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アジアに関する論文

2023年のトレンドを考える

2023年2月号

マンジャリ・C・ミラー CFRシニアフェロー(インド、パキスタン、南アジア担当)
J・アンドレス・ギャノン CFRシャントン核安全保障フェロー
イヌ・マナク CFRフェロー(貿易政策担当)
エベニーザー・オバダレ CFRシニアフェロー(アフリカ研究)
クリストファー・M・タトル CFRシニアフェロー、ディレクター(リニューイング・アメリカ・イニシアティブ)

グローバルな食糧不安、今後の地政学的変数の一つであるインドとロシアの関係はどう推移するのか。中国の軍事的脅威にアジアの地域諸国は適切に対処しているか、アフリカの経済成長を妨げている頭脳流出の原因は何か。そしてアメリカにおける政治的分裂状況は、今後さらに激化していくのか。地域、イッシューの専門家が分析する2023年のトレンズ。

現状維持を望む台湾市民
―― 統一はもちろん、独立も望まぬ理由

2023年2月号

ネイサン・F・バトー 中央研究院(台湾)政治学研究所副研究員

圧倒的多数の台湾人が、北京に統治されることにはほとんど関心をもっていない。正式な独立宣言を表明したいわけでもない。独立への支持は年々上昇してきたが、半分をゆうに超える人々が「現状の維持」を望んでいる。なぜ統一に人気がないかは明らかだ。中国と統一すれば、台湾は苦労して手に入れてきた政治的自由のほぼすべてを手放さなければならなくなる。台湾は独自の歴史、文化、アイデンティティ、そして民族的プライドをもっている。ほとんどの人にとって、台湾はすでに完全な主権国家であり、中途半端な状態で存在する自治の島ではない。既成事実をあえて正式に宣言して、波風を立てる必要はない。自らの理想と現状との違いは微々たるものであり、争う価値はないと判断している。

グローバルサウスと米中競争
―― 途上国の立場

2022年9月号

マリア・レプニコバ ジョージア州立大学州立大学 准教授(政治学)

ワシントンがソフトパワー促進策の中核に民主主義の価値と理念を据えているのに対して、中国はより実利的側面に焦点を合わせ、文化とビジネスの魅力を統合しようとしている。一方、グローバルサウスの途上国では、アメリカと中国のソフトパワーは競合するのではなく、相互補完的とみなされていることが多い。要するに、世界の多くの人々は、米中がそれぞれのビジョンと価値によって、自分たちを誘惑しようとする状態に完全に満足している。ワシントンと北京はソフトパワー競争をゼロサムゲームだと思っているが、世界の多くの地域は、それをウィンウィンとみなしている。アメリカモデルと中国モデルのどちらがより魅力的かよりも、それぞれが何をオファーしてくれるかに関心をもっている。

グローバル化からリージョナル化へ
―― 地域内貿易の時代へ

2022年9月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 シニアフェロー(ラテンアメリカ担当)

モノ、カネ、情報、ヒトの国際的移動の半分以上は、三つの主要な地域ハブ、つまり、アジア、ヨーロッパ、北米の内部で起きている。中国、韓国、台湾、ベトナムの経済成長は、アジア地域内部からの投資と投入によって始まった。東欧の急成長は西ヨーロッパとのリンクが発端だった。1993年から2007年にかけて、メキシコの経済規模は2倍以上になったが、その多くは93年にカナダ、アメリカと合意した北米自由貿易協定(NAFTA)の効果で説明できる。一般に理解されているグローバル化はほとんど神話であり、実際に起きているのは貿易のリージョナル化(地域化)に近い。いまやアジア諸国はともに生産し、相互から購入し、最終製品の3分の1近くがアジア域内の消費者に販売されている。アメリカも北米地域ネットワークを強化し、活用する必要がある。・・・

次に何が起きるのか
―― ペロシ訪台と米中関係

2022年9月号

デービッド・サックス 外交問題評議会リサーチアソシエート

第4次台湾海峡危機を前にしているというには時期尚早だが、そこに向かいつつある。中国がこれまでにとった軍事的牽制策は、手始めにすぎず、今後数週間から数カ月の間に、中国は台湾に対する軍事的圧力をさらに高めてくると予想される。より多くの航空機を使った防空識別圏への侵入や中央線の越境がより頻繁に起きるかもしれない。また、台湾の領空や上空に軍用機を飛ばし、エスカレートさせることも考えられる。さらに台湾製品の輸入を禁止し、台湾企業の大陸での活動をより困難にしようとするかもしれない。ペロシ訪中の代償を台湾が支払う以上、アメリカは台湾の痛みを和らげるための努力をしなければならない。

