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核をめぐる「北朝鮮・シリア」コネクション?
2007年9月号

1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2007年9月号
2007年9月号
クリストファー・ヒル米国務次官補は、2007年2月の合意には「北朝鮮が保有するすべての核兵器の解体が含まれる」と解釈しているが、「核廃棄に触れた部分は合意文書にはないし、私は、北朝鮮が保有する核兵器の廃棄・解体に応じるとは考えていない」。北朝鮮との交渉は、核の放棄をめぐっていずれ暗礁に乗り上げる、とみる核不拡散問題の専門家、ゲリー・サモアは、北朝鮮は「老朽化した核施設の解体・無力化には応じるだろうし、彼らが妥当と考える見返りが期待できる状況であれば、これまで秘密にしてきたウラン濃縮活動についても公表するかもしれない」。だが、北朝鮮が核を放棄する可能性は低く、今後、交渉が行き詰まれば、再び中国が、調停役として中枢的な役割を担うようになるだろうと今後を見通した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
2007年9月号
北朝鮮への路線をめぐるブッシュ政権の戦略的混迷は、主要な政策決定者が、戦略ではなく、原則でものを考えがちだったことの帰結だし、そうした原則重視路線こそ、ブッシュ政権の特徴である。高官の多くが、戦略ではなく、道義的な考慮を基盤に政策を決定してきた。入念に検討した目的を実現するための戦略志向を重視するのではなく、「北朝鮮が邪悪な政権によって率いられている以上、アメリカはX、あるいはYをしなければならない」と考えてきた。こうした意思決定プロセスには、指導者のパーソナリティーが大いに関係している。よく言われることだが、外交政策をめぐる政策決定者は、ただ一人、大統領しかいない。北朝鮮のケースは、その具体例だ。ブッシュ大統領が政策決定に関与したケースでは、彼が好ましいと思う路線、直感、反応がそのプロセスを支配した。結局、政策決定プロセスの全体が、大統領の意向に左右された。こうしたやり方が機会をつくりだすこともあるが、非常に大きなリスクを伴うこともある。
2007年9月号
インドがアメリカに対して、友人であることの証に核不拡散政策を曲げるように求め、それをアメリカが受け入れればどうなるだろうか。パキスタンは中国に対して同じことをしてほしいと求めるかもしれない。仮に核供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)が、インドとアメリカの核合意を成立させるためにルールからの逸脱を例外措置として認め、その後、パキスタンの要請を受けた中国が同様の例外措置をパキスタンに適用するように求めればどうなるだろうか。アメリカが公然とダブルスタンダードを使い分けておいて、核不拡散の高い基準を維持できるはずがない。そんなやり方は通用しない。自分でたばこを吸い、酒を飲むのに、若者にそうしてはいけないと言って説得力があるだろうか。ブッシュ政権は現実に目を向けていない。米印核合意は、核拡散のドミノ倒し現象を引き起こしかねない。しかし、米議会は、まだ合意を阻む権限を持っている。(エドワード・マーキー)
2007年8月号
「核兵器とプルトニウムは、平壌の指導者が経済利益を引き出し、彼らの考える安全を保障するための戦略的資産である。そうした切り札をなぜ平壌が放棄すると考えるのか、私には理解できない」。北朝鮮との合意がうまくいく保証はどこにもないと考える核不拡散問題の専門家、ジョージ・パーコビッチは、北朝鮮に続いて、イランが核武装することを現状における最大の脅威とみなし、何としても、中国とロシアを欧米の路線に同調させて、安保理、国際社会の団結をイランに対して示すことで、テヘランの自制を求める必要があると強調した。また、「いかなる国も核兵器を生産すべきではないし、核を必要としている国は存在しない」と宣言すべき歴史的節目にあるにもかかわらず、ブッシュ政権が、国際ルールを曲げて、インドとの核協力合意をとりまとめつつ、一方で核兵器の生産制限に関する約束をインドから取り付けなかったのは、ブッシュ政権内の一部に、「中国を牽制するためにはインドはもっと核を保有すべきだ」と考える者がいたからだと批判した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
