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政治・文化・社会に関する論文

北京オリンピックと政治
―― 中国は世界の懸念に耳を傾けていることを示せ

2008年5月号

ミット・ロムニー 前マサチューセッツ州知事

中国は、社会マナーキャンペーンを実施するなど、世界からよいイメージを持ってもらおうと、多くのことを試みてきたが、ダルフール紛争が起きているスーダンから大量の石油を輸入したり、チベットで騒乱を弾圧したりしたことが、これほど世界の反中国感情を掻き立てることになるとは考えていなかったようだ。
スーダンとチベットが非常に微妙で、重要な問題であること、人道性に関わる問題であることをいまや理解していると中国はアピールすべきだ。世界の意見に耳をかたむけ、状況の改善に努めていくことを示すためのシンボリックな行動をとる必要がある。
オリンピックとはホスト国の問題を問うことが目的ではない。世界の優れた運動選手が平和の祭典のために集まり、各国が競い合いつつも、協調できることを、スポーツを通じて広く世界の人々に示すことにある。

チャベス革命の虚構
――無謀な理想主義者の挫折

2008年5月号

フランシスコ・ロドリゲス/元ベネズエラ国民議会チーフエコノミスト

「貧困層に優しいチャベス」という仮説は、事実からかけ離れている。石油高騰からの経済ブームの恩恵を貧困層に再分配するという点で、チャベス政権が過去のベネズエラの政権と異なる措置をとってきたことを示す証拠は、驚くほど少ない。実際には、「チャベスの経済モデル」に画期的なところは何もない。多くのラテンアメリカ諸国が1970年代から1980年代にかけて経験したのと同じ、破滅的な道のりをたどっているだけだ。チャベス政権がその貧困対策の偽りの「成果」をうまくアピールできた最大の理由は、おそらく先進国の知識人や政治家が、ラテンアメリカの開発問題は、金持ちで特権的なエリート層による貧しい大衆の搾取にあるというストーリーを安易に信じ込んでいたためだ。19世紀ならともかく、この見方を現状判断の枠組みにするのは間違っている。

なぜ民族は国家を欲しがるか
――歴史を規定しつづけるエスノナショナリズムの力

2008年4月号

ジェリー・Z・ミューラー 米カトリック大学歴史学教授

「(いまや世界各国で)都市化が進み、識字率が上昇し、政治的に民族集団を動員することも容易になっている。こうした環境下で、民族集団間に出生率や経済成長の格差が存在し、これに新たな移民の流れが加われば、今後も、国の構造や国境線がエスノナショナリズムによって揺るがされることになる。……エスノナショナリズムは、近代国家の形成プロセスが表へと引きずり出す人間の感情と精神にかかわる本質であり、連帯と敵意の源である。形は変わるとしても、今後長い世代にわたってエスノナショナリズムがなくなることはあり得ないし、これに直接的に向き合わない限り、秩序の安定を導き出すことはできない」

アメリカはアジアの台頭にうまく対応できるのか
――問題をつくりだしているのは欧米世界ではないか

2008年4月号

スピーカー
キショール・マブバニ/国立シンガポール大学公共政策大学院長
司会
エレン・L・フロースト/ピーターソン国際経済研究所客員研究員

いまや誰もがアジアをはっきりとしたモデルとみなしている。そしてアジアにおける新しいストーリーとは、アジアが一つにまとまりつつあることだ。人の自由な流れがアジアでは起きている。……新しいアジアの形成は、世界にとって大きな貢献となる。その理由は、これが、安定した世界秩序に利益を見いだし、グローバル秩序の混乱を望まず、西洋と協調したいと望む責任ある利害共有者を大幅に増やしていることを意味するからだ。……若いイスラム教徒たちにとっては、「西洋を模範とする道を歩むか、それともオサマ・ビンラディンに従うか」しか道はなかったが、いまでは、「自分たちも中国やインドに続こう」と考えだしている。

