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ウラジーミル・プーチンに関する論文

ロシアの未来と米中露関係
―― 五つのシナリオに備えよ

2024年6月号

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 シニアフェロー

ロシアと中国は、米主導の国際システムにおける責任ある利害関係者に変貌させられるような相手ではない。彼らの「人格」を作り変えようと努力しても、反感を買い、幻滅するだけだ。むしろ、どのような展開が待ち受けているかに備えるべきだろう。特に、ロシアについてはいくつかのシナリオが考えられる。ロシアは中国に隷属するか、このまま衰退の道を辿るかもしれない。一方、共通点の多いフランスに似た存在になっていくかもしれない。逆に中国を操るようになる可能性も、カオスに陥っていく危険もある。少なくとも、「反ロシアにこり固まった欧米」というプーチンの主張を裏付けるような言動をみせてロシア人をさらにプーチンの下に結集させるのではなく、欧米は「プーチンとロシアを分離したい」と望むロシア人を助けるべきだろう。

プーチンとロシアの未来
―― 浪費される資源と帝国の野望

2024年4月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー・ロシア・ユーラシア・センター シニアフェロー

プーチンは「特別軍事作戦」を開始するにあたって、ポスト・ソビエトの民主的遺産も否定した。民主的制度の確立に始まり、検閲の廃止、ロシア文化とヨーロッパ文化の再統合にいたるまで、プーチンは、1985年以降にロシアが成し遂げた成果のすべてを、一気にテーブルから振り落とした。その後、短期間で、残された民主的制度を粉砕し、ソビエト期に匹敵する抑圧・監視体制を再確立した。それは1945年以降に出現し、1989年以降に支配的となった世界秩序との決別を意味した。ここからロシアはどこへ向かうのか。侵略というウクライナでの彼の高価なプロジェクトは、実際には、ロシアの経済的、人口的未来に地雷をしかけたようなものだ。

ロシア・北朝鮮同盟と中国の立場
―― 不安定な権威主義連合の行方

2024年4月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学 国際問題研究所 センターフェロー

ロシアは平壌が長年望んできた高度な軍事技術を北朝鮮に売り渡すことを選んだ。中国がオファーしない利益をロシアが進んで提供してくれるために、平壌はモスクワに近づき、いまや北京は北朝鮮に対する手だての多くを失っている。一方、ロシアが北朝鮮に軍事支援を求めたという事実は、モスクワが北京から受けている物的援助がいかに少ないかを示している。実際、北朝鮮やロシアと連帯しているとみなされることのリスクを認識している北京は、むしろ、公の場では、この2カ国から距離を置こうとしている。中露・北朝鮮関係の歴史から現状を分析すれば、何がみえてくるか。

世界戦争の足音
―― 歴史は繰り返すのか

2024年3月号

ハル・ブランズ アメリカン・エンタープライズ研究所 シニアフェロー

世界は、1940年代のように、複数の紛争が一つの戦争へ統合されていく局面にあるのかもしれない。東ヨーロッパと中東ではすでに戦争が勃発し、現状を否定するリビジョニズム国家の結びつきがますます強くなっている。この環境で、アジアの係争海域で軍事衝突が起きれば、別の恐ろしいシナリオが浮上する。東アジアでの戦争が他の地域ですでに進行している紛争と重なり合い、ユーラシアの三つの主要地域が一度に大規模な紛争で燃え上がれば、1940年代以来の状況が出現する危険がある。しかも、アメリカはこの課題への準備ができていない。すでにプーチンは、ウクライナと中東における紛争は「ロシアと全世界の運命を決める」一つの大きな闘争の一部だと宣言している。

欧州の戦争疲れ
―― ウクライナへの支持低下をいかに覆すか

2024年2月号

スージー・デニソン 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー
パヴェル・ゼルカ 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー

欧州市民の多く、特にウクライナから遠く離れた国の人々は、戦争を、もはや緊急事態とはみなしていない。ヨーロッパ人の多くは、ウクライナ戦争を遠くの地域の戦争、アルメニアやガザでの紛争と同じくらい遠く、抽象的なものとみなしている。欧州の全般的なウクライナ支持は、依然として揺らいでいないが、近いうちに状況は変わるかもしれない。そのような事態を避けるには、欧州の指導者たちは、どうすればウクライナは戦争に勝てるか、なぜウクライナの勝利が欧州の将来にとって不可欠なのかについて、説得力のある理論を有権者に示す必要がある。だが、そうできなければ、キーウは今後数週間、数カ月で重要な支持を失うことになるかもしれない。・・・

