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米国に関する論文

CFRインタビュー
米ロ関係の悪化は必然ではない
――軍備管理交渉で米ロ関係の安定化を

2008年11月号

スティーブン・パイファー ブルッキングズ研究所客員フェロー

 「ロシアのグルジア侵略の真意は、モスクワがロシア周辺地域で影響力を再確立することに本気であることを示すことにあり、これこそ、われわれが今後対応を考えていくべき問題だ」。グルジア侵攻をめぐるロシアの真意をこう分析するスティーブン・パイファーは、アメリカの新大統領は、国際ルールを踏みはずした場合にはペナルティーを科すことを明確にモスクワに伝える一方で、核関連物質の管理など、両国が利益を共有している領域では協力関係を強化し、うまくバランスをとる必要があると指摘し、米ロ間の軍備管理交渉を再開することこそ、軍縮を上回るプラスの作用を両国の関係にもたらせるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
ラブロフ・ロシア外相が語る
グルジア紛争と米ロ関係

2008年11月号

スピーカー
セルゲイ・ラブロフ  ロシア外相
司会
デビッド・レムニック  ニューヨーカー誌エディター

「ロシアとの協調を望む案件のリスト、そうでない案件のリストをアメリカが持っているのなら、それを教えてほ しい。そうすれば、われわれはもっとうまくアメリカとの関係を管理していける。……私は、8月8日の早朝に、サーカシビリ大統領が試みたような血なまぐさい侵略を今後誰も起こさないようになること、誰もロシア市民を殺さないことを望む。ここでの人々の選択ははっきりしている。国際合意に基づき展開していたロシアの平和維持部隊のメンバーを含む、数百名のロシア市民を殺した勢力を支持するのか、それとも、そうした勢力を支持しないかだ」

CFRインタビュー
カーライル・グループ、
D・ルーベンシュタインが語る
金融危機第2幕に備えよ
――強欲は鳴りをひそめ、恐怖がとって代わった

2008年11月号

デビッド・M・ルーベンシュタイン カーライル・グループ共同創設者兼マネージング・ディレクター

 アメリカの株式市場が下落し、世界中の主要株式市場も連鎖的に下落したことを受けて、専門家の多くは、2008年の金融危機はすでにパニックを引き起こしていると考えるようになった。大手プライベート・エクイティのカーライル・グループの創設者で、現在、マネージング・ディレクターを務めるデビッド・M・ルーベンシュタインは、パニックと恐怖を緩和するには、「なりふりかまわずに」あらゆる対策を打たなければならないと主張する。
 米外交問題評議会(CFR)の役員でもあるルーベンシュタインは、現在起きている株式市場の暴落と信用収縮は金融危機の「氷山の一角」にすぎないと述べ、この数十年間にわたって世界経済を牽引してきた金融および経済の原動力の徹底的なオーバーホールが行われることになると今後を見通している。さらなる混乱を回避するには、政府とビジネスの指導者の協調、そして各国政府との協調が必要になると語る。
 現在の混乱はプライベート・エクイティのビジネスにどのような影響を与えるのか。レバレッジ規制はプライベート・エクイティにとっても大きな問題となるとルーベンシュタインはみる。潤沢なキャッシュを手元に持ってはいても、ローンを組むことができなくなれば、プライベート・エクイティは、レバレッジを利用して企業を買収していく戦略を取ることができなくなり、生き残っていくには、どのようにビジネスモデルを変えていくかを考えていかなければならない、と。一方で同氏は、特定の段階になれば、千載一遇の投資チャンスをとらえようとする投資資金が流入し始め、企業が再生していくと考えられるとコメントした。聞き手は、リー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアソシエート・エディター)。

民主国家連盟か、中ロを含む大国間協調か
 ――ブッシュ後の世界秩序の試金石

2008年11月号

チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学教授

民主国家が、今後の世界が多極化と政治的多様性に特徴づけられていくことを理解しないままに、民主国家連盟構想を実現しようと試みても、期待するような「歴史の終わり」という局面への道を切り開いていくことはできない。結局は行き止まりに遭遇するだけだ。新しいグローバルな秩序を誕生させるには、ワシントンとヨーロッパは、台頭する権威主義国家への認識を変えるとともに、北京とモスクワも欧米に歩み寄る必要がある。ワシントンは多様な政体から成る多極世界において、辛抱強く、しかも穏やかに行動していくことを学んでいかなければならない。そのためには、地域内の危機に対処できるように地域機構の能力を整備して強化し、世界の新たなパワーバランスを反映するように国連安保理を改革するとともに、また、主要経済国のフォーラムであるG8を、アメリカ、EU、日本、ロシア、中国、インドで構成されるG6とし、大国間協調の枠組みへと変化させていく必要がある。民主国家連盟構想では、解決策にならない。

ドルの再生と新ブレトンウッズ体制の導入を
 ――固定相場制と金本位制の復活を

2008年11月号

ジェームズ・グラント グラント金利オブザーバー編集長

1971年以後の国際通貨レジームもすでに寿命を迎えつつあり、老朽化の弊害が兆候として表れている。不安定な為替レート、世界規模でのインフレ、対米債権国における中央銀行のバランスシートにドルが積み上げられていることがその証左だ。この20年間にわたって、健全だと考えられていた制度、合理的だと思われていた市場が幾度となく制御不能に陥ってきた。このままでは、世界規模での通貨・金融危機のリスクはますます高まっていく。持続性のある、優れた後継の国際通貨システムが必要だ。それは第二次世界大戦後に生まれた体制と同じく、固定為替相場と金が支える基軸通貨を中心としたシステムになるはずだ。

