1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

環境とエネルギーに関する論文

3.11は日本の何を変え、何を変えなかったのか。高齢社会と社会保障の財源不足、債務、財政赤字という大きな問題はいまもそこに存在する。変化したのは、原発危機によってエネルギー供給の先行きが不透明化し、産業の空洞化が進み、観光産業の促進も専門職の外国人の招致も難しくなっていることだ。過去のやり方ではもはや未来は切り開けない。だからこそ、復興プロジェクトを新しい日本の将来に向けた土台を築くための触媒にしなければならない。電力不足を将来のクリーンエネルギー大国の布石にし、債務と赤字を削減するような経済成長路線へと向かわせるには、現状を的確に把握した上での大胆な戦略が必要になる。

クリーンエネルギーの不都合な真実
―― 補助金を脱した真のクリーンエネルギー革命に向けて

2011年7月号

デビッド・ビクター カリフォルニア大学教授
カッシア・ヤノセック タナ・エナジーキャピタルLLC プリンシパル

世界のクリーンエネルギー・プロジェクトへの投資の8分の7は、政府の補助金がなければ、在来エネルギーとは競合できない既存技術を対象としており、真の技術革新への投資は、全体からみれば、ほんの一部でしかない。問題は、政府によるクリーンエネルギー促進策が景気刺激策の一環として実施されてきたことだ。その結果、投資家は、在来型のエネルギー資源と競合できるようになるポテンシャルを秘めた技術革新レベルの高い技術ではなく、(補助金が期待でき)早く簡単に実施できる既存のプロジェクトへと資金をつぎ込んでしまった。クリーンエネルギー産業の先行きは憂うつと言わざるを得ない。地球温暖化を引き起こさずに大規模な電力を生産できるのは現状では原子力だけだ。貴重な公的資金を、バイオ燃料、あるいは、ソーラーエネルギーや風力エネルギーにつきまとう断続問題を克服できるエネルギー貯蔵技術を含む、電力生産領域における画期的な技術革新の実証実験と配備へとシフトさせる必要がある。

第3の石油ショックか
―― 中東の政治的混乱と原油価格高騰

2011年4月号

エドワード・モース 元国務副次官補(国際エネルギー担当)

「石油の呪縛」として知られる社会・政治構造が引き起こす産油国の絶望的な経済・社会的な停滞が、現在中東各地で起きている政治的混乱の背景にある。人々は、高い失業率、極端な所得格差、(食糧価格など)高い生活コスト、そして老人支配政治と泥棒政治などに対して怒りを表明している。つまり、産油国が「石油の呪縛」を断ち切るために、経済を多角化していかない限り、政治的争乱の原因である社会不満は解消しない。さらに、産油国国内における石油の消費も増大している。その結果、中東石油に依存する消費国は厄介な先行き見込みに直面している。現在の政治的混乱による供給の乱れだけでなく、産油国の国内消費の増大による供給の乱れを織り込まざるを得なくなっている。2011年は1971年同様に、石油をめぐる地政学の分水嶺の年になるかもしれない。

「天然ガス革命」の到来
――天然ガス・グローバル市場の誕生は近い

2011年2月号

ジョン・ダッチ 元米エネルギー省次官

水平抗井や水圧破砕という二つの技術進化によって、これまで開発が難しかった世界のシェールガス資源の開発・生産効率が劇的に改善し、その生産コストも大きく低下している。シェールガスという安価な非在来型天然ガス資源の開発が急ピッチで進められているのは、こうした理由からだ。しかも、シェールガス資源のような非在来型天然ガスの生産が強化される一方で、地域間を結ぶパイプラインが整備され、天然ガスの液化施設の建設も進められている。必然的に、天然ガス価格を石油価格に連動させた、供給側に有利なこれまでの契約は次第に姿を消していくだろう。いずれ、より透明性の高い天然ガスの世界市場が誕生し、最初に電力生産部門で、次に、産業・交通部門で天然ガスが石油に取って代わっていくことになるだろう。この流れを「天然ガス革命」と呼んでも、過度に事実を誇張することにはならないはずだ。

