゴールドシュタインである。タスクフォースの参加メンバーについては、文末のメンバーリストを参照されたい。以下の論文は、評議会のタスクフォース・リポートの統括である。リポートの全文と議論の少数意見は評議会のウェブ(www.cfr.org)で公開している。

可哀想な国連

1999年12月号

マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク誌記者

このままでいけば、クリントン政権は国連を無視し、国連システムを崩壊させた米政権として記憶されることになりかねない。コソボ空爆の際には北大西洋条約機構(NATO)を頼みに安全保障理事会を迂回し、その後には人道的単独介入をめぐる「クリントン・ドクトリン」の構築を試み、さらに、東ティモール問題を契機に、アジア太平洋経済協力会議(APEC)を地域的な安全保障フォーラムにする可能性も示唆されている。しかし、組織されたフォーラムであれ、富める諸国の一時的連帯関係であれ、国連という枠組みを離れてうまく問題解決にあたることはできず、この点、アメリカとて例外ではない。「唯一の超大国もひとり頂点にいるわけではない」。グローバルな問題への取り組みには国連システムが不可欠であり、今や国連とアメリカの関係修復に向けたワシントンと国連本部間の「シャトル外交」が急務だろう。

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