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2018.1.3 Wed
資本主義の危機と社会保障
―― どこに均衡を見いだすか
現状における格差は、機会の不平等よりも、むしろ、機会を生かす能力、人的資本の違いに派生している。この能力の格差は、生まれもつ人的ポテンシャルの違い、そして人的ポテンシャルを育む家族やコミュニティの違いに根ざしている。このために、格差と不安は今後もなくならないだろう。この帰結から市民を守る方法を見出す一方で、これまで大きな経済的、文化的な恩恵をもたらしてきた資本主義のダイナミズムを維持する方法を見つけなければならない。・・・(ミューラー)
技術的進化が経済を作り替えていく以上、福祉国家システムも新しい現実に即したものへと見直していかなければならない。最大の課題は、多くの人が仕事を頻繁に変えなければならなくなり、次の仕事を見つけるまで失業してしまう事態、つまり、「とぎれとぎれの雇用」しか得られないという状況にどう対処していくかだ。・・・(コリン、パリアー)
ロボットの導入による失業が現実に起きれば、その一方で、膨大な富が作り出され、それがかつてなく一部へ富を集中させることはすでに分かっている。雇用喪失の一方で、巨大な富が集積されていくことのバランスをどうとるか、広く富を共有していくにはどうすればよいかを考えなければならない。(J・ミラー)
今後10年間でより多くの雇用を創出する産業は何かに関する予測のトップ10のうちの四つは看護・介護に関係した職業で、介護、看護師、在宅介護、看護師補助(ヘルパー)などだ。問題はこれらの雇用の質(と賃金)がとても低いことだ。(E・ポーター)
私はオートメーションによって大量失業時代が引きおこされるとは考えていないが、経済的に困難な状況に直面する個人が出てくるのは避けられないだろう。これは対処すべきとても重要な問題だ。だが(その対応策としては)、普遍的な最低所得保障ではなく、雇用保障の方がよいと思う。この場合、政府がすべての人の「最後の雇用主」ということになる。(H・シアーホルズ)
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資本主義の危機と社会保障
―― どこに均衡を見いだすか2013年4月号 ジェリー・Z・ミューラー 米カトリック大学歴史学教授
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ロボットが雇用を揺るがす
―― デジタル経済と新社会保障政策2015年7月号 ニコラ・コリン(ザ・ファミリー 共同設立者兼パートナー)、ブルーノ・パリアー(ヨーロッパ研究センターリサーチディレクター)
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オートメーション時代の失業と社会保障
2017年6月号 ジョディ・グリーンストーン・ミラー(ビジネス・タレントグループCEO)ほか
2018年1月号プレビュー
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人工知能と中国の軍事パワー
―― 戦場の「技術的特異点」とは今後数十年もすれば、人工知能(AI)が戦争の概念を変化させるかもしれない。AIとロボティクスが戦争で広く応用されるようになれば、AIの急激な技術成長が刺激され、人間の文明に計り知れない変化をもたらす「シンギュラリティ」が現実になると予測する専門家もいる。軍は人間を戦場から引き揚げ始め、むしろ監視役に据え、無人システムに戦闘の大半を遂行させるようになるかもしれない。
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民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
―― モスクワの策略に立ち向かうにはロシア政府は、欧米を攻撃することで国内の政治腐敗や経済的停滞に人々が目を向けないようにし、ナショナリズム感情を煽り立てて国内の反体制派を抑え込み、民主主義国家を守勢に立たせることで、欧米諸国が国内の分断線対策に専念せざるを得ない状況を作り出そうとしている。だが、プーチンとその取り巻きたちは、アメリカの民主主義の最大の強さは市民の政治参加にあることを理解していない。
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中国型シェアリングエコノミーの落とし穴
―― バブルの崩壊は近い中国には、企業価値が10億ドルを超える未上場のユニコーン企業が、シェアリングエコノミー部門だけで12社も存在する。伝統的なシェアリングエコノミーの最大の特徴は、既存資産の利用効率を向上させることにある。しかし、何百万もの新型の自転車や傘を大量に貸し出す中国企業は、過剰供給を作り出しているだけだ。今後、持続不可能なモデルを採用したスタートアップ企業の破綻と統廃合が進むだろう。