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米国に関する論文

アフガニスタン ――軍閥という悪夢

2004年8月号

キャシー・ギャノン/AP通信アフガニスタン・パキスタン支局長

アメリカはアフガニスタンの北部同盟と手を組んで、アルカイダとタリバーンの掃討作戦に乗り出したが、この新しい盟友のなかには、タリバーンが権力の座に就く前にアフガニスタンに未曽有の破壊をもたらした当事者たちが紛れ込んでいた。

北部同盟のムジャヒディンの多くは、タリバーンと比べてさえ遜色ないイスラム原理主義者たちだ。アメリカは北部同盟に武器、資金、さらには名声までも与えて彼らを増長させ、その結果、そもそも脆弱なカルザイの権力基盤がますます損なわれている。

ソフトパワーの衰退と対テロ戦争
――広報外交を強化せよ

2004年8月号

ジョセフ・ナイ/ハーバード大学教授

「親米路線をとることが各国における国内政治にマイナスに作用するまでにアメリカの評判が悪くなれば、外国の政治指導者はアメリカと前向きに協調しようとはしなくなる」。世界におけるアメリカのソフトパワーの重要性をワシントンが軽くみれば、高い代価を強いられることになると警鐘するジョセフ・ナイは、アメリカは広報外交を強化するためにも、「まず相手の言い分に耳を傾ける必要がある」と指摘する。

邦訳文の前半はフォーリン・アフェアーズ五/六月号のナイ論文、後半は米外交問題評議会で開かれたソフトパワーをテーマとするミーティング・プログラムの議事録。いずれも抜粋・要約。後半のミーティングの司会は、ジョセフ・レリベルト、ニューヨーク・タイムズ紙前編集主幹。議事録の全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

リアリズムを捨てたハンチントンの変節
――移民社会アメリカのジレンマ

2004年7月号

アラン・ウルフ/ボストン・カレッジ政治学教授

エリートたちが国益を現実主義の立場から守っていこうとしても、大衆の幻想にどうしても振り回されてしまう。この点を驚くべき洞察力で分析し、エリートのリーダーシップを強く擁護してきたハンチントンだが、ここにきて突如、大衆迎合路線へと転じたようだ。アメリカの一般市民の感情的防衛本能のほうがエリートの冷淡なコスモポリタニズムよりも理にかなっていると主張した彼は、いまや移民排斥論を唱えはじめている。

論争 二〇〇四年米大統領選挙と外交政策

2004年7月号

マックス・ブート/米外交問題評議会シニア・フェロー
スティーブ・クック/米外交問題評議会フェロー

ジョージ・ブッシュ大統領、そして、党大会で民主党の大統領候補に選ばれることが有力視されるジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)は、一連の選挙演説を通じて国家安全保障路線の大枠を示しつつある。問題は、両者が示す外交政策が非常に似通っていることだ。「誰が誰をまねしたのか、どちらが、目的を実現する上でより優れた手段をとれるか」。概念上、路線上の論争よりも、むしろ、外交手段、そして大統領候補たちの政治的資質が二〇〇四年米大統領選挙の外交論争の焦点になる可能性もある。邦訳文は、ともに米外交問題評議会のフェローであるマックス・ブート、スティーブ・クックによる大統領選挙に関する往復書簡からの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

共和党の外交政策
 ――国内的結束と対外的協調を

2004年7月号

チャック・ヘーゲル/米共和党上院議員

共和党の外交政策は同盟関係や国際機関のことを、われわれのパワーを制約するものとしてではなく、われわれの影響力を拡大するものとみなさなければならない。アメリカを含むいかなる国も、単独では21世紀における課題に対処していくことはできない。対テロ戦争に勝利を収めるには、よどみのない同盟関係のネットワークを築く必要がある。

論争 テロリストは「敵の戦闘員」か、犯罪者か

2004年6月号

ラス・ウェッジウッド ジョンズ・ホプキンス大学教授(国際法・外交)
ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウオッチ事務局長

 ケネス・ロスは、「境界線のない戦争――対テロ戦争に戦時ルールを適用すべきか」(フォーリン・アフェアーズ日本語版二〇〇四年五月号)で、ブッシュ政権はアルカイダの幹部を拘束するために戦時ルールと軍事力を用いていると批判している。「対テロ戦争」が本当の戦争であるかどうかは定かでなく、いずれにせよ、テロリストの拘束には戦時ルールではなく、アメリカの刑法(平時の法執行ルール)で十分対処できるはずだ、というのが彼の言い分だ。

