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― 北東アジア安全保障に関する論文

高市ビジョンと地政学
―― 揺れ動く世界と日本の選択

2026年4月号

マイケル・J・グリーン シドニー大学 アメリカ研究センター所長

高市の戦略は「アメリカか、中堅国との連携強化か」という間違った二者択一を強いるものではない。むしろ、アメリカを中核に、アジアやヨーロッパへ広がる経済・安全保障のパートナーシップの広範な連合を築かなければならないという認識に基づいている。これが、中国の威圧に対抗する上で唯一の実行可能なアプローチだろう。彼女の目標は、アメリカとの安全保障関係をさらに強化することを軸に、より好ましい地域的パワーバランスを取り戻すことにある。そのビジョンは、揺るがされた世界秩序に直面する責任ある国家にとって、もっとも現実的な今後の道筋を示している。

アメリカ後のアジア
―― 米戦略の破綻と中国の優位

2026年4月号

ザック・クーパー アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート シニアフェロー

アメリカがアジアへの経済的・政治的関与を削減していくにつれて、中国が、同盟国やパートナーを切り崩していくリスクにわれわれは直面している。すでに、こうした諸国の多くは、これまでの同盟や連携を再考し、北京の方がより魅力的なパートナーかもしれず、中国が地域の覇権国になるのは避けられないとの結論に近づいている。このために、第1列島線上の少数の国の防衛を重視するアメリカの戦略さえ、もはや維持できないかもしれない。アジア重視路線から離れ、後退を受け入れることが、アメリカのアジアにおける利益を守る最善の方法ではない。だがそうなるのは、避けられないだろう。

日本を一人にしてはいけない
―― 中国のアジア太平洋覇権を阻むには

2026年3月号

ダン・ブルメンタール アメリカン・エンタープライズ研究所 シニアフェロー
マイク・クイケン スタンフォード大学フーバー研究所 特別客員研究員
ランドール・シュライバー 元米国防次官補

日米は重要な岐路に立たされている。東京が、中国との長期にわたる対立に備えて大胆な措置をとり続けるなか、ワシントンのコミットメントは揺らいでいる。東京は難しい部分をこなしてみせた。今度はワシントンが立場を強化しなければならない。中国は、アジア太平洋の覇権を握るという野望を実現する上で、日米同盟が最大の障害であることを理解している。経済的にレジリエントで、外交的に活発で、軍事能力の高い日本なら、台湾を孤立させ、近隣諸国を威圧し、アメリカがこの地域に関与するコストを引き上げる北京の計画を損なうことができる。アメリカは、日本と同盟国にとって台湾有事は存立にかかわるという高市の発言を支持して、同盟国と共にあることを示す必要がある。

アメリカは信頼できるのか
―― 思い悩むアジアのパートナー

2026年3月号

ジョシュア・クランジック 米外交問題評議会(CFR) シニアフェロー(東南アジア・南アジア担当)

西半球と米本土防衛を重視するトランプ政権は、「アメリカの利益に対する脅威としての中国」という認識を下方修正している。一方、これまでとは違って、 新しい米国防戦略では台湾は言及されていない。国家安全保障戦略でも、アメリカは「台湾海峡における現状の一方的変更」に反対するのではなく、単に「支持しない」とされている。日本のような、アジアにおけるもっとも緊密なパートナーとの防衛関係をめぐっても、アメリカの信頼性は疑問視されている。 いまや全てのアジア諸国がアメリカとのパートナーシップが信頼できるかどうかを再検証している。

米日韓の集団的協調を
―― 中国の経済的威圧を抑止するには

2026年3月号

ビクター・チャ 戦略国際問題研究所(CSIS) 会長(地政学・外交政策部門担当)

