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米国に関する論文

CFR Interview
限定的攻撃ではなく、アサド政権の打倒を
―― ペンタゴンによる反体制派の支援強化を

2013年9月号

フレデリック・ホフ
前米政府シリア問題担当特別顧問
大西洋カウンシル中東研究センター シニアフェロー

サリンガス(化学兵器)の使用によって、すでに1400人近くが犠牲になっていると考えられる。さらに、空爆やスカッドミサイルその他の通常兵器による攻撃で、数万のシリア人が犠牲になっている。この状況ゆえに、国内避難民のほぼ2倍にあたる200万人近くのシリア人が難民として外国に流出している。これはシリアにとって、そして近隣諸国にとって壊滅的な事態だ。米政府は、化学兵器使用に対するペナルティとしての限定的攻撃ではなく、アサド政権を倒し、人々の立場を広く代弁できる内包的で、可能な限り宗派色のない新しい政権に置き換えることを目的とする戦略へと切り替える必要がある。そのためにも、近隣諸国における軍事訓練を含む反体制派の支援を強化し、この任務をCIAではなく、ペンタゴンに委ねるべきだろう。

米中に引き裂かれる世界
―― 欧米なき世界と中国なき世界への分裂

2013年9月号

マーク・レナード
ヨーロッパ外交問題評議会共同設立者

冷戦期には、超大国の社会が次第に似た存在になっていくことで、緊張緩和(デタント)が育まれていった。だが、現在の国際的相互依存環境では、このダイナミクスが逆転する。大国間の立場が違えば関係は相互補完的になり、協調へと向かうが、似通った国へと収斂していけば、むしろ対立と紛争のルーツが作り出される。米中関係はまさにこのパターンに符合する。事実、もはや中国には、欧米が主導する国際アジェンダを支持するつもりはなく、中国はすでにグローバル秩序を変化させようと洗練された多国間外交を展開している。欧米も、TPPやTTIPなど、自らの思い通りに国際システムを作り替えようとする中国の能力を制約するような関係と政策を模索している。緊張が高まっていけば、米中関係においてこれまで機会と考えられてきたものが、脅威とみなされるようになる。今後出現するのは、表面的には冷戦構造に似た、新しく奇妙な二極世界になるだろう。

CFR Interview
E・スノーデン事件を法的に検証する
―― 米政府の認識にも問題がある

2013年8月号

スティーブン・I・ブラデック / アメリカン大学教授

ロシアへの一時亡命が認められたエドワード・スノーデンが、アメリカに送還されるかどうか。現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、これは、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。仮に告発の意図があったとしても、スノーデンは政府が所有する情報を盗んだだけでなく、告発手続きの相手であるNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、その情報を漏らすべきではない外国メディアに提供することで、手続きを踏み外している。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンはアメリカの内部告発者保護法の適用対象にはならない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常に大きな変数が絡んでくる。陪審制度の大きな機能の一つは、政府と検察の権力をチェックすることにある。仮に送還が実現して、裁判になるとして、スノーデンの運命を左右する12人の陪審員の一部は彼に同情しているかもしれない。・・・外国情報監視法(FISA)によって、政府による情報活動は適切な監督下におかれ、説明責任も果たされているという米政府の認識には問題がある。どのような結果になるにせよ、法律がテクノロジーの進化についていけていないのは間違いない。デジタル時代のプライバシーが何であるかについて、われわれはもう一度考える必要がある。

急速に悪化する米ロ関係

2013年08月

スティーブン・セスタノビッッチ 米外交問題評議会シニア・フェロー(ロシア担当)

いまや米ロ関係のリセット路線は過去の話だ。この6-9ヶ月間に、両国が協議してきた重要な案件、シリア、イランにはじまり、ヨーロッパへのミサイル防衛の強化、新START条約の目標を拡大する戦略核削減の提案、プーチンが重視する貿易と投資など、どれ一つをとっても進展はない。これに加えて、現在の米ロ関係には、人権問題、スノーデン事件など、ネガティブな要素が数多く存在する。これまでリセットを機能させてきた要因が消失してしまっている。スノーデンを受け入れると表明している国への渡航を、ロシアがアレンジする方法は数多くあった。これらのやり方をとれば、ロシアは問題を解決できていたかもしれない。そうしなかったことにオバマ政権は憤慨し、その結果、オバマが面目を保つ形でモスクワを訪問するのは難しくなった。

いまや問われているのは、アメリカがシリアに対する軍事行動を起こすかどうかではなく、どのように行動を起こすかだ。おそらく、船あるいは航空機から巡航ミサイル攻撃が実施されるだろう。ターゲットはシリアの化学兵器能力そのもので、具体的には、化学兵器貯蔵施設、あるいは、化学兵器を使用した部隊などが考えられる。さらに、シリア軍の指揮統制、軍事能力、政治指導者など、他にも攻撃のターゲットの潜在リストは数多く存在する。但し、主要な目的はシリア政府がこれ以上化学兵器を用いないようにすること、そして大量破壊兵器の使用を抑止するグローバルな規範を強化することだ。ワシントンには、シリア内戦の主要なプレイヤーになるつもりはないだろう。・・・・攻撃の国際的正統性は安保理からは得られないとしても、攻撃を支持する外交的な有志同盟は相当な規模に達する。但し、実際にはシリアへの軍事攻撃を試みるのは、アメリカと一握りの諸国にとどまるだろう。

