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経済・金融に関する論文

習近平とコロナウイルス
―― トップダウン型危機管理の弊害

2020年3月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国担当)

コロナウイルスのアウトブレイクは、習近平政権にとって最悪の人道・経済危機に向かっている。もちろん、国家主席が辞任するはずはない。習近平は、まさにこうした危機に持ちこたえられる政治システムの構築に就任後の7年を費やしてきた。国営メディアは国家主席の役割を、背後からリードする、最終権限をもつ最高指揮官であると強調し、武漢の病院を視察し、患者をいたわる役目は李克強首相や孫春蘭国務院副総理が担っている。要するに、現地で起きている危機と習近平の間には、党の官僚制度内のステータスを分ける階層の数だけバッファーが存在する。だが、ウイルスを封じ込めるのに時間がかかれば、その分、今回の危機で生じた(政治的・社会的)亀裂は大きくなり、それが引き起こす問題も深刻になる。多くの中国人が望んでいるのは、他の国の市民が望むのと同じことだ。なぜ今回のようなことが起き、二度と起きないようにするには何が必要なのか、そして誠実な政治家が「責任は自分がとる」と語ることだ。・・・。

ネオリベラリズムの崩壊と新社会契約
―― 社会民主主義では十分ではない

2020年2月号

ミアタ・ファーンブレー ニューエコノミクス財団 チーフエグゼクティブ

格差はつねに資本主義社会の特徴の一つだったが、人々は自分たちの生活の質が改善し、機会が拡大していると感じ、子供たちは自分たちよりも良い生活を送れると期待できる限り、そうした格差に目くじらを立てることはなかった。だが、この数十年でそうした機会が消失し始めると、システムそのものが不公正で、多くの人にとって利益にならないのではないかという見方が勢いを持ち始めた。新しい経済モデルを導入して人々をエンパワーし、公共財やインフラの所有を広げることで経済における市民の発言権を高めるべきだ。コミュニティレベルに権限を委譲し、生活を改善するための人々の集団行動を受け入れる、アクティブで分権化された国家が必要になる。

「新社会主義運動」の幻想と脅威
―― 富は問題ではない

2020年2月号

ジェリー・Z・ミュラー 米カトリック大学歴史学教授

資本主義には強さと弱さがある。実際、自由市場を基盤とする資本主義が18世紀に定着して以降、このシステムは長く批判にさらされてきた。一連の改革運動が刺激され、これが19世紀型のレッセフェール(夜警)国家を今日の先進民主国家が導入する混合経済・福祉国家(mixed welfare States)へ変貌させた。かつて「社会民主主義」と呼ばれたシステムを現状で模索する左派勢力も、おおむね似たものを追いかけている。だが、「新社会主義運動」はこれらとは違う。そのルーツは社会民主主義ではない。資本主義を改革するのではなく、むしろそれを終わらせようとする民主社会主義にある。彼らは、金の卵を産むガチョウの健康など気にかけていない。これを当然視した上で、不公正な状況を超富裕層の資産の突出を削り取るという簡単かつ直接的な方法でなくそうとしている。

鎖につながれたグローバル化
―― サプライチェーン、ネットワークと経済制裁

2020年2月号

ヘンリー・ファレル  ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学) アブラハム・L・ニューマン  ジョージタウン大学 教授(政治学)

デジタルネットワーク、金融フロー、サプライチェーンが世界中に拡大し、アメリカを中心とする各国は、これを、他国を捕獲する蜘蛛の巣とみなすようになった。米国家安全保障局はあらゆる種類のコミュニケーションを傍受し、米財務省は国際金融ネットワークを利用して、無法な国家と金融機関に制裁を課している。一方、ファーウェイが5Gをグローバルレベルで支配すれば、北京もファーウェイをゲートウェイにして世界の通信に侵入し、これまでアメリカが中国に対して試みてきたことを、アメリカに対して実施できるようになる。日本も重要な産業用化学製品の流通を制限することで、韓国のエレクトロニクス産業を狙い撃ちにした。鎖につながれたグローバル化の現実を受け入れ、理解することが、これらのリスクを抑えるために必要不可欠な最初のステップになる。

資本主義を救う改革を
―― 株主資本主義からステイクホールダー資本主義へ

2020年2月号

クラウス・シュワブ  世界経済フォーラム  設立者兼会長

1980年代以降の40年で、あらゆるタイプの経済格差が拡大した。社会システムにも亀裂が生じ、社会を包み込むような経済成長を実現できなくなった。一方で、市場主義は深刻な環境問題も作り出した。利益の最大化を至上命題とする株主資本主義によって問題の多くが引き起こされている。幸い、若者世代は、企業が環境や社会的満足を犠牲にして利益を模索することをもはや認めていない。この意味でも現状の資本主義はすでに限界に達している。内側からシステムを改革しない限り、存続はあり得ない。企業は「ステイクホールダー(公益)資本主義」を受け入れ、社会・環境上の目的を実現するための措置を積極的に果たしていく必要がある。われわれは非常に大きな選択に直面している。

