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2016年10月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2016年10月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2016年10月号 目次

ヨーロッパにおける国民国家の復活

  • EUの衰退と欧州における
    国民国家の復活

    ヤコブ・グリジェル

    雑誌掲載論文

    いまやヨーロッパ市民の多くは、EU(欧州連合)の拡大と進化、開放的な国境線、国家主権の段階的なEUへの移譲を求めてきた政治家たちに幻滅し、(超国家組織に対する)国民国家の優位を再確立したいという強い願いをもっている。ブレグジットを求めたイギリス市民の多くも、数多くの法律がイギリス議会ではなく、ブリュッセルで決められることに苛立っていた。昨今におけるドイツの影響力拡大を前に、ギリシャやイタリアなどの小国はすでにEUから遠ざかりつつある。一方、EU支持派の多くは、この超国家組織がなくなれば、ヨーロッパ大陸は無秩序に覆い尽くされると主張している。だが現実には、自己主張を強めた国民国家で構成されるヨーロッパのほうが、分裂して効率を失い、人気のない現在のEUよりも好ましいだろう。アメリカの指導者とヨーロッパの政治階級は、ヨーロッパにおける国民国家の復活が必ずしも悲劇に終わるとは限らないことを理解する必要がある。

  • テリーザ・メイのブレグジット戦略
    ―― 交渉パートナーとの妥協点をいかに見出すか

    ティム・キュレン

    雑誌掲載論文

    テリーザ・メイはすでに、イギリスの全般的離脱アプローチをまとめるまでは、リスボン条約の50条を発動して離脱をEUに通知することはないと明言し、今後の交渉を踏まえて、イギリスにいるヨーロッパ人が離脱後もイギリスで暮らせるかどうかについても確約を与えるのを避けている。一方、当初は強硬だったメルケルやオランドを始めとするヨーロッパの指導者たちも、自国の政治状況に配慮して、交渉時期の先送り容認に向けて態度を軟化させている。しかし、困難なタスクが待ち受けていることに変わりはない。交渉を担当できる人材が不足しているだけでなく、スコットランドなどの分離独立問題も抱えている。重要なポイントは交渉相手となる諸国が、「ヨーロッパ・プロジェクト」へのコミットメントよりも、自国の政治利益を重視していることだ。そこから交渉の見取り図を描かなければならない。

  • ヨーロッパをテロから守るには

    デヴィッド・オマンド

    雑誌掲載論文

    アメリカのアルカイダに対する対応が緩慢だったように、ヨーロッパもイスラム国の台頭に迅速に対処せず、これによって深刻な事態が引き起こされている。ヨーロッパの情報当局は内外の情報を統合することを怠り、国内における警察と治安・情報当局、軍の間の連携もうまくいっていない。しかも、あまりに長期にわたって、域内の国境線を事実上取り払ったシェンゲン協定が伴うリスクを無視してきた。テロ対策に必要なのは「敵を知り」、民主的価値を損なわないアプローチをとり、柔軟性を保ち、情報をめぐる国際協調をもっと進化させることだ。重要なのは平和な日常を維持し、それが乱された場合には速やかに平穏を取り戻せる態勢を強化していくことだ。

  • イギリスの新しい国際的役割とは
    ―― 衰退トレンドを克服するビジョンを

    ピーター・マーチン

    Subscribers Only 公開論文

    イギリスの政治階級は、バックミラーを見ながら、将来を考えようとしている。このために、変化する世界におけるイギリスの地位について考えることができずにいる。この現状の根底にあるのは、国家アイデンティティの危機だ。歴史的に、イギリスは世界の覇権国からの凋落を正面から受け止めてこなかった。この国の世論調査では依然として「我が国は大国であり続けることを望むべきか」という問いかけがなされる。2015年の調査でも63%がイエスと答えているが、世界は、大国としてのイギリスの時代が終わっていることを知っている。イギリスの衰退を覆すには、過去を前提にするのではなく、未来から現在を捉える必要がある。ロンドンは、イギリスのことを「グローバル化を促進するとともに、その問題に対処していくことを目的とする思想と議論を提供し、橋渡し役を担う存在にすること」を考えるべきだろう。