 しかし現実に激しい戦争は起きているし、刑法でテロリストに対処していくのではあまりに心許ない。これこそ、十年間にわたってテロ容疑者の逮捕と起訴を試みつつも、結局は、9・11を防げなかったアメリカが遅まきながら得た教訓に他ならない。事実、米連邦捜査局(FBI)のテロ問題に関するタスクフォース議長は、「アルカイダによるテロを通常の殺人事件として扱ってきたが、これでは爆破テロは防げなかった」とコメントしている。たしかに平時ルールでも、テロ容疑者の何人かを活動できないようにすることはできたが、アルカイダがリクルートした要員たちに戦闘方法や爆発物のつくり方を教える訓練キャンプを粉砕することはできなかった。パキスタンやサウジアラビアの情報機関がタリバーンやアルカイダに資金援助するのを、アメリカの司法当局がやめさせられたわけでもない。いまも昔も、アルカイダの活動基盤を破壊するには、刑法(平時ルール)だけでなく、外交、そして武力(戦時ルール)の発動を必要とする。

……

アメリカ帝国という幻想

2004年6月号

G・ジョン・アイケンベリー/ジョージタウン大学教授

帝国論争がまた盛んになってきた。アメリカがかつてない形で世界を支配している以上、当然のことかもしれない。地政学的にもイデオロギー的にも、冷戦後に唯一の超大国となったアメリカの向こうを張っていけるだけの相手はいない。ヨーロッパは内向きとなり、日本も停滞したままだ。半世紀前にアメリカの占領を経験した日独はそれぞれ世界で二番目、三番目の経済大国に成長したが、それでも、安全保障面ではまだアメリカに依存している。

世界で何が起きているのか。それを告げるのは米軍基地と空母の動きである。ロシアもいまやアメリカのほぼ公的な安全保障パートナーだし、中国もこれまでのところは、アメリカの支配的優位を現実として受け入れて自らの行動を決めている。世界の最強国が他の大国の制約を受けずに行動するようになったのは、近代に入ってから初めてのことだ。つまり、われわれはまさにアメリカ率いる単極構造(一極支配型の)世界にある。

オクシデンタリズム
――敵の目に映る西洋の姿

2004年6月号

イアン・ブルマ/バードカレッジ教授
フォアド・アジャミー/ジョンズ・ホプキンス大学教授

アジャミー オクシデンタリズムについて定義してほしい。それは反米主義のことなのか。

ブルマ いや、そうではない。オクシデンタリズムを反米主義ととらえるのはアメリカにありがちな誤解というものだ。実際、アメリカだけでなく、アメリカに敵対的な地域を含む世界の多くの地域で西洋とはアメリカのことで、オクシデンタリズムとは実際にはアメリカの外交政策やハリウッド映画に対する敵意を意味すると考えられている。アメリカの外交政策を批判したり、ハリウッド映画に嫌悪感を抱いたりするのは人の自由であり、何も問題はない。それはわれわれの言うオクシデンタリズムではない。

 オクシデンタリズムとは、もっと古い時代からある、西洋のことを、冷酷でコスモポリタン的で個人主義的な心なき世界とみなす考えのことだ。西洋世界は金儲けと快適さを探し求めることに血道を上げるばかりで、他の固有の社会に有毒な影響を与えるという西洋へのイメージともいえるだろう。もっとも、私がここで指摘しているのは幻想であり、現実に存在する文明の衝突とは違う。オクシデンタリズムとは、自らの社会に深く根ざした固有の価値観に対して西洋が毒をまき散らすという幻想のことだ。実際、あるイランの知識人は、毒をまき散らす西洋という意味を込めて、ウエストキシフィケーション(西洋の毒による汚染)という造語をつくり出している。



*邦訳文は、二〇〇四年四月二十二日にニューヨークの米外交問題評議会で開かれたミーティング・プログラムの議事録からの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

外国へのアウトソーシングと雇用

2004年6月号

ダニエル・W・ドレズナー/シカゴ大学政治学助教授

経済の伸び、とりわけ雇用の伸びが低迷しているために、評論家は企業による外国へのアウトソーシングと国内失業率間の因果関係を突き止めようと試みている。だが、外国へのアウトソーシングが国内での雇用喪失につながると考えるのは、明らかに間違っている。こうした間違った主張には根気よく反論していかなければならない。さもなければ、保護主義が台頭し、低成長、低所得、そして雇用不足という、労働者にとって悲惨な事態に直面することになる。

民主党大統領で米外交は変わる  
――強制ではなく、説得によるリーダーシップを

2004年5月号

サミュエル・バーガー/クリントン政権国家安全保障問題担当大統領補佐官

「われわれは、アメリカの目的の実現を損なわないような手段をとる指導者を必要としているし、同盟諸国をわれわれから離反させていったイデオロギー的な硬直性とは無縁な前向きの現実主義を必要としている」

「世界におけるアメリカの道徳的・政治的な権威と権限を回復しなければならない。そうした権限を回復できれば、われわれが行動を起こすと決断した場合に、アメリカと協調行動をとるように他国を説得できるようになる。国益以上の大きな何かにワシントンがコミットしない限り、他の諸国を説得することはできない」

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