北朝鮮は経済改革を模索している
―― 崩壊か経済改革か

2013年8月号

ジョン・デルーリー 延世大学国際関係大学院准教授

北朝鮮は2030年までに崩壊すると予測する専門家もいるが、平壌はすでに中国流の経済改革導入への道を歩みつつあるとみなすこともできる。これを理解するには、中国はどのような手順で改革へと歩を進めたかを考える必要がある。1960年代に核兵器を獲得した北京は、1970年代に対米デタントによって体制の安定と安全を確保した上で、経済改革路線を優先させるようになった。つまり、今日の北朝鮮は1970年の中国同様に、経済改革に着手する前に、まずワシントンから体制の安全に関する保証を取り付けたいと考えている段階にある。金正恩は「経済建設」の次の局面に進みたいと考えていると示唆し、4月1日には実務派テクノクラートの朴奉珠を首相に登用して、経済成長の舵取りを委ねている。朴奉珠が北朝鮮の首相に抜擢されたこと自体、金正恩が経済を重視し、改革志向を持っていることの現れとみなせる。平壌の穏健派に力を与えるためにも、アメリカは強硬策ではなく、北朝鮮の安全を保証し、経済改革にむけた環境整備に手を貸すべきだ。体制を揺さぶり、崩壊を待つ路線を続ければ、偶発事件によって次なる朝鮮戦争が誘発される恐れがある。

NSAの無節操なスパイ活動
―― 安全保障とプライバシー保護の間

2013年8月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
アブラハム・ニューマン ジョージタウン大学准教授

NSA(米国家安全保障局)がEU(欧州連合)に対して諜報活動を行っていたことが露見すると、ヨーロッパの指導者たちはアメリカに対する怒りを露わにした。ドイツ政府のある高官は、アメリカのやり方は「冷戦期におけるわれわれの敵の手法を想起させる」と状況を皮肉った。長年にわたって、対テロをめぐる情報共有とプライバシー保護のバランスを協議してきた米欧間には情報活動に関する一定の了解と合意がこれまで存在し、当初、ヨーロッパはアメリカに苦言を呈しつつも、比較的落ち着いた対応をみせていた。だが、テロとは何の関係もないEUの官僚たちをNSAが監視対象にしていたことが発覚すると、ヨーロッパにおける振り子は安全保障から再びプライバシーの保護へと大きく振れ、米欧関係は動揺している。ワシントンが関係修復を望むのなら、アメリカもヨーロッパ同様に、政府から独立したプライバシー保護のための組織を国内で立ち上げ、安全保障とプライバシー保護のバランスをとるべきだろう。

E・スノーデン問題を法的に検証する
―― 彼の行動は内部告発とはみなせない

2013年8月号

スティーブン・I・ブラデック アメリカン大学教授

ロシアへの一時亡命が認められたエドワード・スノーデンが、アメリカに送還されるかどうか。現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、これは、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。仮に告発の意図があったとしても、スノーデンは政府が所有する情報を盗んだだけでなく、告発手続きの相手であるNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、その情報を漏らすべきではない外国メディアに提供することで、手続きを踏み外している。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンはアメリカの内部告発者保護法の適用対象にはならない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常に大きな変数が絡んでくる。陪審制度の大きな機能の一つは、政府と検察の権力をチェックすることにある。仮に送還が実現して、裁判になるとして、スノーデンの運命を左右する12人の陪審員の一部は彼に同情しているかもしれない。・・・外国情報監視法(FISA)によって、政府による情報活動は適切な監督下におかれ、説明責任も果たされているという米政府の認識には問題がある。どのような結果になるにせよ、法律がテクノロジーの進化についていけていないのは間違いない。デジタル時代のプライバシーが何であるかについて、われわれはもう一度考える必要がある。

金融政策と財政政策の間
―― イギリスの失策から何を学ぶ

2013年8月号

◎スピーカー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
J・ブラッドフォード・デロング カリフォルニア大学教授
◎プレサイダー
ギデオン・ローズ フォーリン・アフェアーズ誌編集長

「バーナンキは金融緩和に向けてこれまですぐれた措置をとってきた。だがいまでは、われわれは非伝統的な金融政策からは可能な限り、手を引いていくという立場を示唆している。これは、(われわれ金融当局は十分に手を尽くしたのだから)依然として経済が停滞しているのは議会と大統領のせいだと言っているようなものだ。経済の停滞という現状は、財政当局(政府)に責任があり、いまや金融当局としては、長期的な金融の安定に配慮しなければならない。これがバーナンキの本音だろう」。(B・デロング)

「スペイン同様に、イギリスが自国の経済を袋小路に追い込んでしまったのは、中途半端な金融緩和をとり、一方で財政緊縮策をとってしまったからだ。現在、日本は、当時のイギリスとは全く逆のことをしている。日本銀行はついに、われわれが求めてきたような、大胆な量的緩和策をとり、経済は回復しつつある」。(A・ポーゼン)

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