  • イギリスにとって本当の問題は何か
    ―― 消失したEUというスケープゴート

    ダニエル・ケレメン

    Subscribers Only 公開論文

    経済不安、生活水準の低下、近年の公共サービス削減に対する怒りを投票で表したEU離脱派の有権者も、最終的には問題の本質が、EUからの移民流入ではなく、イギリス経済の構造変化と保守党政権の政策にあることに気づくだろう。イギリスの政治家と有権者の多くは、長年、自国の問題をEUのせいにしてきた。今後、EU離脱の選択が景気悪化を招き、政治的亀裂が拡大するなかで、EUに代わるスケープゴートを別に見つけなければならなくなる。EUから出た方が、暮らし向きがよくなるかどうかは、すぐにはっきりする。

  • ヨーロッパにおけるポピュリズムの台頭
    ―― 主流派政党はなぜ力を失ったか

    マイケル・ブローニング

    Subscribers Only 公開論文

    ヨーロッパでなぜポピュリズムが台頭しているのか。既存政党が政策面で明らかに失敗していることに対する有権者の幻滅もあるし、「自分たちの立場が無視されていると感じていること」への反動もある。難民危機といまも続くユーロ危機がポピュリズムを台頭させる上で大きな役割を果たしたのも事実だ。いまやフィンランド、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、スイスを含む、多くのヨーロッパ諸国で右派政党がすでに政権をとっている。「イギリス独立党」、フランスの「国民戦線」、「ドイツのための選択肢」など、まだ政権を手に入れていない右派政党もかなりの躍進を遂げている。中道右派と中道左派がともにより中道寄りの政策へと立場を見直したために、伝統的な右派勢力と左派勢力を党から離叛させ、いまやポピュリストがこれらの勢力を取り込んでいる。厄介なのは、ヨーロッパが直面する問題はEUの統合と協調を深化させることでしか解決できないにも関わらず、ヨーロッパの有権者たちがこれ以上ブリュセルに主権を移譲するのを拒絶していることだ。・・・・

  • 統合の危機とヨーロッパの衰退

    ティモシー・ガートン・アッシュ

    Subscribers Only 公開論文

    戦後のドイツにとって、ヨーロッパ諸国の信頼を取り戻すことが、ドイツ統一という長期的目的を実現する唯一の道筋だった。財政同盟という支えを持たない通貨同盟が構造的な問題と崩壊の火種をはらんでいることを理解した上で、西ドイツはドイツ統一のためにあえてユーロを受け入れた。そしていまやヨーロッパはユーロ危機に覆い尽くされ、漂流している。かつてこの大陸を統合へと向かわせた戦争の記憶もソビエトの脅威も希薄化するか、消失している。瓦礫のなかから統合を目指し繁栄を手にした戦後世代とは違って、現代の若者たちは繁栄から失業へ、希望から恐れへと、まったく逆の変化を経験している。統合の維持に向けた新しい源流、エリートと市民たちを統合の維持へと駆り立てる新たな流れが生じない限り、ヨーロッパは、かつての神聖ローマ帝国同様に、ゆっくりとその効率と価値を失い、衰退していくことになるだろう。

インフラプロジェクトの利益と弊害

  • 中国の壮大なインフラプロジェクトに どう関わるか
    ―― 一帯一路への選択的関与を

    ガル・ルフト

    雑誌掲載論文

    アジア諸国がその開発目標を達成するには、今後4年間で年約8000億ドルを交通網、電力網、通信網のインフラ整備に投資する必要がある。しかし既存の開発銀行からは、その10%の資金も調達できない。たとえAIIB(アジアインフラ投資銀行)など中国を中心とする融資機関が約束を果たしても、必要とされる資金規模には達しない。米中のライバル関係を懸念するあまり、ワシントンはこの資金不足が世界の経済的繁栄にいかなる悪影響を与えるかを見過ごしてはならない。世界の経済成長の半分は、アメリカと中国の2カ国が牽引している。世界経済が長期停滞の可能性に直面する今、米中はいがみ合うよりも、互いの開発アジェンダを調和させるほうが豊かになれる。アメリカがグローバルな地位を守ることと、アジアの経済成長を支援することが相反するわけではない。一帯一路を「選択的に支持すれば」双方を達成できる。・・・・

