イスラム国の大きな過ち
―― グローバルテロ戦略の弊害
2015年12月号

パリの同時多発テロから、厄介なシナリオがみえてくる。それは、イスラム国がこれまでの地域重視戦略を見直し、グローバルテロ戦略へとシフトしつつあるかもしれないことだ。グローバルテロ戦略をとれば、戦士のリクルートもうまく進む。数多くの外国人メンバーを抱えているだけに、イスラム国はグローバルテロ戦略をとる資産をもっているともみなせる。だがその副作用も大きい。世界的にテロを展開するには組織の指揮統制を緩め、ローカルなテロ分子に行動の自由を与えるしかない。司令塔をもたないテロの場合、ターゲットを間違え、残忍な殺戮を行うようになることも多い。実際、こうした関連組織の暴走ゆえに、世界のイスラム教徒がアルカイダに背を向けるようになったことは広く知られている。世界はさらに忌まわしいテロが起きることを警戒すべきだが、イスラム国がグローバルテロ戦略へシフトしているとすれば、最終的に大きなコストを支払わされることになるだろう。