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米国に関する論文

中国のグローバルドローン戦略
―― 対抗するか、取り残されるか

2021年1月号

マイケル・C・ホロウィッツ  ペンシルベニア大学教授  ジョシュア・A・シュワルツ  ペンシルベニア大学 博士候補生  マシュー・ファーマン  テキサスA&M大学 教授(政治学)

2011年まで、軍事ドローンを保有していたのはアメリカ、イギリス、イスラエルの3カ国だけだったが、2011年から2019年の間にその数は18カ国に上昇した。こうした軍事ドローンの拡散は、主要サプライヤーとして中国が出現した時期と一致している。ドローン輸出戦略をとる中国の優位の一つは「相手国政府の立場や内政を問わないこと」にある。一方、アメリカは長く輸出規制を課してきた。トランプ政権が再解釈を通じて規制を緩和するなか、ドローンの輸出を認めるのか、誰に対して洗練された軍事ドローンテクノロジーの輸出を認めるのか。次期政権はこの難しい質問に答えを出すことを迫られる。

「アメリカは敗北しつつある」
―― 米中競争についての北京の見方

2021年1月号

ジュリアン・ゲワーツ  米外交問題評議会 中国担当シニアフェロー

2008年の金融危機を前に、北京の指導者たちは「欧米の衰退が実際に始まった」と考えるようになった。マルクス主義的な歴史の流れを信じる北京の指導者たちは、毛沢東の言う「無為に中国を抑え込もうとする救いようのない反動勢力」のアメリカは、結局は挫折すると考えてきた。この考えが中国の習近平国家主席の世界観を規定している。それだけに、ワシントンは「中国の能力と目的を分析するだけでなく、北京の指導者たちがアメリカをどのように認識しているか」を踏まえた戦略をとらなければならない。アメリカは衰退の一途をたどっているという中国の指導者たちの思い込みを覆す戦略が必要だ。幸い、そのために、アメリカが実行しなければならないことの多くは、ワシントンが管理できる範囲内にあるし、行動のための時間も残されている。

中国が望む世界
―― そのパワーと野心を検証する

2021年1月号

ラナ・ミッター  オックスフォード大学教授(現代中国史・政治)

世界第2位の経済大国である中国が、ライバルが規定した条件で世界秩序に参加するはずはない。特に、2008年のグローバル金融危機以降、中国指導部は、自国の権威主義的統治システムは、自由主義国家に至るプロセスにおける一つの形態ではなく、それ自体が目的地であると明言するようになった。明らかに国際秩序を作り替えることを望んでいる。中国は間違いなく、国際社会の「舞台中央に近づきつつある」と習はすでに宣言している。今後の展開にとっての重要な鍵は、中国が世界における自らの野心を、他国にとってある程度許容できるものにできるかどうかだ。現実には、もっともらしい新世界秩序を作る中国の能力を脅かしているのは、その権威主義体質に他ならない。

コロナ後の経済再建を考える
―― 債務増でも積極財政をとるべき理由

2021年1月号 

ジェイソン・ファーマン  ハーバード大学ケネディスクール 教授(経済政策)

2009年と比べて今回は財政政策上より多くの手を打てる。グローバル金融危機後の2009年1月におけるアメリカの債務残高が国内総生産(GDP)の50%未満だったのに対して、パンデミックを経たバイデンの大統領就任時には債務がGDPの100%におそらく達していることを考慮すれば、この見方は間違っているようにも思えるかもしれない。だが、かつてと現在では金利に違いがある。2009年1月の段階で10年国債の実質金利はおよそ2%だったが、2021年1月のそれはマイナス1%程度になる。現在の公的債務がかつて以上に大きいとしても、キャリーコスト(持ち越し費用)は少なくて済む。バイデンがキャンペーンで約束してきた政策を実施すれば、回復は加速する。景気サイクルだけでなく、ワクチンも追い風を作り出すと期待したい。

農村地帯で続く小さなアウトブレイク
―― コロナ危機が長期化する理由

2021年1月号

タラ・C・スミス  ケント州立大学教授(疫学)

都市部で猛威を振るったコロナウイルスは、いまや多くの農村コミュニティを襲っている。全米で感染ケースが増えているが、一人当たりの感染率がもっとも高いのは農村部や小さな町であることが多い。農村部での感染状況は当面は悪化し続けると考えられる。地方の病院は設備も十分ではないし、ファイザーのワクチンのように保存に特殊な設備が必要なワクチンを管理していくのは難しい。1世紀前のインフルエンザがそうだったように、都市がコロナウイルス感染の拡大を制御できるようになっても、農村部では2021年あるいはより長期的にウイルスへの感染は拡大し続けるかもしれない。