  • インフラプロジェクトと政治腐敗
    ―― 新開発銀行は大きな混乱に直面する

    クリストファー・サバティーニ

    雑誌掲載論文

    BRICS諸国の台頭を象徴するかのように、この10年間にわたって中国、ブラジル、インド、南アフリカでは数多くのインフラプロジェクトが進められ、工業団地、高速道路、橋梁、パイプライン、ダム、スポーツ競技場の建設ラッシュが続いた。しかし、彼らはインフラプロジェクトに時間をかけず、これ見よがしの結果ばかりを追い求めた。要するに、クオリティ(品質)に配慮せず、必要なコストを過小評価してきた。しかも、政府契約の受注をめぐる不透明なプロセスが政治腐敗の温床を作り出した。いまや、経済成長ではなく、政治腐敗スキャンダルという別の共通現象がBRICS諸国を集団として束ねている。国内のインフラプロジェクトがこのような状況にある以上、新開発銀行の融資によるプロジェクトも同様の運命を辿ることになるかもしれない。BRICS諸国政府がインフラプロジェクトに関わる説明責任を果たしていないことからみても、新開発銀行は今後大きなコストを伴う失敗を繰り返すことになるだろう。

  • 中国の新シルクロード構想
    ―― 現実的な構想か見果てぬ夢か

    ジェイコブ・ストークス

    Subscribers Only 公開論文

    シルクロード構想は、アメリカのアジア・リバランシング戦略への対抗策として考案された。陸と海の新シルクロードに沿って巨大な経済圏を形成しようとする、一帯一路とも呼ばれるこの構想は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)による資金的裏付けをもち、中国の政治・経済エリートにも支持されている。相手国のインフラ整備を助けるだけでなく、中国(の国有企業)が抱え込んでいる過剰生産能力のはけ口としての外国市場を切り開き、人民元の国際的役割を強化できる可能性もある。いずれ、中国が主要な役割を担う非欧米型国際ネットワークの構築という北京の野望を実現する助けになるかもしれない。しかし、この構想は、ロシアのユーラシア経済連合、インドの対外構想と直接的に衝突するし、結局は、アフリカや中東での紛争に引きずり込まれ、中国のパワーを時期尚早に広く薄く拡散させることになるだろう。・・・

  • 経済予測はなぜ判断を誤るか
    ―― 経済成長を促す政治ファクターに目を向けよ

    ルチル・シャルマ

    Subscribers Only 公開論文

    現在のトレンドを基にそれを未来に直線的に当てはめれば、ほぼつねに予測を誤る。その典型的な例が新興市場の成長予測だった。経済成長はさまざまなファクターが複雑に絡み合った結果であるにも関わらず、経済アナリストたちは、直近の経済データに依存するか、力強い人口動態などの一つの指標ばかりを重視してしまった。彼らは社会ストーリーや政治は数値化し、予想モデルに組み入れるにはあまりにも流動的だと考え、これらを経済予測に組み込もうとしない。だが、やる気のある政治指導者が、独占企業や政治腐敗、あるいは官僚制度と闘うことで発散させるエネルギーも、非常に重要な経済成長のファクターである。国の先行きを予測する上では、政治的サイクルが景気循環と同様に重要なことをもっと意識する必要があるし、「不況はすぐれた政策を、好況は悪い政策を呼び込むこと」を忘れてはならない。

  • 中国との貿易競争をいかに管理するか
    ―― AIIB時代の貿易と米輸出入銀行

    フレッド・P・ホッチバーグ

    Subscribers Only 公開論文

    この20年で、世界市場での輸出競争は根本的に変化した。ますます多くの国が、確立された国際的ガイドラインを無視した行動をとるようになり、実質的に無法地帯のなかで輸出競争が展開されている。相手国への輸出契約を独占しようと数十億ドル単位の資金をばらまく中国のやり方を前に、輸出入銀行にこれまで以上に大きな権限を与えて柔軟に活動させている国も多い。しかも、新開発銀行(BRICS銀行)、そして2015年末までに活動を開始する予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、途上国の大規模プロジェクトへの融資に今後大きな役割を果たすことになる。このレースを規定するルールは極めて重要だ。ルールをねじ曲げた行動がとられれば、その結果もいびつなものになる。・・・

  • 「ブラジル経済の奇跡」の終わり
    ―― 社会保障か経済成長か

    ルチール・シャルマ

    Subscribers Only 公開論文

    ブラジル経済の成長軌道は、国内の石油、銅、鉄鉱石など、市場の資源需要の拡大軌道とほぼ重なりあっている。問題は、中国経済の減速によって、これらの原材料に対する世界需要が減少し始めていることだ。新興市場諸国が簡単に成長できた時代、原材料価格の高騰が支えた経済成長の時代、そして社会保障を優先してもブラジルがかろうじて4%の成長を実現できた時代は終わろうとしている。経済の停滞を回避するために、リスクをとり、経済を開放し、社会的安定と経済拡大のバランスをとる方法をブラジルが見つけださない限り、未来は切り開けない。改革に失敗し、原材料輸出主導路線に固執すれば、いずれ、ブラジルの経済成長も社会的安定も損なわれていく。

