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米国に関する論文

シェール革命の地政学的衝撃

2014年4月号

ロバート・ブラックウィル 米外交問題評議会シニアフェロー
ミーガン・L・オサリバン ハーバード大学ケネディスクール教授

シェール革命によって、世界のエネルギー生産の中枢はユーラシア(ロシア)や中東から他の地域へとシフトし始めている。このグローバル規模での生産と供給のシフトは何を引き起こすか。おそらくエネルギー価格を大きく引き下げる。エネルギー輸出に歳入の多くを依存するロシアと中東産油国は、エネルギー価格の低下によって苦しい財政状況に追い込まれ、政治的安定が揺るがされるかもしれない。一方、供給の拡大と多角化によって世界のエネルギー輸入国は大きな恩恵を手にする。日本や韓国のような東アジアの同盟諸国は、北米からより多くのエネルギー資源を直接輸入し、安定した供給を確保し、エネルギー安全保障を確立するだろう。アメリカの新たなエネルギー資源を、非友好的なエネルギー供給国によって同盟国やパートナーがいたぶられるのを阻止するために用いることもできる。今後、グローバルなエネルギーの流れは大きく変化し、経済関係だけでなく、地政学環境も変化していく。・・・

CFR Meeting
ウクライナ危機とロシア
―― プーチンはどう動くか

2014年3月号

◎スピーカー
スティーブ・セスタノビッチ
米外交問題評議会ロシア担当シニアフェロー
アレクサンダー・モティル
米ラトガース大学教授
◎モデレーター
ロバート・マクマホン
エディター CFR・ORG

東部のルハーンシク、ヤヌコビッチの地元のドネツィク、そしてクリミアは、全般的には親ロシアの政治が今後も続くこと望んでいると考えることもできる。だが、ルハーンシク、ドネツィクでもっとも大きな影響力をもつ人物は富豪のリナ・アクメトフ。彼は欧米とのつながりに大きな利益を有している。つまり、この二つの地域の人口の一部は分離独立を望んでいるが、経済エリートたちは分離独立には反対している。・・・クリミアも一般に言われるほど親ロシア的ではない。・・・ウクライナの分裂は起きないだろう。(A・モティル)

ウクライナ経済は昨年の11月の時点ですでに危機的な状態にあったし、その後、3カ月に及んでいる革命が、この国の国債の格付けとGDP(国内総生産)にプラスに作用しているはずはない(すでにS&Pはウクライナのディフォルトリスクを警告している)。政治的打開策だけでなく、経済的解決策を考案する必要がある。(S・セスタノビッチ)

CFR Interview
プーチンの意図とアメリカの対応

2014年3月号

リチャード・ハース
米外交問題評議会会長

プーチンが今後をどう読んでいるのかはっきりしない。ロシア軍によるクリミア掌握という現実を、プーチンは今後の交渉カードにするつもりなのか、それとも、ウクライナ全土への影響力拡大の布石とするつもりなのか。一方で、この曖昧な現状でNATOをウクライナに関与させれば、それこそ、多くの人が懸念する新冷戦という事態に陥っていく。だが、G8サミットをボイコットしたり、国務長官をキエフに派遣したりする以外にも、アメリカにはできることがある。それは、ウクライナのロシアへの経済依存を軽減するためにもアメリカからウクライナへの天然ガス輸出を拡大し、ポーランドなどの近隣諸国への軍事援助を拡大することだ。もちろん、最悪のシナリオにも備えておくべきだが、ロシアの面目を保つ形で部隊をウクライナから撤退させ、EU、アメリカ、IMFがウクライナへの経済援助をロシアとともに実施することへの合意をまとめることを、まだ断念すべき段階ではない。(聞き手はバーナード・ガーズマン コンサルティングエディター@cfr.org)

中国の対外強硬路線と TPP交渉

2014年2月号

トマス・ボリキー  米外交問題評議会シニアフェロー(経済・開発担当)

2014年11月の米中間選挙が近づくにつれて、米議会のメンバーは政治的反発が予想される貿易協定への批准をためらうようになる。それだけに、交渉で残された難題を解決するには、現時点でハイレベルな外交努力を行う必要がある。中国は、TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉が山場を迎えつつあったタイミングでADIZ(防空識別圏)の設定を発表し、そうした必要性への各国の政治家の意識を一時的に遠のかせた。だが、中国が地域的影響力を強めていることへの対抗バランスを形成するという思惑からTPPを含む一連の貿易合意を模索している東南アジア諸国にとって、中国によるADIZの設定は、そうした貿易合意の必要性を再確認させたことになる。・・・今後、中国がリスクを冒して、南シナ海に新しいADIZを設定するかどうかも予断を許さない状況にある。・・・中国の指導者は、東シナ海におけるADIZ設定に対して(国際的に)大きな反発が起きたことに驚いているようだ。だが、北京は中国市民のナショナリズムが高揚していることも考慮する必要がある。・・・

銀行が破綻する国としない国
――銀行システムを左右する政治文化とは

2014年1月号

チャールズ・W・キャロミリス/コロンビア大学 ビジネススクール教授(金融制度)
スティーブン・H・ハーバー/ スタンフォード大学教授

銀行危機に直面しても、多くの人は、予見できない経済ショックが、そうでなければスムーズに運営されてきたシステムを不安定化させたと考える。だが、この認識は間違っている。これでは、何度も銀行危機を経験する国がある一方で、ほとんど、あるいはまったく銀行システムの危機が起きない国があるという現実を説明できない。実際には、銀行制度は政治によって形作られる。ここで言う政治とは、個人の一時的かつ特有な結びつきではない。政府、バンカー、銀行の株主、預金者、借り手、納税者のインセンティブを形作る社会の基本的統治システムのことだ。法律、政治、規制を、自分たちの都合が良いものへと--しかも多くの場合、他を犠牲にする形で--作り替えようとする連帯が形成される。こうして、政治権力の分配を統治する制度と一体性のある、その国に特有な銀行システムが出現する。・・・

