フォーリン・アフェアーズ・リポート2026年1月号 目次
戦略ツールとしてのエネルギー
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兵器化されたエネルギー資源
復活した戦略ツールの脅威雑誌掲載論文
ワシントンは、ロシアやイランの石油を購入する国々に厳しい制裁措置を検討し、北京は、半導体、軍事アプリ、電池、再生可能エネルギーに不可欠な重要鉱物やレアアースの輸出を定期的に制限している。いまや、世界市場そのものが分断され、エネルギーが新たに兵器化されている。各国は、エネルギーの兵器化が間違いなく引き起こす変動から市民と企業を守る方法を見いだす必要がある。リスクを減らすには、生産量を増やすだけでなく、消費量を減らし、クリーンエネルギー投資を増やさなければならない。実際、気候変動の脅威そのものよりも、エネルギー安全保障強化の必要性が、クリーンエネルギーの導入と化石燃料の使用削減の強力なインセンティブを作り出すことになるかもしれない。
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兵器化された相互依存
経済強制時代をいかに生き抜くかSubscribers Only 公開論文
ワシントンは、相互依存状況を、どのように兵器として利用するのが最善かをこれまでも考えてきた。一方、多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。
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世界貿易の真の再編を
公正貿易同盟の形成をSubscribers Only 公開論文
グローバル貿易システムを再編する必要があると考えている点では、トランプ大統領は正しいが、関税を用いた現在のアプローチでは、それで治そうとしている病以上に、深刻な事態を引き起こす恐れがある。必要なのは、ルールに基づく公正な貿易、アメリカの競争力を強化するグローバルな協調に基づく新しい貿易システムだ。中国に象徴される不公正な貿易慣行と歪んだ競争を問題解決のターゲットに据えた、「公正貿易のための自由貿易同盟」を立ち上げるべきだろう。いまなら、次の大きな貿易再編の主導権をワシントンがとって、世界経済を自由貿易の恩恵を開花させるシステムへと導けるかもしれない。
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貿易戦争後の世界
システム崩壊からルール再構築へSubscribers Only 公開論文
今後の世界経済は、第二次世界大戦前のシステムに近づいていくのかもしれない。関税水準がどこに落ち着こうと、現在の貿易戦争は、貿易障壁を大幅に引き上げることになるはずだ。貿易障壁の拡大は成長を鈍化させ、生産性を低下させる。ルールが骨抜きになると、不確実性や摩擦が生じ、不安定化や紛争につながっていくおそれもある。前進するための最良の選択肢は、同じ考えを共有する国家集団による、開かれた、多国間よりも小規模な「複数国間(plurilateral)のネットワーク」を形作ることかもしれない。これらが織りなす重層的な構造があれば、グローバルなルールに基づくシステムがなくても、ルールによって形作られるグローバル経済を実現できるようになる。
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エネルギー転換の幻
現状認識と現実的アプローチSubscribers Only 公開論文
再生可能エネルギーによる電力生産は増えているが、化石燃料による電力生産も史上最高レベルに達している。しかも、世界人口の8割が暮らすグローバル・サウスでは、「脱炭素化」の前にまず「炭素化」が進むと考えられる。つまり、現在進行しているのは、「エネルギー転換」というよりも、むしろ「エネルギーの追加」に他ならない。実際には、エネルギー転換は、エネルギーだけの問題にとどまらない。それは、世界経済全体を再構築するに等しい。経済成長、エネルギー安全保障、エネルギー・アクセスが関わってくる以上、われわれはより現実的なエネルギー転換の道筋を模索する必要がある。
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重要鉱物とサプライチェーン
クリーンエネルギーと大国間競争Subscribers Only 公開論文
再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。
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気候変動とポピュリスト