ワクチンへの過大な期待と幻滅
―― 迅速な勝利は期待できない

2021年1月号

ジョシュ・ミショー  カイザーファミリー財団グローバルヘルス 政策担当アソシエートディレクター ジェン・ケイツ  カイザーファミリー財団グローバルヘルス&HIV 政策担当ディレクター 上席副会長

将来のアウトブレイクリスクを排除するには、世界人口の70%がワクチンの接種あるいは感染と回復を通じて、コロナウイルスの免疫を獲得する必要がある。COVID19に感染したのは世界人口の10%と推定されるだけに、グローバル規模のワクチン接種でリスクを抑え込むのは非常に難しい。途上国へのワクチン供給に遅れが生じるのも、ワクチン接種をいやがる人が出てくるのも避けられない。ソーシャルメディアを通じて拡散される反ワクチンのプロパガンダや偽情報が・・・ワクチンへの信頼を貶めるかもしれない。有効なワクチンの供給で、コロナ危機が終わるわけではない。迅速な勝利がもたらされることはなく、むしろ、ウイルスとの長期に及ぶデタントの時代の始まりになる可能性が高い。

迫り来る嵐
―― 米中衝突と大国紛争のリスク

2020年12月号

クリストファー・レイン  テキサスA&M大学教授(国際関係論)

研究者や政治家は、大国間紛争を(想定外として)真の脅威から除外しようとするが、現実には、そのような戦争が起きる条件は依然として存在する。何らかの火種が紛争の引き金を引く可能性は十分にあり、特に、米中間でのリスクは顕著だ。実際、1914年前の英独対立と現代の米中関係の類似性は、衝撃的ですらある。アメリカは自らの姿を、パワーが徐々に衰えているかつての覇権国家イギリスに重ね合わせている。かつてのロンドンのように、敵の台頭は不公正な貿易や経済政策によるものだと憤慨し、ライバルは悪意に満ちたアクターだとみなしている。一方、現在急速に台頭している中国も、第一次大戦前のドイツのように、国際ステージで対等にみなされたいと考え、近隣地域で覇権を確立したがっている。この構図に変化がなければ、向こう数十年以内に両国間で戦争が起きる危険はあるし、そのリスクはかなり高い。

米新政権への北京の期待と不安
―― 米中関係のリセットは可能か

2020年12月号

チェン・リー   ブルッキングス研究所中国センター ディレクター

米大統領選挙後の中国のソーシャルメディアは全般的に安堵と楽観主義にあふれていた。バイデン次期政権の誕生を歓迎していた。だが、そうした楽観ムードも短期間で変化するかもしれない。4年前、北京はトランプ大統領誕生を同様に歓迎していたからだ。北京の指導者の多くは、トランプのことを一緒に何かを達成できるビジネスマンとみていたが、これは希望的観測にすぎなかった。中国の外交エスタブリッシュメントは、警戒と慎重さを維持しつつも、バイデン政権の誕生で関係が改善すればよいと考えている。だが、トランプの対中政策を形作った条件の多くがいまも存在するだけに、米中という超大国間関係のリセットはそう簡単ではないだろう。

イラン政策をトランプから救うには
―― イランとの関係正常化を模索せよ

2020年12月号

トリタ・パーシ  クインシー研究所 上席副会長

トランプ政権は、後継大統領のイラン政策を枠にはめ、アメリカが離脱した核合意の運命を封印したいと考えている。トランプは最後の10週間を利用して、洪水のごとく、経済制裁を乱発してイランを締め上げ、新政権の課題を実現不可能な状況に陥れるつもりだ。だが、バイデンはかつてオバマが(イラン強硬策にアメリカを向かわせようとした)ネタニヤフイスラエル首相を出し抜いたように、トランプの裏をかいて、核合意を超えて両国の関係を大局的に捉えるべきだろう。例えば、イランとの直接的な外交関係をもてば、アメリカがこの地域の紛争を避け、問題があるとワシントンが考えるイランの政策により効果的に影響を与えられるようになる。・・・

世界を修復し、建設する
―― ポストトランプ外交の前提

2020年12月号

リチャード・ハース 外交問題評議会会長

深刻な混乱を引き起こしたこの4年間の米外交は、パンデミックとともに、アメリカと世界に大きなダメージを与えてきた。アメリカの名声そして戦後75年にわたって構築されてきた貴重な同盟関係や国際的制度が深く傷つけられた。トランプ路線を覆すのは歓迎されるとしても、それだけでは問題は解決しない。修復と建設が必要だ。修復とは、存在するが壊れているものを再び機能させることで、建設とは、新しく何かを創造することだ。最初の6―9カ月のバイデン外交は修復に徹すべきで、建設の機会や特定領域の必要性に対処していくのはその後でなければならない。真っ先に取り組むべきはパンデミック対策であることは、はっきりしている。その後にも、地球環境問題、中国、北朝鮮と問題は山積している。

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