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環境とエネルギーに関する論文

モスクワが自国のエネルギー資源を外交ツールとして用い、国内のエネルギー産業への支配体制を再度強化しようとしていることに、諸外国は警戒を強めている。ごく最近も、220億ドル規模のサハリン2プロジェクトの経営権を、合弁プロジェクトに参加している外資企業3社から政府系の天然ガス独占企業であるガスプロムに移動させるという強引な行動に出ている。また、ベラルーシ、ウクライナ、グルジアなどの近隣国に対して、強引に天然ガスの供給価格の引き上げを受け入れさせようとするロシアの手法は、国際的に広く批判されている。そこに浮かび上がってくるのは、資源を外交ツールとして用い、ロシア政府の戦略資源の支配権を再確立し、エリツィン政権時代の外国との契約を見直そうとするプーチン政権の戦略である。

ブッシュの一般教書演説を読み解く
――イラクとガソリン消費の削減

2007年1月号

ナンシー・E・ローマン 米外交問題評議会(CFR) ワシントンプログラム・ディレクター

ブッシュ大統領が一般教書演説でイラクへの米軍増派戦略への支持を強く求めたのは、予算承認権を持つ議会が、増派策を予算面から切り崩そうと試みる危険があることを認識していたからだ。実質的に大統領は「しばらくの間、この戦略にチャンスをくれないか」と議会に訴えかけたと指摘するナンシー・ローマンは、大統領がイランの核開発問題についても簡単なコメントに留めたのは、増派によって「バグダッドの治安を確保して流れをつくりだし、イラク問題で活路が見えてくれば、イランについても有利な状況をつくりだせる」と考えているからだと指摘する。また、外交ではなく、国内領域のアジェンダを重視し、ガソリン消費の削減に向けて包括的で大胆な措置をとると約束したのは、「外交領域ではレームダックに陥らざるを得ない」ことを大統領が認識しているからだろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

なぜ今後10年が将来のエネルギートレンドを左右するのか
――エネルギートレンドに関するIEA報告から

2007年1月

スピーカー
ファティ・バイロル/国際エネルギー機関(IEA)チーフエコノミスト
司会
ジャッド・モーアワッド/ニューヨーク・タイムズ紙 エネルギー担当記者

現在経済ブームのなかにある中国とインドは、エネルギーインフラに莫大な投資を行い、発電所、精製所、送電網その他を整備しており、両国は今後50年から60年のエネルギーパターンを左右するような一連の決定を下しつつある。一方、経済協力開発機構(OECD)加盟諸国にとっても今後の10年間は重要だ。OECD加盟国が発電所、送電網などエネルギーインフラに大規模な投資を行ったのは第2次世界大戦直後で、これらのインフラの多くを新しいインフラに置き換えていかなければならないからだ。どのような技術、燃料資源、どのような設計が好ましいのかを、今後を見据えて判断しなければならない。今後の10年間は、われわれがエネルギー路線を見直すうえで非常に重要な時期になり、この間に現在の路線を見直さなければ、好ましくないエネルギートレンドを覆すのはますます難しくなる。

CFRブリーフィング
アメリカはガソリン消費を削減できるか

2007年1月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会(CFR) 科学技術担当非常勤シニア・フェロー、ロバート・マクマホン www.cfr.org 副編集長

この30年間にわたって、アメリカ政府は車の燃費改善に向けた大がかりな措置を導入しようとはしなかった。1990年代以降は、大きなトラックやスポーツ・ユーティリティー車(SUV)の市場での人気が高まり、新車の平均燃費は向上するどころか、低下するようになった。だが、昨今では輸入石油への依存の高まりが危険視され、二酸化炭素排出による地球温暖化問題が再度注目されるようになり、ガソリン消費の削減に向けた措置も検討されている。ブッシュ大統領は、1月24日の一般教書演説で、10年以内にアメリカのガソリン使用量を20%削減させるという大胆な構想を発表した。実際にそうできるかどうかの鍵を握るのが、バイオ燃料(エタノール)の開発と、燃費の改善だ。だが、エタノールの開発をめぐっては、その現実性をめぐってさまざまな議論があるし、燃費の改善についても、各種利益団体の圧力で議会は身動きがとれなくなる恐れもある。