温暖化対策と文化戦争Subscribers Only 公開論文
ポピュリストの指導者たちは、とにかく地球温暖化対策を目の敵にし、将来の利益よりも現在の満足を優先する人間の本質を利用して、政治的に成功を収めている。米民主党議員の59%が気候変動問題への対応を最優先課題にすべきだと考えているのに対し、共和党議員でそう考えているのは12%にすぎない。政治的主流派のリーダーは、より魅力的な政治戦略、もっと感情的なストーリー、よりボトムアップの参加型政策アプローチを通じて、市民をもっと温暖化対策へ動員し、気候変動に懐疑的な人々が温暖化対策のメリットを受け入れるように、貿易と技術革新を通じて、グリーンテクノロジーのコストを、化石燃料コスト以下に抑え込む必要がある。
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エネルギーの新地政学
エネルギー転換プロセスが引き起こす混乱Subscribers Only 公開論文
クリーンエネルギーへの転換がスムーズなものになると考えるのは幻想に過ぎない。グローバル経済と地政学秩序を支えるエネルギーシステム全体を再構築するプロセスが世界的に大きな混乱を伴うものになるのは避けられないからだ。予想外の展開も起きる。例えば、産油国は、転換プロセスの初期段階ではかなりのブームを経験するはずで、クリーンエネルギーの新しい地政学が石油やガスの古い地政学と絡み合いをみせるようになる。クリーンエネルギーは国力の新たな源泉となるが、それ自体が新たなリスクと不確実性をもたらす。途上国と先進国だけでなく、ロシアと欧米の対立も先鋭化する。クリーンエネルギーへの移行が引き起こす地政学リスクを軽減する措置を講じないかぎり、世界は今後数年のうちに、グローバル政治を再編へ向かわせるような新たな経済・安全保障上の脅威を含む、衝撃的な一連のショック(非継続性)に直面するだろう。
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習近平の中国の強さ
反改革開放路線の目的とは雑誌掲載論文
習近平は、中国のもっとも明白な弱点は、40年にわたる改革開放路線の副作用にあるとみている。急速な成長は中国に豊かさとパワーをもたらしたが、一方で優柔不断、政治腐敗、外国への依存という問題も作りだした。後にどのように評価されるかはともかく、習は、こうした中国の弱点の多くを明らかにし、反改革開放路線をとることで、レジリエンスを高めようとしている。政治・社会の管理というレーニン主義の中核まで党の贅肉を削ぎ落とし、革命のためでも改革のためでもなく、技術工業力と軍事力をつけて、中国の地政学的な地位を着実に高めるための規律ある前進を実現することが彼の目的だ。
日本のジレンマ
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外国人材をいかに受け入れるか
日本モデルのチャンスと課題雑誌掲載論文
日本の外国人材受け入れ制度は、その人がいかに日本での働き方をきちんと学び、適応するかを重視している。このやり方は、多くの先進国が長年とってきた技能レベルに基づく受け入れ策への挑戦でもあるし、文化的同質性を重視する日本の考えとも一致する。技能面でも文化面でも外国人材を「チーム・ジャパン」の一員にしようとする考えだ。最大の脅威は、政治的なものかもしれない。現実的な外国人材受け入れモデルを、ポピュリスト政治による混乱や外国人労働者の権利保護などをめぐる制度的脆弱性から守れなければ、日本は今後必要になる労働力を確保する絶好のチャンスを逃す恐れがある。
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米同盟諸国のジレンマ
リスクヘッジを模索せざるを得ない雑誌掲載論文
同盟諸国はトランプのやり方に耐え、持ちこたえているようにみえる。しかし、これまで以上に状況を深く憂慮している。アメリカによる安全の保証を確信できなければ、どうなるだろうか。同盟諸国の市民は、アメリカの安全保障という「毛布」に長年包み込まれてきたが、より大きな防衛自立を模索すれば、増税、社会サービス支出の削減、そしておそらく徴兵制や核武装化も必要になる。それでも、米同盟諸国はアメリカから離れていくだろう。ワシントンの支援を期待しつつも、同盟諸国は、問題発生時にアメリカがいない事態に備え、リスクヘッジを始めている。
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高技能外国人材と経済成長
技術系人材を確保するにはSubscribers Only 公開論文