CFRミーティング
世界エネルギー・アウトルック ――
ゲームチェンジャーとしての電気自動車と二酸化炭素回収・貯蔵技術

2011年1月号

スピーカー
ファティ・ビロル 国際エネルギー機関・経済分析部 チーフエコノミスト
司会
ピーター・ゴールドマーク 環境防衛ファンド ディレクター

原油価格は今後も高いレベルを維持し、一方、天然ガスの価格は供給過剰で今後も安値が続く。天然ガスは環境面でも悪い選択肢ではなく、逆に再生可能エネルギーの開発にはマイナスに作用している部分がある。・・・既存のエネルギーに比べてコストが高いために、クリーンテクノロジーは市場に浸透しないという問題を抱えている。鍵を握るのは中国だ。中国が、クリーンテクノロジーを大々的に市場に導入すれば、コストは引き下げられ、これは世界のすべてにとっての利益になる。だがもう一つの側面もある。電気自動車を例にとると、中国は自動車メーカー、部品メーカーその他すべてをひとまとめにして、資金と補助金を与えるという戦略をとっている。つまり、今後20~25年もすれば、中国が電気自動車産業の覇者になっていてもおかしくはない。・・・いずれにしても、エネルギー問題、地球環境、石油市場についてわれわれが持続不可能な未来へと向かっているという基本的な流れに変化はみられない。(F・ビロル)

クリーンエネルギーの研究・開発、実証実験を多国間で進めよ

2011年11月号

マイケル・レビ、エリザベス・C・エコノミー、シャノン・オニール、アダム・シーガル
4氏はいずれも米外交問題評議会のシニア・フェロー。 各氏の担当分野。専門は論文末の著者紹介を参照。

現状では、クリーンエネルギーはほぼいかなるケースにおいても化石燃料エネルギーよりもコストがかかる。例えば、中国では原子力発電は石炭よりも15〜70%も高く、陸上風力発電は石炭の2〜4倍、太陽光発電は5倍以上のコストがかかる。(莫大なコストを要する)クリーンエネルギー導入の資金リスクを減らし、価格が現在よりも安く、経済性のあるものにならない限り、クリーンエネルギー促進政策が、必要とされる規模とペースで進展することはあり得ない。経済性を高めて、コストを下げるには、クリーンエネルギーの世界市場を何としても誕生させる必要がある。だが、クリーンエネルギーへの投資が国家の競争力を高めることを目的とするゼロサム・ゲームと認識されている限り、国家は障壁をめぐらそうとし、世界市場は出現しない。各国の試行錯誤を緊密に連携させ、他国の成果の上に研究を積み重ねられるようにして、市場の形成と拡大を目指すべきだ。

食糧・穀物供給危機の再来か
― 異常気象と穀物市場の行方

2010年9月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニア・フェロー

記録破りの猛暑の日差しが、世界の穀倉地帯を焦がしている。異常気象による収穫減を前に、ウクライナやウズベキスタンがロシアと同様に穀物の輸出禁止措置に踏み切れば、すでに先細り気味の世界の穀物収穫量はさらに下方修正を余儀なくされる。インド、スイス、フランスその他のヨーロッパ諸国が大量の穀物備蓄を開始しているという噂もある。サウジアラビアや中国などの諸国は、すでに今後の食糧危機に備えて、アフリカやアジアの貧困諸国で耕作可能な土地を確保しつつあるようだ。現在の穀物市場をめぐる世界の不安を抑えようと賢明に試みている世界農業・食糧機関も、最近の価格高騰が始まる前の2010年6月に憂鬱な予測を示している。それによれば、農産品の供給が十分ではなく、エネルギーコストが増大し、拡大する世界の中産階級層の食の多様化が重なり合うことで、今後10年の穀類、穀物、石油、乳製品価格は、2007年の水準と比べて40%上昇する可能性がある。厄介なことに、小麦その他の穀物の取引トレンドは、食糧危機が起きた2007~2008年のそれに似てきている。穀物の先物取引が急増し、いまや価格は2008年以降、最高水準に達している。

Review Essay
世界的水資源不足の時代へ
―― ペットボトル飲料水は何を意味するか

2010年9月号 

ジェームズ・E・ニッカム
国際水資源協会事務局長

数多くの湖や川が消滅しつつあるし、現存する川や湖についても水質が悪化している。地下水資源も濫用や汚染のリスクにさらされている。水資源の危機はいまそこにある脅威だ。問われているのは「誰がどのように」貴重な水資源を利用するかだ。世界で消費される水の70%は農業用水として用いられており、これらが生産的に消費されることはほとんどない。一方、経済機能と人口が都市部に集中し、工業用水と生活用水の需要が増えるにつれて、水の安定供給を求める都市部からの圧力が高まりつつある。一方、河川デルタのエコシステムの維持など、環境保全のために手を付けるべきではない水資源もある。ペットボトルの見直しや処理された下水の再利用という選択肢を含めて、希少な水資源をいかにうまく管理すべきなのか。効率的水資源の管理に向いているのは市場メカニズムなのか、それとも官民の協調なのか。世界の水資源の問題は、人口動態、エネルギー、環境など世界のあらゆる問題と分かち難く結びついていること考慮して、水資源の包括的管理を考えるべきタイミングにある。

Page Top