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環境とエネルギーに関する論文

エネルギー不安の時代
―― 移行期におけるリスクにいかに備えるか

2023年5月号

ジェイソン・ボルドフ コロンビア大学 クライメートスクール 学院長
メーガン・L・オサリバン ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際関係)

「エネルギー安全保障に対する過度な懸念が、気候変動との闘いを妨げるかもしれない」。専門家がこう考えていたのはそう昔の話ではない。だが、いまやその逆が真実だ。ネット・ゼロへの移行が進むにつれて、エネルギー安全保障への配慮が不十分であることが、気候変動対策により大きな脅威を突きつけることになるかもしれない。移行期におけるリスクを抑えながら、クリーンエネルギーへのシフトを試みるには、一方で、石油の戦略備蓄の強化、重要鉱物の戦略備蓄、供給混乱への保険策としての火力発電所の温存なども必要になるだろう。政策立案者はいまや、エネルギーと気候の安全保障を適切なバランスで考え、ともに成立させる必要があることを理解しなければならない。

重要鉱物とサプライチェーン
―― クリーンエネルギーと大国間競争

2023年2月号

モーガン・D・バジリアン コロラド鉱山大学教授(公共政策)
グレゴリー・ブリュー イェール大学ジャクソン・スクール 博士研究員

再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。

サウジの新しい世界ビジョン
―― 対米パートナーシップの終わり

2022年12月号

カレン・ヤング コロンビア大学 グローバル・エネルギーセンター 上級研究員

もはやサウジはかつてのようなアメリカのパートナーではない。むしろロシアと組んで、石油市場への影響力とサウジの未来ビジョンを守ろうとしている。リヤドとワシントンは、市場においても、経済発展モデルでも、お互いがパートナーではなく、競争相手であることに今後気づくことになるだろう。サウジは国際政治と貿易の双方において、新興国がより大きな役割を果たす、アメリカとは異なる経済ビジョンを思い描いている。世界はエネルギー不安の時代に入りつつあるが、化石燃料需要は少なくともあと20年は続く。国際システムがますます流動化するなか、サウジは国際関係でこれまで以上に大きな役割を果たすことになるのかもしれない。

気候変動と感染症
―― 温暖化と感染症リスクの拡大

2022年12月号

クレア・クロブシスタ Deputy Editor for cfr.org
リンゼー・メイズランド Editor for cfr.org

多くの研究が、気候変動と人獣共通感染症の脅威拡大との関連を指摘している。温暖化によってウイルスの宿主の生息域と数が拡大し、ヒトとの接触、感染経路が増えているからだ。世界の平均気温の上昇に伴い、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)に報告される新規ライム病の患者数は、1990年代初頭からほぼ倍増し、いまや年約3万人に達している。このような状況を受けて、近年では、人間、動物、自然環境のつながりを重視した公衆衛生の考え方、「ワンヘルス」という概念が広がりをみせている。この概念の下、農業・畜産、獣医学、環境汚染などの分野や研究領域を統合することが、将来のグローバルな健康脅威に備えるために必要だと提唱されている。だが、専門家たちは、世界は気候変動に起因する感染症拡大リスクに対する備えが依然としてできていないとみている。

ウクライナは冬を越せるのか
―― 欧米の支援疲れ、難民危機、電力不足

2022年12月号

メリンダ・ヘリング アトランティック・カウンシル ユーラシアセンター副部長
ジェイコブ・ヘイルブラン ナショナル・インタレスト誌編集長

キーウが直面している問題は、資金不足だけではない。ロシア軍によるエネルギーインフラ攻撃で、ウクライナ全土で停電が起きている。モスクワは空爆によって、この冬、ポーランドなどの周辺国に新たにウクライナ難民を流出させ、政治的混乱を起こし、その多くがプーチンと立場を共有する極右政党を勢いづけたいと考えている。しかも、アメリカの支援はやり過ぎだと考える共和党支持者の割合は48%に達している。それでも欧米は、資金援助、電力と暖房の復旧に必要な機器の提供、ウクライナのインフラをミサイル攻撃から守る防空システムの供与など、さまざまな対策をとることで、ウクライナがこの冬を乗り切れるように助けなければならない。ワシントンと同盟国がウクライナ支援に失敗すれば、今度はヨーロッパの別の戦場でプーチンと再び対峙することになる。