この数十年にわたって、ワシントンの政治家たちは不法移民の管理とコントロールに執着してきたが、いまや、合法的な移民、それも高度技能をもつ外国人材に同じ程度の関心を払う必要があるだろう。世界的な人材獲得競争で成功したいのなら、時間的猶予はほとんどない。ワシントンは、サプライチェーンのレジリエンスを高め、新興技術部門で中国を打ち負かすという野心的な計画をもっている。だが、これらの目標を有意義な時間枠で達成するには、現在の米労働力に不足している、高度なスキルをもつ人材プールが必要になる。より柔軟で適応性のある移民政策なしでは、うまく考案された計画も結果にたどり着けない。
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先進国と労働力
新しい移民の流れを形作るSubscribers Only 公開論文
難民制度や亡命制度が乱用されていることもあって、移民への反発が世界的に高まっている。だが、問題をゼロサムでとらえる必要はない。適切な制度があれば、移民、移民の出身国と受入国のすべてが恩恵を確保できるようになる。問題は、老朽化し、時代遅れのシステムが、現在の人道的ニーズ、人口動態トレンド、労働市場需要に対応できていないことだ。移住を希望する人々が母国で(開発援助による)職業訓練を受け、受入国で必要とされる仕事にアクセスできるようにし、本国に送金をし、最終的にはそのスキルを本国に持ち帰って開発を促進できるようにする。このやり方なら、受入国の労働力不足を緩和し、非正規移民になる以外に道のない人々に希望を与えられる。
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米同盟諸国は自立と連帯を
トランプに屈してはならないSubscribers Only 公開論文
「原則を重視する寛大なアメリカ」を今も信じている人々にとって、いまは認知的不協和を引き起こすトラウマ的な状況にある。トランプ政権が作り出す現実は、はっきりしている。内外で法を顧みない行動をとり、各国へのいじめを繰り返し、協定や条約を破棄し、同盟国を威嚇し、独裁者に寄り添っている。米有権者は、この行動を最終的に(選挙で)判断することになる。だが、アメリカの同盟国はすでに心を決めているはずだ。トランプの威圧に屈する必要はない。同盟国が協力すれば、大きな影響力を行使できるし、ワシントンが作り出す大混乱に対抗できる。エマニュエル・マクロンが言うように、米同盟諸国は「いじめられない国」の連合を構築すべきだろう。
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同盟関係の崩壊と米国の孤立
同盟破壊という愚行Subscribers Only 公開論文
現在のアメリカは、イギリスが帝国の全盛期に経験した状況に直面している。世界最大の軍事大国であることは重い負担であり、それもあって、債務が驚くべき水準に膨らんでいる。中国をはじめとする野心的大国は、ますます高額化する軍備競争に資源を投入している。そして、歴史的に繰り返されてきた通り、他の諸国は古い大国を見捨てて、新興大国に乗り換え、その衰退を機に団結して対抗する誘惑に駆られている。トランプ政権が同盟国への敵対的な姿勢を継続し、長年のパートナーを侮辱し、経済的に損害を与えるような行動を続けるなら、アメリカの前にあるのは、ますます敵対的な世界になるはずだ。
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米同盟ネットワークの本質
独仏日韓と同盟関係の未来Subscribers Only 公開論文
傷ついた同盟関係を慎重に修復することをバイデンに求める人々は、トランプ政権期に実際に起きたことを誤解している。アメリカの同盟システムは、上下関係と依存そしてアメリカパワーの永続性の上に築かれている。このシステムは、世界的影響力を獲得・維持しようとするワシントンの努力を支えることでアメリカに利益をもたらし、同盟国には防衛費削減の道を開くだけでなく、貿易利益を拡大することで恩恵をもたらしてきた。これが同盟関係に奥行きと打たれ強さを与えてきた。トランプによる権限の乱用やバイデンによるアフガニスタンからの一方的撤退を同盟国が許容したのも、こうした奥行きをもっていたからだ。外交的伝統からの逸脱という空騒ぎがあったとしても、アメリカの同盟関係は極めて堅牢であり、いかに同盟国を安心させるかに思い悩む必要はない。
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揺るがされたアメリカへの信頼
不安定化する世界Subscribers Only 公開論文