アメリカと原子力潜水艦協定を結んだ韓国は、現在の日本と同様に、今後、北京の経済的威圧策の対象にされる恐れがある。近隣諸国を経済的に威圧し、圧力行使策に訴えても、北京は、これまでのところ何の代償も支払っていない。単独では、この地域のいかなる国も中国に対抗できる政治的・経済的重みをもっていないからだ。だが、集団としてなら十分な手立てがある。状況を変えるには、中国の経済威圧策を阻止するための集団的抑止協定が必要になる。米日韓は、北大西洋条約機構第5条のように、一国に対する威圧を全加盟国に対する威圧とみなして報復する対中経済抑止協定を形作るべきだろう。

米中の大いなる取引を
―― 関係リセットの条件

2026年2月号

呉心伯 復旦大学 国際問題研究院 院長

世界には、米中がともに繁栄する余地が十分に残されている。トランプ大統領と習近平国家主席の相性は悪くなく、生産的なつながりを形作れるかもしれない。トランプは、中国、ロシア、アメリカという主要国が互いの国益を尊重し、紛争を回避する世界秩序を広く模索しており、これは中国の立場とも重なり合う。つまり、北京とワシントンの指導者は、現在の世界では、米中間の勢力均衡だけでなく、大国間協調(米中間の積極的な連携)が必要であることに同意している。米中の経済問題、台湾、朝鮮半島、日本、南シナ海問題をいかに管理し、国際システムをいかに改革していくか。これらで、米中関係の今後は左右されるだろう。

トランプと金正恩
―― 同盟国は悪辣な米朝取引に備えよ

2025年7月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授

国際社会は北朝鮮の兵器開発・増強路線を止めさせることができず、いまや金正恩はこれまで以上に多くの交渉カードを持っている。当然、ワシントンのこれまでの北朝交渉モデルは選択肢にならない。条件を受け入れさせるには、大きな譲歩を示す必要がある。それは、北朝鮮を核保有国と認め、朝鮮半島から米軍を撤退させることを含む、同盟国に衝撃を与える内容になるかもしれない。ノーベル平和賞受賞への執着、ウクライナでの戦闘を終わらせたいという願望、そして金正恩に独特の友達意識をもつトランプは、北朝鮮の核保有を認め、同盟国を売り渡し、プーチンをなだめるような取引を、すべて「アメリカ・ファースト」の名の下に行うのかもしれない。

トランプの強硬路線とアジア
―― アジアを強制するか、見捨てるか

2025年6月号

リン・クオック ブルッキングス研究所フェロー

アジア諸国が「中国かアメリカか」の二者択一を迫られれば、どう対応するだろうか。中国が常に利益を得るとは限らないが、地理的に近く、この地域と広範な経済的つながりをもち、経済的関与を戦略的優位に転化させるスキルをもつ中国は、もっとも利益を確保しやすい環境にある。アジアに選択を迫っても、その答えはワシントンの気に入るものにはならないかもしれない。一方でトランプ政権が、選択を迫るのではなく、同盟国やパートナーを見捨てることで、習近平と世界を勢力圏に切り分ける「グランド・バーゲン」をまとめようとする恐れもある。ワシントンが今後も圧力と無視という路線を組み合わせれば、北京を警戒する政府を中国の懐に送り込んでしまう危険がある。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

アジアとトランプの脅威
―― 不安定化リスクにどう備えるか

2024年8月号

ビクター・チャ ジョージタウン大学教授(政治学)

オーストラリア、日本、韓国という緊密な同盟国を含む、インド太平洋におけるすべての米同盟国は、トランプ二期目が新たな問題を突きつけてくる事態にもっと危機感をもつべきだ。トランプは、バイデン政権とアジア諸国がまとめた防衛、経済・貿易構想の再交渉を求めるか、解体を試みるかもしれない。同盟国をこれまで以上に貿易上の敵対国とみなし、アメリカの軍事プレゼンスの削減を試みるだろう。独裁的指導者たちと親交を深め、アジアの核不拡散環境を揺るがし、朝鮮半島の核武装化を刺激する恐れさえある。

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