1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 分裂するヨーロッパに関する論文

穏健化した欧州の右派ポピュリズム
―― 民主主義が勝利する歴史的理由

2022年12月号

シェリ・バーマン バーナードカレッジ教授(政治学)

「過激主義の政治集団が民主主義の大きな脅威になるかどうかは、それが登場した社会の本質に左右される」。民主主義の規範と制度が社会に力強く定着している社会では、反民主主義や過激主義をいくらアピールしても支持者はほとんど得られないために、急進派は穏健化せざるを得なくなる。効率的に民意を汲み取れる民主的社会において、反民主主義や急進主義が受け入れられる余地がほとんどないことは歴史が裏付けている。この状況下では、急進派は周辺化を受け入れるか、穏健化するかどちらかを選ばざるを得なくなる。戦後、共産党がたどった軌道、穏健化を選んで台頭した「イタリアの同胞」、「スウェーデン民主党」などの右派ポピュリスト政党の軌道は、まさにこの歴史的流れを裏付けている。問題は、アメリカ政治が逆方向に向かっていることだ。

欧州はエネルギー危機に屈するのか
―― 短期的危機を長期的機会に

2022年10月号

スーシ・デニソン ヨーロッパ外交評議会 上級政策研究員

イタリアではロシアエネルギーからの離脱を唱える政権が倒れ、その後、フランスのマリーヌ・ルペンは、ロシアに対する「無意味な制裁」に終止符を打つように訴えた。経済的・政治的な圧力の下、これまでウクライナ戦争に対するヨーロッパの反応の特徴だった連帯が脅かされている。重要なのは集団的な対応を維持していくことだ。例えば、(共同債の発行などによって)大規模な資金を調達して、よりクリーンで信頼性の高いエネルギー源を迅速に強化し、この冬以降のエネルギー需要にも応えられる共同リソースを構築することを検討すべきだ。足並みの揃った行動をとらなければ、ヨーロッパはいつまでたっても、自由主義的価値観と市民の基本的必要性の間で揺れ動くことになり、このままでは欧州統合そのものが打撃を受けることになりかねない。

激変する欧州安全保障構造
―― ロシアのウクライナ支配がヨーロッパを変える

2022年4月号

リアナ・フィックス  ジャーマン・マーシャル財団 レジデントフェロー  マイケル・キメージ  カトリック大学 教授(歴史学)

ロシアがウクライナを支配するか、広く不安定化させれば、米欧にとって困難な新時代が始まる。ヨーロッパにおけるアメリカの優位は制約され、ヨーロッパは、EUやNATOの中核メンバーしか守れなくなり、加盟国以外の国は孤立する。米欧の指導者たちは、欧州安全保障構造の見直しとロシアとの大規模な紛争を回避するという二つの課題に直面し、いずれにおいても、核武装した敵と直接対決するリスクを考慮しなければならなくなる。アメリカと同盟国は、ウクライナでのロシアの軍事行動の結果、新たな欧州安全保障秩序を構築するという課題に十分な準備ができていないことを認識することになるだろう。欧米はロシアを過小評価してはならない。希望的観測に基づくストーリーに依存すべきではない。

CFR in Brief
ブレグジットと英・EU貿易協力協定

2021年2月号

マティアス・マティス  ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院 准教授(国際政治経済)

EUは、イギリスが北アイルランドとアイルランドとの境界問題を実質的に回避することを受け入れ、北アイルランドには商品、サービス、資本、ヒトの自由な移動という単一市場の重要な「四つの自由」を維持することが認められた。イギリスもEUとの製品貿易について「ゼロ関税、ゼロクォータ」の条件を勝ち取った。そして、ブリュッセルの立場からすれば、今回の交渉をつうじて「EUからの離脱は容易ではない」という重要なメッセージを示すことができた。このプロセスは、離脱によって主権を取り戻せる一方で、単一市場のメンバーであり続ければ確保できたはずの経済的恩恵を失うというトレードオフを明確に示した。一方、イギリスは、困った状況をEUのせいにして非難することはできなくなった。それだけではない。アメリカとの貿易合意がスムーズに進むとは考えにくいし、しかも、イギリスは潜在的な国家分裂リスクも抱え込んだことになる。・・・

ヨーロッパの地政学的覚醒
―― 危機を前に連帯を強めた欧州の自立

2020年10月号

マックス・バーグマン センター・フォー・アメリカン・プログレス シニアフェロー

パンデミックは、数十年にわたる経済的、政治的な眠りからヨーロッパ大陸を覚醒させ、わずか6カ月前には想像もつかなかった形でEU統合プロジェクトを再活性化したようだ。トランプ政権によって乱用されてきた大西洋同盟に甘んじたり、対外的リーダーシップを攻撃的に行使するようになった中国に期待したりするのではなく、ヨーロッパの指導者たちは「自分に目を向けなければならないこと」を理解し始めている。危機のなかで2兆ドル規模の「経済復興基金」を成立させたことも、この文脈で理解すべきだ。いまや「戦略的自主路線」は、欧州の指導者たちが議論すべきテーマとしてよりも、むしろ、早急に成立させるべき政策とみなされている。大きな問題を内に抱えつつも、今回の危機を経て、ヨーロッパがより強く、より統合されたグローバルプレーヤーになることはほぼ間違いない。