トランプは、立場を後退させる前にまず取引を提案する。戦争を拡大する前に、戦争を終わらせると約束する。同盟国を叱責し、敵対国を受け入れる。唯一のパターンとは、パターンが存在しないことだ。一部の分析家が指摘するように、トランプのアプローチは一時的な国際的勝利を一部でもたらしている。だが長期的には、このアプローチでアメリカが強化されることはない。最終的に、各国は他国と連帯して国を守る道を選ぶはずだからだ。その結果、アメリカの敵対国リストは増え、同盟関係は弱体化する。つまりワシントンはますます孤立し、その威信を回復する明確な道筋を見失う可能性がある。
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アメリカ後の自由主義秩序を守る
民主諸国の協調と連帯Subscribers Only 公開論文
多くの国は、トランプ政権に媚びへつらい、米大統領を過度に称賛する努力を重ねてきたが、トランプを懐柔する戦略は失敗する可能性が高い。そうであれば、民主主義と旧来のルールに基づく秩序にいまもコミットする諸国は、国際関係を再構築し、アメリカの気まぐれから自らを隔離し、この極めて不安定な時代にあっても自分たちの自由を広く守る努力をするのが理にかなっている。実際、トランプの勢力圏構想が実現すれば、アジア、ヨーロッパ、北米におけるワシントンの民主的同盟国がアメリカによって守られることはなくなるだろうし、民主諸国は、世界の他の国々を合わせたよりもはるかに多くの核兵器を保有する米中ロという三つの大国と対峙することになる。
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相互主義と同盟関係
帝国から共和国へSubscribers Only 公開論文
冷戦後には、世界各国がワシントンの気前のよさにつけ込む世界経済秩序が出現した。しかし、グローバル化と市場経済が政治経済の境界をなくすという賭けは失敗に終わり、いまは新たな賭けが必要とされている。持続可能な貿易・安全保障ブロックを構築する最善の方法は相互主義の大戦略だろう。これは、同等の条件で互いに関与することを約束する諸国との同盟で、同じ義務を果たそうとしない国は排除される。例えば、貿易不均衡の是正に取り組むことを拒否する国は、共通市場から追放し、高関税策の対象とされる。安全保障領域では、アメリカの同盟関係とパートナーシップをゆっくりと蝕んできた「ただ乗り」を制限する。覇権も世界秩序も必要ではなく、アメリカは世界から後退することもできる。
変化した世界
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トランプと欧州右派の連携
アメリカはヨーロッパを失う?雑誌掲載論文
トランプ政権がヨーロッパの極右勢力を評価して連携したことは、危険な賭けだ。政治的分極化を煽ることは、トランプに同調するヨーロッパではなく、分断されたヨーロッパを生み出す危険がある。さらに、(右派の)政党や指導者だけを支援することで、ヨーロッパの重要地域で伝統的にワシントンを支持してきた親米派を失いつつあるかもしれない。結局のところ、トランプの欧州右派に対するアプローチがヨーロッパに与える影響は、多くの点で1980年代にミハイル・ゴルバチョフが東欧諸国に与えた影響に似たものになるだろう。ゴルビー・マニアは東欧の共産主義体制を劇的に変容させ、その過程でモスクワは勢力圏を失うことになった。
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関税が揺るがした同盟関係
サプライチェーンの混乱と米防衛産業の衰退雑誌掲載論文
必要とされているのは、国内価格を押し上げ、外国のパートナーを遠ざける包括関税ではない。ワシントンが、同盟国に配慮し、戦略的産業に焦点を当てた限定的な関税へと移行すれば、重要なサプライチェーンを守り、国家安全保障にとって重要な製造業を促進できるようになる。だが、信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。
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同盟国の核武装で戦後秩序の再建を
独日加の核武装シナリオ雑誌掲載論文
ワシントンは核不拡散政策の厳格な順守を見直し、カナダ、ドイツ、日本という少数の同盟国による核武装をむしろ奨励すべきだろう。この3カ国は、合理的な政策決定と国内の安定という面で実績があるし、アメリカとその同盟国に大きな恩恵をもたらしてきた戦後秩序の再建に貢献できる。ワシントンにとって、このような「選択的な核拡散」は、パートナーが地域防衛でより大きな役割を担い、アメリカへの軍事依存を減らすことも可能にする。これらの同盟諸国にとって、核武装は中ロなどの地域的敵対勢力の脅威だけでなく、同盟関係への関与を弱めるアメリカの戦略見直しに対する信頼できる防護策となる。