政治的正統性の危機

2014年1月号

イアン・ブレマー ユーラシアグループ代表

政治エリートたちは大きな課題に直面している。市民たちが新しいツールを用いて新たな要求をし、抗議行動を組織化し、集団としてのパワーを培いつつあるからだ。各国政府が次の景気のサイクル、次の選挙、次の政治的移行期までの短期的な問題にばかり目を向けているために、グローバル規模での政府の正統性の危機という事態にわれわれは直面している。アメリカ政治は党派対立に縛られて身動きできず、ヨーロッパでは反EU感情が高まっている。新興国政府も経済成長率が鈍化する一方で、市民の要求が高まり、政府は追い込まれている。政府の指導者たちが適切と考える以上の情報公開を求める市民の圧力が、政府の正統性をさらに脅かしている。しかも、情報を共有するのがきわめて簡単になり、一方で情報漏洩を阻止するのが難しくなっている。・・・

Foreign Affairs Update
東シナ海における中国の現状変革路線
―― 同盟関係とアメリカの立場

2014年1月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所アジア担当上席副会長

中国は地域的現状を少しずつ変革し、東シナ海と南シナ海におけるより大きな影響圏を確立しようと試みている。(日本の尖閣諸島の国有化が緊張を高めたと中国側は主張しているが)尖閣問題を棚上げするとした了解を何度も破って、日本に危機感を抱かせたのは中国の方だ。両国の路線の大きな違いは、尖閣諸島を施政下に置く日本が現状を維持しようと試みているのに対して、中国は強制的圧力を行使して、現状を変革しようと試みていることだ。すでに中国は、フィリピンのスカボロー礁を、強制力を通じて事実上管理下においている。専門家の多くは、中国は同じ戦略を日本に対してもゆっくりと行使するつもりだと考えている。・・・オバマ政権は状況に対するアメリカの決意と同盟国を安心させる秩序だったメッセージを今後も表明していくべきだし、そのためにも、北京の戦略的意図を的確に分析しなければならない。

CFR Briefing
教育ローンは将来への投資か、
未来を抑え込む債務か

2013年12月号

スティーブン・J・マルコビッチ contrubuting editor@cfr.org

アメリカの一流私立大学の場合、授業料と寮費で年間600万円程度の資金が必要になる。家計所得よりも大学学費の方がはるかに高いペースで上昇しているため、いまや「高等教育バブル」が起きるのではないかとさえ懸念されている。当然、教育ローンに頼る人は増えている。だが、その結果、大学卒業時に大きな債務を抱え込むことになる。2011年でみると、米大学卒業生の3分の2が教育ローンを抱えており、平均すると一人あたり2万6600ドルの債務を抱えている。これが将来に向けた良い投資なのか、それとも、未来を拘束する債務なのかをめぐって、論争が起きている。教育ローンは人的資源の育成と将来的な経済投資になり、その恩恵はコストを上回るとする考えがある一方で、その後の経済生活を大きく制約するという批判もあり、社会問題化している。

暴かれたアメリカの偽善
―― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

2013年12月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
マーサ・フィネモアー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学、国際関係論)

E・スノーデンがリークした情報によって情報源や情報収集の手法が明るみに出たとはいえ、予想外のものは何も出てきていない。専門家の多くは、かねて「アメリカは中国にサイバー攻撃をし、ヨーロッパの政府機関を盗聴し、世界のインターネット・コミュニケーションを監視している」と考えてきた。リークが引き起こしたより深刻な問題は、アメリカのダブルスタンダードが明らかになり、理念と原則の国としてのアメリカのイメージを失墜させたことだ。アメリカは、自分たちが唱道する価値を一貫して擁護し、順守してきたわけではなかった。この矛盾を前に、他の諸国は「アメリカが主導する秩序は正統性を欠いている」と判断するかもしれない。ワシントンは(米情報機関の行動に対する)厳格な監視体制を導入し、政策に関する論争をもっと民主的に進めるべきだろう。安易な偽善(とダブルスタンダード)の時代はすでに終わっている。

Foreign Affairs Update
シリコンバレーとプライバシーとNSA
―― 情報革命とプライバシー保護

2013年12月号

アブラハム・ニューマン
ジョージタウン大学准教授

グーグルにとって都合が良いことは、NSA(米国家安全保障局)にとっても都合が良く、NSAが、シリコンバレーが求める穏やかなプライバシー規制を利用して、好きなようにデータを収集・蓄積していたことはいまや明らかだ。ユーザーもいまやこの点を認識しており、今後、新たなテクノロジーによって収集できる個人情報の量と種類が増大していくにつれて、巨大IT企業をこれまでのようには信用しなくなるだろう。テクノロジー企業が、ユーザーの信頼を回復し、経済的成功を維持していくには、これまでのようにプライバシー保護をめぐって企業側の自主規制を重視する路線を見直す必要がある。自主規制は必要だが、それだけでは十分ではない。個人情報は、適切な管理を必要とする貴重なデータであり、IT企業は、不必要なデータ収集を制限すると同時に、そのビジネスモデルにプライバシーの保護と利害共有者としてのユーザー保護を統合していく必要がある。

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