  • 本当に新興国を世界の中枢に迎え入れるべきなのか
    ―― ブラジル、中国、インド、南アフリカの成功の限界

    ホルヘ・カスタニェダ

    Subscribers Only 公開論文

    より現実をうまく反映できるように世界秩序を再編し、グローバルな統治構造の中枢に新興大国を迎え入れる必要がある。こうみなす点では世界的なコンセンサスが形作られつつある。経済的には必然の流れかもしれない。だが、それは世界の人権と民主主義にとって本当にいいことだろうか。金融や貿易領域では、新興大国がグローバルな交渉に参加するのは当然だろう。しかし今のところ、人権や民主主義をめぐる新興国の政治的価値は、国際社会の主要なプレーヤーおよびそのパートナーが信じてきた価値とはあまりにもかけ離れており、世界の統治評議会を構成する国際機関の中枢に新興大国を参加させるのは考えものだ。新興大国は世界で有意義な役割を果たすのに必要な条件、つまり、内外の市民社会の声に耳を傾け、民主的統治を受け入れるつもりがあるのか、もっと真剣に考えるべきだし、既存の大国の側も、そのような新興大国をあえて仲間に迎え入れることを本当に望むのか、もう一度考えるべきだろう。

Current Issues

  • ベネズエラ経済の悪夢
    ―― ディフォルトか抜本的な
    社会・経済改革か

    リサ・ビシディ

    雑誌掲載論文

    すでにベネズエラ市民の4分の3以上が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。商店の棚から商品が姿を消し、スーパーマーケットには、コメなどの基本物資を求めて、行列ができるようになった。輸出収益の95%以上を石油と天然ガスに依存するこの国にとって、エネルギー輸出が低下すると、生活必需品さえ十分に輸入できなくなる。現在の問題は、原油価格の暴落だけでなく、ベネズエラの政策上の欠陥によって引き起こされている。政府は長年、住宅や医療を無償で提供する社会政策の財源を国営のベネズエラ国営石油公社(PDVSA)の収入に依存する一方、国内ガソリン価格を20年近く1リットル約1セントに維持してきた。しかも、ベネズエラ政府とPDVSAは莫大な借り入れを行っており、例えば、2017年4―6月期末には73億ドルを返済しなくてはならない。中国からの融資返済にも苦慮している。政府とPDVSAはディフォルトの危機に直面しつつある。・・・・

  • ブラジルの政治腐敗を断ち切るには
    ―― 制度改革による
    政治ルールの見直しを

    エデュアルド・メロ、マティアズ・スペクター

    雑誌掲載論文

    ブラジルでは、大統領が(有力)議員たちに「彼らが利害を共有する人物たちをパワフルな国有企業や規制当局の要職に任命する権限を与えて」甘い汁を吸わせることも多い。要職に就いた人物たちは、うまみの多い政府契約をどの企業が受注するかについて影響力を持つようになり、賄賂や政治腐敗絡みの入札決定から大きな利益を確保し、これを議会におけるパトロンと共有する。これがブラジルの政治腐敗の構図だ。しかし、本当の問題はもっと深いところにある。ブラジルの政治腐敗と効率のなさという問題がなぜなくならないか。それは、行政府と立法府の関係を規定するルールに不備があるからだ。制度を改革し、政治家が支持者のためだけでなく、広く社会のための優れた統治を試みるようにしない限り、未来は見えてこない。多くの政治家が違法行為に手を染めてしまうインセンティブそのものを排除するには、選挙・政治制度を大幅に見直す必要がある。

  • なぜイランはロシアに基地使用を許したか
    ―― 歴史的不信と中東新秩序への野望

    モフセン・ミラニ

    雑誌掲載論文

    第一次世界大戦後にイギリスとフランスが描いた中東の政治秩序はいまや崩壊しつつあり、ロシアもイランも新しい秩序における自国の居場所に思いを巡らしている。プーチンにとって、ロシアを中東のプレイヤーとして再確立することは、彼の悲願であるグローバルな大国の座を取り戻す上でもきわめて重要な一里塚だ。一方、イランはシリアの将来を決める現在の内戦を、今後の中東秩序を左右する重要な試金石とみなしている。テヘランは、ロシアとの協調は中東での影響力を強化する効果的な手段になると考えているようだ。こうした思惑ゆえに、ロシアに大きな不信感をもつイランも、ロシア軍に国内基地の利用を認めるという驚くべき決定を下した。ロシアとのより緊密な軍事・安全保障関係を築くことで、イランはアメリカの中東政策に対する保険策をとろうとしているとみなすこともできる。・・・

