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アジアに関する論文

中国の富裕層の上位10%が民間資産の40%以上を保有し、インドにいたっては、富裕層の上位わずか36名が1910億ドルの資産を所有するという、極端な所得格差が両国で生じている。中国とインドは、所得格差に加えて、地域格差、産業間格差という問題も抱えている。経済成長からの恩恵を社会的に再配分するには、政府が、教育、医療、インフラ、開発への投資を増やす必要があるが、インドと中国の場合、こうした領域への投資が進んでいない。貧困に苦しむ農業部門を置き去りにするのではなく、中国とインド政府は、インフラ、医療、教育への投資をさらに強化する必要がある。経済・社会格差の増大は両国における貧困層の削減ペースが鈍化し、経済成長を持続させる基盤が政治的・社会的に脅かされていることを意味するのだから。

変化する北東アジアに
アメリカはどう関与すべきか
 ――日中韓の台頭で流動化する北東アジア秩序

2007年11月号

ジェーソン・T・シャプレン 元朝鮮半島エネルギー開発機構政策顧問
ジェームズ・T・レーニー 元駐韓アメリカ大使

いまや、北東アジアには、危険なダイナミクスが出現している。いずれもパワフルでナショナリスティック、しかも反目の歴史を持つ中国、日本、韓国という3カ国が、同時に対外的低姿勢の時代を脱して覚醒しつつあり、パワーを競い合っている。この半世紀にわたって、アメリカは日本、韓国との関係を、北東アジア政策の基盤とし、日韓との関係を基盤に中国とのアジェンダも規定されると考えてきた。だが、そうした前提はすでに崩れ去っている。中国が、独自のコースを描けるような環境づくりにすでに成功している以上、日韓との2国間関係だけでは、今後の北東アジアにおけるアメリカのパワーの十分な基盤にはなり得ない。北東アジアのパワーバランスは変化しており、アメリカは、そうした変化を促している経済、安全保障、人口動態、ナショナリズムという各ファクター、さらには、中国が外交攻勢を強めているという事実を踏まえた、包括的で一貫性のある一連の政策をとる必要がある。

アジアの安定と平和を維持するには
――多国間フォーラムと自由貿易構想の価値に目を向けよ

2007年11月号

ビクター・D・チャ/前米国家安全保障会議アジア部長

歴史的にみても、アメリカが中国を封じ込めようと日本との関係を強化したり、古くからの同盟諸国や小規模な地域国家に配慮せずに中国との関係強化を模索したりすると、アジアの秩序は常に緊張したものだ。だが今日の状況は、米中が協調関係にあり、日米同盟は堅固な基盤を共有し、日本と中国の関係も改善に向かっている。そこには、見事な勢力均衡が成立している。もちろん、北朝鮮問題が残されており、いかなる政権がワシントンに誕生しようと、核武装した北朝鮮との外交関係の正常化に応じたり、平和条約を結んだりすることはあり得ない。一方、平壌が本気で核を放棄するつもりなら、6者協議は2008年には核の解体という最終局面に進む。今後必要になるアジアの安全保障構造を形作るには、アメリカは、東南アジア諸国へのさらなる関与を行い、2国間関係を強化するとともに、北東アジアでの多国間安全保障フォーラムを構築し、相互に関連する2国間、3国間、多国間の制度ネットワークを形成しなければならない。

CFRインタビュー
塩漬けにされた米印核協力合意の行方
 ――それでも米印の関係強化路線が揺らぐことはない

2007年10月号

ブルース・リーデル ブルッキングス研究所 セバン中東研究センターシニア・フェロー

インドのマンモハン・シン首相はブッシュ大統領との電話会談で、インド議会での共産党の反発ゆえに、米印核(原子力)合意の発効に向けた交渉を当面延期すると伝え、合意の先行きが危ぶまれている。インドの共産党は核協力合意の詳細ではなく、アメリカとの協調関係が強化されることに反発していると指摘するブルッキングス研究所のブルース・リーデルは、「核協力合意は短期的に塩漬けにされたままにされる恐れもあるが、米印の関係強化というトレンドが覆されることはあり得ず、長期的にみれば、今回の後退もしゃっくり程度の問題にすぎないと思う」と指摘する。今後、合意がいかなる運命をたどろうと、2009年に就任するアメリカの新大統領は、この10年間にわたって成熟し、強固な基盤を持つようになった米印関係を、21世紀におけるもっとも重要な2国間関係の一つに引き上げる機会を得ることになる、と同氏はコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)

CFRインタビュー
朝鮮半島新時代の幕開けは近い?