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中国経済モデルの致命的欠陥
過剰生産を促す重層的構造雑誌掲載論文
中国経済にとっての本当の問題は、国内需要の弱さや過剰な補助金ではない。それは、異常かつ制御不能に思える過剰生産能力に他ならない。2024年半ば以降、北京も、太陽光発電、バッテリー、EVの「やみくもな拡大」路線について繰り返し警告するようになった。中国の過剰生産は、税制、共産党幹部の登用システム、ビジネスモデルの模倣、銀行の融資など、さまざま要因によって複合的に促されている。企業、金融機関、地方政府関係者がシステム内で合理的に行動し、その結果として過剰生産能力が生じているとすれば、方向転換するにはシステムを変えるしかない。
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プーチンが思い描く「極右インターナショナル」とは
世界の極右を連帯させて、欧米を揺るがすSubscribers Only 公開論文
プーチンの立場が欧米の右派のそれと似ているのは偶然ではない。実際、プーチンのアドバイザーたちは、フォックス・ニュースのキャスターなど、米保守の扇動者たちの立場やレトリックを採用している。特に、文化戦争路線を取り入れることで、ワシントンなどのポピュリスト政治家の支持を確保し、欧米社会を内部から切り崩せると考えているようだ。欧米保守派のレトリックを受け入れることで、彼らの支持を確保し、それを基盤にロシアの国際的地位を向上させたいとプーチンは考えている。要するに、20世紀前半にソビエト革命を推進した共産主義インターナショナルに似た、「極右インターナショナル」を形成しつつある。
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新しい経済地理学
ポストアメリカ世界の荒涼たる現実Subscribers Only 公開論文
トランプの新路線が望ましい再編を促すと考える人もいる。だが、彼の政策を前に、各国の政府と企業が、最終的にニューノーマルを受け入れ、アメリカに利益がもたらされるという見方は、幻想にすぎない。それどころか、トランプの世界では、誰もが苦境に陥るし、アメリカも例外ではない。アメリカに最大の利益をもたらし、同盟国やパートナーに安心と繁栄をもたらしてきたシステムを彼は破壊してしまった。特に、カナダ、日本、メキシコ、韓国、イギリスなど、米経済ともっとも密接に結びつき、これまでのゲームルールを忠実に守ってきた諸国の経済は大きなダメージを受けるだろう。トランプは楽園への道をつくり、カジノを建設した。だが、その駐車場はやがて空っぽになるはずだ。
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日本の核ジレンマと国際環境
能力も資源もあるが・・・Subscribers Only 公開論文
反核感情の強い日本の科学者コミュニティが(政府による)核開発の要請に応じるとすれば、安全保障環境が大きく悪化した場合に限られる。そして、日本の政策決定者たちが核武装を真剣に考えるとすれば、韓国が核武装するか、ピョンヤンが現在の核の兵器庫を温存したままで朝鮮半島に統一国家が誕生した場合だろう。一方で、日本が核開発に乗り出せば、北京は軍備増強路線を強化し、北朝鮮による対日先制攻撃リスクを高めるかもしれない。韓国が核開発に乗り出し、地域的な緊張が大きく高まる恐れもある。核開発への東京の姿勢は、歴史的にも、アメリカによる核抑止の信頼性をどうみるかで左右されてきた。少なくとも、トランプがそのクレディビリティを大いに失墜させているのは間違いない。
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同盟の流動化と核拡散潮流
次の核時代に備えよSubscribers Only 公開論文
最近の展開からも、ウクライナやその他の国々への防衛支援をめぐるアメリカのコミットメントが完全には信用できないことは明らかだろう。ワシントンが安全保障コミットメントを果たすとは信用しなかったフランスのドゴール大統領は正しかった。拡大抑止(核の傘)はまやかしであり、それを信じた人々はお人好しのカモだった。なぜフランスに倣って、核戦力を獲得して、国の安全を確保しないのかと多くの国がいまや考えているはずだ。このまま秩序が解体し続ければ、韓国は、おそらく、この拡散潮流に乗って最初に核を保有する国になるだろう。ソウルが核武装すれば、東京もそれに続き、最終的にはオーストラリアもこれに加わるかもしれない。ヨーロッパでも同じ流れが生じつつある。
