1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 中国経済の成長とリスクに関する論文

「中国経済の奇跡」の終わり
―― アメリカが門戸開放策をとるべき理由

2023年9月号

アダム・S・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長

中国では家計貯蓄が急増し、民間の耐久消費財消費が大きく減少している。この現象を「経済領域におけるコロナ後遺症」とみなすこともできる。特定の政策がある日突然拡大され、次の日には撤回される事態を経験した人々は、景気刺激策を含む政府の経済対策に反応しにくくなる。専門家の多くは、現状を説明する上で、不安定化する不動産市場や不良債権の問題などを重視するが、経済成長を持続的に抑え込む「経済領域で長期化するコロナの余波」の方がはるかに深刻な問題だ。すでに、不安定な状況に直面した富裕層は、外への退出を試みており、時とともに、こうした出口戦略はより多くの中国人にとって魅力的になるだろう。アメリカはこのタイミングで、現在の対中政策を全面的に見直し、中国の人と資本への門戸開放政策をとる必要がある。

米中経済関係のリアリティ
―― ディリスキングと変化しない現実

2023年8月号

ジャミ・ミシック 元キッシンジャー・アソシエイツ会長
ピーター・オルザグ ラザード 最高経営責任者(CEO)
セオドアー・ブンゼル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター

米中経済関係はディカップリングが示唆するような経済関係の断絶ではなく、むしろ、「ディリスキング(リスク排除)」へ向かっている。中国とのあらゆる経済関係を締め付けるのではなく、ワシントンが特定のリスクを低下させようとしていることは、データ上も確認されている。多くの分野では、製造工程の一部が中国から切り離されるとしても、全般的な中国依存の構図は変化しないと考えられる。実際、家庭用製品や高級ブランド商品など、ディリスキングによる変化がほとんど生じないと考えられる部門は多い。だがアメリカは、同盟国やパートナーとディリスキング戦略を調整して、連携して行動する必要がある。そうしない限り、同盟国との間に亀裂が生じ、北京がそれにつけ込んでくるだろう。

高まる社会不満と政治不信
―― ゼロコロナ政策の深刻な帰結

2023年2月号

リネッテ・H・オング トロント大学教授(政治学)

薬局の棚は空で、病院での診療は受けられず、火葬場は長蛇の列だ。国からの信頼できる情報もない。突然解除された規制に対する民衆の不満は高まっている。今や、中国におけるコロナウイルスの新規感染者数は1日あたり約100万人で、ウイルスは制御不能な状態にある。習近平が固執してきたゼロコロナ政策からの大転換によって、不穏な雰囲気と政府に対する反発はむしろ高まっている。共産党に対する市民の信頼も失墜しつつある。社会的不満の高まりは、やがて党内エリートの結束も弱めるかもしれない。この間違いが引き起こす政治コストがどのようなものになるか、今のところわからない。しかし、共産党が自ら作り出したこの危機を無傷で乗り切れるとは考えにくい。

レッドチャイナの復活
―― 習近平のマルクス主義

2022年12月号

ケビン・ラッド アジア・ソサエティ会長

習近平の中国は、鄧小平路線に象徴される改革開放路線、プラグマティズム路線と完全に決別した。改革時代の終わりの儀式を司ったのが第20回党大会だった。マルクス・レーニン主義の信奉者である習の台頭はイデオロギー的指導者の世界舞台における復活を意味する。共産党による政治・社会の統制時代へ回帰し、中国における少数意見や個人の自由のための空間は小さくなっていくだろう。経済政策も市場経済路線から国家主義的アプローチへ戻され、国際的現状を変化させることを目的とする、ますます強硬な外交・安全保障政策が模索されるようになる。考えるべきは、この計画が成功するのか、それとも、このビジョンに抵抗する政治的反動が内外で引き起こされるかだろう。

追い込まれた中国経済
―― もはや低成長を受け入れるしかない

2022年11月号

マイケル・ペティス 北京大学 光華管理学院 教授

中国にとって、投資率が高いことは悪いことではなかった。かつて必要とされていたのはまさしく投資主導型の経済開発モデルだった。問題は不動産とインフラ部門での非生産的投資の時代があまりに長く続いたことだ。15年ほど前から、債務が国内総生産(GDP)成長率を上回るペースで増加し始め、肥大化していった。しかもいまや不動産バブルははじけ、新しい経済モデルへ移行するしかない状況にある。中国が消費(内需)主導型の成長へシフトできるとは考えにくい。投資を急速に減らして成長率の大幅な低下を受け入れるか、問題を先送りし、債務の急増によって路線維持が困難になるまで、現在の投資主導型路線を続けるしかないだろう。だが最終的には、経済成長は急激に減速し、その減速の仕方は、中国、中国共産党、そして世界経済に深刻な影響を与えることになるはずだ。・・・