2007年10月号

ドン・オーバードーファー ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール 米韓研究所理事長

2007年10月の南北首脳会談後の盧武鉉韓国大統領の発言からして、北朝鮮はまだ改革・開放路線をとる準備はできていないようだ。北朝鮮は長年にわたって国を閉ざし、外の世界で何が起きているか、民衆が気づかないようにすることに努めてきた。だが、「そうした状況もすでに変化している」と北朝鮮問題の専門家、ドン・オーバードーファーは言う。旧ソビエト・東欧で起きたような民主革命が北朝鮮で起きる可能性は低いとしつつも、自分たちの国が「世界で最先端をいく国ではないこと」をこの国を支配している一握りのエリート層が理解し、動揺しだせば、これが民衆にも影響を与えることになると考えられる、と。今後の北朝鮮問題の進展を左右するファクターとして、ウラン濃縮疑惑、韓国の大統領選挙、そして、北朝鮮が新たに問題を作り出さないことを挙げた同氏は、朝鮮半島に新しい時代がもたらされる日も近いかもしれないとしつつも、「北朝鮮については、何事も楽観的な立場から話をするのは危険である。箱の中から何が出てくるかわからない」と慎重な楽観主義の必要性を示唆した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
核戦争の危険を低下させるには
――他国と協調して脅威を抑え込むか、
それとも壊滅的事態に直面するか

2007年10月号

スピーカー
サム・ナン/元米上院議員
司会
ジェームス・ホーグ/フォーリン・アフェアーズ誌編集長

60年間、核戦争が起きなかったからといって、われわれが安心する理由はどこにもない。今後も、一度や二度、幸運に恵まれる程度では、核戦争を回避するのは難しいかもしれない。核の惨劇を回避できるとすれば、すべての核保有国が核管理をめぐってきわめて慎重な態度をとり、賢明で合理的な判断をするだけでなく、幸運に恵まれる必要がある。……われわれが現在直面する最大の脅威は、壊滅的なテロ、核保有国の数の増大、そして核の偶発使用であり、これらの脅威に対処していくには、モスクワ、北京、その他と協調していかなければならない。他国と協調して脅威を抑え込むか、それとも壊滅的事態に直面するかという選択肢にわれわれは直面している。(S・ナン)

CFRインタビュー
北朝鮮は核の解体には応じない?

2007年9月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会副会長兼研究部長

クリストファー・ヒル米国務次官補は、2007年2月の合意には「北朝鮮が保有するすべての核兵器の解体が含まれる」と解釈しているが、「核廃棄に触れた部分は合意文書にはないし、私は、北朝鮮が保有する核兵器の廃棄・解体に応じるとは考えていない」。北朝鮮との交渉は、核の放棄をめぐっていずれ暗礁に乗り上げる、とみる核不拡散問題の専門家、ゲリー・サモアは、北朝鮮は「老朽化した核施設の解体・無力化には応じるだろうし、彼らが妥当と考える見返りが期待できる状況であれば、これまで秘密にしてきたウラン濃縮活動についても公表するかもしれない」。だが、北朝鮮が核を放棄する可能性は低く、今後、交渉が行き詰まれば、再び中国が、調停役として中枢的な役割を担うようになるだろうと今後を見通した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

平壌への長い道のり
――戦略なき政策決定のケーススタディ

2007年9月号

マイケル・J・マザール 米国防大学教授

北朝鮮への路線をめぐるブッシュ政権の戦略的混迷は、主要な政策決定者が、戦略ではなく、原則でものを考えがちだったことの帰結だし、そうした原則重視路線こそ、ブッシュ政権の特徴である。高官の多くが、戦略ではなく、道義的な考慮を基盤に政策を決定してきた。入念に検討した目的を実現するための戦略志向を重視するのではなく、「北朝鮮が邪悪な政権によって率いられている以上、アメリカはX、あるいはYをしなければならない」と考えてきた。こうした意思決定プロセスには、指導者のパーソナリティーが大いに関係している。よく言われることだが、外交政策をめぐる政策決定者は、ただ一人、大統領しかいない。北朝鮮のケースは、その具体例だ。ブッシュ大統領が政策決定に関与したケースでは、彼が好ましいと思う路線、直感、反応がそのプロセスを支配した。結局、政策決定プロセスの全体が、大統領の意向に左右された。こうしたやり方が機会をつくりだすこともあるが、非常に大きなリスクを伴うこともある。

米議会は米印核合意を阻止する

2007年9月号

エドワード・J・マーキー

インドがアメリカに対して、友人であることの証に核不拡散政策を曲げるように求め、それをアメリカが受け入れればどうなるだろうか。パキスタンは中国に対して同じことをしてほしいと求めるかもしれない。仮に核供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)が、インドとアメリカの核合意を成立させるためにルールからの逸脱を例外措置として認め、その後、パキスタンの要請を受けた中国が同様の例外措置をパキスタンに適用するように求めればどうなるだろうか。アメリカが公然とダブルスタンダードを使い分けておいて、核不拡散の高い基準を維持できるはずがない。そんなやり方は通用しない。自分でたばこを吸い、酒を飲むのに、若者にそうしてはいけないと言って説得力があるだろうか。ブッシュ政権は現実に目を向けていない。米印核合意は、核拡散のドミノ倒し現象を引き起こしかねない。しかし、米議会は、まだ合意を阻む権限を持っている。(エドワード・マーキー)

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