ブレグジット後のイギリス
―― 漂流する連合王国

2020年6月号

ローレンス・D・フリードマン キングス・カレッジ・ロンドン名誉教授

国際社会におけるイギリスの例外的役割は何か。イギリス外交をこれまで規定してきた「ヨーロッパやアメリカとの関係」は「ブレグジット」そして「欧州との関係を軽視するドナルド・トランプ米大統領の登場」によってさらに不透明化している。問題は「もはやアメリカとイギリスが特別な関係にないこと」ではない。壮大な戦略プロジェクトを共有していないことだ。それでもイギリスは、テロとの戦いにおける長い経験を持ち、経済開発の領域でも大きな貢献をしてきた。かなりの軍事大国であり、ヨーロッパでそれに比肩する軍事力を持つのはフランスだけだ。パワーバランスが変化し続け、破壊的な行動が日常化しつつある。このような世界で、イギリスが貢献できることは数多くある。しかしそのためには、独立国家としての限界を受け入れ、ユニークかつ例外的な役割探しを断念する必要がある。・・・

イギリスを待ち受ける嵐
―― 文化的内戦と予期せぬ現実

2020年3月号

ピッパ・ノリス ハーバード大学講師(比較政治)

今後もブレグジットに派生するイギリスの文化的断裂が埋まることはないだろう。若者と年長者、「コスモポリタン・リベラル」と「社会保守」間の大きな亀裂が埋まっていくとは考えにくい。「イギリスの内戦」は終わったのではなく、休戦状態にあるとみるべきだ。スコットランドが再び独立に向けた住民投票を実施する可能性も高まっている。北アイルランドとイギリス本土間で取引されるモノに関税が適用されれば、北アイルランドではアイルランドとの統合気運が高まっていく。世界におけるイギリスの役割が低下する事態を前に、英外務省は、いつも通り、アメリカとの関係強化を目指すかもしれないが、それも予期せぬ現実に直面するかもしれない。コストを強い、精神的な傷を残した離婚は、イギリスの新しい問題の先駆けなのかもしれない。

欧州連合の未来
―― ヨーロッパの理念に何が起きたのか

2020年2月号

アンドリュー・モラフチーク プリンストン大学教授(政治学・公共問題)

欧州連合に対する批判は「ブリュッセルはもっと活動を縮小しろ、いや、もっと拡大しろ」という二つの批判に大別できる。ともに、EUは国民国家に取って代わろうとしているとみなし、前者はそれに反対し、後者はそれに賛成している。反対派には、イギリスのEU離脱(ブレグジット)派や右派ポピュリストを支える欧州懐疑派、そしてフランス、ハンガリー、イタリア、ポーランドのナショナリスト同盟などが含まれる。これら統合反対派は、われわれは「国民国家を守る」と主張する。「もっと拡大しろ」と考える左派は、右派ほど注目されていないが、ヨーロッパ全体、特にブリュッセルでは右派よりも多数派だ。問題は左派の立場があまりに理念的、夢想的でリアリズムに欠けることだ。・・・

独裁者の台頭とハンガリーの衰退
―― ビクトル・オルバンの変節

2019年11月号

パウル・レンドバイ ジャーナリスト

「われわれの力を信じれば、共産主義独裁体制に終止符を打てる」。1989年の演説で(民主化に向けて)ハンガリー人をこう鼓舞した若者は、20年間でポピュリストの独裁者に変貌していた。2010年の選挙で大勝したオルバンが試みたのは、新政権の樹立ではなく、「体制変革」だった。憲法を改正し、憲法裁判所を意のままにし、メディアを押さえつけて管理し、政権に依存する社会経済エリート層を作り出した。ハンガリーのある政治家によれば、オルバンのハンガリーは「ポスト共産主義のマフィア国家で、それを率いるのは政党ではなく、ビクトル・オルバンの政治経済派閥だ」。オルバンは政府を批判する者を非愛国的な反逆者と非難し、自らの失敗やミスを欧州連合のせいにしている。・・・

ヨーロッパが直面する中国の脅威
―― 欧州に対抗策はあるか

2019年10月号

ジュリアン・スミス 前米副大統領副補佐官(国家安全保障担当) トーリー・タウシッグ ブルッキング研究所 米欧センター フェロー(非常勤)

EUは、中国を「代替統治モデルを促進するシステミックなライバル」とみなし、域内の産業基盤を強化することを求め、中国の投資に対するスクリーニングを強化している。問題は、ベルリン、パリ、ブリュッセルで対中政策上の戦略シフトが起きているのに対して、小国の指導者たちが中国との関係強化によって得られる利益だけを依然として重視しているために、ヨーロッパ内に分裂が存在することだ。しかも、対中国の米欧協調も容易ではない環境にある。ワシントンのような対中強硬策をとる必要はないが、ヨーロッパにおける政治・経済領域での影響力を拡大しようとする中国の試みを受け入れるべきではない。リベラルな秩序の開放的で民主的な体質を中国の影響から守らなければならない。・・・

Page Top