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テーマに関する論文

輸出主導型経済成長モデルの終わり?
―― アジア経済が苦境に陥っている本当の理由

2009年8月号

ブライアン・P・クライン/外交問題評議会国際関係(日立)フェロー
ケネス・ニール・クキエル/英エコノミスト・ビジネス・金融担当東京駐在特派員

輸出依存型のアジアの経済成長モデルはこれまでうまく機能したし、20世紀最後の25年間にグローバル貿易が世界のGDP成長率の2倍のペースで拡大するという幸運にも恵まれた。しかし、輸出主導型経済成長の時代はすでに終わっている。・・・「アジア経済は欧米経済からほぼ独立した経済圏になった」という見方が一時は浮上したが、実際には、アジアの地域内輸出の約60%は中間財で、中国を経由して最終的には欧米諸国へと輸出されるグローバル・サプライ・チェーンの一部だった。その結果、アメリカの消費需要の激減という事態を前に、アジアの製造業も崖から突き落とされてしまった。アジア諸国が、貿易不均衡を是正し、国内消費を増大させ、社会のセーフティーネットを整備するといった必要不可欠な経済改革を実施しなければ、アジア地域は、長期にわたる低成長から抜け出せなくなる恐れがある。

米ロ関係の歴史的転換は実現するか
―― 戦略的パートナーシップを実現させるには

2009年8月号

ロバート・レグボルド  コロンビア大学名誉教授(政治学)

下手をすると、アメリカ、ロシア、中国間のせめぎ合いが今後の世界を規定することになりかねない。そんな事態にならないようにすることがアメリカの現大統領、そして次期大統領の重大な外交課題だ。オバマ大統領は、摩擦と対立という局面を繰り返した米ロ関係の不毛な10年に終止符を打ち、両国を前途有望な未来へと向かわせる大きなチャンスを手にしている。ワシントンは、対ロ政策を小手先でいじるのではなく、新しいページをめくるべきだし、そのためには戦略的ビジョンが必要になる。そうしたビジョンを基にロシアとの協力関係を実現できれば、アメリカとロシアは、広大な旧ソビエト圏内外の動揺を緩和し、一方で中国やインドなどの新興国を新しい国際秩序に取り込んでいくことに向けて協調できるはずだ。米ロの戦略的パートナーシップの本質はこうした目的を実現することにある。

国際レジームの未来形、 「拡散に対する安全保障構想」に注目せよ

2009年7月号

アミタイ・エツィオーニ ジョージ・ワシントン大学教授(国際関係)

新時代の問題に対処するために、民主国家連盟の創設、あるいは、国連の強化やグローバル連邦の形成など、包括的な新多国間機構の創設を求める声もある。だが、より見込みのある枠組みとは、各国間のさまざまな合意や連携を組み合わせたPSI(拡散に対する安全保障構想)のようなモデルだろう。PSIには本部も事務局も、憲章もルールもない。そこにいるのは「加盟国」ではなく「参加国」で、米国務省はPSIを「活動」と呼んでいる。だが様々な事前合意をつうじて「常にスタンバイしていて、すぐに行動を起こせる」のがPSIの強みだ。たしかに、PSIモデルの場合、さまざまな合意や連携を複雑に重ね合わせる必要がある。だが将来に向けた国際的枠組みを考えていく上でPSIの先例を無視するのは大きな誤りだろう。

論争 グローバル経済危機は
いつまで続くのか
― 日米、二つの経済バブルを検証する

2009年7月号

ロバート・マッドセン……マサチューセッツ工科大学国際研究センター シニア・フェロー
リチャード・カッツ………オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

今回の金融危機の原因はアメリカででたらめな住宅ローンが組まれた結果なのか、それとも、中国その他の過剰貯蓄が米市場に流れこんでバブルを発生させたのか。犯人は行き過ぎた規制緩和なのか、それとも「グローバル・インバランス」なのか。今後のグローバル経済の中期予測、そして規制強化をめぐるグローバル金融改革の方向性は、危機を引き起こした原因を何とみなすかで大きく違ってくる。以下は、フォーリン・アフェアーズ・リポート4月号に掲載したリチャード・カッツの論文『アメリカは「日本の失われた10年」と同じ道をたどるのか』に対するロバート・マッドセンのコメントとカッツの再反論。

経済危機の長期化は避けられない
――市場経済モデルの衰退は地政学秩序をどう変えるか

2009年7月号

ロジャー・アルトマン 元米財務副長官(1993~1994)

