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テーマに関する論文

ガザ合意は何を問いかける
―― 米イスラエル関係の奇妙なパターン

2025年11月号

ヨースト・R・ヒルターマン 国際危機グループ 中東・北アフリカ担当特別顧問
ナターシャ・ホール 戦略国際問題研究所 上級研究員(非常勤)

イスラエルがカオスを作り出し、アメリカが不本意ながらその流れに追随するという、はっきりとしたパターンが生まれている。このダイナミクスを断ち切るには、アメリカは地域的な安定を促進する路線をイスラエルが維持するように、継続的な圧力をかけなければならない。イスラエル政府はハマスとの戦争継続を望んでいたが、トランプが強い調子で働きかけた結果、今回はガザ合意に署名するほかなかった。だが、ネタニヤフがいずれハマスに対する戦争を再開し、人道的支援を妨害する可能性はある。二国家解決策をイスラエルが拒絶しているという基本問題も残されている。強い圧力をかけ続けない限り、今回の合意でも、いつものパターンが繰り返されることになるかもしれない。

イスラエルの大いなる選択
―― 孤立と戦争を終わらせるには

2025年11月号

ヤイル・ラピド 前イスラエル首相

ガザ戦争終結のためのトランプの和平プラン、そして今後12カ月以内に実施される総選挙によって、イスラエルは自らを改革するチャンスを手にする。この国を危機的状況から救うには、何よりもまず人質を解放させなければならないが、同時に過激派をイスラエル政府から排除することも必要になる。ネタニヤフ政権は、神権政治的で非自由主義的体制の確立を目指しているからだ。イスラエルの未来は、市民が決めなければならない。有権者は変化を求めている。誇りと希望に満ちた国の未来像を示せる指導者の登場を望んでいる。これが、イスラエルが世界に提示すべき国家ビジョンでもある。

アメリカ後の自由主義秩序を守る
―― 民主諸国の協調と連帯

2025年10月号

フィリップス・P・オブライエン セント・アンドリューズ大学 教授(戦略研究)

多くの国は、トランプ政権に媚びへつらい、米大統領を過度に称賛する努力を重ねてきたが、トランプを懐柔する戦略は失敗する可能性が高い。そうであれば、民主主義と旧来のルールに基づく秩序にいまもコミットする諸国は、国際関係を再構築し、アメリカの気まぐれから自らを隔離し、この極めて不安定な時代にあっても自分たちの自由を広く守る努力をするのが理にかなっている。実際、トランプの勢力圏構想が実現すれば、アジア、ヨーロッパ、北米におけるワシントンの民主的同盟国がアメリカによって守られることはなくなるだろうし、民主諸国は、世界の他の国々を合わせたよりもはるかに多くの核兵器を保有する米中ロという三つの大国と対峙することになる。

イスラエルとパレスチナ
―― 外交的解決策に残されたチャンス

2025年10月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会 名誉会長

イスラエルは厳しい選択を迫られている。パレスチナとの妥協と平和的共存を誠実に模索するか、それとも、長期的な繁栄に必要な国際的支持を失うリスクを冒すかだ。多くのイスラエル人は、武装勢力がパレスチナを活動拠点にすることを恐れ、パレスチナ国家の樹立には強く反対しているが、無期限の占領という現状は、イスラエルを国際的に孤立させ、失うものがないと感じる人々によるテロに永遠に直面することになる。ガザや西岸からパレスチナ人を強制移住させることもヨルダンや他の近隣諸国の不安定化を招きかねないし、アラブ諸国との関係も悪化する。国をもつことがパレスチナにとって有益であることは言うまでもないが、イスラエルにとっても有益であることを認識する必要がある。

民間インフラへのサイバー攻撃に備えよ
―― 中国の攻撃を阻む戦略とは

2025年10月号

アン・ニューバーガー フーバー研究所 特別客員研究員

中国のサイバー支配は、テレコミュニケーション部門の諜報活動にとどまらない。アメリカのエネルギー、水道、パイプライン、交通の制御システムから中国のマルウェアが発見されている。目的は、米市民の日常生活や米軍の作戦行動を妨害するための破壊工作にあるようだ。動員を遅らせたり、航空管制システムを妨害したりできる。実際、台湾危機のタイミングで、中国が、アメリカの鉄道網を寸断したり、東海岸全域で停電を引き起こしたりすれば、どうなるだろうか。中国が優位にあるサイバー空間で、防衛を強化していくカギは、現実世界をサイバー空間に忠実に再現できるデジタルツインを応用することかもしれない。