経済秩序とヒエラルヒー
―― 経済主権という幻想

2022年8月号

ブランコ・ミラノビッチ ニューヨーク市立大学 大学院センター教授

いかなる国際経済秩序も「不平等で分裂した主権」で校正される不安定な基盤の上に成り立っている。表向きは対等な加盟国によって構成されていた国際連盟においても、フランス、イタリア、イギリスという戦勝国とその傍らにいたアメリカは、「自国に弱小の加盟国と同じルールが適用される」とは考えてもいなかった。アジアの国である日本には、そもそも大した影響力はなかった。アフリカ諸国や植民地は、このヒエラルヒーの最底辺に位置づけられた。同じような序列は今も続いている。IMFや世界銀行は、融資の見返りに改革を求めるなど、加盟国の主権を日常的に侵害してきた。パワフルな国内の社会集団が自らの求める政策を定着させるために国際条約を結んで、主権を削り取ることも多い。国際経済システムが主権そして主権の平等を尊重すると期待するのは、あまり現実的ではないだろう。

米中にとっての台湾の軍事的価値
―― 台湾とフィリピン海そして同盟諸国

2022年8月号

ブレンダン・L・グリーン シンシナティ大学准教授(政治学) ケイトリン・タルマッジ ジョージタウン大学外交大学院 准教授(安全保障研究)

台湾は、日本、フィリピン、韓国を中国の威圧や攻撃から守る上で重要なフィリピン海へのゲートウェイとして、きわめて重要な軍事的価値をもっている。中国にとっても、台湾統一を求める大きな動機はナショナリズムよりも、その軍事的価値にある。実際、北京が台湾を攻略して、そこに軍事インフラを設営し、フィリピン海への影響力を高めれば、中国の軍事的立場は大きく強化され、アジアの同盟国を防衛する米軍の能力は制限される。将来的に北京が静音型の攻撃型原子力潜水艦や弾道ミサイル潜水艦の艦隊を編成し、台湾の基地に配備すれば、北東アジアのシーレーンを脅かし、核戦力も強化できる。ワシントンの対中政策に関するすべてのジレンマが集約される場所であるだけに、台湾は世界でもっとも困難で危険な問題の一つだ。だが困ったことに、そこにあるのは、災いをもたらしかねない悪い選択肢ばかりだ。

日独の自主路線と対米協調のバランス
―― ポストアメリカの協調モデル

2022年8月号

マーク・レナード ヨーロッパ外交評議会 ディレクター

ロシアのウクライナ侵攻と米中対立の激化は、戦後秩序の現状とパックス・アメリカーナを根底から覆そうとしている。モスクワのウクライナ侵略を前に、ドイツは外交政策を抜本的に見直し、国防費の大幅増額を約束している。中国の覇権主義を警戒する日本も、同じような変貌を遂げようとしているようだ。短期的には、こうした変化は欧米世界の結束、あるいは復活さえも促すかもしれない。しかし、ドイツが新たに自主路線の道を歩み、日本も同様の道を歩めば、対米依存度は低下し、むしろ、近隣諸国との結びつきが大きくなるだろう。このようなシフトは、ヨーロッパとアジアにおける安全保障秩序だけでなく、欧米世界のダイナミクスを大きく変化させる。ベルリンと東京で進行している変化は、ワシントンが戦後に構築し維持してきたものとは異なる、よりバランスのとれた同盟関係が視野に入ってきていることを意味する。・・・

ウクライナ戦争とインドの選択
―― ロシアと欧米、どちらを選ぶのか

2022年7月号

リサ・カーティス 新アメリカ安全保障センター インド太平洋安全保障プログラム部長

ウクライナ戦争をめぐってインドは中立の立場をとり、ロシアを非難するのを控えているが、米政府高官たちはインドの行動を看過できぬとまではみていない。インドがロシアの軍事ハードウエアに依存していること、それを一夜にして解消できないことを理解しているからだ。しかし、ロシアが残虐行為を繰り返すなか、インドがロシアの原油や天然ガスを大量に購入し続ければ、ワシントンはニューデリーがロシアの戦争継続を可能にしているとみなし始めるだろう。インドの中立路線が長期化すれば、ワシントンが「インドを信頼できないパートナーとみなす」ようになる可能性は高まっていく。本意ではなくとも、ニューデリーは、結局、ロシアと欧米のどちらかを選ばなければならなくなる。・・・

ウクライナ危機と北朝鮮
―― 金正恩の思惑、変化した半島情勢

2022年5月号

スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)分析官

ロシアのウクライナ侵攻を前に、北朝鮮の指導者、金正恩は核の兵器庫を増強する決意をさらに強くしたはずだ。核を保有していれば、ロシアがあえてウクライナを攻撃したはずはないと彼は考えている。この半年間、北朝鮮は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、鉄道発車式弾道ミサイル、新型地対空ミサイルシステム、長距離巡航ミサイル、極超音速ミサイルを実験し、3月24日には米全土と欧州を射程に収めると考えられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射している。一方、次期韓国大統領の尹錫悦は文在寅よりもバイデンに近い立場をとると考えられ、平壌が核実験を行えば、2人はより積極的な制裁の実施に向けて連携するだろう。日米韓の連携を強化するために、ソウルが東京との関係を修復する必要性でもバイデンと次期韓国大統領は一致している。

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