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2017.9.14 Thu
米中とツキジデスの罠
―― 次なる文明の衝突を管理するには
台頭する国家は自国の権利を強く意識するようになり、より大きな影響力と敬意を求めるようになる。かたや、チャレンジャーに直面した既存の大国は状況を恐れ、守りを固める。この環境で、誤算のリスクが高まり、相手の心を読めなくなる。米中にはこの「ツキジデスの罠」が待ち受けている。米中間には相手国の理解を阻む文明的な障壁が存在する。必要なのは、相手への理解を深めることだ。(アリソン)
非自由主義諸国は、民主化を求めるアメリカの大戦略が本質的に現状のトランスフォーメーション(大変革)を重視していることに大きな脅威を感じている。問題は、アメリカの外交エリートたちが、多くの場合この点を認識していないことだ。ワシントンはリベラリズムを促進しつつも、その大戦略が他国をひどく脅かす可能性があることを十分に認識する必要がある。(リンド)
世界をグローバルスタンダードで統一しようとする「グローバリズム」のビジョンは、アメリカの中間層の多くにダメージを与えた。中国の指導者たちはこの現実を適切にとらえ、対応する必要がある。対応を誤れば、貿易戦争、地政学的な対立、軍事衝突さえ起きるかもしれない。協調できるだけの叡知とプラグマティズムを米中がもっていれば、おそらくいまよりも安定した世界を保証するグローバル統治に関する新しいコンセンサスを形作れるはずだ。(X・リ)
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米中とツキジデスの罠
―― 次なる文明の衝突を管理するには2017年9月号 グレアム・アリソン ハーバード大学教授(政治学)
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米中という二つのリビジョニスト国家
―― トランプと米中関係の試金石2017年4月号 ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授
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グローバリズム・イデオロギーの終焉
―― 米中は何処へ向かうのか2017年2月号 エリック・X・リ 上海在住ベンチャーキャピタリスト、政治学者
2017年9月号
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縁故資本主義と中国の政治腐敗
――共産党は危機を克服できるか90年代以降、中国共産党が行政の分権化を進めた結果、地方政府のトップはかなりの自己裁定権をもつようになった。こうして地方官僚が個人的利得のために、国の資産と資源を用いる政治腐敗の無限大の機会が誕生した。安月給の役人が上司に賄賂を渡して、「おいしい」ポジションにつけてもらう巨大な売官市場も存在する。これには賄賂の「元手」が必要になるために、その影響は多岐に及び、しかもスキームに関わる誰もが、最終的に、自分の投資に対する見返りを期待する。この政治腐敗のネットワークが軍、司法、さらには中央の規制当局にまで及んでいる。共産党時代を超えて縁故資本主義が続き、中国の未来を不安定化させることになるのか。それとも、共産党はいつもの柔軟性と復元力を発揮するのか。見方は分かれている。・・・
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資本主義と縁故主義
――縁故主義が先進国の制度を脅かす資本主義と社会主義の間で変性したシステムと定義できる縁故主義が世界に蔓延している。冷戦後に勝利を収めた経済システムがあるとすれば、それは欧米が世界へと広げようとした資本主義ではない。縁故主義だ。世界的な広がりをみせた縁故主義は、途上国、新興国だけでなく、アメリカやヨーロッパにも根を下ろした。(1)政治家への政治献金、(2)議会や規制を設定する当局へのロビイング、そして(3)政府でのポジションと民間での仕事を何度も繰り返すリボルビングドアシステムという、縁故主義を助長するメカニズムによってアメリカの民主的制度が損なわれている。一見すると開放的なアメリカの経済システムも、長期にわたって維持されてきたレッセフェールの原則からますます離れ、純然たる縁故主義へと近づきつつある。
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金正恩のもう一つの顔
――北朝鮮CEOとしての金正恩の成功金正恩は道化師ではないし、そのような見方にとらわれれば、北朝鮮とその指導者が突きつけている脅威を誤解することになる。特に、平壌とワシントンの緊張が高まりをみせているだけに、深刻な間違いを犯すことになりかねない。道化師の独裁者としてではなく、むしろ、金正恩を「北朝鮮株式会社を引き継いだ新しい最高経営責任者(CEO)」と考えるべきだろう。金正恩はすでに組織(国家)を束ねるビジョンを示し、組織の手続きを再確立し、人材編成も見直している。実際、彼はすでに権力基盤を固めているようだし、外からの圧力に動じる気配もない。欧米では、金正恩は権力にしがみついているだけの弱い独裁者で、その体制は崩壊の瀬戸際にあるとみなす憶測が絶えない。しかし、CEOとしてみれば、彼も彼の政府も脅かされてはいない。むしろ、安定度を高めている。・・・