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経済・金融に関する論文

グローバル化に即した新ブレトンウッズ体制とは

2009年2月号

アディティヤ・マトー
世界銀行グループ・リードエコノミスト
アルビンド・スブラマニアン
ピーターソン国際経済研究所シニア・フェロー

ドーハ・ラウンドを蘇生させようと試みるのはもはや見当違いかもしれない。ドーハで俎上に載せられているアジェンダは、グローバル経済の統合が進むなかで生じている今日的アジェンダとの関連をもはや失いつつあるからだ。いまやコモディティ価格が激しく変動し、中産階級の生活を脅かしている。金融は不安定化し、環境問題も深刻になっている。これらはきわめてグローバルな問題であり、多国間交渉による対応が必要だ。状況を前へと進めて行くには、新たなブレトンウッズ体制に向けた仕切り直しを行い、ドーハよりも野心的なアジェンダを設定し、世界貿易機関(WTO)だけでなく、より多くの国際機関をアジェンダに関与させるようにする必要がある。重要度の低いアジェンダへの取り組みを復活させようとあがくよりも、本当に重要な新しいアジェンダへの対応を試みるべきだ。より多様なアクターの利益がいま危機にさらされている。国際協力への新しい取り組みと国際機関の間での責任分担の見直しが必要なのもこのためだ。新ブレトンウッズ体制構築の試みは、まさにこのための機会を提供している。

金融市場規制を考える

2009年1月号

スピーカー
ウィリアム・H・ドナルドソン 元米証券取引委員会委員長
スティーブン・フリードマン 元国家経済会議議長
アーネスト・パトリキス 元ニューヨーク連邦準備銀行第一副総裁
司会
ジョン・ガッパー フィナンシャル・タイムズ紙首席ビジネス・コメンテーター

必要とされているのは、リスク・テイキング(リスクを厭わない行動)と創造的な才能を金融システムから取り除くことなく、変動の度合いを大幅に和らげるような金融規制だろう。そのためには金融規制を根本的に見直す必要がある。(S・フリードマン)

投資活動はグローバル規模で行われており、アメリカ以外の国の規制システムに抜け穴があれば、アメリカの規制システムもうまく機能しなくなる。規制に関わってきた人々は、世界の主権国家が規制について合意するのがほとんど不可能なことをよく理解している。何が良い規制や会計基準なのかについて多様な考え方があるからだ。(W・ドナルドソン)

CFR ミーティング
グローバル経済の危機と機会
――今は新秩序に向けた創造のとき

2009年1月号

スピーカー
ゴードン・ブラウン/イギリス首相
司会
ロバート・ルービン/ 米外交問題評議会副理事長

「イランにおいて全ての判断を下しているのは最高指導者のハメネイだ。・・・しかしラフサンジャニが、反ハメネイの立場からコムの高位宗教指導者との連帯を組織しようとしているし、真の宗教的権威をもつモンタゼリも今回の選挙とハメネイの統治に公然と挑戦している。ハメネイは、その再選を政府が公表しているアフマディネジャド大統領を生け贄にするか、自分も船から降りるかどうかをいずれ決めなければならなくなる。ハメネイは非常に微妙な立場に立たされている。妥協しすぎれば、弱さの証しとみなされるだろうし、デモはますます拡大する。一方で、全く妥協しなければ、不正が行われたと広く考えられている選挙で再選された人気のない大統領を守るために自らも失脚してしまう危険に直面する」。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティグ・エディター)

金融危機を前に、世界の多くの国は歴史的な転換点にさしかかりつつある。これまでとは逆に、国の役割が大きく、民間の役割が小さくなる時代へと向かいつつあり、アメリカのグローバルなパワーも、アメリカ流の民主主義の訴求力も弱まりつつある。こうした危機の一方で、バラク・オバマが大統領になり、広く希望が持たれていることは幸運だが、それでも、「歴史の流れ」と「2008年の危機」の双方が、世界をアメリカの一極支配構造から遠ざけていくことは避けられないだろう。今回の金融危機が、世界の中枢がアメリカから離れていくという歴史的な潮流と重なり合っているからだ。中期的には、アメリカの世界における影響力は低下し、中国を中心とする他の諸国がより早いペースで台頭するチャンスを手にすることになる。

アメリカ流市場経済モデルの崩壊?
――何が金融危機を引き起こし、今後、どうするのか

2009年1月

ハロルド・ジェームズ/プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン・スクール教授

「2008年3月、アメリカ政府が米証券会社のベアー・スターンズを救済しようと努力していた当時は、事態はすぐにでも収束すると多くの人は軽く考えていた。だが、(この書評で取り上げる書の筆者である)マーチン・ウォルフはフィナンシャル・タイムズ紙のコラムで、ベアー・スターンズに救済策がとられた『2008年3月14日の金曜日を「グローバルな市場経済・資本主義の夢が潰えた日」と記憶に留めよう』と書いている。そのわずか6カ月後には、アメリカ政府は金融問題の悪化を食い止めるために、中国式の解決法を採用した。資本の流れを制限するための大規模な政府介入に踏み切ったのだ。奇しくも、これは、アメリカ政府がアジア各国の政府にアメリカ・モデルの優位を説いてから10年後の出来事だった」

「いまや戦争のカテゴリーは曖昧化し、特定の枠に当てはめるのが難しくなってきている。軍事専門家、マイケル・エバンスが描写するように、現在の戦略では『マイクロソフト(に象徴されるハイテク技術)と(伝統的な)刀が共存し、ステルス技術に対抗して自爆攻撃が用いられる』。敵対勢力の力、そして紛争のタイプがこれほど多様になってきている以上、われわれは戦闘能力に関するバランスのとれたポートフォリオを持つべきだし、戦線に送り込む部隊、調達する兵器、訓練に関してもっと幅を広げなければならない」。必要なのは、今後の不測の事態に備え、対ゲリラ戦争を遂行・実施していく能力を制度化し、複雑な戦争に備えた戦力を重視することで、現在の重厚長大型の軍事路線とのバランスをとっていくことだ。

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