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中国経済危機の本質
過剰生産能力の悪夢Subscribers Only 公開論文
中国経済の停滞を説明する最大の要因は、巨大な過剰生産能力が構造的に作り出されていることだ。北京の産業政策は長年にわたって、生産設備への過剰投資を促し、その過程で中国の都市(地方政府)や企業は膨大な債務を抱え込んできた。最近でもロボット、電気自動車用バッテリー、その他で過剰生産能力を抱え込み、ソーラーパネルにいたっては、年間に世界が設置して利用できるソーラーパネルの2倍規模の生産能力をもっている。国内市場や外国市場が持続的に吸収できるレベルをはるかに上回る規模の商品を生産しているために、中国は、外国との摩擦を抱え込んでいるだけでなく、価格低下、債務超過、工場閉鎖、雇用喪失という破滅のループに陥っていく危険がある。
Current Issues
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ベネズエラの体制変革について
西半球シフトと勢力圏構想への意味合い雑誌掲載論文
トランプ大統領がベネズエラに再び焦点を合わせたことは、「パナマからカナダ、グリーンランドに至るまでの勢力圏」という大統領の世界観、そして基本的に米本土と国境の防衛に焦点を当てるという立場と重なり合う。だが、西半球を優先する方針は、戦後アメリカの支配的優位を支えてきたヨーロッパやインド太平洋諸国との同盟関係を、潜在的に従属させ、狭めてしまうのだろうか。アメリカは太平洋の勢力としてとどまるのか、それとも、習近平国家主席との「大きな取引」を模索して、西半球に専念するのか。
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飢餓と先進国の政治
食糧危機が先進国を政治的に脅かす雑誌掲載論文
豊かな時代にあっても、紛争、気候変動、経済危機によって、食糧にアクセスできない人々が急増している。ガザやスーダンだけではない。世界で食糧危機に苦しむ人口は数億規模に達する。一方、主要ドナー国は支援を大幅に削減し、国連世界食糧計画などによる配給も減少している。飢餓で避難を余儀なくされた家族を難民として国内に受け入れるよりも、彼らが暮らす場所で支援を提供する方が、はるかに合理的だ。大規模な難民流入が現実になれば、国内が不安定化し、政治的分断と過激主義も助長される。支援から遠ざかるドナー諸国は「特定地域での食糧危機は、別の地域の不安定化を引き起こす」という動かしがたい事実を無視している。
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マドゥロ追放策のリスク
アメリカとベネズエラの未来Subscribers Only 公開論文
マドゥロ大統領の追放をめぐり、アメリカやベネズエラの反体制強硬派は軍事的圧力を強めている。だが、武力による体制変革はさらなる混乱や暴力を招き入れるリスクが高い。ベネズエラ人の圧倒的多数がマドゥロの退陣を望んでいるとしても、アメリカと反体制派は、国際的な支援を受けた包括的な交渉をマドゥロ政権と進めるべきだろう。ベネズエラ国内には政権崩壊に抵抗する武装集団が多数存在するし、軍の一部がさらに抑圧的な指導者を権力に据える危険もある。実際、暴力的な手段はさらなる混乱や市民への抑圧を招くリスクが高い。
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ベネズエラの自殺
南米の優等生から破綻国家への道Subscribers Only 公開論文
インフレ率が年100万%に達し、人口の61%が極端に貧困な生活を強いられている。市民の89%が家族に十分な食べ物を与えるお金がない。しかも、人口の約10%(260万人)はすでに近隣諸国に脱出している。かつてこの国は中南米の優等生だった。報道の自由と開放的な政治体制が保障され、選挙では対立する政党が激しく競い合い、定期的に平和的な政権交代が起きた。多くの多国籍企業が中南米本社を置き、南米で最高のインフラをもっていたこの国が、なぜかくも転落してしまったのか。元凶はチャビスモ(チャベス主義)だ。キューバに心酔するチャベスと後任のマドゥロによって、ベネズエラは、まるでキューバに占領されたかのような大きな影響を受けた。でたらめで破壊的な政策、エスカレートする権威主義、そして泥棒政治が重なり合い、破滅的な状況が生み出された。・・・
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ベネズエラのカオス