原油価格を政策で低下させよ  ――環境規制の一時緩和とエタノール混合ガソリンを

2006年5月号

フィリップ・K・バレジャー 国際経済研究所(IIE)シニア・フェロー

大気汚染緩和のために、例えば、カリフォルニアの環境規制当局は、環境を特に悪化させるような、発ガン性物質であるベンゼンや、硫黄化合物をガソリンから取り除くことを義務付けている。「問題は、環境基準をクリアできるようなガソリンを作り出せる精製所が少なく、これがガソリンの供給を逼迫させている原因の一つとなっていることだ」と国際経済研究所の石油問題の専門家、フィリップ・K・バレジャーは指摘する。今年もまたハリケーンで精油所に被害が出るようなら、またガソリンの供給が乱れる。だが「環境規制を一時的に緩和させれば、供給の逼迫を回避できる」とバレジャーは言う。また、「ガソリンに25%のエタノール含有を義務付けるだけで、一日当たり250万~300万バレルの原油消費を節約することができ、その結果、原油価格の低下にも繋がる」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

ワールド・エコノミック・アップデート  
――原油高騰、米経常赤字、保護主義を検証する

2006年3月号

スピーカー モルガン・スタンレー社 チーフエコノミスト スティーブン・ローチ
ドイツ銀行証券 チーフUSエコノミスト ピーター・フーパー
JPモルガン投資銀行 副理事長 ジョン・P・リプスキー
司会 ジョージタウン大学教授 ダニエル・K・タルーロ

「アメリカ議会は、ますますポピュリスト(大衆迎合)的な方向へと傾斜しており、きわめて保護主義的になっている。(中略)外国資本にこれほど依存しているというのに、アメリカの政治家たちは、われわれの命綱とも言える外国資本の流入を自ら止めようとしている」(S・ローチ)

「1970年代のオイルショックの原因は原油の『供給』が制限されたことによって起きたが、今回の価格高騰は原油の『需要』増に起因している。(中略)1バレル100ドル位まで高騰しないとオイルショック並の危機は起こらないと考えることもできる」(P・フーパー)

「私は、2006年は世界経済にとっての大きなターニングポイントになると考えている。主要国の経済成長が(経済のグローバル化に伴う変動期を経て)安定成長路線へと回帰しつつあるからだ」(J・P・リプスキー)

新エネルギー安保を構築せよ  
――現実に即した新パラダイムを

2006年3月号

ケンブリッジ・エネルギーリサーチ・ アソシエーツ(CERA)理事長 ダニエル・ヤーギン

先進国ではエネルギー安保とは十分な供給を妥当な価格で確保することと考えられているが、産油国、途上国にとっては別の意味合いをもつ。需要ショックを経験しているいまや、供給ショック、先進国の立場だけを前提とする現在の安保システムでは状況に対応できない。需要の高まりだけでなく、テロの脅威、産油国の政治的混乱、紛争、石油シーレーンでの海賊行為という問題も、エネルギー安保の脆弱性を高めている。中国とインドを先進国のエネルギー安保システムに参加させ、世界のすべてのサプライチェーンとインフラを守り、危機に際しては規制を柔軟に緩和し、国際情勢を十分に視野に入れた新たな安全保障構想を構築する必要がある。

膨大な石油資源を持ちながらも、治安問題、インフラの不備、さらには法環境の整備がまだできていないために、イラクは実質的に石油を輸入している状態にある。大手外国資本も、治安問題ゆえにイラク石油資源への投資にはまだ乗り気ではない。さらにやっかいなのは、石油からの歳入をどう分配するかについて国内的な対立があることだ。石油資源豊かな北部と南部では、連邦政府が管理するのは既存の油田だけなのか、これから発見される油田も含むのかをめぐって論争が起きているし、すでにスンニ派は、クルド人がバグダッドを迂回して、外国の石油企業と開発合意を交渉するのは憲法に反すると批判している。

石油需要の増大は、エネルギー資源の輸入国から輸出国への世界規模での大規模な富の移転という現象を引き起こしており、エネルギー資源輸出諸国の経常黒字は最近では4000億ドル規模に達している。とはいえ、これが直ちに石油輸出国のGDPの引き上げにつながるわけでも、1人あたり所得の増大をもたらすわけでもない。その理由は多岐にわたる……

原油価格の高騰が続くなか、石油に替わるエネルギー資源の開発を模索していく価値は十分にあるが、代替エネルギーに過大な期待をかけるのはやめた方がいい。運輸交通部門などで石油以上に効率的なエネルギー資源を得ることは、不可能に近い。しかも、代替資源に切り替えるにはインフラを一新しなければならないため、そのコストを考えるといかなる代替エネルギー資源も、石油よりも割高になってしまう。ただし、地球環境への長期的な負担を軽減するには、代替エネルギーの研究開発を今後も進めていく必要がある。

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