習近平の本質
―― 奢りとパラノイアの政治

2022年11月号

蔡霞 元中国共産党中央党校教授

習近平は中国の政治派閥のすべてから反発を買っている。彼が伝統的な権力分配構造を破壊したことに憤慨し、その「無謀な政策が党の将来を危うくしている」と考えているエリートは少なくない。民間企業を締め上げ、政策の細部にまで介入して民衆を苦しめる統治スタイルへの社会の反発も大きい。いまや、天安門事件以降初めて、中国の最高指導者は政府内部の反対意見だけでなく、激しい民衆の反発と社会騒乱の現実的リスクに直面している。今後、統治スタイルがさらに極端になれば、彼がすでに引き起こしている内紛は激化し、反発は大きくなる。習近平が脅威を感じ、大胆な行動に出れば、ますます反発が大きくなるという悪循環が生じるかもしれない。・・・

低成長と中国経済の課題
―― 内需主導型成長への転換は実現するか

2022年10月号

ブラッド・セッツァー 米外交問題評議会シニアフェロー

高い貯蓄率は借金頼みの経済成長を促すことで、中国の金融システムが現在抱える問題を生み出してきた。貯蓄が多いということは、消費が弱い(消費に回す資金が乏しい)ことを意味するからだ。このため過去20年間、中国経済の成長は内需ではなく、輸出または定期的な投資拡大によって支えられてきた。だが不動産デベロッパーもいまや債務問題に苦しんでいる。しかも、地方政府の歳入は、デベロッパーへの土地売却に大きく依存してきたために、現在の不動産不況で大きく圧迫されている。地方政府が誘導する投資ではなく、個人消費に牽引された、より健全な経済を築くには、政府の財政措置を拡大しなければならない。北京は、国内債務が拡大して投資主導型経済成長の時代が終焉し、歴史的な高度成長は過去のものになったという困難な現実を受け入れる必要がある。

人口減少に苦しむ中国
―― 一人っ子政策は放棄したが・・・

2022年6月号

カール・ミンズナー 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究)

長年にわたる産児制限策を撤廃すれば、出生率は上昇し、人口は増えると北京は考えていた。2013年、夫婦のどちらかが一人っ子の場合、二人の子どもを持つことを認めると発表し、2016年には一人っ子政策は正式に廃止され、二人っ子政策となった。そして2021年には三人っ子政策が導入された。だが、どれも十分な効果はなかった。共産党が「伝統的なジェンダー規範」を復活させたことも、出生率低下の根本原因を悪化させるだろう。北京は、女性を苦しめるイデオロギー的な政策転換をやめ、人口の高齢化を受け入れるべきだ。定年退職年齢を引き上げて、持続不可能な年金額を引き下げ、高齢者、特に貧しい農村の高齢者のための介護制度を改善して少子高齢化の余波に対処する必要がある。そうしない限り、中国の人口動態はさらに悪化し、最終的には、一段と過激で痛みを伴う政策転換が必要になる。・・・

ウクライナ戦争と中国の選択
―― 軍事と経済を区別したバランス戦略

2022年6月号

閻学通 清華大学 教授 国際関係研究院 学院長

「経済制裁で威嚇してもロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったアメリカは、いまや紛争の終結から長期化へと目標を見直している」と北京では考えられている。バイデン自身、「この先長い戦いに備えなければならない」と発言している。オースチン米国防長官が「ウクライナに侵攻できない程度にロシアが弱体化することを望んでいる」と発言したことも、アメリカはロシアの弱体化を優先しているという中国側の確信を高めている。北京は「ロシアを泥沼に引きずり込もうと(ワシントンは)ウクライナでの紛争を長引かせるつもりではないか」と懸念する一方、ロシアのウクライナ戦争についての中国の言動がどのようなものであれ、ワシントンが対中封じ込め戦略を緩めるとは考えにくいとみている。

中国経済は低成長期へ
―― 世界経済への意味合い

2022年6月号

ダニエル・H・ローゼン ロジウム・グループ パートナー

企業投資、家計や政府の支出、貿易黒字からみても、中国の国内総生産(GDP)がこれまでのような成長を持続できるとは考えにくい。現実には、2022年に2%の成長を維持することさえ難しく、正確に計測すれば、2022年はゼロ成長、あるいは景気後退に陥る危険もある。基本的な財政・金融・その他の改革を遂行せずに、政治的に決定された高い成長目標を永続的に達成できると信じる理由はどこにもない。ワシントンは「中国経済が問題に直面している」という現実への関心を責任ある形で喚起すべきだろう。中国の経済成長の鈍化は、14億の中国人だけでなく、世界の多くの人の経済的繁栄を損なうことになるのだから。・・・

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