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2016.09.02 Fri
中国の台頭で変化した日ロ関係
―― 和解を模索しつつも、
不透明な未来
アメリカに続いてロシアもアジアへと軸足を移そうと試みている。伝統的なヨーロッパ市場ではなく、アジア太平洋市場との関係を強化することで、ロシアの経済成長を刺激したいとプーチンは、考えている。モスクワのアジアシフト戦略は、アジアに影響力を行使したいという願いだけでなく、極東ロシアの人口がまばらであることへの恐れにも突き動かされている。(ヒル)
いまや中国の台頭が、あらゆる地域関係を緊張させている。ロシアはオホーツク海、北極海での中国の活動に神経をとがらせ、一方の日本は尖閣問題を憂慮している。東京は、尖閣問題をめぐって軍事衝突が起きるのではないかと憂慮している。中国だけでなく、韓国との関係も不安定化しているために、東京はアメリカとの同盟関係を補完するために、北東アジアでもう一つの友好関係を確立したいと考えているようだ。(ヒル)
ロシアと北朝鮮の同盟関係の再生が進みつつある。だが、両国の関係が改善しているのは、モスクワが朝鮮半島に経済利益を見出しているからではない。ロシアとアメリカの関係が悪化しているからだ。米ロ関係が敵対的で対決的なムードにあるときは、ロシアは北朝鮮との関係を強化し、米ロ関係が良好なときは、モスクワは平壌との一定の距離を置こうとする。(ジャクソン)
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Foreign Affairs Update
ロシアのアジアシフト戦略という幻想2013年10月号 フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所 シニアフェローボボ・ロー 英チャタムハウス アソシエートフェロー
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中国の台頭で変化した日ロ関係
―― 和解を模索しつつも、不透明な未来2015年4月号 フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所 シニアフェロー
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北朝鮮に接近するプーチンの思惑
―― 米ロ対立の変数としての北朝鮮2014年1月号 バン・ジャクソン 前国防長官室 シニアカントリーディレクター (朝鮮半島担当)
2016年9月号
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追い込まれた中国にどう対応するか
―― 南シナ海の領有権問題仲裁裁判所は、南シナ海で中国が主張する領有権を全面的に退け、フィリピンの立場を支持した。しかしその結果、中国がこれまで以上に好戦的になれば、この勝利は多くの犠牲をもたらす割の合わないものになる。今後、南沙諸島に造成した人工島を中国が放棄したり、かつての状態に戻したりすることはあり得ない。
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アメリカ後の中東におけるイスラエルの立場
―― 紛争の中枢から安定の柱へ中東には巨大なパワーの空白が生じている。憶測を間違えた一連の行動をとった挙げ句、アメリカは中東から遠ざかろうとしている。オバマは同盟国へのコミットメントを減らす一方で、敵対勢力をなだめ、穏健化させることを通じて中東秩序の均衡を図ろうと考えていた。
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ドナルド・トランプの黙示録
―― アメリカ政治思想における終末思想「もっとタフにスマートになり、早く行動を起こさなければ、この国は崩壊する」。トランプはこうした黙示録的メッセージを繰り返し、「自分なら、アメリカがハルマゲドンに向かっていくのを回避できるし、アメリカを再び偉大な国にできる」と主張してきた。意外にも、こうした終末論を口にするアメリカの政治家はトランプが初めてではない。