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― 北東アジア安全保障に関する論文

領土征服時代への回帰?
―― 世界秩序の未来を左右するウクライナ

2022年6月号

タニシャ・M・ファザル ミネソタ大学教授(政治学)

いまやロシアの侵攻によって、領土の侵略と征服を禁止する規範が、第二次世界大戦以降、もっとも深刻に脅かされている。国際社会がロシアによるウクライナ領土の編入を許せば、各国はより頻繁に国境線を武力で変更しようと試みるようになり、戦争が起き、帝国が復活し、消滅の危機に瀕する国が増えるかもしれない。侵略と征服を禁止する規範が薄れてゆけば、世界は領土紛争のパンドラの箱を開け、数百万の市民が無差別攻撃の標的にされる恐れもある。だが、国際社会は経済制裁と国際法廷を利用して、ロシアの粗野で違法な侵略行為にペナルティを科すことができる。国際社会が領土の征服を禁止する規範を擁護できなければ、大国と国境を接する諸国はかなりの消滅リスクに直面することになる。

北朝鮮危機と台湾有事
―― 半島危機と台湾有事のリンケージ

2022年3月号

ソンミン・チョ 米国防総省 アジア太平洋安全保障研究センター 教授 オリアナ・スカイラー・マストロ  スタンフォード大学 国際問題研究所センターフェロー

北朝鮮がアメリカとその同盟国をミサイル発射で挑発したタイミングで、中国が他の地域で行動に出る恐れがある。すでにそのリスクは高まっているのかもしれない。中国と競い合っているアメリカにとっては特に深刻なダメージになるだろう。戦略的競争の時代にある現在、朝鮮半島、東シナ海、台湾海峡は、良くも悪くも、ますます関連性とリンケージを高めている。こうした安全保障環境の変化に対応するには、日米韓の戦略家がこれらの問題をパッケージ化して捉え、対応策を考案しなければならない。金正恩や習近平を牽制するには、必要なら二つの戦争を同時に戦い、その双方に勝利できることを立証する必要がある。

アメリカは台湾をめぐる戦争で敗北する軌道にある。だが今からでも路線を見直せる。既存のすぐに手に入る軍事資源の分配を見直し、より効率的な計画を立て、重要な同盟関係をうまく生かせば、アメリカは早ければ2020年代の半ばまでには、台湾をめぐる戦争を阻止し、必要であれば相手に勝利する能力を手に入れているはずだ。中国共産党の自制心や10年以上先にならなければ利用できない技術に賭けるのではなく、アメリカの議会と政府は、新たな太平洋防衛戦略を遂行しなければならない。「バトルフォース2025」を新たに構築すれば、アメリカとその同盟国は、中国の侵攻を短期的に抑止し、必要に応じて撃退できるようになる。

台湾有事と日米同盟
―― 事前協議で解決しておくべき課題

2022年2月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会 リサーチフェロー

中国は尖閣諸島を「台湾省」の一部とみなしているため、台湾をめぐって紛争になれば、尖閣諸島も攻略しようとするかもしれない。米軍の介入にもかかわらず、中国が目的を達成すれば、日本は、同盟国のアメリカはひどく弱体化したとみなし、外交政策や防衛態勢を根本的に見直さざるを得なくなるだろう。中国による台湾編入が成功すれば、日本の経済的安全保障も損なわれる。だが、市民の平和主義が根強いために、アメリカを支援することに伴う潜在的なコストやリスクが、日本による支援を制約することになるかもしれない。アメリカにとって重要なのは、中国が挑発もされないのに台湾を攻撃した場合に日本がどのように反応するか、東京がどのようなタイプの支援をどの程度提供する用意があるかについての理解を深めておくことだろう。

中国はクアッドの何を警戒しているか
―― 北京の野心とクアッドの目的

2021年11月号

ケビン・ラッド   アジア・ソサエティ会長

「中国が支配的優位を確立するのが必然である以上、中国の要求を譲歩して受け入れる以外に選択肢はない」。北京は各国をこのように納得させたいと考えている。それだけに、日米豪印戦略対話(クアッド)が中国への対抗バランスを形成できるような十分な規模、一貫性、包括性をもつフォーラムへ進化し、それによってアジアまたは世界的における中国の支配的優位が損なわれるのが避けられない事態になるのは、北京にとって大きな問題だ。中国がクアッドの進歩を抑え込めるような戦略を特定できるかが、一触即発の危険な時代における米中競争、中国のグローバルな野望を左右する重要な要因の一つになる。

グレーゾーン事態と小さな侵略
―― 台湾、尖閣、スプラトリー

2021年11月号

ダン・アルトマン ジョージア州立大学 アシスタントプロフェッサー(政治学)