アメリカの危険な対中コンセンサス
―― チャイナスケアを回避せよ

2020年1月号

ファリード・ザカリア CNNファリード・ザカリアGPSホスト

「経済的にも戦略的にも、中国はアメリカの存続にかかわってくる脅威であり、これまでの対中政策はすでに破綻している。ワシントンは中国を封じ込めるためのよりタフな新戦略を必要としている」。これが、民主・共和両党、軍事エスタブリッシュメント、主要メディアをカバーしている新対中コンセンサスだ。しかし、このコンセンサスでは脅威が誇張されている。ソビエトの脅威を誇張したことの帰結がいかに大きかったことを思い出すべきだ。中国が突きつける課題を現状で適切に判断しないことの帰結はさらに大きなものになる。40年にわたる中国へのエンゲージメントを通じてやっと獲得したものを浪費し、中国に対決的政策をとらせ、世界の二大経済大国を経験したことのない規模と範囲の危険な紛争へ向かわせる。この場合、われわれは数十年にわたる不安定化と不安の時代に向き合うことになる。・・・

資本主義の衝突
―― 「民衆の資本主義」か「金権エリート資本主義」か

2020年1月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学大学院 ストーンセンター シニアスカラー

グローバル経済の未来を左右するのは、資本主義と他の経済システムの競争ではなく、資本主義内の二つのモデル、つまり、「リベラルで能力主義的資本主義」と「政治的資本主義」間の競争だろう。リベラルな資本主義が「民衆の資本主義」へ進化し、拡大する格差問題にうまく対処しない限り、欧米のシステムは、社会主義ではなく、中国型の政治的資本主義に近づき、金権政治的になっていくだろう。格差を是正し、民衆の資本主義への進化を実現するには、中間層により大きな金融資産の保有を促す税インセンティブを与え、超富裕層の相続税を引き上げ、公教育の質を改善し、選挙キャンペーンを公的資金でカバーできるようにしなければならない。そうしない限り、政治的資本主義同様に、排他的な少数で構成される特権階級の家庭が、将来に向けて永遠にエリートを再生産していくようになる。

オランダという世界最悪のタックスヘイブン
―― いかに改革し、解体するか

2019年12月号

ジョアン・ランガーロック オックスファム・ノビブ  政策アドバイザー マールテン・ヒートランド 多国籍企業研究センター  リサーチャー

オランダの租税回避スキームを利用しているのは、非合法の収益を隠そうとしている信用度の低い一握りの企業だけではない。本国での税負担を軽減しようと、オランダの枠組みを利用している企業にはグーグルやIBMも含まれる。もっとも、オランダに流れ込んだ資金は、時をおかずに他のタックスヘイブンへ移される。結局、タックスヘイブンであることから利益を引き出しているオランダ人は、直接・間接にこの産業に雇用されている会計士、弁護士、コンサルタントなど、約1万人程度で、オランダ経済全般への恩恵は非常に少ない。どうみても、改革そして制度の解体が必要だ。

少子高齢社会と移民
―― 問題は移民がいなくなることだ

2019年12月号

チャールズ・ケニー グローバル開発センター シニアフェロー

「移民危機」という表現が日常的に使われ、反移民感情の高まりを理由に国境を閉ざす国も多い。しかし、先進国の多くでは少子高齢化が進み、高齢者人口が大きくなる一方で、生産年齢人口が小さくなっている。残念ながら、ロボットや人工知能が、人口減少が引き起こす経済的帰結から先進国を救ってくれるわけでもない。こうなると少子高齢化危機への解決策は一つしかない。国境を移民に開放することだ。問題は、移民が先進国に殺到するのではなく、今後、誰もやってこなくなる事態を警戒しなければならないことだ。これが本当の移民危機だ。一人当たり(購買力平価)GDPが7500ドルに達するまでは、途上国の多くの人が外国で働こうと移住を考えるが、国内経済がこのレベルを超えると、パターンは逆転する。

失われた株式市場のバランス
―― なぜ市場操作と不正行為がまかり通っているか

2019年12月号

フェリクス・サルモン AXIOS チーフ・フィナンシャルコレスポンデント

株式市場は「権力関係によって支配される政治的制度」であり、その構造とルールを好ましいとみなすかどうかは、プレイヤー毎に違う。しかし、金融機関が並外れた強大な権力と影響力をもっていれば、市場構造は彼らの有利なものへと歪められる。これがグローバル株式市場で起きていることだ。巨大銀行と証券会社が彼らの目的に沿うように市場を翻弄している。その最たるものが超高速取引(HFT)だろう。数十億ドルを株式市場から出し入れすることを望む大口の投資家にとって、大規模な資金を、彼らにとって不利な方向に株価を変動させることなく、動かすのは難しい。こうして、有利な価格のままで取引を実施するために超高速取引が駆使される。「株式市場は操作され、不正がはびこっている」と言われても仕方のない状態にある。実質的な監督が絶対的に不足している。不正行為が実際に行われていることは誰の目にも明らかだ。

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