「米議会にとって北朝鮮との合意は毒そのものだった。(1994年の)枠組み合意が結局は不本意な結果に終わった多くの要因は、おそらくここにあると思う。問題は合意内容を履行するかどうかよりも、政治的な側面にあった。私はいまも、合意内容を完全に履行するのに必要な議会の政治的支持を得られないと判断した大統領と国務長官の読みは間違っていなかったと考えている。枠組み合意は、北朝鮮だけでなく、われわれの手で圧殺された。政治的にきちんと合意をフォローアップできていれば、状況はいまとは全く違うものだったかもしれない」(ウィリアム・J・ペリー)
チョードリ最高裁長官の停職処分に端を発する民衆デモ、モスク占拠事件に対する政府の対応への反発など、ムシャラフ大統領は、パキスタン国内で非常に困難な政治状況に直面している。外交面でも、パキスタンに聖域を持つタリバーンがアフガニスタンへの越境攻撃を続けているために、アフガニスタンとの関係が不安定化し、タリバーン対策を求めるアメリカの圧力にもさらされている。米軍部隊によるタリバーンの聖域に対する攻撃計画の噂も絶えない。しかも、2007年秋には大統領選挙を控えており、ムシャラフが大統領と軍参謀長を兼務していることが大きな争点の一つとされている。国務省で長く南アジアを担当したテレシタ・C・シャッファーは「ムシャラフが、大統領と参謀長を兼務し続けた場合、裁判所には憲法違反の申し立てが行われ、おそらくこのケースについては、裁判所は起訴側の言い分を認めるかもしれない。そうなれば、事態はもっと複雑になる」と予測する。しかも、解散を間近に控えた議会が大統領を選出することの政治的正統性を疑問視する声もある。「裁判所がムシャラフに対してどの程度好意的な解釈を示すかはわからないが、このまま大統領選挙を実施し、ムシャラフが再選されても、反対派による政治的抗議の焦点とされる」とシャッファーは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
2007年8月号
アメリカはイスラマバードがもっと積極的にテロ対策を実行するように求めるべきだし、必要なら、ムシャラフを見限って、文民による民主的統治を要求すべきだという声もある。しかし、現状で、パキスタン軍との信頼関係をさらに傷つけるのは大きな問題だし、民主主義体制の導入をやみくもに求めても問題の解決にはならない。秋に総選挙と大統領選挙を控えたパキスタンにとって、社会の反イスラム過激派勢力を結集し、民主化への移行を少しずつ進める最善の選択肢は、パキスタン人民党(PPP)とムシャラフによる連立政権を成立させることだ。ワシントンの選択肢は「ムシャラフか民主主義か」ではないし、「ムシャラフかイスラム過激派勢力か」でもない。現在のパキスタンは軍と民主主義の双方を必要としている。アメリカがイスラム過激派と暴力との戦いに勝利を収めるには、パキスタンの文民に力を与えると同時に、パキスタン軍の信頼を勝ち取るしかない。
現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。
2007年7月号
ソフトパワー戦略を巧みに展開する中国は超大国への道を着実に歩みつつあるかにみえる。だが一方では、情報技術産業、ソフトウエア産業のブームをバックに、インドが中国のライバルとして急浮上してきている。国内総生産(GDP)の成長率でもインドは中国と肩を並べつつあるし、中国同様に大規模な労働力も持っている。中国とインドの急速な台頭を前に、最終的に経済大国の地位を手にするのは「民主的なインド」なのか、それとも「権威主義の中国」なのか。民主国家インドは、政治的に大きな発言力を持つ貧困層に短期的な痛みを強いる経済改革を断行しないことには、現在の成長路線を維持できなくなるという難題を抱え、経済的発展を遂げた中国には、政治の自由化という難題が待ち受けている。