水素エネルギーが地球環境を救う?
―― 新エネルギー技術のポテンシャル

2022年11月号

S・フリオ・フリードマン カーボン・ダイレクト社 チーフサイエンティスト

カナダ、チリ、ドイツ、日本を含む、世界の35カ国以上が水素エネルギー戦略を導入し、促進している。クリーンな水素エネルギーは、気候変動に対処していく上で不可欠なだけでなく、貿易や商業面での競争力を強化する大きなチャンスだと考えられているからだ。特に、太陽光や風力、水力、原子力から得たクリーンな電力を使って、水を水素と酸素に分解する「グリーン水素」の製造が大きな注目を集めている。だが、気候変動との闘いにおいてグリーン水素のポテンシャルを最大限に引き出すには、各国がインフラ整備に投資するともに、新しいエネルギー市場が急速に商業化されたときに必ず生じるリスクを緩和していく政策が必要になる。

世界食糧危機をいかに緩和するか
―― 農業大国アメリカのポテンシャル

2022年8月号

カーライル・フォード・ランゲ ミネソタ大学 栄誉教授(応用経済学、法学)
ロビン・S・ジョンソン 元カーギル社 上席副会長(グローバル担当)

ロシアの黒海封鎖によってウクライナの穀物輸出が妨げられ、ロシアの輸出も経済制裁によって抑え込まれている。こうして、ボスポラス海峡を通過するウクライナやロシアの小麦やトウモロコシの輸出が大きく減少し、エジプトだけでなく、アフガニスタン、エチオピア、ケニア、ナイジェリア、パキスタン、南スーダン、イエメンを含む中東や北アフリカの多くの国々が食糧危機(供給不足、価格高騰)に苦しんでいる。途上国への食糧支援を十分に提供できる立場にある農業大国のアメリカは、飢餓に苦しむ世界に援助を拡大すべきだし、その経験もノウハウももっている。第二次世界大戦期のレンドリースといえば、イギリスへの船舶や軍需品を供給したことが先ず想起されるが、実は食糧援助も含まれていた。・・・

あらゆる都市に猛暑対策担当官を
―― 熱波に備える最高猛暑責任者の任命を

2022年7月号

キャシー・ボーマン・マクラウド アトランティック・カウンシル シニア・バイスプレジデント

2022年は暑い年になるだろうが、少なくとも今後100年間でみればもっとも涼しい年の一つになるはずだ。熱波は人命を奪うだけでなく、道路の陥没や線路の歪みなど、インフラにもダメージを与える。ほとんどの飛行機は気温が49度を超えると離陸できなくなるし、携帯電話は気温が40度に達すると機能しなくなる。ハリケーンや竜巻とは違って、熱波はドラマチックなニュース映像になりにくいが、暴風雨と同じように、熱波は対策をとり、備えることができる。熱波に名前をつけたり、カテゴリーを示したりすれば、大衆の注意を引きやすくなる。実際、この措置はアテネ(ギリシャ)やセビリア(スペイン)など世界6都市で実験されている。だが、気温上昇への対応計画を立案し、実行する担当者を置いている都市は、世界にも数えるほどしかない。人命を救うために、各国の自治体指導者は、最高猛暑責任者(CHO)のポストを設けるべきだろう。

ウクライナ危機と新エネルギー秩序
―― 地政学・気候変動リスクと政府介入の拡大

2022年7月号

ジェイソン・ボルドフ コロンビア・クライメートスクール学院長、メーガン・L・オサリバン ハーバード大学 ケネディスクール教授(国際関係)

ウクライナ戦争が引き起こしているエネルギー危機は、各国の関心を「地政学的エネルギーリスク」に向かわせ、「今後の気候変動対策」と「現状でのエネルギーの必要性」間のバランスをわれわれに否応なく意識させている。仮に世界が戦略的エネルギーブロックの形成へ向かえば、この数十年におけるエネルギー市場のつながりは解体し始め、市場断片化へと向かっていく。注目すべきは、経済的ナショナリズムと脱グローバル化だけでなく、今後のエネルギー秩序が、最近では例のないレベルでのエネルギー部門への政府介入によって定義されるようになると考えられることだ。ロシアのウクライナ侵攻が際立たせたこれらの課題に各国がどう対応するかで、今後数十年における新しいエネルギー秩序が形成されることになるだろう。

変貌したサウジ経済
―― 脱石油の経済モデルと財政規律

2022年3月号

カレン・ヤング 中東研究所ディレクター(経済・エネルギー担当)

石油を財源とする福祉国家モデルはもはや維持できないことを理解したサウジの指導者たちは、社会的支出の拡大を求める圧力が高まっているにもかかわらず、規律あるオーソドックスな財政政策を模索している。消費によって牽引される経済を促し、支出を削減し、世界的な石油需要の低下を乗り切ることを重視し、無駄をそぎ落とした政府を構築しようとしている。新たな歳入源を探るとともに、原油価格の変動に応じた歳出をなくすことで、サウジ政府は湾岸諸国における財政保守の新たなモデル基盤を築こうとしている。

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