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経済格差と政治的自由
―― 自由と平等をいかに両立させるか

ダニエル・アレン ハーバード大学教授(政治学、教育学)

Equity and American Democracy
―― Why Politics Trumps Economics

Danielle Allen ハーバード大学教授(政治学、教育学)。同大学倫理学センターディレクター。

2016年3月号掲載論文

アメリカの建国の父たちの多くは、政治的自由を実現するには、ある程度の経済的平等が必要であることを理解していた。実際、アメリカで政治的平等と自由がうまく保障されたのは、(土地の分配を通じた)白人社会における経済的平等に依るところが大きかった。だが、19世紀末になると、思想家ウイリアム・グラハム・サムナーは「選択肢は、自由と不平等と適者生存、あるいは、不自由と平等と不適者生存でしかない」と主張した。・・・経済的平等(と格差)が注目されるようになったのはごく最近になってからだ。建国の父たちが信じたように、自由と平等は互いに補完し合える関係となりうる。しかしそれを実現していくには、まず政治的平等を実現する必要がある。そのうえで、政治的平等を社会的、経済的領域における平等を実現するために利用し、またそれらを通じて政治的平等が維持されるように利用していく必要がある。・・・

  • 経済的平等が政治的自由を支える
  • 自由と平等は両立できない
  • 正義の領分
  • 政治的平等を優先せよ
  • 政治的平等をいかに促進するか

<経済的平等が政治的自由を支える>

1990年代に経済格差の拡大トレンドが明らかになって以降、研究者や評論家は、その原因と帰結を熱く議論するようになった。しかし、「(経済的)平等とは何を意味するのか、それをどのように模索するか」について前向きな議論が展開されてきたわけではない。

19世紀半ばに至るまで、アメリカ人は平等と自由を相互に補完し合う概念とみなしてきた。(格差の少ない)経済的平等に支えられた政治的平等は、民主社会の市民が自由を実現するための手段だった。独立宣言は、直面する環境を判断する人の能力は平等であり、正統性をもつ政府の基礎であるコミュニティの状況を判断する能力も同様に平等であるとみなし、政治制度の変更や廃止を決める市民が共有する権利を、自由を保障する唯一の方法として特定している。この点について、エイブラハム・リンカーンは、合衆国は「自由を重視し、すべての人が平等に創られたことを前提に」建国されたと簡潔に表現している。・・・

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