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中東に関する論文

アフガニスタン ――軍閥という悪夢

2004年8月号

キャシー・ギャノン/AP通信アフガニスタン・パキスタン支局長

アメリカはアフガニスタンの北部同盟と手を組んで、アルカイダとタリバーンの掃討作戦に乗り出したが、この新しい盟友のなかには、タリバーンが権力の座に就く前にアフガニスタンに未曽有の破壊をもたらした当事者たちが紛れ込んでいた。

北部同盟のムジャヒディンの多くは、タリバーンと比べてさえ遜色ないイスラム原理主義者たちだ。アメリカは北部同盟に武器、資金、さらには名声までも与えて彼らを増長させ、その結果、そもそも脆弱なカルザイの権力基盤がますます損なわれている。

クラシック・セレクション
アフガニスタンという帝国の墓場

2004年8月

ミルトン・ベアーデン  元駐アフガニスタンCIA作戦部長

パキスタンの荒野の西端、曲がりくねったカイバル峠の最後の前哨地点であるミシュニ・ポイントは、トーカムゲートを見下ろす軍事的要所だ。ここは一見(パキスタンと)アフガニスタンとの秩序だった国境のようにも見えるが、じつはそうではない。この地域を警備するのは、灰色のサルワール・カミーズ(伝統的な緩めのチュニックズボン)をはき黒色のベレー帽をかぶった伝説的な「カイバル・ライフルズ」たち。十九世紀以降、当初は英領インドのために、後にはパキスタンのために、民兵組織「カイバル・ライフルズ」の少佐が人影もまばらなこのアフガニスタン国境の警備の指揮に当たってきた。ミシュニ・ポイントは、南・中央アジアの支配、あるいは、南・中央アジアからの侵略のルートとしてもっとも頻繁に利用された要所である。だが、ここを通過してアフガニスタンへと兵を進めた勢力のすべては、手に負えないアフガニスタン部族との問題に遭遇することになった。

論争 テロリストは「敵の戦闘員」か、犯罪者か

2004年6月号

ラス・ウェッジウッド ジョンズ・ホプキンス大学教授(国際法・外交)
ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウオッチ事務局長

 ケネス・ロスは、「境界線のない戦争――対テロ戦争に戦時ルールを適用すべきか」(フォーリン・アフェアーズ日本語版二〇〇四年五月号)で、ブッシュ政権はアルカイダの幹部を拘束するために戦時ルールと軍事力を用いていると批判している。「対テロ戦争」が本当の戦争であるかどうかは定かでなく、いずれにせよ、テロリストの拘束には戦時ルールではなく、アメリカの刑法(平時の法執行ルール)で十分対処できるはずだ、というのが彼の言い分だ。

 しかし現実に激しい戦争は起きているし、刑法でテロリストに対処していくのではあまりに心許ない。これこそ、十年間にわたってテロ容疑者の逮捕と起訴を試みつつも、結局は、9・11を防げなかったアメリカが遅まきながら得た教訓に他ならない。事実、米連邦捜査局(FBI)のテロ問題に関するタスクフォース議長は、「アルカイダによるテロを通常の殺人事件として扱ってきたが、これでは爆破テロは防げなかった」とコメントしている。たしかに平時ルールでも、テロ容疑者の何人かを活動できないようにすることはできたが、アルカイダがリクルートした要員たちに戦闘方法や爆発物のつくり方を教える訓練キャンプを粉砕することはできなかった。パキスタンやサウジアラビアの情報機関がタリバーンやアルカイダに資金援助するのを、アメリカの司法当局がやめさせられたわけでもない。いまも昔も、アルカイダの活動基盤を破壊するには、刑法(平時ルール)だけでなく、外交、そして武力(戦時ルール)の発動を必要とする。

……

オクシデンタリズム
――敵の目に映る西洋の姿

2004年6月号

イアン・ブルマ/バードカレッジ教授
フォアド・アジャミー/ジョンズ・ホプキンス大学教授

アジャミー オクシデンタリズムについて定義してほしい。それは反米主義のことなのか。

ブルマ いや、そうではない。オクシデンタリズムを反米主義ととらえるのはアメリカにありがちな誤解というものだ。実際、アメリカだけでなく、アメリカに敵対的な地域を含む世界の多くの地域で西洋とはアメリカのことで、オクシデンタリズムとは実際にはアメリカの外交政策やハリウッド映画に対する敵意を意味すると考えられている。アメリカの外交政策を批判したり、ハリウッド映画に嫌悪感を抱いたりするのは人の自由であり、何も問題はない。それはわれわれの言うオクシデンタリズムではない。