  • 核兵器と核戦略を問い直す
    ―― 何のための核兵器なのか

    フレッド・カプラン

    雑誌掲載論文

    進行しつつある世界政治の変化を十分に考慮できぬまま、われわれは依然として核兵器に固執している。抑止に大量の核兵器は必要ない。オバマ大統領が本気で核戦力の近代化計画を見直すつもりなら、「抑止に本当に必要なものは何か」を再検証しなければならない。核兵器がない状態を想定して、核戦争プランを根底から見直し、何のためにどれだけの核兵器が必要なのかを白紙から合理的に再分析すべきだ。こうした見直しが行われてこなかったのには単純な理由がある。米軍が核戦力を戦略上の前提として重視する派閥を内に抱え、議会も核兵器関連産業や研究所を選挙区にもつ有力メンバーを抱えているからだ。オバマが残された任期中に核の近代化計画の見直しに向けた基盤を作るのは難しいとしても、これは、彼の後継者、そして世界の指導者たちが取り組むべき重要な任務だろう。

  • 北欧福祉国家モデルの幻想
    ―― なぜ誤解が生じているのか

    ニマ・サナンダジ

    雑誌掲載論文

    北欧諸国は繁栄を遂げつつも、富を平等に分配し、優れた社会を実現しているようにみえるかもしれない。だが、そうしたイメージは誇張されている。北欧諸国の経済は民主社会主義(スカンジナビアモデル)に移行して以降よりも、それに先立つ市場経済時代の方が急速な成長を遂げていた。所得格差にしても、福祉国家が定着する前の段階でスウェーデンの所得格差は減少し始めていた。要するに、スカンジナビアにおける福祉国家の成功をテーマとするアメリカ人の研究は、福祉国家体制を確立する前のスカンジナビアの歴史、この地域の人々の社会的特性にまったく関心を寄せておらず、歴史的視点、社会・文化的視点が欠落している。「経済成長を損なうことなく、大規模な社会保障システムを導入できる」と考えるのは間違っている。北欧諸国の実験から得られる教訓とは、「福祉国家システムは社会保障への依存という文化を作り出してしまう」ことに他ならない。

  • サウジの男性後見システムを撤廃せよ
    ―― 女性と経済を抑え込む後見システムとは

    ハラ・アルドサリ

    雑誌掲載論文

    ウジでは女性が自分で何かを選択できることはほとんどなく、常に男性後見人の判断に従わなくてはならない。女性が自分の人生を管理できるとすれば、後見人がその女性の意思を尊重してくれる場合だけだ。女子校の関係者は緊急時でも救急車や消防士を敷地内に入れることはできない。刑務所も、男性後見人の同意がなければ女性を釈放できない。後見人制度はサウジ経済にも悪影響を与えている。女性が労働力に参入しない限り、今後、サウジの家計所得は今後20%減少し、一方で女性の労働が認められれば60%増加すると予測されている。政府は労働法を見直して、後見人の許可がなくても、女性が働けるようにしたが、法改正が徹底されていないために、ほとんどの企業は後見人の同意なしで女性を雇うことはない。・・・・

  • 論争 留学に価値はあるのか

    エリック・R・テルスオロ、サンフォード・アンガー

    雑誌掲載論文

    「留学プログラムが、アメリカの学生たちの知的レベルを高めるような豊かな経験を間違いなく与えてくれるのなら、それは大きな成果となる。だが、いかなる意味でも、そのような留学プログラムは現状では存在しない。・・・留学をすることで得られる認識の変化や文化的違いへの適応は、外国での経験よりも、その学生が本来もっているキャラクターに左右される」。(E・テルスオロ)

    「10年以内に、アメリカの学部生の少なくとも3分の1が、コスト面で許容できる留学プログラムへアクセスできるようにし、21世紀半ばまでには、すべての学生にチャンスを与えるべきだと私は提言した。現状で米大学の学部生の1・5%しか留学しないという嘆かわしい状況からみれば、少しでも留学する学生が増えることが改善になる。アメリカ人が世界の出来事をもっと理解し、うまく対処できるようになるには、自分の目で確かめ、自国が直面する課題を自分で受け止める必要がある」。(S・アンガー)

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