1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

に関する論文

分裂するヨーロッパ
――ドゴール主義と大西洋主義

2004年12月号

スピーカー
ティモシー・ガートン・アッシュ/オックスフォード大学欧州研究所ディレクター
司会
エリザベス・D・シャーウッド=ランダル/米外交問題評議会準シニア・フェロー

「今回のアメリカでの選挙戦からも明らかなように、アメリカ社会は価値や外交路線をめぐって深く分裂している。一方でヨーロッパでも私が『この十年における大論争』と呼ぶ分裂が起きている。イギリスのトニー・ブレア首相に代表されるヨーロッパの大西洋主義者は、アメリカのパートナーとしての統一された強いヨーロッパが必要だと考え、一方で、フランスのシラク大統領に代表されるヨーロッパのドゴール主義者は、『アメリカのライバル』としてヨーロッパを統合・強化して、二極世界をつくる必要があると考えている。これは新しいヨーロッパと古いヨーロッパの対立ではない。ヨーロッパの大西洋主義者とドゴール主義者の対立だ(訳注:大西洋主義とは簡単に言えば米欧協調主義のことで、ドゴール主義とは超大国に対抗するヨーロッパ中心主義と言い換えることもできる)」(アッシュ)。 邦訳文はニューヨークの米外交問題評議会で開かれたミーティング・プログラムからの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

アメリカの覇権と世界
――覇権国は帝国の歴史から何を学ぶべきか

2004年12月号

エリオット・コーエン/ジョンズ・ホプキンス大学教授

「帝国の時代」は終焉を迎えたかもしれないが、その後、アメリカ覇権の時代が始まった。帝国、あるいは帝国に似た存在であれば、妬まれ、憤慨され、疑われ、信頼されず、往々にして憎しみの対象とされるのは避けられない。現在の国際政治も、アメリカの優位とそれに対する反発で規定されている。だが、勢力均衡がいまに復活することはあり得ず、国連もうまく世界の問題を解決できてはいない。覇権国アメリカは、帝国の歴史が教える叡智に学びながら、混沌を回避するために世界に介入せざるを得ない。

核によるテロの脅威は実存するのか

2004年11月号

スピーカー
グレアム・アリソン/ ハーバード大学教授
聞き手
ロバート・ガルーチ/ジョージタウン大学外交大学院院長

「いつ、どこで、誰が、どのように核テロを起こすかを検討すると、核によるテロが起きるのは必然だとさえ考えるようになった。なぜそのような事態が起きるかよりも、なぜいまのところ起きていないかのほうが不思議なほどだ」(アリソン)。 (邦訳文は二〇〇四年秋にニューヨークの米外交問題評議会で開かれたミーティング・プログラムからの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる)

CFRタスクフォース・リポート
イランへの選択的関与を

2004年11月号

◎スピーカー
ロバート・ゲーツ/ジョージ・H・W・ブッシュ政権CIA長官
ズビグニュー・ブレジンスキー/カーター政権国家安全保障問題担当大統領補佐官
スザンヌ・マロニー/プロジェクト・ディレクター
◎司会
リー・フェインシュタイン/米外交問題評議会シニア・フェロー

ロバート・ゲーツは、2006年12月上旬に提言を発表したイラク研究グループ(ISG)のメンバーだっただけでなく、2004年に米外交問題評議会(CFR)がまとめたイラン問題タスクフォースの共同議長も務めていた。現在、ブッシュ政権は、内外の政策提言を検証しつつ、イラク政策見直しを行っている。ISGはイラク問題を管理していくための国際会議の開催を提言し、リチャード・ホルブルック元国連大使も、最近のインタビューで、イラク問題を論じるのに、イラン、シリア抜きでは意味がないと発言している。核開発を続けているとしても、イラクの安定化にはイランの協力が欠かせないとすれば、かつてイランへの関与を説いたゲーツ新国防長官はどのようなイラク・イランへの政策スキームを考えているのか。本文は、イラン問題に関するCFRタスクフォースが2004年夏に発表したリポートに関する討論。

次期大統領の外交課題

2004年9月号

司会     
リチャード・ハース/米外交問題評議会会長
スピーカー  
ベン・ステイル/米外交問題評議会シニア・フェロー  
グレアム・アリソン/ハーバード大学教授  
ジョセフ・ナイ/ハーバード大学教授  
エリザベス・エコノミー/米外交問題評議会シニア・フェロー

核武装のドミノ倒しが起きる?