ウクライナへのNATO部隊の派遣を
―― ウクライナと欧州を守るには

2025年10月号

アイヴォ・H・ダールダー 元駐NATO米大使

ヨーロッパのジレンマは、ウクライナを安心させるという決意を具体的な計画にどう結びつけていくかにある。アメリカの貢献が、よくても最小限のものに留まるとしても、ヨーロッパはウクライナの長期的な安全保障を確立するために、部隊を投入する必要がある。ウクライナへの侵略がNATO圏へ拡大してくるリスクを考慮し、ヨーロッパによるウクライナへの戦力展開はNATOの作戦、つまり、NATOによって計画・承認され、指揮される作戦として実施しなければならない。ヨーロッパの指導者が指摘するように、ウクライナの安全を守ることが、ヨーロッパの存亡を左右するのだから。

中国経済モデル 強さの源泉
―― 北京の方程式とワシントンの誤認

2025年10月号

ダン・ワン スタンフォード大学 フーバー研究所 研究員
アーサー・クローバー ガベカル・ドラゴノミクス 創設者

北京は今後を左右する経済戦略部門を選び、そこに補助金を注ぎ込んだ。しかし、これだけでは北京の産業政策は説明できない。レジリエントな技術大国となるために必要な奥深いインフラを整備したからこそ、中国は成功した。パワフルな電力網とデジタルネットワークを中核とするイノベーション・エコシステムを形作り、高度な製造知識をもつ大規模な労働力も育んだ。これが大きな力となっている。関税や規制でワシントンが中国の成長のタイミングを遅らせようとしても効果はない。ライバルを弱体化させる方法を考える時間を減らし、ワシントンは、自国を活力ある、ベストの状態にもっていく方法を考える必要がある。

自律型戦争の夜明け
―― ドローンを制御するAI

2025年10月号

エリック・シュミット 元グーグルCEO兼会長
グレッグ・グラント 新アメリカ安全保障センター 非常勤シニアフェロー

ロシアもウクライナも、ハードウエア、ソフトウエアそして戦術をよどみなく改良し続けているために、この戦争は息を呑むようなスピードで進化している。膨大な数の監視用ドローンを飛ばすことで、ほぼすべての部隊の動きが可視化され、前線付近で動くものは、それがなんであれ、数分以内に攻撃される。ドローンが敵のドローンと戦うケースも増えている。自律型ドローンスウォーム(大編隊)の攻撃を調整できるAIの開発がいまや焦点とされている。戦争の第1段階はハードウエアの有無が戦況を左右し、双方が新しいタイプのドローン、ペイロード、弾薬に投資したが、次の段階はソフトウエアが焦点になるだろう。

大陸国家と海洋国家
―― アメリカの混乱と世界秩序

2025年10月号

S・C・M・ペイン 米海軍大学校 名誉教授(歴史、大戦略)

中国やロシアのような大陸覇権国は、国際システムを巨大な勢力圏に分割すべきだと考える。一方、海洋で守られ、侵略される危険が小さい海洋国家は、争うのではなく、富を蓄積することに専念する。領土ではなく富にパワーは根ざすとみているからだ。だが、現在のアメリカは、まるで大陸国家のように振る舞っている。あまりにも多くのアメリカ人が、海洋国家秩序の恩恵を当然視し、その欠点ばかりを指摘し、その過程で、地理的・歴史的な優位を無駄に浪費している。貿易障壁を築き、近隣諸国を脅し、国際機関を弱体化させるといった大陸国家のパラダイムに回帰すれば、アメリカは再起不能に陥るかもしれない。

新しい経済地理学
―― ポストアメリカ世界の荒涼たる現実

2025年10月号

アダム・S・ポーセン ピーターソン国際経済研究所 所長

トランプの新路線が望ましい再編を促すと考える人もいる。だが、彼の政策を前に、各国の政府と企業が、最終的にニューノーマルを受け入れ、アメリカに利益がもたらされるという見方は、幻想にすぎない。それどころか、トランプの世界では、誰もが苦境に陥るし、アメリカも例外ではない。アメリカに最大の利益をもたらし、同盟国やパートナーに安心と繁栄をもたらしてきたシステムを彼は破壊してしまった。特に、カナダ、日本、メキシコ、韓国、イギリスなど、米経済ともっとも密接に結びつき、これまでのゲームルールを忠実に守ってきた諸国の経済は大きなダメージを受けるだろう。トランプは楽園への道をつくり、カジノを建設した。だが、その駐車場はやがて空っぽになるはずだ。

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