小さな侵略・征服行動の背後には明確な戦略がある。それを取り返すのではなく、仕方がないと侵略された側が諦めるような小さな領土に侵略をとどめれば、あからさまに国を征服しようとした場合に比べて、全面戦争になるリスクは大きく低下する。だが現実には、中国による台湾侵攻、封鎖、または空爆のシナリオばかりが想定され、(金門島・馬祖島、あるいは太平島を含む)台湾が実行統治する島々を中国が占領するという、より可能性の高いシナリオが無視されている。そうした小領土の占領を回避する上でもっとも効果的なのが、(応戦の意図を示す小規模な)トリップワイヤー戦力、特にアメリカのトリップワイヤー戦力だ。だが、そうした戦力が配備されていないために、尖閣、スプラトリー、台湾など、中国との潜在的なホットスポットの多くで抑止力が不安定化している。

北京では、中国の国家安全保障、主権、国内の安定に対する外からの最大の脅威はアメリカが作り出しているとみなされている。「アメリカは恐怖と羨望に駆られて、あらゆる方法で中国を封じ込めようとしている」。ワシントンの政策エリートは、このような考えが中国国内で定着していることを明確に認識しつつも、そうした敵対的環境を助長しているのは中国ではなく、「中国共産党の権力を弱体化させようと、長年にわたって介入し続けているアメリカの方だ」考えられていることを見落としている。これほどまでに異なる近年の歴史解釈が米中間に存在することを理解すれば、競争を管理し、誰も望んでいない壊滅的な紛争を回避する方法を両国が特定する助けになるはずだ。

対中戦争に備えるには
―― アジアシフトに向けた軍事ミッションの合理化を

2021年7月号

マイケル・ベックリー  タフツ大学准教授(政治学)

もし中国が台湾を攻略すると決めたら、米軍がいかにそれを阻止しようと試みても、中国軍に行く手を阻まれると多くの専門家はみている。だが、これは真実ではない。中国の周辺海域や同盟国にミサイルランチャー、軍事ドローン、センサーを事前配備すれば、(容易に近づけぬ)ハイテク「地雷原」を形作れる。これらの兵器ネットワークは、中国にとって無力化するのが難しいだけでなく、大規模な基地や立派な軍事プラットフォームを必要としない。問題は、アメリカの国防エスタブリッシュメントがこの戦略への迅速なシフトを怠り、時代遅れの装備と重要ではないミッションに資源を投入して浪費を続けていることだ。幸い、中国に厳格に対処すること、そしてアジアへの戦力リバランシングについては超党派の政治的支持がある。適正な戦略にシフトしていく上で欠けているのは、トップレベルのリーダーシップだけだ。

「台湾と中国」というアメリカ問題
―― 台頭する新興国と衰退する超大国

2021年6月号

チャールズ・L・グレーザー  ジョージ・ワシントン大学エリオット・スクール 教授(政治学、国際関係論)

ワシントンは慎重なアジア政策をとっていると考えられているが、実際には、環境が変化していることを考慮せずに、既存のコミットメントを維持している。かつてのようなパワーをもっていない大国が、現状を無理に維持しようと試みれば、非常に危険な賭けに打って出る恐れがある。もちろん、東アジアの同盟関係へのコミットメントは維持すべきだが、台湾を含む南シナ海地域への関与路線は見直すべきだろう。アメリカのパワーが低下しているのなら、最善の選択肢はコミットメントを減らすことかもしれない。これは、南シナ海において中国がより多くの影響力をもつことを認め、台湾を手放し、もはや東アジア地域における支配的なパワーではないことをワシントンが受け入れることを意味する。・・・

アジアでは日本に従え
―― 日米逆転はなぜ起きたか

2021年4月号

チャン・チェ 在上海ライター

中国が敵対性を増し、パンデミックが猛威を振るうなかで、日本は静かに地域リーダーへの台頭を遂げ、アジアにおけるアメリカの信用を回復するための鍵を握る国家に浮上している。多くのアジア諸国はアメリカをリベラルな秩序の擁護者、信頼できるパートナーとはもはやみていない。むしろ、バイデン政権は日本との関係を強化し、地域の多国間イニシアチブも日本と密接に連携して進めるなど、よりきめ細かなアプローチをとるべきだ。この4年間、日本はアジア諸国との間で信頼関係と善意の貯水池を築いてきた。アメリカがそうした好ましい環境にアクセスできるとすれば、長年の同盟国である日本の意見に耳を傾け、そのリーダーシップに従った場合だろう。

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