マフィア国家からアナーキーへSubscribers Only 公開論文
絶望が大がかりな人口流出を後押ししている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の推計によると、ベネズエラの国外流出者の数は約540万と、人口の5分の1近くに達する。かつては拡大を続けていた大規模な中間層も事実上消滅し、いまや市民の96%が貧困ライン以下の暮らしをしている。経済は崩壊し、1人当たりGDPは2013年の危機前の4分の1程度に落ち込んだ。ある試算によれば、2012年以降のベネズエラ経済の凋落は、平時の現象として世界的にも先例がない。マドゥロ率いる犯罪集団がどうにかまとまりを維持して内輪もめを回避できるか、それとも、武装犯罪組織の縄張り争いが、国全体をアナーキーな暴力の連鎖に巻き込んでしまうのか。ベネズエラはその瀬戸際にある。・・・
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新勢力圏の形成へ
大国間競争から大国間共謀へSubscribers Only 公開論文
中国やロシアと競争するのではなく、トランプ政権は中ロと協力することを望んでいる。トランプの世界観が大国間競争ではなく、「大国間共謀(great power collusion) 」、つまり、19世紀の「ヨーロッパ協調」に似ていることは、いまや明らかだろう。こうして、アメリカの外交路線は、ライバルとの競争から、温厚な同盟諸国をいたぶる路線へ変化した。他の大国から有利な譲歩を引き出すために、トランプがビスマルクのような外交の名手になる可能性もある。しかし、ナポレオン3世のように、よりしたたかなライバルに出し抜かれてしまうかもしれない。
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ドナルド・トランプと権力政治の時代
同盟諸国はどう動くべきかSubscribers Only 公開論文
トランプは19世紀のパワーポリティックが規定する国際関係への回帰を明らかに思い描いている。同盟関係のことを、アメリカから雇用を奪う国々を保護するコストをアメリカに負わせる悪い投資だと考えている。関税引き上げなどの、経済的威嚇をパワーツールとして利用する彼のやり方は、強圧的秩序の幕開けを意味する。アメリカに譲歩しても、トランプがそれを評価することはない。アメリカの同盟国は強さを示さなければならない。トランプが理解するのは力であり、米同盟諸国が協力すれば、十分な力で立ち向かい、トランプ外交の最悪の衝動をけん制できるかもしれない。
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食糧の兵器化を阻止するには
忌まわしい戦術にいかに対処するかSubscribers Only 公開論文
紛争による飢餓という永続的なパターンが、ガザ、ハイチ、スーダンなどで再現され、多くの人が飢餓の瀬戸際に追い込まれている。2020年以降、世界の急性食糧不安を抱える地域は約3倍に拡大し、3億3300万もの人々が飢餓リスクに直面している。さらに、敵の民間人を包囲して飢えさせるなど、飢餓は、(紛争による混乱だけでなく)食糧の兵器化によっても引き起こされる。相互依存レベルの高い現在のグローバル経済では、特定地域で食糧兵器化策がとられると、あらゆる地域の食糧安全保障に悪影響がでる危険がある。われわれは、食糧兵器化を禁止する国際条約の制定を求める運動を開始すべきタイミングにある。
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もう逃げ場がない
サバイバル移民とラテンアメリカの悪夢Subscribers Only 公開論文
2015年にヨーロッパが経験し、現在ラテンアメリカで起きている危機は、政治難民や経済難民の流出によるものではない。人々は「生き残るための移住(survival migration)」を試みている。ほとんどの人は、政治的迫害そのものではなく、ハイパーインフレーション、略奪行為、食糧不足などの「劣悪な政治状況がもたらした経済的帰結」から逃れることを目的に移動している。問題は、1951年の国連による難民の定義、つまり、ソビエトの反体制活動家を念頭に置いてまとめられた定義では、この現状に対処できないことだ。国が破綻したか脆弱なために、生活が耐え難いものになってきたがゆえに彼らは母国を後にしている。統治の破綻、社会暴力、経済的窮乏などが大きな理由なのだ。これまでの難民や移民の定義を見直して、これまで難民にしか与えられなかった支援の一部を、「サバイバル移民」にも提供できるようにしなければならない。