 オクシデンタリズムとは、もっと古い時代からある、西洋のことを、冷酷でコスモポリタン的で個人主義的な心なき世界とみなす考えのことだ。西洋世界は金儲けと快適さを探し求めることに血道を上げるばかりで、他の固有の社会に有毒な影響を与えるという西洋へのイメージともいえるだろう。もっとも、私がここで指摘しているのは幻想であり、現実に存在する文明の衝突とは違う。オクシデンタリズムとは、自らの社会に深く根ざした固有の価値観に対して西洋が毒をまき散らすという幻想のことだ。実際、あるイランの知識人は、毒をまき散らす西洋という意味を込めて、ウエストキシフィケーション(西洋の毒による汚染)という造語をつくり出している。



*邦訳文は、二〇〇四年四月二十二日にニューヨークの米外交問題評議会で開かれたミーティング・プログラムの議事録からの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

イラクの衝撃

2004年5月号

CFRイラク問題アップデート

スンニ派・シーア派の蜂起、シーア派内部の権力抗争、外国人人質事件など、六月三十日に予定されているイラク人への主権移譲を控えて、四月以降、イラクでは各勢力の思惑が一気に表面化し、大きな混乱が生じている。主権移譲プロセスの主導権も、アメリカから国連の手に委ねられつつある。国連による主権移譲プロセスはどのようなものになるのか、なぜこの時期に騒乱が起きたのか、イラク国内集団間の合意は形成されるのか、武装蜂起は収拾へと向かうのか。邦訳文は米外交問題評議会のインタビュー、Q&A、タスクフォース・リポートなどを資料に、フォーリン・アフェアーズ・ジャパンで再構成し、Q&A形式でテーマに沿ってまとめた。参考文献については文末を参照。

政治制度とイラク民主化の行方

2004年5月号

グラハム・E・フラー/ランド研究所上席研究員

中東問題の知的で冷静な評論で知られるグラハム・フラーは、「イラクの民衆が正統性を備えていると考えるような民主的システムをアメリカがイラクに残せるかどうか」が今後を大きく左右すると指摘する。そのような制度があれば、シスターニ率いるイラクの多数派であるシーア派は制度の枠内で活動しようとするだろうと指摘するフラーは、一方で、イラク人が正統性を認めるような憲法や政治秩序をアメリカが確立できなければ、各集団は武力を行使して政治権力を手にしようとするだろうと今後を予測する。 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。 全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

シーア派の歴史とイラクの未来

2004年5月号

イツハク・ナカシュ/ブランダイス大学歴史学助教授

ブッシュ政権が考える新生イラクのビジョンとシーア派が思い描く戦後イラクのビジョンの間には大きな開きがある。ワシントンは親米政権が率いる欧米型の民主的イラクを思い描いているが、シーア派、そして他のイラク人の多くは、自分たちの文化と伝統を反映する独立したイラク、ペルシャ湾における米軍の拠点として利用されないイラクの実現を望んでいる。

CFRイラク問題アップデート
イラクの主権回復への道

2004年1月号

シャロン・オッターマン www.cfr.orgのスタッフライター

ブッシュ政権は、イラクへの主権委譲に関する日程を大幅に前倒しして実施することを昨年末決定した。二〇〇四年二月に暫定憲法が導入され、五月には暫定国民会議、六月には暫定政府が組織され、主権も委譲される予定だ。主権の早期委譲を目指す新しい政治プロセスは、反占領勢力に対するゲリラ戦と国内勢力間の抗争を鎮めていくのだろうか。それとも、新たな抗争の火種をつくり出すことになるのか。以下はイラクの今後の政治プロセス、そして暫定憲法の制定、暫定国民会議の形成にますます大きな役割を果たすことになるイラク統治評議会に関するQ&A。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

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