リチャード・ハース まず、簡単にスピーカーの紹介を。 ……

 まずハーバード大学のグレアム・アリソン(Graham Allison)から。彼は、ケネディ・スクールの学院長を経て、クリントン政権の国防次官補として、ロシア、旧ソビエトへの政策を担当した。著書にキューバ危機を描いた『決定の本質』(中央公論新社、一九七七)などがある。

 さて、ブッシュ政権の先制攻撃ドクトリン、つまり、学会ではこれまで予防攻撃と呼ばれてきた戦略ドクトリンはかなりの論争を呼んだ。ブッシュとケリーのどちらが選ばれるにせよ、次期大統領は、今後イランや北朝鮮の核拡散の脅威に直面させられることになる。イラクをめぐって大きな論争が起きたとはいえ、ブッシュ、あるいはケリーは、大統領としてこのような脅威に現実に直面した場合、先制攻撃を検討せざるを得ないだろうか。

グレアム・アリソン そうなると思う。イラクに関してブッシュ大統領が必要なら単独でも武力行使を辞さないという姿勢を貫いたこと自体に問題はないと私は考えている。ブッシュ大統領はわれわれが直面している最大の脅威はテロリストが大量破壊兵器(WMD)を入手することだと語っているし、ケリー候補も同じ見方をしている。ブッシュはテロリストとWMDのつながりを問題にして、イラクとの戦争を開始した。問題はターゲットが違っていたことだ。

 イラクではなく、北朝鮮のほうが深刻な脅威だった。北朝鮮は核燃料の再処理を行い、さらに六個の核兵器を生産できるプルトニウムを保有している。北朝鮮が核兵器や核物質を輸出できるはずはないと考える者は、リビアに何を提供していたかを考えるべきだろう。北朝鮮はリビアに核兵器一個を十分に生産できる核物質を輸出していた。……

*邦訳文は、二〇〇四年七月下旬にボストンのハーバード・クラブで行われた米外交問題評議会ミーティングでの発言からの抜粋・要約。発言や質疑応答の順序を入れ替えている部分がある。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

「民主国家中国」の幻の遺産

2004年9月号

オービル・シェル/カリフォルニア大学教授

1890年代の清朝末期以降、中国は政治論争のなかにあった。康有為、厳復、梁啓超などの知識人たちは、自分たちの国が列強の葦刈り場とされるのを避けるには、西洋の思想に中国の伝統を接ぎ木して民主主義を導入すべきだと考えていた。社会的開放と民主主義への道筋を描き、それを中国語で明快に表現していたこうした知識人たちは民主国家中国の「幻の建国の父」である。市場経済と共産党の支配体制が社会に亀裂を生じさせているいま、現代の中国の知識人たちは彼らの思想を思い出し、この幻の民主的伝統を今後の路線に生かすべきではないか。

「中国経済の奇跡」という虚構

2004年9月号

ジョージ・ギルボーイ/MIT国際研究センター研究員

中国をアジアにおける新たな技術・経済「大国」とみなすよりも、普通の新興経済国家とみなすほうが適切である。中国の産業の多くは国有企業と「支配的な影響力を確立しつつある外資系企業」によって構成されており、中国の民間企業はいまも国有企業、外資系企業と競争していく力を確立できていない。

近代化を成し遂げる最終段階になって、産業の分断状況と権威主義的支配という重荷がのしかかってきているというのが中国の現実であり、政治改革を断行しないことには、さらなる発展を阻む閉塞的な中国のビジネス文化を変えていくことはできない。

イラク占領の何が問題だったのか
――CPA顧問が振り返る占領の真相

2004年9月号

ラリー・ダイヤモンド/前暫定占領当局(CPA)上席顧問

「国家が崩壊している戦後の環境にあっては、治安の安定が何にもまして重要になる。治安こそ、その他の社会活動のすべてを支える基本である。最低限の治安がなければ、貿易も商業もできないし、社会を組織して再編することもできない。ましてや市民が政治に参加することもない。治安が確保されていなければ、そこにあるのは混乱、不信、絶望だけだ。ベトナムの時と同様に、ワシントンはいまにも風向きが変わると考え続け、民衆の不満の深さを理解しようとしなかった」

イラク戦争とジョージ・ブッシュ

2004年8月号

ボブ・ウッドワード/ワシントン・ポスト紙編集局次長
ニコラス・レマン/コロンビア大学ジャーナリズム学部長

「私はこれまでつくってきた人脈をたどり(イラク戦争に関する)情報メモをつくった。閣僚や政府高官からも情報を得た。そして最終的にこれらイラク戦争に関する情報を二十一ページのメモにまとめ、これが私なりに考える『これまでに起きた経緯、あなたが決断を下した重要なターニングポイントです』と書き添えてブッシュ大統領に送った。すると、コンドリーザ・ライスが『(大統領のインタビューをとれようが、とれまいが)この本を書くつもりですね』と言ってきた。私は『そのつもりだ』と答えた」

邦訳文は、ブッシュ大統領のインタビューを軸にイラク戦争を検証した『攻撃計画』を出版したボブ・ウッドワードを迎えて、二〇〇四年六月に米外交問題評議会で開かれたミーティング・プログラム議事録からの抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

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