「現在の経済危機は秩序を揺るがすグローバルな事件だ。世界経済の今後は全般的にきわめて憂鬱な状況にあり、状況を不安定化させるような深刻なリセッションが世界中を覆い尽くしている。しかも、この30年にわたって地球を席巻してきた市場経済資本主義、グローバル化、規制緩和というアングロ・サクソンモデルの時代が終わりつつある。・・・(今後を考える上で)重要なのは「深刻なグローバル・リセッションが長期化する」と考えられ、金融危機によって受けた大きなダメージゆえに世界の3大経済であるアメリカ、EU、日本が循環的な回復を遂げることはおそらくあり得ないこと、そして中国が明らかな勝者として台頭しつつあることだ」

CFRインタビュー
イランで展開される劇的な権力ドラマの内幕
― ハメネイはムサビを受け入れるか

2009年7月号

カリム・サジャプアー カーネギー国際平和財団 アソシエーツ

「イランにおいて全ての判断を下しているのは最高指導者のハメネイだ。・・・しかしラフサンジャニが、反ハメネイの立場からコムの高位宗教指導者との連帯を組織しようとしているし、真の宗教的権威をもつモンタゼリも今回の選挙とハメネイの統治に公然と挑戦している。ハメネイは、その再選を政府が公表しているアフマディネジャド大統領を生け贄にするか、自分も船から降りるかどうかをいずれ決めなければならなくなる。ハメネイは非常に微妙な立場に立たされている。妥協しすぎれば、弱さの証しとみなされるだろうし、デモはますます拡大する。一方で、全く妥協しなければ、不正が行われたと広く考えられている選挙で再選された人気のない大統領を守るために自らも失脚してしまう危険に直面する」。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティグ・エディター)

「核のない世界」と核拡散という現実
――北朝鮮、イランと核不拡散

2009年7月号

スピーカー
 ウィリアム・ペリー
元米国務長官
ブレント・スコークロフト
元国家安全保障担当大統領補佐官
司会
ジャクソン・ディール
ワシントン・ポスト紙論説ページ副編集長

「核のない世界の実現にもっぱら焦点を合わせれば、戦争や危機を回避するという目的に目がいかなくなってしまう。・・・私に言わせれば、核兵器が存在しなかった時代とは、第一次世界大戦、第二次世界大戦に象徴される時代だ。核廃絶という目的にコミットする前に、それが何を意味するかをもっと具体的に検討する必要がある」。(B・スコークロフト)

「核のない世界を実現するという目的を表明し、それに取り組んでもイランや北朝鮮の行動を変えることはできないだろう。だが、イランや北朝鮮に対処していく上でその協力が必要な諸国の支持を得ることができる。だからこそ、核のない世界という目的は重要だし、私が核のない世界を支持しているのもこうした理由からだ」。(W・ペリー)

国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?

2009年6月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ会長

グローバルな金融危機にもかかわらず、国営石油企業が依然として世界でもっとも戦略性の高い資源の75%を支配し、国有企業そして政府の後ろ盾を持つ民間の覇権企業が、民間のライバル企業に対する競争上の優位を持っている。しかも、政府系ファンドは依然として潤沢な資金を持っている。本当に大きすぎて潰せないのはこれらの企業や組織のほうだろう。いまや市場経済の勢いは弱まり、国と政府が主要な経済アクターとして、主に政治的利益のために市場を利用しようとする「国家資本主義」が台頭し始めている。(冷戦期のような)政治的イデオロギーではなく、「市場経済」と「国家資本主義」という2つの経済モデルをめぐるグローバルな抗争という構図が生まれつつある。しかも、グローバルな金融危機とリセッションによって、「国が管理する資本主義」という強力なブランドが突きつける問題と課題はますます大きくなってきている。

Classic Selection 2009
金融危機後に出現する世界の姿は
―世界を主導するのはアメリカ、中国、それとも・・・

2009年6月号

スピーカー
ジョセフ・ナイ/ハーバード大学教授
フィリップ・ゼリコー/バージニア大学教授
司会
リチャード・メドレー/メドレー・キャピタル・マネジメント

「G2という枠組みで今後を捉えるのは間違いだと思う……世界が日本に期待している役割を果たしていくことを東京は真剣に考えるようになった。……より大きなポイントは中国が経済成長のモデルを見直すかどうかだ。今回のリセッションを脱した後も中国がこれまで同様に輸出主導型の成長戦略をとり、経常黒字をますます積みましていくようなら、国際システムは再び大きな圧力にさらされる」。(J・ナイ)

「全般的に『イギリスからアメリカへ』というかつての構図が、いまや『アメリカから中国へ』という構図として再登場している。ポイントは、世界にバランスよく資本を振り分けるとともに、グローバル経済を刺激するような内需を作り出す役割を中国が引き受けるかどうかだ」。(P・ゼリコー)

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