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2021.7.30. Fri

<8月号プレビュー>
生産性向上と繁栄の新時代へ
―― パンデミック後の経済ポテンシャル

パンデミックが引き起こした第二次世界大戦以降最大の経済危機は、驚くべきことに、「生産性の向上と繁栄の新時代」を招き入れるかもしれない。現実にそうなるかは、今後、対パンデミック体制からの離脱を準備していく政府や企業がどのような決定を下すかに左右される。各国が経済回復に多くの資金を投入し、企業がデジタル化から恩恵を引き出せば、少なくとも短・中期的には、生産性の向上と繁栄の見通しは高まる。一方、長期的にはあまり楽観的になれない。無期限に支出(救済措置や財政出動)はできないし、個人消費と民間投資ではそのギャップを埋められないかもしれないからだ。それだけに、テクノロジーや組織構造領域でのイノベーションの拡散を促進し、個人消費を喚起することで、持続的な生産性向上と繁栄のための環境作りを試みる必要がある。(マニュイカ、スペンス)

2009年と比べて今回は財政政策上より多くの手を打てる。グローバル金融危機後の2009年1月におけるアメリカの債務残高が国内総生産(GDP)の50%未満だったのに対して、パンデミックを経たバイデンの大統領就任時には債務がGDPの100%におそらく達していることを考慮すれば、この見方は間違っているようにも思えるかもしれない。だが、かつてと現在では金利に違いがある。2009年1月の段階で10年国債の実質金利はおよそ2%だったが、2021年1月のそれはマイナス1%程度になると考えられる。バイデンがキャンペーンで約束してきた政策を実施すれば、回復は加速する。景気サイクルとワクチンも追い風を作り出すはずだ。(ファーマン)

アメリカ市場における「復活した需要と限られた供給」は予想可能な結果をもたらした。連邦準備制度理事会のPCEコアデフレーターは、3・4%と、1990年代初頭以来の高水準で推移している。マジックマネーの時代におけるこのようなインフレは何を意味するのか。エコノミストや金融アナリストの答えは、現在のインフレがどうなるかについての三つの予測として大別できる。但し、マジックマネーの時代が色あせていくと示唆するのはこのうちの一つの予測、それも、もっとも現実性に乏しい予測だ。連邦準備制度理事会が40年にわたって信頼を築いてきたからこそ、マジックマネーの時代は私たちの目の前にある。世界の人々は、自国の中央銀行が極端な規模の紙幣を刷り増しても、インフレによって自国通貨の価値が破壊されることはないと信頼している。うまくいくとは信じがたいかもしれないが、それでもうまくいっている。・・・(マラビー)

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