プーチンの立場が欧米の右派のそれと似ているのは偶然ではない。実際、プーチンのアドバイザーたちは、フォックス・ニュースのキャスターなど、米保守の扇動者たちの立場やレトリックを採用している。特に、文化戦争路線を取り入れることで、ワシントンなどのポピュリスト政治家の支持を確保し、欧米社会を内部から切り崩せると考えているようだ。欧米保守派のレトリックを受け入れることで、彼らの支持を確保し、それを基盤にロシアの国際的地位を向上させたいとプーチンは考えている。要するに、20世紀前半にソビエト革命を推進した共産主義インターナショナルに似た、「極右インターナショナル」を形成しつつある。

スマートな指導者がなぜ愚かな判断をするのか
―― 外交政策は合理的か

2024年1月号

カレン・ヤルヒ=マイロ コロンビア大学教授(国際関係論)

リアリストが考えるように、国の外交決定の多くは合理的なのだろうか。指導者にとって合理的なことが、なぜ国にとっても合理的とみなせるのか。指導者の判断は、感情や心理、歴史にも大きな影響を受けるのではないか。実際には、選択によって問われているものが大きいからこそ、大国とその気まぐれな指導者は計算を誤ったり、不合理で神経質な行動をとったりするのではないか。ワシントンは、北京にどう対処すべきか考えるとき、この事実を忘れるべきではない。プーチンのウクライナに関する決断同様に、習近平は自らの目標が達成不可能であることを示唆するエビデンス、行動のコストが途方もなく高くなることを示唆するエビデンスを無視する危険がある。・・・

プーチン独裁と大衆の無関心
―― 終わらない戦争とロシアの日常

2024年1月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー・ロシア・ユーラシアセンター シニアフェロー

モスクワは、大多数の人々が、ウクライナ戦争を含む政府の選択に無関心であり続けることを望んでいる。そして人々は、上から押しつけられた世界の現実を受け入れる方が気が楽だと感じている。和平交渉開始を支持する人も増えているが、彼らは見返りを求めている。征服した「新しい」領土を維持するか、モスクワに「返還されるべきだ」と考えている。ウクライナ戦争を欧米に対する多面的戦争に再構築したプーチンは、欧米との生き残りを賭けた「再戦」まで考えている。一方、ロシア民衆は、大統領選挙の投票用紙で相対的な平穏を買えると考えている。ただし、プーチンがその約束を守るという保証はない。・・・

欧州におけるロシアの第二戦線
―― セルビアとプーチンの思惑

2023年12月号

デイビッド・シェッド 元米国防情報局長官代理
イヴァナ・ストラドナー 民主主義防衛財団 リサーチフェロー

ロシアは、バルカン半島をヨーロッパの弱点とみなし、なかでもセルビアをもっとも脆弱なポイントと捉えている。モスクワをバルカンにおける唯一の信頼される紛争調停者にして、欧米に対して影響力をもてるようにすることがプーチンの狙いだ。すでに、コソボのセルビア系住民が警察部隊を襲撃し、その後、セルビア軍がコソボとの国境地帯に動員されるという事態も起きている。実際、セルビアの指導者は、コソボで作戦を展開する機会がすぐにでも訪れるだろうと考えている。セルビアとコソボの紛争は、バルカンの他の地域に簡単に飛び火しかねず、これこそ、欧米がウクライナから他の場所へ関心を移すことを望んでいるプーチンが期待する展開かもしれない。

ロシアの反欧米連合
―― アメリカの敵を束ねると

2023年11月号

ハンナ・ノッテ ジェームズ・マーティン不拡散研究センター ユーラシア不拡散プログラム・ディレクター

ウクライナでの戦争が「ロシアのパワー、利益、影響力を大きく低下させている」と欧米の高官が状況を捉えているのなら、それは考え直す必要があるだろう。ベネズエラから北朝鮮まで、ロシアは、アメリカやヨーロッパを敵視する多くの国々との軍事協力を強化し、深化させている。これらの国々には、欧米という敵を共有している以上の共通点はあまりないかもしれないし、特に強力な国もない。しかし、これらの国々が一緒になれば、モスクワがウクライナとの戦争を続けるのを助けることができる。アメリカはこの「ロシアの枢軸」に対するバランスをとるために、欧米のパートナーシップと同盟に再投資する必要がある。

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