オバマ、クリントン、マケインの 外交顧問が語る 「我が候補が大統領に選ばれれば……」

2008年3月号

スピーカー
スーザン・E・ライス バラク・オバマ上院議員(民主党)顧問
マーラ・ラドマン ヒラリー・クリントン上院議員(民主党)顧問
ランディ・シューヌマン ジョン・マケイン上院議員(共和党)顧問
司会
ジム・ホグランド ワシントンポスト紙編集局次長

中国の民主化は一進一退を繰り返しながらも、先に進んでいる。必要なのは、一握りの支配層の権威と判断に依存するシステムから、広く受け入れられている拘束力のあるルールによって政府を運営するシステムへの移行を完遂させることだ。
地方での選挙、司法制度の改革、監督体制の強化をめぐって中国が現在進めている民主化の実験は、すべてルールを基盤とする制度への移行というトレンドのなかで行われているし、中国社会も開放化と多元性を模索して、しだいに市民社会の形成へと向かいつつある。大きな鍵を握るのが、胡錦涛の後継者がどのようにして選ばれるかだ。共産党メンバーの一部は、胡錦涛が引退する2012年までに、彼の後継を担う党総書記は、党中央委員会のメンバー全員の投票によって選ばれるようになるかもしれないと考えている。
孫文が1世紀前にそう望んだように、現世代の指導層も、民主主義こそ、中国人が長年にわたって模索し、命をかけて戦ってきた繁栄、独立、自由を実現するための最善の道であると考えているかどうか、今後の後継者選びがそれを測る大きな目安となる。

CFRインタビュー
ニュースメディアの将来
 ――ブランド力あるメディアは生き残る

2008年2月号

ピーター・R・カーン ダウ・ジョーンズ前会長

「インターネットが台頭し、若者が新聞・雑誌を読まなくなり、競争が過熱している」ために、プリントメディアの先行きを悲観する声も多く聞かれるが、「一方でそのブランド力、別の言い方をすれば、公共性を追求することで得られる特権(フランチャイズ)に注目して、プリントジャーナリズムの今後を楽観する声もある」
 こう指摘するダウ・ジョーンズのピーター・R・カーン前会長は、「プリントメディアであれ、オンラインメディアであれ、もっとも重要なメトリックス(基準)は、購読者、あるいはネットユーザーが情報提供者をどのように捉えているかだ。これによって、読者、ユーザーのニュースブランドあるいは情報ブランドへの信頼関係、忠誠が築かれる」と指摘する。広告主も「そうしたブランドとユーザー間の結びつき、つまり、たんなる購読者数やクリック数ではなく、メディアブランドとユーザー間の信頼関係の質を評価する」と指摘した同氏は、プリントメディアの今後を左右するのはブランド力、フランチャイズだと強調した。
 聞き手はリー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアシスタント・エディター)。

CFRブリーフィング
国のブランディングを考える

2008年2月号

リー・ハドソン・テスリク スタッフライター

自国のイメージを各国が気にするのはいまに始まった現象ではない。だが、この10年間で、国が自国のイメージや名声を管理していくために用いる手段は大きく様変わりした。各国政府はいまや広告代理店と契約し、かつては企業の広報部が用いていたブランドマネジメントの理論を採り入れてイメージづくりに応用している。国のブランド力を測る新しい基準も登場しているし、どのような国家ブランディング(国のブランド化)のテクニックが有効かをめぐってさまざまな議論が起きている。 国のブランディングに向けた努力は、いまや観光業を超えて幅広い領域で行われている。対外投資を引きつけ、貿易取引を加速し、民間部門の競争力を強化するだけでなく、地政学的な影響力を強化するといった目的を洗練された手法で実現するために、いまや国は広告代理店の力を借りている。
 だが、こうした風潮のなか、国家ブランディングが引き起こす問題を指摘する声もある。優れた広報によって悪い政策の上辺だけを取り繕うようなことをすれば、大きなダメージが待ち受けているかもしれないからだ。

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