原油価格がいくばくか低下したとはいえ、世界の石油需要は依然として旺盛で、ガソリン価格はいまも高いレベルで推移している。また、グルジア紛争が起きたこともあって、原油価格の高騰だけでなく、石油というきわめて重要な戦略資源の市場への供給が混乱するリスク、特に資源地域の政情不安が大きな供給リスクになるのではないかと懸念されている。たしかに、理屈上は供給ルートのどの地点においても流れが遮断される危険はあるが、供給が遮断されるリスクが高い地域が一部に集中しているのも事実だ。そうした地域がいわゆる供給ルートのチョークポイント(関所)として知られている。おそらく、シーレーンのチョークポイントとしてもっともよく知られているのがペルシャ湾のホルムズ海峡だ。2008年8月に勃発したロシアとグルジアの戦争によって、新たな資源地帯であるカスピ海周辺地域からの供給・搬出ルートも地政学的な余波を受けるのではないかという懸念が高まっている。カスピ海周辺地域に加えて、北西アフリカのニジェール・デルタ地帯、イラク、ベネズエラという三つの地域や国も、依然として地政学的余波を受けやすい資源地帯だ。世界の原油供給はすでに逼迫しており、ここでさらに供給の乱れが起きれば、不安定な原油価格を再度高騰させる危険がある。

CFRインタビュー
マイケル・クレポンが語る
米印原子力協定の不毛

2008年10月号

マイケル・クレポン ヘンリー・L・スチムソン・センター名誉会長

「米印原子力合意が成立すれば、インドを核実験再開へと向かわせる恐れがある」。アメリカにおける核不拡散研究の第一人者として知られるマイケル・クレポンは、その理由として、国際原子力機関(IAEA)、原子力供給国グループ(NSG)との交渉で、米議会が求めた、核実験を再開した場合のインドに対するペナルティが事実上骨抜きにされたこと、また、最先端技術を用いた核弾頭の起爆装置について、インドは一度実験をしているだけで、技術面からみれば、おそらくもう一度核実験をする必要があることを挙げる。
 核実験を再開した場合の悪影響に加えて、ともに核不拡散条約(NPT)に加盟していないパキスタンとイスラエルが、インド同様に例外措置を求めだす恐れもある。協定がアメリカにビジネス・チャンスをもたらす見込みも乏しく、イランの核開発問題への余波も避けられない。だがそれでも、現実には、米議会は協定を政治的に承認せざるを得ないと考えるだろうと同氏は悲観的にコメントした。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
米次期政権はイランに政策的に
どう関与していくべきか

2008年10月号

スピーカー
バリ・R・ナサル 米外交問題評議会中東担当非常勤シニア・フェロー
レイ・タキー 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー
司会
リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

この5年間におけるアメリカの拡大中東地域における主要な目的は、まず、2002年当時へと現状を引き戻すこと、つまり、イラク戦争が始まる前の現実へと状況を改善していくことにあった。(R・タキー)

 われわれがイランに提供できる最大の安心材料は、外交関係を正常化すること、つまり、テヘランにアメリカの大使館を再び置くことだ。他国とのノーマルな外交関係を持っていれば、より安心感を得ることができる。そうなれば、イランは核開発をついに断念するかもしれない。(V・ナシル)

 アメリカの次期政権は、イランの一定の影響力を「条件付き」で受け入れるという路線を表明するかもしれない。……別の言い方をすれば、核開発問題をめぐって進展がみられないなかで、どうすれば、よりましなアメリカとイランの関係を想定できるかが政策的に議論されることになるだろう。(R・ハース)

イラクの安定の継続か、内戦への回帰か、
その鍵を握る米軍撤退のタイミング
 ――米軍の迅速かつ大規模な撤退を回避せよ

2008年10月号

スティーブン・ビドル   米外交問題評議会シニア・フェロー
マイケル・E・オハンロン   ブルッキングス研究所シニア・フェロー
ケネス・M・ポラック ブルッキングス研究所   セバン中東研究センター所長。

もうしばらく辛抱すれば、現在のイラクの安定が定着し、2010~2011年には大規模な米軍撤退を実施しても、イラクの安定が維持される現実的な見込みが出てきている。スンニ派武装勢力、シーア派武装勢力の力が弱まり、イラク・アルカイダの影響力が低下する一方で、イラク治安部隊が強化され、その結果、政治面でも新しいダイナミクスとインセンティブが作り出されているからだ。民族・宗派間抗争が激しかった過去数年間、イラクの政治勢力の影響力の基盤は、「保護を必要とする者を保護し、保護を必要としていない者を脅迫するための武装勢力を持っていた」ことにあった。しかし、これらの武装勢力は力を失ってきているし、その結果、政治勢力も歩み寄りを模索するようになってきている。この安定を維持し、定着させなければならない。少なくとも、2008年末と2009年末にそれぞれ予定されている地方、国政レベルでの選挙が終わるまでは、相当規模の米軍を維持する必要がある。ある程度の忍耐を持ち、現在のイラクにおける前向きな変化をうまく育んでいけば、永続的なイラクの安定という望みを捨てることなく、近いうちに米軍を撤退させられるようになるかもしれない。

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